侵Q66

当社の玩具の模倣品が輸入されており、製品のみならず商品説明書もデッドコピーといえるレベルで複製されている。製品について、意匠登録をしていないが、輸入差し止めなど何らかの侵害対策がとれないだろうか。

質問

当社は玩具メーカーで、オリジナルの玩具を販売しています。一部の玩具について外国から模倣品が輸入されているのを発見しました。商品の包装は相違しますが、玩具それ自体の外観が模倣されており、特に許せないのが商品説明書をほぼそのままコピーしていることです。残念ながら玩具については意匠登録をしていませんが、これら事実に基づいてなんらかの対策が取れないでしょうか。

回答

1.玩具の模倣行為について

  • (1)不正競争防止法適用の可能性
     玩具の外観について意匠登録をしていない場合であっても、不正競争防止法の保護事由に該当すれば保護を受けられる場合があります。
    • ①デッドコピー行為 同法2条1項3号、19条1項5号イ、ロ
       玩具の外観が個性を持っており(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態ではなく)、国内での販売開始から3年を経過しておらず、さらに輸入者が、輸入玩具が模倣品であることを知っていた場合は、この規定に基づいて同行為の中止を請求することができます。
       本事例の場合は、輸入玩具が貴社の玩具のデッドコピーであると考えられますので、本規定が適用される可能性が高いと言えます。
       なお、輸入者が単なるバイヤーで、輸入玩具が模倣品であることを知らなかったことも考えられ、その場合には本規定は適用されませんが(同法19条5号ロ)、早めに警告を行い、輸入者にそれが模倣品であることを知らせることで、今後の継続的な侵害を断つことができます。
    • ②商品形態混同惹起行為 同法2条1項1号
       玩具の外観が個性的であり、且つ貴社の商品として需要者の間で周知となっている場合(他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されている場合)は、この規定に基づいて同行為の中止を請求することができます。
       本規定によって保護されるためには、貴社玩具が需要者間に周知となっていることが必要です。必ずしも国民の誰もが知っているという知名度までは要求されませんが、例えば、貴社玩具が同種玩具のディーラーや購買層においてヒット商品であり、その外観が同購買層に広く認識されているといった状態が必要であるため、摘要のハードルはある程度高いと言えます。なお、玩具の外形とその包装が同法2条1項1号の商品形態として保護されると判断した判決として、「たまごっち事件」(東京高等裁判所 平成10年(ネ)1069号)があります。
       なお、本規定に該当する状態が継続する限り、保護期間の限定はありません。
  • (2)著作権法適用の可能性
     逆に、玩具の外観がいかに特徴的であっても、今回の商品のように主として意匠法で保護される機能的な実用玩具である以上、著作物として保護が認められることは難しいと考えられます。刑事事件ですが、人形型であっても育成型電子玩具は著作権法の保護対象ではない旨の判決も出ています(「ファービー人形事件」仙台高等裁判所 平成13年(う)第177号、平成12年(う)第63号)。

2.商品説明書の模倣行為について

  • (1)著作権法の可能性
     商品説明書の文章部分については、個性が出にくい類のものですから、「思想感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)に該当せず、著作権法に保護を求めることは難しい場合が多いと思われます。
     しかしながら、商品説明書中に写真が存在し、その写真までもが複製されているとしたら、複製権侵害として差し止めを求めることができます。写真は撮影の構図に著作物性が認められるため、商品を普通に撮影した写真であっても著作物性を認められる可能性が高いのです。実際に、商品写真に著作物性を認め、その複製に対して著作権侵害を認めた判決が存在します(「スメルゲット事件」知財高判H18.3.29 平成17年(ネ)第10094号)。
     従って、商品説明書に写真が使われており、それまでがコピーされている場合、それに基づく侵害を提起することができると思われます。
  • (2)不正競争防止法の可能性
     商品説明書自体が商品等表示(同法2条1項1号)または商品(同法2条1項3号)ということはできませんので、その複製を以て不正競争防止法違反を提起することは難しいと思われます。

3.対策

  • (1)輸入者への警告書送付
     以上のように、貴社玩具が不正競争防止法2条1項3号または同法2条1項1号の条件に該当する場合は、不正競争防止法違反として輸入者に対して警告を行うことができます。また、商品説明書の写真が複製されている場合は、同様に著作権侵害として、輸入者に対して警告を行うことができます。
  • (2)税関での輸入差し止め
     また、税関においても、著作権侵害品、不正競争防止法該当品について、輸入差し止め手続きを取ることができます(関税法69条の2 1項各号)。東京税関等、最寄りの税関に対して所定の手続きを取ることとなりますが(手続き詳細→侵Q25)、特に不正競争防止法2条1項1号に基づいて輸入差し止めを行う場合は、経済産業省令に基づく大臣の意見書が必要となりますので、税関や弁護士、弁理士などの専門家に相談することをお勧めします。

4.新規性喪失の例外規定を使った意匠出願/特許出願/実用新案出願の可能性
 意匠法、特許法、実用新案法のいずれにも、貴社玩具の販売や広告による新規性の喪失から6か月以内であれば新規性を喪失していないとみなす新規性喪失の例外規定があります(意匠法4条、特許法30条、実用新案法11条)。
 この条件に該当する場合は、それぞれの出願が可能ですから、後続の侵害者が現れることに備えて、意匠権、特許権、実用新案権の取得を検討してみるとよいでしょう。
 なお、本製品について新規性の喪失は、自らの製品の販売、並びに他人の模倣品の販売という異なる理由によって2回起こっていることになります。前者に対する新規性喪失の例外適用申請の他、後者に対する新規性喪失の例外適用申請が必要になる場合もあります。

本QAは特許庁委託事業「外国産業財産権侵害対策等支援事業」において作成されたものです。
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