侵Q64

日本で販売されたキッチン用品が、中国及び米国で並行輸入品として販売されています。その並行輸入品の販売を差し止めることが可能でしょうか。

質問

当社は、電池式のペッパーミルを日本で販売しています。そしてこの電池式のペッパーミルに関して、中国、日本及び米国で特許権を取得しています。
 このたび、その電池式のペッパーミルを中国及び米国でも販売することになり、市場調査をしました。すると、当社の電池式のペッパーミルの並行輸入品が中国及び米国で販売されていることに気が付きました。
 中国特許権(専利権)及び米国特許権を使って、並行輸入品の販売を差し止めることが可能でしょうか。

回答

1.日本特許法における並行輸入(国際消尽説)
 日本特許法では並行輸入に関する明文規定はありませんが、最高裁判決「BBS事件」があります。意匠権に関する並行輸入の例としてQ26Q61に紹介されていますのでご確認ください。また、商標権に関する並行輸入について、Q15及びQ56も参照してください。

2.中国特許法(専利法)における並行輸入(国際消尽説)規定
 2009年10月1日から施行されている特許法に、並行輸入に関する規定(中国特許法第69条第1号)が加わりました。(註1)

「第69条 以下の状況のいずれかがある場合は特許権侵害とはみなさない。
(1)特許製品又は特許方法によって直接得られた製品について、特許権者又はその許諾を取得済みの部門及び個人が販売後、当該製品に対して使用、販売許諾、販売、輸入を行う場合。」

つまり、第69条第1号は、特許製品又は特許の方法によって直接得られた製品について、特許権者等が販売後、当該製品を「輸入」する行為は特許権侵害とみなさないと規定されています。つまり、中国では、国際消尽説が採用されています。

3.貴社の中国での対応
 上記規定により、貴社のペッパーミルを日本で購入すれば誰でも中国へ輸入することができます。また、並行輸入者又は第三者がこの輸入したペッパーミルをそのまま中国で販売、販売の申出、又は使用することは侵害となりません。
 貴社が、中国で貴社ペッパーミルを販売する場合には、中国語の取扱説明書、アフターサービス等で並行輸入業者と差別化していくことになると考えます。
 なお、貴社のペッパーミルには商標名が付けられていると思います。貴社がその商標名を中国で商標権として取得している場合は、並行輸入者又は第三者がこの輸入したペッパーミルをそのまま中国で販売等する行為については商標権侵害として訴えることができるかもしれません。この点については、法令で並行輸入の適法性について明確に定めたものがないため、中国の専門家とご相談ください。

4.米国特許法における消尽規定

  • (1)条文はありませんが、判例(註2)により、米国の特許権者が最初の特許製品の販売を米国内で行うと、特許権が消尽するとされています(消尽説は、米国では一般にパテント・エグゾースション(patent exhaustion)と呼ばれます)。
  • (2)一方、米国の特許権者が最初の特許製品の販売が米国内ではなく、米国外で製造販売された特許製品を米国に輸入した場合には、米国特許権は消尽しないとした判例「Jazz Photo」連邦高裁判決(註3)があります。即ち、米国の特許権者が外国で最初に発売した製品を米国に並行輸入することは、特許権侵害になります。最近の判例「Ninestar Technology」連邦高裁判決(註4)でも、上記「Jazz Photo」連邦高裁判決を引用して、中国で製造販売された製品を米国に輸入する行為は、米国の特許権を侵害すると認定しています。この連邦高裁判決に対して並行輸入業者は連邦最高裁へ上告しましたが、不受理の決定が出ました。

5.貴社の米国での対応
 上記判例により、貴社のペッパーミルを日本で購入して米国へ並行輸入する行為は、貴社米国特許権の侵害になります。国際貿易委員会(International Trade Commission:ITC)へ訴えるか又は連邦地方裁判所に訴えるか等、米国の弁護士と相談して準備を進めてください。
 なお、国際貿易委員会に訴えるには、請求人は、特許の保護を受ける製品が、国内産業要件を充足していることを立証する必要があります(註5)。
 国内産業要件は、技術要件と経済要件とによって構成されています。技術要件を充足するには、特許の保護を受ける製品の実施に関する産業がアメリカ国内で存在している、または創設の過程にあることを立証する必要があります。経済要件を充足するには、特許の保護を受ける製品に関連する産業が、アメリカ国内において存在することを立証する必要があります。経済要件は、以下の条件のうちのいずれかを立証することによって成立します。

  • (A)工場及び設備への相当な投資
  • (B)相当な労働力の雇用または相当な資本の存在
  • (C)エンジニアリング、研究開発またはライセンス供与を含めた、特許製品の活用に関する実質的な投資
参考情報

本QAは特許庁委託事業「外国産業財産権侵害対策等支援事業」において作成されたものです。
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