侵Q63

共有する中国の特許権(専利権)を使って、中国で製造販売されている他社侵害製品に対してどのような手段がとれますか。

質問

当社は、自動車のタイヤパンク検出器を中国自動車メーカーに納品しています。このタイヤパンク検出器の特許発明を、日本企業Aと当社とが、日本及び中国で共有しています。中国自動車メーカーからタイヤパンク検出器の納品数を半減するとの連絡を受けたため、当社が調査してみますと、中国部品メーカーYがタイヤパンク検出器を中国自動車メーカーに納入し始めたことを突き止めました。当社はその中国部品メーカーYのタイヤパンク検出器を入手しました。日本企業Aと共有する中国特許発明(専利発明)を使って、中国部品メーカーYに対してどのような手段がとれますか。

回答

1.貴社の中国特許権と中国部品メーカーYのタイヤパンク検出器の対比・検討
 すでに貴社は、中国部品メーカーYのタイヤパンク検出器を入手とのことです。早速、中国部品メーカーYのタイヤパンク検出器が貴社の中国特許権を侵害するかについて、中国の専門家(弁護士・弁理士)の意見を聴いて、確認をとりましょう。
 特許権を侵害するか否か(特許発明の技術的範囲に属するか否か)の判断を中国の専門家の意見を聞く前に、貴社が事前にチェックすることも可能です。その具体的な手順は、「侵Q48」の回答を参照してください。

2.中国部品メーカーYのタイヤパンク検出器が貴社の中国特許権を侵害する場合

  • (1)特許権の共有の規定
     中国部品メーカーYのタイヤパンク検出器が貴社の中国特許権を侵害する場合には、共有する中国特許権に関して、貴社と日本企業Aとの契約(約定)を確認してください。中国特許法(専利法)第15条に共有に関する規定があります。(註1)
    「第15条 特許出願権又は特許権の共有者の間で権利の行使について約定がある場合はその約定に従う。約定がない場合、共有者は単独で実施するか、あるいは一般許諾方式によって他者に当該特許の実施を許諾することができる。他者に当該特許の実施を許諾する場合、徴収する使用料は共有者同士で分配する。
    第2項 前項が規定する状況を除き、共有する特許出願権又は特許権については共有者全体の同意を得なければならない。」
     共有する中国特許権に関して、貴社と日本企業Aとの間で、契約があればその契約に従います。仮に、契約書に日本企業Aのみが特許ライセンスをしたり、訴訟を提起したりできるとの規定があれば、日本企業Aに中国部品メーカーYとの交渉や訴訟をしていただくことになります。
  • (2)貴社と日本企業Aとの間で、中国特許権に関する契約がない場合
    • 1)警告状に関して
       さて、特許ライセンス交渉に至る前に、まず貴社が単独で中国部品メーカーYに警告状を送ることになると思います。この場合、中国部品メーカーYからの非侵害の確認訴訟などに注意してください。
       “最高人民法院による専利権侵害をめぐる紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈”(法釈[2009]21号)の第18条にて、非侵害の確認訴訟の規定が示されています(註2)
       また、中国部品メーカーYに警告状を送ったことで、中国部品メーカーYから無効審判を請求(権利無効宣告請求)されることも予想されます。警告状を送る前に、共有する特許権に無効理由があるか否かを事前に検討しておくことをお勧めします。
       なお、無効審判で新規性違反、拡大された先願と同一の違反及び進歩性違反を検討する場合には、中国特許出願日(優先日)に留意してください。中国特許出願日により、旧法と新法との適用が異なります。その適用については、「侵Q55」の回答を参照してください。
    • 2)特許ライセンスに関して
       上述した中国特許法第15条第1項に基づき、貴社が単独で特許ライセンス交渉ができます。この点、日本特許法第73条第3項の規定とは異なります。単独で特許ライセンス交渉ができますが、特許ライセンス料が入ってきた際には、日本企業Aとの間で特許ライセンス料を分配する必要があります。
    • 3)権利行使(損害賠償請求、差止請求(中国では即時停止という))に関して
       上述した中国特許法第15条第2項により、貴社は単独で、損害賠償請求又は差止請求できません。一方、日本では共有特許権に関して特に契約がない場合、単独で損害賠償又は差止請求できると解されています。この点の違いに留意してください。
       中国特許発明を使って損害賠償請求又は差止請求する場合には、日本企業Aの同意を得てから提訴してください。
参考情報

本QAは特許庁委託事業「外国産業財産権侵害対策等支援事業」において作成されたものです。
事業内容等は本事業サイト(http://www.jpo.go.jp/index/kokusai_doukou/iprsupport/index.html)をご確認下さい。