侵Q62

当社製品を中国へ輸出する予定である。中国では意匠登録が多数存在すると聞くが、意匠権侵害と言われるリスクはどのくらいあるのでしょうか。

質問

当社は、木片を加工した知育玩具を製造販売する会社で、国内では評判を得て、地味ではありますが手堅い販売を行っています。中国のバイヤーから引き合いがあり、中国の富裕層向けに、それら製品を輸出することになりましたが、中国では審査無しでたくさんの意匠が登録されていると聞きます。当社の製品は、数年前からネット上で閲覧可能ですし、中国で第三者が登録しているのではないかと心配しています。意匠権侵害と言われるリスクをどのように考えたらよいでしょうか。

回答

1.中国の意匠制度

中国の意匠制度の特徴は、無審査登録制度だということです。出願された意匠は、願書や図面などの方式的な要件を整えていれば、実体的な審査を経ることなく意匠登録を得て意匠権が発生してしまいます。
 中国では意匠は「外観設計」として、特許法(専利法)で保護されますが、登録要件として世界公知制度を取っています(中国専利法23条「特許権を付与する意匠は、既存の設計に属さないものとする。(中略)本法でいう既存設計とは、出願日以前に国内外において公然知られた設計を指す。」)。このため、第三者が、我が国ですでに流通している商品について無断で意匠出願(冒認出願)をすれば、本来であれば新規性がないものとして有効な登録意匠になりません。しかしながら、上述したように、中国の登録はその事実を考慮しませんから、そのような意匠出願でも登録を得ることになり、見かけ上、意匠権が発生してしまいます。
 このため、ご相談のように、数年前から我が国で人気となっている商品であって、それを中国に輸出しようとした場合、それを参考にした第三者の意匠登録にもとづいて、逆に意匠権侵害である旨の警告を受けてしまう可能性もあることになります。

2.中国の登録意匠調査

現在、中国での意匠出願件数は42万件(2010年統計・日本特許庁)を超えており、我が国での意匠出願件数の3.2万件(2013年統計・日本特許庁)の優に10倍以上に達しています。中国での意匠登録意欲は高いものがありますから、相談のご事情ですと、安全をみて中国へ輸出する前に、事前に登録意匠の調査をしておくことが望ましいと思われます。
 現在(2013年)、我が国の電子特許図書館(IPDL)で、中国の特許出願及び実用新案出願の公報を日本語に訳した状態で検索を行えるようになっていますが、中国の意匠公報については未だ整備されていませんので、現地の特許法律事務所を介して行うことになります。
 調査費用は現地代理人に直接依頼した場合で1意匠あたり8,000人民元(2013年12月現在で約128千円)程度(我が国の特許/法律事務所を介して依頼すると、その費用が別途かかります)、調査時間は2週間前後です。

3.意匠権侵害と警告された場合の対応方法

上述のように、冒認出願があった場合は、無効請求をする可能性のある本家を相手に意匠権者が警告書を送る可能性も小さいかもしれません。しかしながら、不幸にして意匠権侵害との警告を受けた場合は、その対応策として、その意匠登録を無効にする手続きを行うこととなります(中国専利法45条)。
 無効手続きを行う場合、中国での意匠出願日前に、同商品が我が国において公知になっていたことを立証する必要があります。インターネット上の公開だけでは、公知となった日の客観的立証が難しいため、その他、商品が紹介された新聞・雑誌などの印刷物の発行日などで立証することが必要です。
 無効請求の中国代理人費用は現地で25,000人民元(2013年12月現在で約400千円)程度(日本語の証拠を提出する場合、翻訳費用が別途かかります。我が国の特許/法律事務所を介して依頼すると、その費用が別途かかります)。

4.著作権登録の可能性

我が国をはじめ、多くの国において意匠、すなわち応用美術に属する物品は著作権法によって保護されません。中国の著作権法も、同様に応用美術を明確に保護対象と明記していません。
 一方、中国において、インターレゴAG社(スイス法人)のブロック玩具について著作物性が認められた裁判(上海市高等裁判所:2008年)が存在します。しかしながら、この判決では、中国における応用美術の保護は、ベルヌ条約の応用美術に関する相互主義規定(註1)に基づいているとの見解があります。このため、我が国の企業が中国の著作権登録を行ったとしても、原則として応用美術を意匠制度で保護する我が国がベルヌ条約上の本国となるため、応用美術を著作物として保護するスイスが本国となる上記法人とは異なり、著作権登録による保護が与えられない可能性があることに注意してください。

参考情報
  • (註1)ベルヌ条約2条(7)
    応用美術の著作物及び意匠に関する法令の適用範囲並びにそれらの著作物及び意匠の保護の条件は、(中略)同盟国の法令の定めるところによる。本国において専ら意匠として保護される著作物については、他の同盟国において、その国において意匠に与えられる特別の保護しか要求することができない。(後略)

本QAは特許庁委託事業「外国産業財産権侵害対策等支援事業」において作成されたものです。
事業内容等は本事業サイト(http://www.jpo.go.jp/index/kokusai_doukou/iprsupport/index.html)をご確認下さい。