侵Q61

海外の靴を仕入れて、ネット上で販売しようと思っています。しかし、靴の包装に、靴について日本の意匠登録がなされている旨、また、商品名も日本の商標登録がなされている旨の表示がありました。問題になることはありますか。

質問

海外有名ブランドの靴を安く仕入れることができるため、近々、ネット上で小売サイトを立ち上げようと思っています。しかし、靴に付いたタグをよく見ると、靴について日本の意匠登録がなされている旨、及び商品名についても日本の商標登録がなされている旨の表示がありました。なお、商品説明として、靴メーカーのカタログに掲載された商品写真を使用しようと思っています。なにか問題になることはあるでしょうか。

回答

1.真正商品かどうかの確認

最初に確認が必要なことは、取り扱おうとしている商品が「真正商品」なのか、ということです。真正商品とは、その商品を、ブランドを有するメーカーの意思で市場に流通させている商品のことを言います。海賊商品は論外ですが、必ずしも、製造されたところが同一であって品質的にも同一の商品が常に「真正商品」となるわけではありません。
 例えば、国内メーカーが海外のメーカーに商品を委託生産すると、受託した工場が余分な数を生産し、それを海外市場で横流しするということも起こり得ます。その場合、そういった商品は「真正商品」となりませんから、たとえ、パッケージなども含めて見かけ上同一に見えても、仕入れ先を十分に吟味しないと、侵害品を仕入れることになってしまう可能性があります。「真正商品」でない場合は、当然に我が国において意匠権や商標権を侵害することになりますから、十分に確認してください。
 もし、仕入れ先から、その商品が「真正商品(genuine product)」であることの証明書をもらえるようであれば、あらかじめ取得しておくことがよいと思われます。逆に、見かけ上まったく同一でも、販売ルートが不明であれば、裁判所などで争った場合、「真正商品」と認められない可能性もありますので注意が必要です。

2.意匠権侵害の可能性

その商品が真正商品であった場合は、たとえ国内に意匠権が存在していたとしても、「真正商品の並行輸入」として、意匠権侵害に当たらないことになります。
 但し、最高裁判決(「BBS事件」(最判 H9.7.1))において、我が国が販売先として許諾されていないことを製品上に明確に表示されている場合は、その例外となることが判示されています。従って、もし、商品に「本商品は○○国以外の地域(日本を含む)では販売できない」旨が記載されているような場合は、注意が必要です。

3.商標権侵害の可能性

意匠権侵害と同様に、その商品が真正商品であった場合は、たとえ国内に商標権が存在したとしても「真正商品の並行輸入」として、商標権侵害に当たらないことになります。最高裁判決(「フレッドペリー事件」(最判H15.2.27))は、次の条件を満たせば、「真正商品の並行輸入」として商標権侵害に当たらないことを判示しています。

  • (1)当該商標が外国における商標権者又は当該商標権者から使用許諾を受けた者により適法に付されたものであること。
  • (2)当該外国における商標権者と我が国の商標権者とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係があることにより、当該商標が我が国の登録商標と同一の出所を表示すること。
  • (3)当該商品と我が国の商標権者が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保証する品質において実質的に差異がないと評価されること。

なお、メーカーが、外国で販売する商品と日本で販売する商品を差別化している場合、それが真正商品の認定に影響を与えるか否かには議論があります。例えば、その靴底の弾力を、日本用靴より石畳の多いヨーロッパ用の靴では柔らかく設定しているような場合です。つまり、ヨーロッパ用商品が日本で販売されることにより、その靴の評判が悪くなることも考えられるからです。必ずしもこの状況によって、直ちに真正商品の並行輸入が否定され、商標権侵害となるとは言えませんが、そういった事実がある場合は注意が必要でしょう。

4.カタログの商品写真の著作物性

カタログの商品写真が著作権法で保護される著作物になるかどうかが問題になりますが、非常にシンプルな商品写真であっても、その写真の無断使用は著作権侵害となる可能性があります。
 カタログに掲載した商品写真の無断使用が著作権を侵害すると判示した知財高裁判決が存在します(「スメルゲット事件」知財高判H18.3.29)。この判決では、「本件各写真は,(中略) むしろ商品を紹介する写真として平凡な印象を与えるものであるとの見方もあり得る。しかし,(中略) 被写体の組合せ・配置,構図・カメラアングル,光線・陰影,背景等にそれなりの独自性が表れているのであるから,創作性の存在を肯定することができ,著作物性はあるものというべきである」と判示しており、どんなに平凡な商品写真であっても、著作権が発生している可能性がありますので、カタログ写真を無断で使用することは控えるべきでしょう。
 サイトに、商品写真を掲載する必要がある場合は、必ず自ら撮影した写真を掲載するようにしてください。

5.プロバイダとの契約内容の確認

小売サイトを開設するプロバイダとの契約内容を確認することも必要です。
 プロバイダは、出店者が商標権侵害を行っている場合、侵害内容をウェブページから削除しない限り、出店者と同様の責任を問われる旨の知財高裁判決が近年出されました(「チュッパチャプス事件」(知財高判H24.2.14))。
 このため、プロバイダは自らの責任を回避するため、小売りサイトの開設に当たって、プロバイダは、商標権者からの通知があった場合、侵害の可能性が高ければサイトの閉鎖を可能とする約定を盛り込んでいる場合がありますので、よく約定を検討しましょう。

本QAは特許庁委託事業「外国産業財産権侵害対策等支援事業」において作成されたものです。
事業内容、免責事項等は本事業サイト(http://www.iprsupport-jpo.go.jp/)をご確認下さい。