侵Q60

当社の意匠権を侵害している製品を販売している販売店Aに警告書を出したところ、「単に商品を扱っているだけなので、輸入者であるB社に連絡してほしい」との回答を受け取った。どのように対応したらよいでしょうか。

質問

当社はバッグを製造販売する会社です。ショルダーバッグについて意匠権を取得しましたが、販売店Aで外国から模倣品が輸入され、販売されているのを発見しました。そのため、警告書を送付したところ、販売店Aから「我々は単に商品を扱っているだけなので、輸入者であるB社に連絡を取って、そこと話し合ってほしい」との回答をもらいました。
 販売店Aの言い分は正しいのでしょうか。どのような方針で臨めばよいか教えてください。

回答

1.意匠権の内容(意匠法23条)

特許庁で意匠登録を受けると、意匠権が発生します。意匠権がどういう効力を有するのかをもう一度確認してみましょう。
 意匠法23条には、「意匠権者は、業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する」と規定されています。つまり、他人が許可なく登録意匠を実施した場合は、権利侵害となります。さらに、登録意匠だけでなく、それに類似する意匠を実施した場合も権利侵害になりますから、意匠権で規制できる他人の行為は、デッドコピーだけではなく、それを超える、類似範囲まで規制することができます。
 そして、他人が権利侵害行為を行っていた場合、意匠権者は侵害行為の差止め請求(意匠法37条)、損害賠償請求(民法709条)などを求めることができます。

2.「実施」の意味(意匠法2条3項)

それでは、意匠法上、「実施」とはどういうことかを考えてみましょう。意匠法2条3項には「この法律で意匠について「実施」とは、意匠に係る物品を製造し、使用し、譲渡し、貸し渡し、輸出し、若しくは輸入し、又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。以下同じ。)をする行為をいう。」と規定されています。それぞれ具体例を見て行きましょう。なお、上述のように意匠法23条でそれぞれの行為に「業(ぎょう)として」という条件が付加されます。

  • (1)業としての製造:販売や貸し出しなどをしなくとも、単に意匠権の対象となるものを作った人も侵害者になります。但し、登録意匠の机があった場合、これと同じものを個人使用のために日曜大工で作ったというような場合は、「業として」にあたらないので意匠権侵害となりません。
  • (2)業としての使用:意匠の侵害品を購入したり、或いは自ら製造して、仕事に使っている人が侵害者になります。例えば、登録意匠である工具などの模倣品を工場で使用しているような場合も、意匠権の侵害者となります。
  • (3)業としての譲渡:金銭を伴う販売のみならず、金銭を伴わない譲渡であっても、業務として登録意匠の模倣品を受け渡す行為は侵害にあたります。
  • (4)業としての貸し渡し:所有権の移転を伴わなくとも、業務として登録意匠の模倣品を貸し渡す行為、いわゆるレンタル行為を行うことも侵害となります。
  • (5)業としての輸出若しくは輸入:業務として輸出し、輸入する行為を行うことも侵害行為となります。個人的な輸出入は、基本的に「業として」に該当しませんが、同じものを多数輸出入する場合、もしくは同じものを頻繁に輸出入する場合、さらに、転売が予想される場合は、個人の輸出入であっても税関において意匠権の侵害と認められる場合があります。
  • (6)業としての譲渡若しくは貸渡しのための申出(譲渡若しくは貸渡しのための展示を含む):販売やレンタルの営業行為を行うことも侵害となる。「展示行為」を含むと規定されていますが、店頭での展示行為のみならず、ネット上の販売サイトに販売やレンタル目的で侵害品を表示することもこれに含まれます。

なお、侵害の態様としては、これら実施行為の他に、意匠法37条に間接侵害規定に規定される間接侵害行為があります。この規定により、意匠権はキット状態での製造販売、金型の製造販売、CADデータの製作販売などの行為にも及ぶ可能性があります。

3.販売店Aの責任

相談事例に戻りますが、販売店Aの行為は、上記した「業としての譲渡」行為に該当します。また、輸入するBの行為は、上記した「業としての輸入」行為に該当します。よって、販売店A・輸入者Bのいずれの行為も、意匠法上で規定される、意匠権の侵害行為に該当します。
 すなわち、販売店Aは「業としての譲渡」行為を行っている以上、意匠権者からの指摘があれば、自らの責任において、対応を取らなければなりません。販売店Aは、取り扱った商品が意匠権を侵害するものであれば、直ちに販売を中止し、過去に販売した分についてはその範囲において損害賠償を行う必要があります。一方で、もし、販売店Aがその商品が意匠権を侵害するものではない、と考えるのであれば、その理由を明確にして自らが反論する必要があります。いずれにしろ、販売店Aは単に商品を取り扱っているだけであるという言い訳はできませんので、意匠権者としては、販売店Aに対してしっかりとした対応を要求すべきです。

本QAは特許庁委託事業「外国産業財産権侵害対策等支援事業」において作成されたものです。
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