侵Q58

当社の商標権の侵害をした会社から、今までの侵害を認め、今後ライセンスを受けたいとの申し出がありました。どのように対応すべきでしょうか。

質問

当社は、商品「被服」に関して商標「ホップ」を商標登録し、使用していましたが、2年前から商標「HOP」を使用しています。最近当社は、商標「HOP」及び「ホップ」を「レインコート」に使用することによって当社の商標権を侵害していた会社に対し、警告を行って侵害行為の中止を求めました。
 これに対して、相手方から、侵害を認め、侵害の事実について謝罪する内容の回答があり、あわせて今後ライセンスを受けさせてほしいとの申し入れがありました。
 侵害を認めるならば当社に対して今までの侵害行為に対する損害賠償をしてほしいと思いますし、また、ライセンスをするのは初めてなので、そもそもライセンスしてよいかどうかもわかりません。
 どのように対応すべきか教えて下さい。

回答
  • 1.損害賠償請求をしたいとのことですので、まずは相手方が侵害行為をしていた期間、侵害にかかる商品の販売価格、販売数量、粗利等について情報提供を要求することを勧めます。情報が得られたら、それに基づいて損害賠償の金額を算定します。(損害の額の算定について 侵Q34参照)
     相手方は侵害の事実を認めているとのことですが、今後も侵害をしないこと、及び損害賠償をすること等について確認させる誓約書を作成することも重要です。
     これらの手続については専門家に相談されることをお勧めします。
  • 2.今後のライセンスですが、貴社ブランドの将来的な価値にもかかわる重要な問題ですので慎重に検討されるべきです。
     そもそもライセンスをするということは貴社の重要な財産であるブランドを他人に貸す(使わせる)ということですので、そのことの妥当性について検討してください。
     ライセンスの可否を検討する際には以下のようなポイントについて考慮する必要があります。
    • ・相手方が貴社商標と類似するものを使用した場合に、貴社のブランドイメージが壊れることはないか。
    • ・ブランドイメージを維持するためには、ライセンスによって製造される製品の品質についても貴社が監督し、ある程度の責任を持つ必要があるため、貴社の基準を満たす製品の製造が可能なライセンス先であるか。
    • ・企業として問題はないか、またライセンス料を確実に受け取れるか。
    • ライセンスするブランドハウスマーク(社標)か、あるいはプロダクトネーム(個別商品の商標)か。
    • ・独占的使用権(同じ範囲の製品については他の者にライセンスをしない)とするかどうか。(なお、商標法第30条に規定される専用使用権を設定すると貴社もその範囲での使用ができなくなりますので、この場合はお勧めできません。商標法第31条の通常使用権をお勧めいたします。)
  • 3.ライセンスするということになった場合にも、いくつか検討しておかなければいけない点があります。例えば、以下のような点です。
    • ・商標の態様、使用する対象商品役務、販売ルート等。
    • ・使用権の設定登録をするかどうか。(上記の専用使用権を設定する場合には、登録しなければ効力が発生しません。本問の場合、通常使用権を許諾すると思われますので、原則として原簿への登録は必要ありませんが、通常使用権の登録をすると、ライセンシーの地位が安定するという効果があります。)
    • ライセンスの範囲(商品の範囲、地理的範囲)、期間をどうするか。
    • ・出所の混同をどのように防ぐか。
    • ・商標の使用方法についてどのように事前のチェックをするか。
    • 商品の品質についてどのようにチェックするか。
    • ・ライセンス料の金額、支払時期、支払方法。
    • ・ライセンス契約終了の条件。
    • ・侵害品に対する対応をどうするか。
  • 4.ライセンスをする場合には、ライセンスの内容について詳細に記載した契約書を作成する必要があります。実際に使用する商標のロゴ、商品の範囲、地域、期間、対価等の条件に加え、もし契約に違反した場合のペナルティに関する規定も設けておくべきです。また、ライセンシーがその商標登録に対して無効審判を請求しないこと(不争義務)も規定しておくべきです。
     ライセンシーが不正な使用(誤認混同を招くようなもの)をした場合にはペナルティーとして商標登録が取り消されます(商標法第53条)。よって貴社が適切にライセンシーによる商標の使用を監督する義務もあります。
     このようにライセンス契約には高度な法律的知識及び知見が必要とされますので、ライセンスをすることが初めてであれば専門家に相談することをお勧めします。
  • 5.日本ではライセンスの対象となりうるのは登録商標のみです。現状では貴社の登録商標は「ホップ」のみですから、「HOP」についてもライセンスをするならば「HOP」についても商標登録を受ける必要があります。ライセンス契約においては、ライセンシー(使用権者)に対して商標の使用の事実の証拠提出義務を定めておくことをお勧めいたします。
  • 6.製造物責任法(PL法)においては、原則として製造者、加工者及び輸入者(製造業者等)が製造物に対して責任を負います。しかし、製造物に付された商標により、ライセンサー(本QAの場合は貴社)が製造業者と認められたり、あるいは製造業者と誤認された場合には、責任を負うとされる可能性も否定できません。
     この点からも、ライセンスした商品の品質については管理監督することが重要です。
関連QA
  • 侵Q14 他人が当社の登録商標と類似する商標を使用しています。対策を教えて下さい。

本QAは特許庁委託事業「外国産業財産権侵害対策等支援事業」において作成されたものです。
事業内容等は本事業サイト(http://www.jpo.go.jp/index/kokusai_doukou/iprsupport/index.html)をご確認下さい。