侵Q56

当社が欧州でのみ販売している製品(消耗品)が日本に逆輸入され、製品の仕様に一部変更を加えられて販売されています。どのように対応したらよいでしょうか。

質問

当社は、掃除機用の紙パックを日本国内および外国で販売しています。
 上記紙パックの価格、仕様は日本国内と外国とでは異なっています。最近、欧州で販売されている製品を日本に輸入して販売する業者が現れました。
 欧州で販売されている製品が日本用製品よりも価格が安いため、これを日本に逆輸入しているのです。但し、欧州製品と日本製品とでは仕様が異なるので、欧州製品に一部変更が加えられています。 一部の商品においてはさらに当社の商標が削除されています。
 このような逆輸入製品の販売に対してどのように対応したらよいでしょうか。

回答
  • 1.一般に、真正品を輸入して販売する行為は真正品の並行輸入として商標権を侵害しないとされます。また、真正品の並行輸入を、価格を維持する目的で、商標権に基づいて阻止することは独占禁止法上問題となる可能性があります。
     しかし、今回の場合、輸入者は貴社が欧州で販売されている製品を輸入し、その仕様に変更を加えて日本で販売しています。つまり、逆輸入された商品は、真正品と品質において違いがあり、貴社が付した商標の品質保証機能を害していると考えられます。つまり、貴社商標が付いた製品を過去に購入した需要者が、また同じ製品が欲しいと思って貴社商標を目印として上記逆輸入品を購入した場合、品質が異なるということになり、日本国内で同じ商標が付けられた商品は同等の品質を有しているということを保証する商標の品質保証の働きを妨げることになります。このようなことがあると、貴社商標の上に築かれた顧客の信用が失われてしまいます。よって、輸入品に関して真正品と品質が異なる場合には商標法上並行輸入とは認められません。
     つまり、逆輸入されている製品は真正品の並行輸入品ということはできませんから、貴社の商標権を侵害するということもできます。このような真正品の品質を変更した逆輸入製品の販売に対して、貴社は商標権侵害の主張をすることが可能であろうと考えられます。
     実際に、真正品に加工を加えて販売した行為に対して商標権侵害が認められたケースがあります(東京地裁平成14年2月14日 平成12年(ワ)第26233号「アステカ事件」)。
     さらに、貴社が欧州向けに販売されている製品を貴社の許諾なく改造して日本向けに販売した場合、掃除機の故障や吸い込みの不具合を招くおそれがあるならば、その旨を消費者に注意喚起する必要があるでしょう。そのため、例えば欧州向け製品に「この製品は欧州向け製品に使用される用途で製造されています。他の地域で販売されている掃除機に使用した場合には、不具合が生じるおそれがありますのでご注意ください。」というような注意書きを付するという方法もあります。
  • 2.次に、貴社商標が削除された逆輸入品(仕様を日本向けに変更)の販売に対してはどのように考えればいいでしょうか。
     商標の剥奪抹消行為は形式的には商標権侵害には該当しませんが、実質的に商標の機能を害するものであるとして商標権を侵害するという考え方も一部にあります。
     本件の場合、貴社の欧州向け真正品に仕様の変更を加えたとはいえ、さらに貴社商標を削除している以上、商標権侵害を主張することは容易ではないといえるでしょう。
  • 3.なお、第三者が貴社製掃除機用の紙パックに「○○用」「For○○」(○○は貴社の名称)と表示して販売する場合、このような記載は品質を表示するものとされ、商標権侵害ではないと考えられています(註1)。しかし、第三者が貴社の社標のロゴを使用して「○○(ロゴ)用」のような表示をした場合には商標権侵害ということができます。
参考情報
  • (註1)平成15年(ワ)第29488号「brother事件」においては、「For○○」「○○用」のように表示する場合には商標権を侵害しないと認定されています。

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