侵Q54

外国に設置したネットサーバを使って日本でのサービスを提供していますが、そのサービスの提供は、日本の特許権又は外国の特許権の侵害になりますか。

質問

当社は、日本で携帯電話の通話料金を安価にするサービスを提供しています。具体的には、国内の呼出人の携帯電話から、一旦当社の電話番号に電話をかけていただくと当社の台湾のネットサーバにつながります。そして5秒間のコマーシャル(広告宣伝)を聞きます。その後、そのネットサーバ経由で日本の固定電話又は携帯電話につながる仕組みです。コマーシャル提供会社から広告費をいただくことで通話料金を下げています。このような仕組みの特許は、X社が、米国、日本及び台湾で取得したと聞きました。日本における当社のサービス行為は、日本で特許権侵害になるのでしょうか。それとも台湾で特許権侵害になるのでしょうか。又は侵害しないでしょうか。

回答

X社が、貴社のサービスの仕組みに関して、米国特許、日本特許及び台湾特許を取得しているとのことです。それら3カ国における方法の特許発明の内容は、以下のとおりです。

  • 「A: 呼出人の携帯電話から、所定の電話番号とリンクしたコンピュータが電話を受ける。
  •  B: そのコンピュータが電話を受けると、その呼出人の携帯電話をサーバに接続する。
  •  C: 該サーバは、記憶手段に記憶された宣伝広告の音声をコンピュータを介して呼出人の携帯電話に流す。
  •  D: 宣伝広告の音声が流れた後、呼出人が掛けたい電話番号がコンピュータに入力されると、コンピュータは呼出人とその掛けたい電話番号の呼受人との通話を許可する。」
考え方1

貴社のサービス行為は、上記A、D構成要件は日本国内で、B、C構成要件が台湾内で行われると考えることができます。

(直接侵害)

さて特許権侵害の前提として、特許権に関する属地主義の原則及び権利一体の原則について説明します。
 特許権の属地主義の原則とは、ある国で付与された特許権の効力の及ぶ範囲は、その国の領域内に限られ、かつ、その権利の成立、効力及び消滅等は、権利を付与した国の法律により定められるという原則です。特許権に関する属地主義の原則は、国際的に広く認識されています。
 また権利一体の原則とは、特許発明の実施とは特許発明の構成要件のすべての実施をいい、その一部の実施をいうものではないという原則です(日本特許法第68条及び同第70条、台湾専利法第58条)。日本特許発明の実施となるには、日本特許発明の構成要件をすべて日本で実施しなければなりません。台湾特許発明も同様に台湾特許発明の構成要件をすべて台湾で実施しなければなりません。
 貴社のサービス行為を、特許権に関する属地主義及び権利一体の原則に当てはめてみますと、日本特許発明に関しては、上記A、D構成要件を日本国内で実施しているだけです。台湾特許発明に関しては、上記B、C構成要件を台湾国内で実施しているだけです。
 このため、日本特許法第68条及び同第70条又は台湾専利法第58条に基づいて、貴社のサービス行為は特許権侵害になりません。一般に、以下に説明する間接侵害と区別するために、日本特許法第68条及び同第70条又は台湾専利法第58条による侵害を直接侵害と呼びます。貴社のサービス行為は直接侵害になりません。しかし、下記の間接侵害も検討する必要があります。

(間接侵害)

上記属地主義及び権利一体の原則に基づけば、貴社のサービス行為は、直接侵害になりませんが、間接侵害になるか否かも検討しなくてはなりません。
 日本特許法では、間接侵害に関して特許法第101条第5号が規定され、成立要件が以下のようになります。詳細はQ32を参照してください。

  • 「① その方法の使用に用いる物であること(「使用用途要件」)
  • ② 発明による課題の解決に不可欠なものであること(「不可欠性要件」)
  • ③ 日本国内において広く一般に流通しているものでないこと(「非汎用性要件」)
  • ④ 発明が特許発明であること及びその物が発明の実施に用いられることを知っていること(「主観的要件」)」

台湾に設置した貴社のネットサーバが、これらの成立要件を満たせば、間接侵害に該当することになります。但し、外国に設置したサーバを使ったサービス行為が間接侵害となるかを争った判例はまだ無いようです。
 一方、台湾専利法では、間接侵害に関して規定されておらず、民法上の提案・幇助の規定(台湾民法第185条第2項)(註1)が適用され、その提案・幇助の適用も難しいと言われています。

考え方2

考え方1では、貴社のサービス行為が、上記A、D構成要件は日本国内で、B、C構成要件が台湾内で行われるとしました。しかし、上記A構成要件が日本で行われると、B、C及びD構成要件が一連的に行われるとの解釈(考え方2)も可能です。このように解釈しますと、特許発明のすべての構成要件が日本国内で行われると解釈されるため、貴社のサービス行為は日本で特許権侵害になります。
 今回のご質問では、米国特許を考慮する必要はありませんが、米国裁判例には、直接侵害として認定した判例があります。特許発明たるシステムを構成するサーバの一部が外国(カナダ)に置かれていたという事件において、米国国内においてシステムの制御を行うことができ、また、米国国内でその発明の利益を享受することができるのであれば、特許権侵害の成立を肯定してもよい、とする判例があります[Blackberry事件 418 F.3d 1282 (Fed.Cir. 2005)]。
 以上を踏まえた上で、貴社のサービス行為が、日本又は台湾で特許権侵害になる可能性がどれぐらいあるかを専門家とご相談してはどうでしょうか?

参考情報
  • (註1) 民法第185条第2項では、「複数の者が他人の権利を不法に侵害した場合、連帯して損害賠償責任を負う。加害者が特定できない場合にも同様とする。提案者及び幇助者も共同行為人と見なす」と規定されている。ここでいう「幇助者」とは、他人が侵害行為を遂行しやすくするよう幇助する者を指し(最高裁判所2008年度台上字第2050号民事判決)、「提案者」とは、他人に侵害行為を決意させるよう教唆する者を指す(最高裁判所民事判決2012年度台上字第919号)。

本QAは特許庁委託事業「外国産業財産権侵害対策等支援事業」において作成されたものです。
事業内容等は本事業サイト(http://www.jpo.go.jp/index/kokusai_doukou/iprsupport/index.html)をご確認下さい。