侵Q51

当社は中国製の家具を輸入し、ネット上で販売しているが、イタリアの家具メーカーから同社家具の著作権を侵害しているとの警告がありました。家具のデザインは著作物なのでしょうか。

質問

当社は中国製の家具を輸入し、インターネット上で通信販売をしていますが、それら製品のうちの一つはイタリアの有名な家具メーカーA社が30年以上前から販売しているデザインを参考にしたものです。ところが、A社から当社の販売行為は、A社の家具の著作権を侵害するものであるとの警告書を受け取りました。

家具のデザインは著作物なのでしょうか。他に、注意しなければならないことがあるのでしょうか。

回答

1.ヨーロッパにおける著作物の概念

一般的に美術は、絵画や彫刻などの純粋美術(fine art)と家具などの実用品に応用された応用美術(applied art)に分けられます。前者は「美術の著作物」として著作権法の保護を受けることになりますが、後者については各国で取扱いが異なります。各国間で著作権法を調整するベルヌ条約においても、「応用美術の著作物及び意匠に関する法令の適用範囲並びにそれらの著作物及び意匠の保護の条件は、(中略)同盟国の法令の定めるところによる」(第2条(7))と規定されていますので、まさに、応用美術が著作物になるかどうかは、それぞれの国の著作権法によることになります。

イタリアの著作権法は「創作的および芸術的価値を有する工業デザインの著作物」を保護対象としています(イタリア著作権法2条(10))。すなわち、イタリアの著作権法では十分な創作性があれば、家具のような応用美術であっても著作物として保護されることになります。同国の著作権法では、工業デザインの著作物であっても、創作者の死後70年間、著作権が存続しますから(同25条)、A社の家具が30年以上前から販売されていたといっても、著作権が消滅していない可能性もあります。

ちなみに、ヨーロッパ諸国では、家具などの応用美術を意匠法の他、重ねて著作権法で保護する国は多く、他にドイツやフランスなども同様です。

2.我が国及び中国の著作物の概念

一方、我が国では、応用美術はもっぱら意匠法による保護を受け、原則として著作権法の保護対象に含まれません。絵画が描かれた屏風や扇子、または鑑賞に重点が置かれる飾り皿など、実用品の姿をした美術品、すなわち「美術工芸品」が、例外として著作権法によって保護を受けるのみです(著作権法2条2項)。

判決もこれを肯定しており、「著作権法上の「美術」とは、原則として、専ら鑑賞の対象となる純粋美術のみをいい、実用を兼ねた美的創作物である応用美術でありながら著作権法上保護されるのは、同法二条二項により特に美術の著作物に含まれるものとされた美術工芸品に限られるのである。」(ニーチェア事件大阪高裁 H2.2.14, 平成元年(ネ)2249号。上告審でも同高裁判決を肯定)。従って、華美な彫刻や模様が施された、美術工芸品と見なされるような家具であればともかく、工業デザインの範疇を出ない一般的な家具は、我が国では著作物になることはありません。

上記のベルヌ条約によれば応用美術の保護は各国の著作権法によることになるので、たとえイタリアで著作物として保護されるとしても、我が国は家具を著作物として保護する義務はなく、我が国における行為に限っては著作権侵害に該当しません。従って、A社の家具が応用美術に属する家具であった場合は、我が国において著作権侵害の問題とはなりません。

また、中国においても、著作権の保護対象に応用美術は含まれていません(中国著作権法3条)。従って、我が国と同様、A社の家具が応用美術に属する家具であった場合は、中国においても著作権侵害の問題とはなりません。

3.今回のケースへの適用

著作権は、一般的に著作物を複製し、複製したものを譲渡するなどの行為が該当します。今回のケースでは、家具の製造は中国で行われ、日本に輸入されため、上述のとおり、その製造行為及び輸入行為が著作権侵害となることはありません。

しかしながら、イタリアからその家具を購入できる場合はどうでしょうか。この場合は、A社の著作権が有効に存在するイタリアの領域内での販売行為となる可能性がありますから、そうなるとイタリアでの著作権侵害行為となってしまいます。

著作権に限りませんが、インターネット上で商品販売を行う場合は、国境をまたぐ売買行為になる可能性があり、我が国と異なった法律が適用される可能性がありますから気を付ける必要があります。イタリアに住む日本人から注文を受けた場合も同様ですから、イタリア人が理解するようなイタリア語や英語による販売サイトを作成していないからと言って安心できません。例え日本語でしか表示していないとしても、販売サイト上に「家具の販売先は日本国内に限る」旨を少なくとも英文で明確に表示しておく方が望ましいと思われます。

4.不正競争防止法の注意

今回のケースでは、もう一つ、不正競争防止法の観点から検討する必要があります。A社の家具が、我が国において、需要者に対して周知性をもっている場合は、不正競争防止法で禁止されている周知形態の混同惹起行為となる可能性があります(不正競争防止法2条1項1号)。不正競争防止法は、権利ではなく、ケースバイケースで適用を考える法律ですから、A社の家具の周知度や、需要者が両者を混同する可能性、さらに地域的な考慮も必要ですから、弁護士や弁理士などの専門家に相談するのが良いでしょう。

なお、不正競争防止法2条1項1号~3号の適用条件や注意点については、Q39に解説がありますので、参照ください。

本QAは特許庁委託事業「外国産業財産権侵害対策等支援事業」において作成されたものです。
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