侵Q47

当社は和風の創作家具を作成しており、このたび中国で和風製品の内覧会に出展し、中国の流通業者からいくつか引き合いをもらいました。模倣防止のため、中国や韓国での意匠出願の方法を教えて下さい。

質問

当社は和風の創作家具を国内市場用に製造販売しています。

先日、日本政府が主催する、中国で開催された和風製品の内覧会に出展する機会を得ましたが、中国の流通業者からいくつか引き合いをもらいました。意匠出願は新しい製品についてしか出願できないことは知っています。ですので、今後、新たに創作する製品について、模倣防止のため中国での意匠出願を考えたいと思います。

代理人費用を抑えたいので、直接中国特許庁に出願したいのですが、可能でしょうか。また、韓国についても同様に意匠出願を考えたいのですが、中国、韓国での意匠出願についての注意点を教えてください。

回答

1.在外者の意匠出願

中国、韓国とも、在外者(法人にあっては国内に営業所を有していない者)は、代理人によらなければ意匠登録出願の手続きを行うことはできません(中国専利法19条、韓国デザイン法で準用する韓国特許法5条)。このルールは、中国や韓国に限ったことではなく、産業財産権に関する国際条約であるパリ条約に基づくもので(同条約2条(3))、我が国も同様な規定を設けています(特許法8条)。意匠出願についても、中国、韓国は、それぞれ日本とは異なった願書や図面の記載要件を有します。

また、一旦審査がはじまれば、特許庁からの通知に対して、期限内にそれぞれの国の制度に応じた適切な対応をしなければなりません。従って、たとえ我が国で、代理人によらず意匠登録を受けた経験があったとしても、現地代理人とは密にコミュニケーションを取ることをお勧めします。

2.優先期間及び新規性喪失の例外期間

おっしゃるように、すでに公開してしまった意匠は新規性を失いますが、次の場合の例外がありますから、ご検討ください。

  • (1)優先期間

    もし、日本に意匠出願をしているのでしたら、中国及び韓国いずれも、日本の意匠出願日から6か月の優先期間を有します(パリ条約4条C(1))。たとえば、この間に冒認出願がなされたり、製品の販売や広告によって新規性を喪失しないものとして、両国で登録を得ることができます。

  • (2)新規性喪失の例外規定

    韓国においては、我が国において、意匠出願を行っていない場合であっても、新規性が失われた日から6か月以内に証明書とともに出願を行えば、新規性は喪失しないものとして扱われます(韓国デザイン法8条)。

    中国においては、同様の規定はありませんので、内覧会などで公表する前に出願する必要があります。

3.中国の意匠保護制度の特徴点(註1)

中国の意匠保護制度は、次の点で我が国の意匠制度と異なります。中国の意匠出願数は2010年の統計で42.1万件を超え(註2)、我が国の同年の意匠出願数2.8万件(註3)の実に15倍です。

  • (1)特許法で保護される。

    独立した意匠法は存在せず、「外観設計」というカテゴリーで特許(専利)法により保護されます。この点、米国と同様です。

  • (2)部分意匠制度を有さない。

    物理的に分離できない、物品の一部の保護を求めることはできません。あくまで物品全体について出願しなければなりません。

  • (3)要部の特定が要求される。

    公知意匠と比較して、本件出願意匠のどの部分が新しいかを特定する必要があります。我が国で意匠出願する際、中国への出願が決まっている場合は、優先権の同一性を確実なものとするため、予め我が国において特徴記載制度を提出しておくことが望ましいと思われます。

  • (4) 実体審査はなされない。

    方式審査は行われますが、新規性や創作非容易性などの要件についての実体審査は行われません。これらの要件は、侵害の訴えがあった場合に初めて権利の有効性として争われることとなります。

  • (5) 権利の存続期間は10年である。

    意匠が登録された場合、その意匠権の存続期間は出願日から10年です。我が国の、登録日から20年に比べると保護期間が短いことに注意をしてください。

4.韓国意匠出願の特徴点(註4)

韓国の意匠保護制度は我が国のそれと似ているため、意匠出願に準備する情報や図面は我が国と同じものを準備すれば足ります。韓国は、近年、「意匠法」の名称を「デザイン法」と改め、ヨーロッパ意匠制度と同じように、出願人に求める出願書類の基準を下げることで、ユーザーフレンドリーな意匠保護制度を目指しています。

この制度改革の効果もあって、韓国の意匠出願数は着実に伸びており、2010年の統計において5.7万件の出願数があり(註5)、同年の我が国の意匠出願数2.8万件の2倍です。

  • (1)図面の様式が大幅に緩和されている。

    以前は斜視図が必須図面として要求されていましたが、現在は要求されないどころか、全体的な形態を明確に表現する1以上の図面が求められるにすぎず、図面の様式が大幅に緩和されています。但し、権利行使を考えるとある程度の開示は必要と考えられますので、日本出願がある場合はこれを流用することが望ましいでしょう。

  • (2)「創作内容の要点」を記載する。

    意匠のうち、どの部分が創作の要点となるのかについて説明が求められます(韓国デザイン法9条2項3号)。今回のご相談の「家具」で言えば、創作の要点として、タンスの「ドア表面の凹凸」や、椅子の「背もたれ部分」といった創作の要点を特定する記載が必要となります。

  • (3)関連意匠と異なる類似意匠制度を有する。

    我が国の関連意匠制度ではなく、代わりに、我が国がかつて有していた類似意匠制度と同様な類似デザイン制度を有します(両者は権利の独立性において異なります)。但し、近々、関連意匠制度と同様な関連デザイン制度が導入されることが予告されており(同法7条)、これに伴って類似デザイン制度は廃止されます。

    なお、韓国では、我が国と同様、部分デザイン制度(同法2条1項)、組物のデザイン制度(同法12条)、秘密デザイン制度(同法13条)を有します。

  • (4)多意匠出願が認められる。

    我が国では認められていない、20デザインまでの多意匠出願が認められています(同法11条の2)。但し、互いに類似する場合に限ります。

  • (5)権利の存続期間は登録日から15年である。

    意匠が登録された場合、その意匠権の存続期間は登録日から15年です(同法40条)。やはり、我が国の意匠権の存続期間、登録日から20年と短くなっています。

  • (6)ヨーロッパのような物品の限定除外は行われていない。

    ヨーロッパでは、ロゴマークといったような物品性を要求しない二次元の意匠登録を認めていますが、韓国では物品性の除外までは行うことはできず、日本と同様に物品名の記載をしなければなりません。

  • (7)物品によっては無審査で登録されます(同法26条2項)。

    韓国は物品によって審査制度、無審査制度を使い分けていますが、無審査対象の物品は次第に拡大し、2011年11月現在で、製造食品及び嗜好品、衣服、服飾品、身の回り、かばん又は携帯用財布、履き物、衣服及び身辺用品、寝具、カーテン、家庭用保健衛生用品、慶弔用具、室内小型整理用具、教習具、筆記具、事務用具、事務用紙製品、印刷物、包装紙、包装用容器、広告用具、表示具及び商品陳列用具、電子計算機、通信機器、織物地、板など、実に多くの物品が無審査で登録されます。今回のご相談は「家具」ですので無審査制度は利用できませんが、物品によっては簡易な登録が可能です。

参考情報

本QAは特許庁委託事業「外国産業財産権侵害対策等支援事業」において作成されたものです。
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