侵Q45

当社は国内で手芸用品の製造販売を行っていますが、これから外国へも製品を輸出する予定です。外国での商標出願の方法を教えて下さい。

質問

当社は国内で手芸用品の製造販売を行っていますが、日本で当社製品を買う外国人も多く、外国の会社から輸出に関する問い合わせをよく受けています。これから外国へも製品を輸出したいと考えています。

まずは、外国で商標登録をしようと思っています。予想される市場は、中国、韓国等のアジア、米国、欧州の国々です。

どのように出願手続きを進め、権利を取得すればよいのでしょうか。効率的かつ有効な商標出願の方法を教えてください。

回答

1.海外進出する場合の注意点

海外へ進出する場合、商標の問題をクリアーしておくことは非常に重要です。

まず、以下の点についてチェックしてみてください。

  • (1)商標調査

    製品を販売しようとしている国において、すでに同一・類似の商標が取得されていると、貴社の製品を販売することができません。まず、商標の調査をされることをお勧めします。海外での商標調査については、Q36をご参照ください。

  • (2)商標登録出願の要否

    製品販売予定国においては基本的に商標登録の取得が不可欠です。また、製品を製造するだけの国においても商標登録を取得することをお勧めします。

    商標登録には1年から長くて3,4年以上の時間を要する場合もありますので、海外進出の計画があるならば、できる限り早く商標出願されるべきです。

    その商標が重要な商標であり、費用に余裕があるならば、現在は販売予定のない国にまで範囲を広げて商標登録されることが、海外戦略上望ましいとされています。

    なぜならば、外国において第三者に商標を登録されてしまってその国への進出が難しくなるという話をよく聞きますし、上述のとおり商標登録には時間がかかるからです。

    また、貴社が製品を販売していなくとも、模倣品が出回るということはあり得ます。その際に、商標登録があれば対応できることも多いからです。

  • (3)代理店との関係

    すでに当該国での代理店が決まっている場合には、商標権の取得、商標の使用について代理店との間できちんと契約されることが必要です。

    代理店との間では商標に関する問題が起こりやすく、代理店によって先に登録を取得されてしまうというような事例がよく見られます。代理店が商標出願、登録をしている場合には、ほとんどの国でその出願、登録の名義を貴社へ変更するよう要求することができます。もし代理店が貴社の要求に従わない場合には、出願に対する異議申立て、登録取消の請求等が可能であると思われます。

2.出願のルート

  • (1)各国出願

    各国の代理人に出願を依頼して出願する方法です。多くの国では、外国人が出願する場合には当該国の代理人を通して出願することを要求しています。

    国によっては、代理人への委任状が必要となります。委任状に公証や領事認証を要求する国もあります。このような手続的事項については代理人に問い合わせを行ってください。日本国内の専門家を通じて外国の代理人へ依頼するとスムースに出願できるかもしれません。

    ご参考までに、出願(1商標1区分)にかかる費用(現地代理人分のみ)の概算は

    • 米国 約USD900-1100
    • 中国 約USD500
    • 韓国 約USD500
    • 台湾 約USD500
    • シンガポール 約USD700
    • 香港 約USD700

    となっています。代理人によって費用が異なりますので、事前に見積もりを取られることをお勧めします。

  • (2)複数国にまたがる出願

    ベネルクス3国(オランダ、ベルギー、ルクセンブルグ)においては、ベネルクス商標出願をすることにより、3カ国にまたがる権利を得ることができます。

    また、欧州共同体では、欧州共同体商標意匠庁(OHIM)に共同体商標(CTM)の出願をすることによって、共同体に加盟するすべての国をカバーする権利を得ることができます。

  • (3)国際登録出願

    複数の国に同じ商標を出願する場合には、国際登録出願として出願することができます。これは、マドリッド協定議定書に基づく出願方式で、マドリッドプロトコル(マドプロ)出願とも言われます。

    国際登録出願の概要については特許庁のウェブサイトを参照してください。

    http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/seido/s_shouhyou/mado.htm

    国際登録出願を利用することにより、多くの国に同時に出願でき、かつ、費用は各国出願の場合と比べて抑えることが可能です。また、登録から10年後の更新の手続きも簡易になります。しかし、現時点では加盟国がまだ限られており、東南アジアではシンガポール、ベトナムしか加盟していません(今後加盟国は増加する予定であり、タイ、マレーシア等が加入を検討中です)。加盟国については特許庁のウェブサイトをご参照ください。

    http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/tetuzuki/t_shouhyou/kokusai/madopro_kamei.htm

    国際登録出願ルートを採択した場合、各国においては代理人の選定をすることなく商標が登録となることもあります。そのような場合に国際事務局(世界知的所有権機関:WIPO)や各国官庁との連絡において行き違いが生じることも全くないとは言えませんので、出願人の側での注意が必要です。

3.各国の事情

  • (1)使用が要件となる国

    米国においては、一定の場合を除き、登録獲得までに当該商標を米国で使用している事実を証明しなければなりません。カナダ、フィリピンにおいても使用の宣誓書提出が原則として登録の要件となります。このような国では、実際に商標を使用する必要があります。

  • (2)権利の維持

    商標が登録された後、一定期間内に商標を使用していない場合には、不使用取消審判によって登録が取り消されることがあります。また、米国、フィリピンにおいては登録後一定期間内に商標を使用していた事実を証明しなければなりません。

    http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/seido/s_shouhyou/mado.htmよって、商標登録を獲得したら、できる限りその国で商標を使用するようにすることが重要です。

  • (3)その他

    国によって独自の制度があります。たとえば、ベトナムでは日本文字の商標には識別力がないと判断されます。また、中国、ベトナム等では指定商品の数によって印紙代が変わります。ミャンマーにはまだ商標法がなく、新聞で告知することによって商標の所有者であることを確認しています。

4.出願して拒絶された場合、異議申立を受けた場合の対応

出願後、何らかの理由で当局から拒絶理由を受けることもあるかもしれません。指定商品・役務の記載の方法や出願商標の翻訳・音訳等についての拒絶理由であれば代理人を通じて比較的容易に回答できると思います。

しかし、自他商品・役務識別力がないとの拒絶理由や、他人の先行商標を引用されての拒絶理由については、対応策に工夫が必要です。代理人と相談のうえ、対応されることをお勧めします。

異議申立を受ける場合もあるかもしれませんが、この場合にも、争う、相手方と交渉する等の対応があり得ますので、代理人と相談の上、対応方法を選択してください。

参考情報

本QAは特許庁委託事業「外国産業財産権侵害対策等支援事業」において作成されたものです。
事業内容、免責事項等は本事業サイト(http://www.iprsupport-jpo.go.jp/)をご確認下さい。