侵Q41

中国で電子部品を製造していますが、その電子部品が中国の実用新案権を侵害するとの警告状を中国企業から受けました。調べてみますと、日本と同様に実用新案権は無審査で登録されるようです。中国の実用新案権に対してどのように対応していけばよいのでしょうか。

質問

これまで日本でカメラの電子部品を製造していましたが、中国工場を立ち上げ中国で電子部品を製造し始めました。特許侵害がないように電子部品に関する特許権は適宜調査していました。しかしながら、中国企業から、当社の電子部品が実用新案権を侵害するとの警告状を突然受けました。中国では実用新案権は無審査で登録になると聞いていましたし、実用新案権の登録件数が多いため調査できていませんでした。中国の実用新案権に対して、わが社はどのように対応していけばよいのでしょうか。

回答

JETROの統計(註1)によりますと、2007年から2010年までの実用新案専利の出願件数と発明専利の出願件数は以下のようになっています。

  実用新案専利(件数) 発明専利(件数)
2007年 181,324 245,161
2008年 225,586 289,838
2009年 310,771 314,573
2010年 409,836 391,177

上記表に示されるように、2010年から実用新案専利の出願件数が発明専利の出願件数を上回っています。実用新案専利の出願人は約99%が中国出願人ですので、中国出願人は実用新案専利の出願に力を注いでいることがうかがえます。

実用新案専利と発明専利との制度的な違いは、次の通りです。

中国の実用新案専利の保護客体は「実用新案とは、製品の形状、構造又はその結合に対して行われ、実用に適した新たな技術方案を指す」(専利法第2条第3項)と規定され、方法や材料自体も保護客体とする発明専利とは違います。この点は、日本とほぼ同様です。

また、実用新案専利は、予備審査(方式審査)のみが行われ、却下する理由がなければ無審査(専利法第40条)で登録されます。実体審査される発明専利とは違います。この点は、日本と同様です。

更に、実用新案専利に対する出願料及び登録料が、発明専利と比べて若干安くなっている点も、日本と同様です。また、実用新案専利の存続期間が10年で、発明専利の存続期間も20年である点も、日本と同様です。

それでも、中国で、実用新案専利の出願が発明専利の出願より多くなっている理由を考えてみますと、以下の点が挙げられます。

まず第1に、実用新案専利は、発明専利と比べて、無効になる可能性が低いことが挙げられます。

実用新案専利は無審査で登録されているにもかかわらず、無効率が発明専利と比べてほぼ同じです(註1)。 無効理由の条項自体は、日本とほぼ同様です。しかし、審判基準(審査指南 第4部分第6章第4節)では、実用新案専利は、発明専利よりも進歩性における引用文献の組み合わせに制限があります。具体的には次の2点です。

① 技術分野に関しては、発明専利が、発明専利の属する技術分野のみならず、関連する技術分野、及び当該発明により解決されたい技術的課題で、その分野の技術者が技術的手段を探り出すこととなる他の技術分野が考慮されるのに対して、実用新案専利は、実用新案専利の属する技術分野のみを考慮することになっています。

また、② 組み合わせる引用文献の数も、発明専利が多数引用できるのに対して、実用新案専利は、原則、1又は2の引用文献しか引用できません。つまり、実用新案専利は、無審査であるにもかかわらず、無効になる可能性が低いです。

第2に、実用新案専利は、発明専利とほぼ同様な権利行使ができる点です。

日本の実用新案法では、権利行使の際には、技術評価書を提示して警告しなければなりませんし、権利行使に際して高度な注意義務が課されています(実用新案法第29条の2、同法第29条の3)。

一方、中国では、権利行使に際して、実用新案専利に関して専利権評価報告(日本の技術評価書とほぼ同等な内容)の提示が必要ありません。中国専利法の第三次改正によって2009年10月から、権利者は専利権評価報告を特許庁に対して請求できるようになりました。しかし、人民法院又は専利行政管理部門が訴訟を中止するか否かのために、専利権評価報告の提出が必要になるにすぎません。

第3に、実用新案専利だからといって、損害賠償額が発明専利と比べて低くなることはありません(2006年温民三初字第135号 正泰vsシュナイダー事件)。

以上説明したように、日本の実用新案権に比べて、中国の実用新案専利は、取得しやすく、また権利行使しやすい環境になっています。そのため、貴社は、今まで以上に中国の実用新案専利を重要視していかなくてはならないと思います。

今回の中国企業からの警告に対しては、権利の有効性を確認するために専利権評価報告を送ってほしい等を回答してください。上述したように、専利権評価報告は警告する際に必ずしも必要ないですが、その回答があるまでに、貴社の電子部品が、実用新案専利を侵害しているか、実用新案専利に無効理由があるか等の検討時間を確保できます。

さて、貴社は、実用新案専利に対して調査していないようですが、今後、実用新案専利で警告されないようにするためにも、実用新案専利に対しても調査すべきと考えます。国家知識産権局のウェブサイトの専利検索(註3)又はCNIPR(中国知的産権網)のウェブサイト(註4)で実用新案専利を調査することができます。また、特許電子図書館(IPDL)でも、実用新案専利の番号を入れれば、機械翻訳された要約書を見ることができます。(註5)

参考情報

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