侵Q39

ネット上で当社の製造販売している製品と全く同じ商品が販売されているのを発見しました。デッドコピーといってもよい商品です。
しかしながら、当社は同製品について意匠登録をしておりません。著作権、不正競争防止法など、他の法律を使って、販売を中止させることができないでしょうか 。

質問

当社は、ファンシーグッズ系の文房具を製造販売するメーカーです。

ネット上のマーケットを検索してみたところ、当社が製造販売するハサミとほぼ同一のハサミが販売されているのを見かけました。当該製品であるハサミは、従来の機能一辺倒のハサミとは一線を画した、極めて個性的なもので、評判もよく売り上げもかなりの額にのぼります。オリジナルのキャラクターも付いています。侵害製品のハサミは、当社のハサミを参考にしているのは明らかで、形状のみならず類似のキャラクターもついています。

しかしながら、意匠登録出願を全く失念しており、意匠権を有していません。意匠権は世の中に発表して半年以上経つと取得できないと聞いています。

それならば、著作権法や不正競争防止法など、他の法律を用いて、この侵害品の販売を中止させることはできないでしょうか。

回答

1.意匠出願

参考に、意匠出願ができる期限について説明します。

お話にあるように、新規性喪失の例外規定を申請すれば、新規性を失っても6か月以内の出願することができます(意匠法4条)。学会発表や博覧会展示などに限定される特許法の新規性喪失の例外規定と異なり、意匠法のこの規定は「意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因した」すべてを対象にしていますので、発売後、売上が好調であるような製品の保護に、積極的に利用することをお勧めします。

もちろん、意匠出願は意匠にかかる製品を世の中に発表する前に出願することが望ましいのですが、このように新規性を失っても6か月以内であれば出願することができますので、製品が思いのほかヒットした場合なども意匠登録による保護が可能ですから、意匠登録もヒット商品の保護手段の一つとして頭においていてください。

なお、新規性を失うのは、製品の販売開始という事実以外に、新聞や自社ホームページへの掲載などという事実も含まれ、この日が6か月の起算日になることに注意してください。弁理士や弁護士に出願の代理を依頼するときには、最先の公表日の情報を正確に知らせるようにしてください。

2.著作権法による保護の可能性

以下、著作権法による模様を含めた製品の形の保護、および製品に付されたキャラクターの絵柄について、保護の可能性を説明します。

  • ①製品の形態
      美術工芸品については、意匠法のみならず著作権法によっても保護されますから(著作権法2条2項)、この分野に属する製品は意匠登録を失念しても著作権で保護される可能性がないわけではありません。
     しかしながら、美術工芸品とは、お皿や屏風といった実用品に美術を施した、鑑賞の対象となるものを指し、今回のように使用者の使い勝手や嗜好を考えてデザインされているハサミのような実用品は、鑑賞の対象であると判断することは難しいと思われます。従って、ご相談のケースでは、著作権によって貴社製品を保護することは難しいと言えます。
  • ②キャラクターの絵柄
     ファンシーグッズにオリジナルなキャラクターが付されている場合は、その絵柄は著作物として保護される可能性はあります。ただ、著作物となるにはオリジナルな創作であることが求められますから(著作権法2条1項1号)、ありふれた、例えば擬人化した動物などの絵柄は保護が認められない場合も多いと思われます。また、認められたとしてもその権利範囲は極めて狭いと考えられ(例えば「ケロケロケロッピ事件」註1)、相手方が絵柄をそのまま使用している場合はともかく、モチーフが同一、似たような雰囲気の絵柄、といった程度では、著作権を行使することは難しいと思われます。
     キャラクターの絵柄は、下記の通り商標として保護することもできますので、検討することもよいでしょう。

3.不正競争防止法による保護

一口に不正競争防止法といっても、不正競争行為の態様は2条1項1号から15号まで独立した状態で規定されています。これら不正競争行為のうち、製品の形態保護に関する規定は1号から3号の規定です。このうち、2号はブランド品のようなきわめて高い著名性が要求される規定で、今回のファンシーグッズのような実用品の形態に適用するのは難しいと考えられますので、1号及び3号に基づく保護を説明します。

  • (1)不正競争防止法2条1項3号(デッドコピー規制)の可能性
    相手方製品が、貴社製品のデッドコピーに近い模倣品であれば、不正競争防止法2条1項3号の規定の保護を受けることができます。ただし、次の条件があります。
    • ①相手方製品が商品の形態を模倣していること(同規定本文)。
    • ②同製品を譲渡等すること(同規定本文)。
    • ③当該商品の機能を確保するために不可欠な形態ではないこと(同規定カッコ書き)。
    • ④日本国内において最初に販売された日から起算して3年を経過していないこと(不正競争防止法19条1項5号ロ)。
    貴社のハサミと模倣品が上記関係に該当した場合は、模倣品の販売、輸入などの差止めおよび損害賠償を請求することができます。また、この輸入行為は関税法により、輸入差止めの対象となります(関税法69条1項4号)。
  • (2)同法2条1項1号(周知表示混同惹起行為による規制)の可能性
    貴社製品が需要者の間で周知となっている場合は、不正競争防止法2条1項1号の保護を受けることができます。条件は次の通りです。
    • ①貴社製品の商品形態が需要者に広く認識されていること(同規定)。
    • ②貴社製品の商品形態と同一、類似の商品形態を有していること(同規定)。
    • ③貴社製品と相手方製品が混同を生じさせること(同規定)。
    • ④同製品を譲渡等すること(同規定)。
    これら条件に該当すれば、上記デッドコピー行為の排除と同じように、販売、輸入の差止めや損害賠償を請求することができます。

    この規定による保護は、貴社製品の周知性を要求され、かつ需要者の混同を問題にしますから、相手方製品と貴社製品との比較のみを要件とする上記したデッドコピー規制の規定よりハードルが高いということができます。なお、周知とは一定の顧客層、すなわちファンシーグッズの購買層において周知であればよいと考えられ、また、混同については、必ずしも実際に混同が生じた証拠を示す必要はなく、「混同のおそれ」があれば足りると解されています。
  • (3)参考
    なお、2号に規定する著名表示冒用行為の規制を含めて、これら不正競争防止法による形態保護の比較表を示しておきます。
      対象行為 自己製品に
    求められる条件
    相手製品に
    求められる条件
    保護期間

    周知行為混同
    惹起行為
    周知であること 同一・類似で
    あること。
    混同が生じること。
    制限なし

    著名表示
    冒用行為
    著名であること 同一・類似で
    あること。
    制限なし

    デッドコピー
    行為
    機能を得るために
    不可欠の形態でないこと
    模倣して
    いること。
    最初の国内
    販売から3年

    上記表から、適用ハードルは3号、1号、2号の順で低いことがわかりますが、逆に適用が容易な3号のデッドコピー行為規制は保護期間が最初の国内販売から3年と有限であることに注意しましょう。

4.商標法による保護

ご相談の製品に付されているキャラクターの絵柄が重要な場合は、商標登録を行うことができます。文字やマークのみならず、キャラクターの絵柄を商標登録することができます。実際に、「ハローキティ」、「たれぱんだ」、「ひこにゃん」など、有名なキャラクターは商標登録が行われています。商標は意匠のように新規性を要求されませんから、たとえすでに商品が市場で販売されどれほどの時間が経っていようとも、そのことが登録の障害になることはありません。もし、キャラクターの絵柄をシリーズとして使うなどといった場合は、絵柄について商標登録を行うことをお勧めいたします。

参考情報
  • (註1)「ケロケロケロッピ事件」東京高判 H13.1.23 平成12(ネ)4735
    「前述したとおり、カエルを擬人化するという手法が広く知られた事柄であることは明らかであり、カエルを擬人化する場合に、顔、目玉、胴体、手足によって構成されることになることも自明である。そして、本件著作物の基本的な表現に着目してみる限り、前述のとおり、それは、通常予想されるありふれた表現といい得る範囲に属するものであるから、これ自体を保護に値するキャラクターの構成要素とすることはできず、細部の表現によって構成されるところから抽象化されるものを本件著作物のキャラクターと把握する場合には、被控訴人図柄を同一のキャラクターの具体化とみることができない。」として、キャラクターの絵柄の著作権について、狭い権利範囲しか認めなかった。

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