侵Q35

当社は新製品の商標を検討しています。
念のため特許庁の電子図書館で検索したところ、他人の先行商標がありました。
このまま新しい商標を使用してもよいでしょうか。

質問

当社はバケツの製造・販売を行っています。新製品の商標として「湖水物語」を採択しようということになったので、念のため、特許電子図書館で検索しました。

すると、他人の先行商標として、「湖水」第14類(指定商品:時計)、「湖水物語」第18類(指定商品:かばん)、「こうすい」第21類(指定商品:食器類,清掃用具及び洗濯用具)を発見しました。

他人の商標権を侵害することが心配ですが、このまま「湖水物語」の使用を開始しても大丈夫でしょうか。

回答

1.商標権の侵害

他人の商標登録にかかる商標と同一又は類似の商標を、その登録にかかる商品又は役務と同一・類似の商品又は役務に使用した場合、当該他人の商標権を侵害することとなります。

つまり、商標が類似しても商品役務が類似しなければ権利侵害にはなりませんし、 商品役務が類似しても商標が類似しなければ、権利侵害にはなりません。

(商標・商品/役務の類似・非類似と侵害の関係)

商標類似
商標非類似
商品・役務類似
侵害
非侵害
商品・役務非類似
非侵害
非侵害

2.商品・役務の区分、類似

商品役務の類似はどのように判断されるのでしょうか。

特許庁は、商品役務の類似関係についてのガイドライン(類似商品・役務審査基準)を定めています。

このガイドラインに基づいて、同じ分類(類似群)に属する商品役務は類似するものであると判断されます。

区分が同じでも、類似群が異なる商品役務は類似しません。但し、例外的に、備考類似という関係があり、この関係にある商品役務は類似すると推定されることになります。たとえば、トマトジュース(第32類)と調理用野菜ジュース(第29類)とは備考類似の関係となります。

貴社が発見された先行商標「湖水」第14類(指定商品:時計)及び「湖水物語」第18類(指定商品:かばん)は、いずれも指定商品が、貴社の商品「バケツ」と類似しませんので、貴社が「湖水物語」を「バケツ」に使用されても商標権侵害の問題は生じないと考えられます。

3.商標の類似

次に、商標の類似の判断は、「外観、称呼、観念」の3つの視点から判断されます。

外観が類似すると判断された商標の例として以下のようなものがあります。

外観が類似すると判断された商標の例

称呼は、商標の類否判断においてもっとも重要視されます。

たとえば、「フェニックス」と「フェリックス」とは通常類似と判断されます。

観念の類似は、各商標から生じる観念が類似している場合で、例えば「午後の紅茶」と「Afternoon Tea」とが類似と判断された例があります。

これらの観点から、貴社が発見された商標を見直しますと、「湖水」は「湖水物語」とは称呼(音)も観念も異なっていますので非類似といえます。また、「こうすい」も「湖水物語」とは称呼が異なる非類似の商標です。

従って、発見された商標中、貴社商標に類似するものは「湖水物語」(第18類 かばん)のみとなります。しかし、これも、商品が異なるため、権利侵害の問題は起こらないと考えられます。

従って、特許電子図書館による検索の結果は、明らかに問題となる他人の登録商標は発見されなかったということになります。しかし、特許電子図書館による検索は範囲が限られているため、できれば、弁理士・弁護士等の専門家に相談し、商標「湖水物語」を「バケツ」に使用しても大丈夫かどうか確認することをお勧めします。

たとえば、商品「おもちゃ」について調査する場合、第28類で調査しますが、それだけでは不十分です。「おもちゃ」は第9類の「家庭用テレビゲーム機用プログラム等」にも類似するからです。

類似群が類似の範囲を確定するものですから、類似群に基づいて調査することが必要です。しかし、さらに類似群の範囲を超えて類似関係が認められる場合(備考類似)もありますので、注意しなければなりません。

一方で、簡便な方法で検索ができる初心者検索というページもあります。

4.その他

もし、事前の商標調査において商標・商品役務)ともに類似する他人の先登録商標が発見され、その権利が有効に存続している場合に、どうしてもその商標の使用を希望するならば、他人の登録を不使用取消審判により取り消すことも可能です。

不使用取消審判を検討される際には、事前に、当該商標が使用されているかどうかの調査をされることをお勧めします。もし、使用されていなければ、登録を取り消すことができるかもしれません。しかし、継続して3年以上使用されていないこと、ライセンシーによっても使用されていないこと、等の要件がありますので、不使用取消審判の請求を希望する場合には、弁理士・弁護士と相談されることをお勧めします。

さらに、調査をして商標が登録可能性ありとなった場合には、なるべく早く出願するべきです。第三者が先に出願してしまうこともあるからです。

出願する場合には、実際に使用する予定の商品を確実に指定し、その上で少し広めに商品を指定することをお勧めします。たとえば、「バケツ」について商標を使用する場合には、「バケツ」の上位概念である「清掃用具及び掃除用具」とされてもよいかと思います。

出願においては、1区分で8類似群以上を指定すると拒絶理由の対象となります。

1区分の範囲であれば、7類似群以内で複数の商品を指定しても費用は変わりません。

参考情報

本QAは特許庁委託事業「外国産業財産権侵害対策等支援事業」において作成されたものです。
事業内容、免責事項等は本事業サイト(http://www.iprsupport-jpo.go.jp/)をご確認下さい。