ネット上で販売したパンの商標が他人の登録商標に類似しているということで警告を受けました。
直ちに商標の使用を中止し、過去の販売実績を報告したところ、損害賠償を求められました。
どのように対応すべきでしょうか。

質問

当社は、ネット上で数種のパンを販売しています。

そのうちの一種類のパンの商標が他人の登録商標と類似しているということで警告を受け、使用を中止するように要求されたので、直ちに問題の商標の使用を中止しました。さらに、過去のその種のパンの販売実績について報告を求められたので、伝えたところ、商標権を侵害したことの対価として50万円を請求されました。

パンの販売数は6ヶ月で10,000袋、1袋800円です。

どのように対応したらよいでしょうか。

回答

1.賠償額の算定方法

商標法第38条は、権利侵害による損害の額について次のように定めています。

  • 第38条 商標権者又は専用使用権者が故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した商品を譲渡したときは、その譲渡した商品の数量(以下この項において「譲渡数量」という。)に、商標権者又は専用使用権者がその侵害の行為がなければ販売することができた商品の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、商標権者又は専用使用権者の使用の能力に応じた額を超えない限度において、商標権者又は専用使用権者が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を商標権者又は専用使用権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。
  • 2 商標権者又は専用使用権者が故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、商標権者又は専用使用権者が受けた損害の額と推定する。
  • 3 商標権者又は専用使用権者は、故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対し、その登録商標の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。
  • 4 前項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、商標権又は専用使用権を侵害した者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。

上記第1項によれば、損害の額は①「侵害者が販売した商品の数量X侵害行為がなければ商標権者等が販売することができた商品の単位数量あたりの利益」とすることができます。

上記第2項によれば、②「侵害者がその侵害行為によって受けた利益の額=損害額」と推定することができます。

また、上記第3項によれば、商標権者等は、③いわゆる「ライセンス料相当額」を損害の額として請求することができます。

つまり、損害額の認定に当たっては、上記①②③のいずれかの算式で計算することとなります。

しかし、①の場合、侵害行為がなかった場合に商標権者等が自己の商品を販売できたかどうかが問題となることがあります。

②においては、侵害者が受けた利益の額の算定にあたって問題が生じることがあります。

③の場合、ライセンス料としてどの程度が妥当か(例えば販売総額の2~10%程度)という点で論争になる可能性があります。

2.交渉

実際には、上記①②③のどの算定方式を採用するのか、又、その算定の数式にあてはめる数字(たとえばライセンス料の率)をどうするのかについて両者で話し合う必要があります。

3.対価の計算方法

もし、商標権者の販売するパンの利益額(売り上げから経費を差し引いた額)が1袋あたり300円だとすると、上記①によれば侵害の額は300万円となります。

次に、貴社がパンの販売によって得た利益が全部で250万円だとすると、上記②によれば損害の額は250万円となります。

また、貴社の販売額は800円×10,000袋で800万円となりますから、たとえばライセンス料の率を5%とすると損害の額は40万円となります。

このように、損害の額は計算方法により変わりますし、具体的な事情(商標権者の販売するパンと貴社のパンとが市場において競合しているか否か等)によっても異なります。

実際の損害賠償額は、様々な事情を考慮して弁理士・弁護士等の専門家と相談のうえ、当事者同士で話し合って決定するべきです。また、日本知的財産仲裁センターに調停を申し立てることもできます(仲裁センターへの申立て費用は5万円)。

参考情報

本QAは特許庁委託事業「外国産業財産権侵害対策等支援事業」において作成されたものです。
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