侵Q28

日本でヒットした商品を中国でも販売しています。外観に特徴がある商品ですが、しばらくすると現地で外観を完全にコピーした商品が発売されているのを発見しました。なんらかの対処方法はあるしょうか。

質問

当社はファンシーグッズの企画販売を行う会社です。数年前より日本で斬新なデザインを取り入れたバッグやポーチなどの販売を始めましたが、雑誌での紹介もあり、国内市場ではヒット商品となりました。製造は中国において委託しています。現地の製造会社の紹介もあり、中国の現地市場での販売を試みましたが、しばらくすると現地で外観が同一のコピー商品が発売されてしまい、売り上げは芳しくありません。コピー商品には社名は使われていませんが、ブランド名に極めて類似する名前が付けられています。残念ながら当社は、中国においてはブランド名の商標登録や商品外観の意匠登録をしていません。しかしながら、この行為は明らかに我々の商品のデザイン価値にタダ乗りしているものであり、なんらか抗議したいと思うのですが、いかがでしょうか。

回答

1.不正競争防止法の適用可能性

中国にも我が国の不正競争防止法に該当する「反不正当競争法」が存在します。しかしながら、同法が商品について規制する行為は次のものです(同法第5条)。

    • (1)他人の登録商標を虚偽表示すること
      (2)周知商品特有の名称、包装、装飾を権利者の同意を得ずして使用し、または周知商品と混同させ、顧客にその周知商品と誤認させること
      (3)権利者の許諾を得ずに他人の企業名称又は姓名を無断で使用し、他人の商品と誤認させること

  • このように、中国の不正競争防止法には、我が国や韓国の不正競争防止法が有するような「外観のデッドコピー行為規制」に関する規定は存在していません。したがって、単純に外観をコピーした、という行為だけでは違法行為として排除されません。

    2.適用条件の確認

    今回のケースが上記行為(1)乃至(3)のいずれかに該当するかを考えてみましょう。

    上記(1)について、今回の相談ケースではブランド名を商標登録していないとのことですから同規制行為に該当しません。

    上記(2)について、商品が特徴的な外観を有するのであれば「商品特有の装飾」に該当する可能性があります。しかしながら、この規定が適用される第一のハードルとして、その商品が市場において周知かどうかが問われます。単に、他の商標と区別されるというだけではなく、市場において購買者に広く認識されていることが必要です。次に、第二のハードルとして、もし市場においてその商品が周知であったとしても、貴社の商品特有の装飾として周知なのか、ということが問題とされます。我が国の不正競争防止法が規制する周知商品等表示の混同惹起行為も同じですが、問題となるのは「誰が最初に市場に投入したか」ではなく、「その商品が市場において特定者の商品として周知となっているか」ということであり、たとえその商品外観が市場で周知なものとなっていても、同時期に複数の業者から同じような外観の商品が販売されているとしたら「流行」の類と判断されてしまい、この要件に該当しないことになります。

    上記(3)について、もし、ブランド名と会社名が同じであれば、たとえ会社名を商標登録していないとしてもこの規定を適用できる可能性があります。

    このように(2)及び(3)の視点に立ってデッドコピー商品を検討し、これら不正競争行為に該当するのであれば、商標権侵害と同じく、それぞれの地方の工商行政管理局に現地の弁護士を介して行政処分を依頼することができます(詳しい手続きについては、侵Q12の回答3を参照ください)。

    3.商品外観をデッドコピーされないための対策

    商標を真似ることは偽物を購入する購買者の不利益になりますから、中国においても社会的な要請としてこれを排除する規定は存在します。しかしながら、上述したように中国の不正競争防止法では、商品外観に関するデッドコピー行為が規制されていないため、意匠登録を取得しないと、誰でもが利用してよいと判断される危険性をはらんでいます。上述のように、保護される可能性が全くないとはいえませんが、「外観が似ていたので需要者がA社と思って購入したらB社のものであった」というような誤認に基づく需要者の不利益が生じない限り、不正競争防止法の保護を受けることは難しいといえます。不正競争防止法に基づいて外観の模倣行為を規制することは、上記のようなハードルが存在し、またそれを立証する多大な労力を必要とします。

    したがって、もし、その商品外観が中国市場において十分に魅力的であって、一定期間、デッドコピーを排除したいと考えるのでしたら、意匠登録を行う必要があります。中国における登録意匠の保護期間は出願日から10年で我が国より短く設定されていますが、不正競争防止法における保護が期待できない以上、重要な商品外観であれば意匠登録をすることをお勧めします。

    4.日本に輸入された場合の対応策

    なお、中国でのデッドコピー品が、我が国に輸入される可能性もあります。我が国にデッドコピー品が輸入された場合は、不正競争防止法2条1項3号に規定するデッドコピー規制を使って税関で差し止めを行うことができます(関税法69条の2)。

    しかしながら、意匠権と違なり、特許庁の審査を経ていない商業上の保護利益であるため、経済産業大臣の意見書を求めて、それを添付しなければ輸入差止めの申立てをできないなど、意匠権に比べるとそれを利用するための作業は複雑になっています。今回の相談の場合、中国に製造を委託しているとのことですが、経済産業大臣の意見書を求める際にはその形態が自らが創作し、企画に基づいた商品形態であることを立証しなければなりませんから、輸入差止の申立人が中国製の商品を輸入しているに過ぎないと認定されるような場合には、同法に基づく輸入差し止めが認められることは難しいでしょう。

    また、不正競争防止法2条1項3号は、外観に同一性のあるデッドコピー品が規制対象であり、その保護期間は販売開始より3年間しかありません。これに対して、意匠登録を受けた場合は、意匠権は類似範囲にまでおよび、かつ登録から20年の保護期間が認められます。それがいかに資金と労力をかけて決まったデザインであろうとも、コピーすることは簡単です。同一または類似の商品が、いつ100円ショップで販売されるかもしれません。重要な商品については、意匠登録しておくことが重要だと思われます。

    参考情報

    「中国知的財産管理実務ハンドブック」(中央経済社)
    「模倣対策マニュアル・中国編」(日本貿易振興機構 経済分析部)

    本QAは特許庁委託事業「外国産業財産権侵害対策等支援事業」において作成されたものです。
    事業内容、免責事項等は本事業サイト(http://www.iprsupport-jpo.go.jp/)をご確認下さい。