侵Q27

意匠登録してある当社の製品を模倣したものを、部品として組み込んだ完成品が輸入されています。意匠権の侵害として対処できないでしょうか。

質問

当社はメガネフレームを製造しており、斬新なものが完成したため、意匠登録を行っています。しかしながら、最近、中国においてメガネフレームが模倣され、このメガネフレームにレンズではなく遮光板をはめ込んだサングラスとして、輸入されていることが判明しました。メガネフレームの意匠権を使って、この輸入品のサングラスを権利侵害として訴えることはできないでしょうか。

回答

1.部品の意匠とその部品を使った完成品の関係

部品に意匠権がある場合、その部品を使用した完成品は利用関係が成立しており、完成品についての意匠を実施することは、部品の意匠権を侵害することとなります。今回のようにサングラスという完成品を輸入することも、メガネフレームの登録意匠の実施とみなされますので、意匠権を行使することができます。

したがって、具体的には、税関での輸入差止めや訴訟を前提に、輸入元に対して意匠権侵害の警告書を発することができます。

2.意匠権の侵害が成立する3態様

意匠権の侵害は、一般に、次の3つの態様で発生します。

  • (1)直接侵害
    相手方が、登録意匠と同一である場合、または類似の範囲に属する意匠を実施している場合です(意匠法23条)。その製品が登録意匠と同一もしくは類似する場合とは、物品と形態が同一・類似で、形態も同一・類似となる場合です。例えば、コップとマグカップは類似物品ですが、コップと花瓶は非類似物品です。登録意匠がコップであった場合、相手方製品がその形態に類似したマグカップの場合は意匠権の侵害となりますが、相手方製品が花瓶であった場合はたとえ形がどんなに似ていても意匠が類似することにならず、意匠権の侵害とはなりません。
  • (2)間接侵害
    相手方が、登録意匠又はこれに類似する意匠に係る物品の製造にのみ用いる物(「のみ品」といいます)を実施する場合(意匠法38条1項)、及び直接侵害品を業として譲渡・貸与・輸出のために所持する場合です(同2項)。前者のいわゆる「のみ品」に該当する例として、金型の製造・販売等、組み立てキットの製造・販売等、意匠の要部となる部品の製造・販売等、侵害品の設計図などのCADデータなどがこれに該当します。
  • (3)利用関係
    今回相談のケースのように、一方(完成品)を実施することとなると、他方(部品)を実施することとなり、その反対は成立しない関係を利用関係といいます。上記直接侵害では物品が異なって侵害が成立しない場合でも、この関係を適用することにより侵害が成立する場合があります。典型的には、今回のご相談のようにメガネフレームとサングラスといったような「部品と完成品」の関係のほか、スプーンと一組のスプーン・ナイフ・フォークといったような「構成物品と組物」の関係、マグカップの把手部分とマグカップといったような「部分意匠と全体意匠」にも適用があります。
    全体の製品の意匠登録を得ると、余分に権利範囲を限定してしまう可能性がありますので、利用関係を考慮して、部品・構成物品・部分といったより限定の少ない形での意匠登録出願を考慮することも重要であると思われます。

3.注意点

今回の場合は、利用関係を適用することができますが、たとえ登録意匠を組み込んだ製品であっても意匠の特徴部分(いわゆる要部)が露出しない態様で組み込まれている場合は、その登録意匠の意匠権を侵害するものではないとする次の判決例が存在します。

「減速機付きモーター事件」(東京地判H15.1.31)において、裁判所は、本件登録意匠に係る物品は減速機であるのに対し、被告製品は減速機部分にモーター部分を連結して一個の物品となした減速機付きモーターであるから、両者は物品が異なり、被告製品の意匠は本件登録意匠と同一又は類似であるということはできない、と判示し、また、利用関係による意匠権の侵害についても、前記認定に係る本件登録意匠の要部は、被告製品の意匠においては外部から認識できないから利用関係が存すると認めることはできず、したがって、利用関係による意匠権の侵害も認められない、と判示しました。

部品として意匠登録した場合は、その要部が流通時において外に現れない場合は、権利行使できない場合がありますので注意が必要です。

本QAは特許庁委託事業「外国産業財産権侵害対策等支援事業」において作成されたものです。
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