侵Q26

中国で製造販売している自己の製品が、並行輸入品として日本に輸入されてしまっています。この並行輸入は止められないのでしょうか。

質問

当社は幼児用玩具を製造する中小メーカーです。こちらで企画した玩具について、香港の協力会社に製造を委託していますが、この協力会社には同じ製品を当社のライセンスの下に販売していることを表示することを条件に、中国市場で販売することを許可しています。

しかしながら、最近、香港の協力会社が中国において販売した製品が、別の日本の会社により我が国に輸入されており、価格が当社正規品に比べて安いことから、正規品の販売に影響が出かねない状態となっています。日本では意匠登録を得ているのですが、この意匠権を使って、この並行輸入品を差し止めることはできないでしょうか。

回答

1.中国で販売された製品

協力会社によって中国で販売された製品は、貴社のライセンス商品ということになり、それ自体は中国で販売される限り違法な製品ではありません。そういった、正式なライセンス品が、許諾を出している地域を越えて、他の権利を行使することができる地域に入ってくることを、真正商品の並行輸入といいます。

2.判例「BBS事件最高裁判決」

意匠権の判決ではありませんが、真正商品の並行輸入品に対して特許権の行使ができるかどうかについて争われた事件があり、この事件について最高裁判決が存在します。「BBS事件」(最判 H9.7.1)といいます。

この事件では、次の通り判示されています。

まず、原則として「国際取引における商品の流通と特許権者の権利との調整について考慮するに、現代社会において国際経済取引が極めて広範囲、かつ、高度に進展しつつある状況に照らせば、我が国の取引者が、国外で販売された製品を我が国に輸入して市場における流通に置く場合においても、輪入を含めた商品の流通の自由は最大限尊重することが要請されているものというべきである。」と、取引の自由を確保することが重要であることが述べられています。そして、「特許権者は、譲受人に対しては、当該製品について販売先ないし使用地域から我が国を除外する旨を譲受人との間で合意した場合を除き、譲受人から特許製品を譲り受けた第三者及びその後の転得者に対しては、譲受人との間で右の旨を合意した上特許製品にこれを明確に表示した場合を除いて、当該製品について我が国において特許権を行使することは許されない」と結論付けています。

すなわち、一定の条件を満たさない限り、並行輸入品に対しては権利行使を行うことができない、ということです。

3.ご相談に対する回答

意匠権も上記特許権の判例と同様に判断される可能性があります。以上の判例を整理すると、意匠権の権利行使をすることができるのは、次の条件を満たしたときだけである、ということになります。

  • ①外国の許諾者に対して権利行使する場合は、我が国は販売先として除外することを明確にしていること。
  • ②(製品が転得される場合は、権利者と許諾者の契約関係はわからないため)製品を譲り受けた第三者やその後の譲受人(転得者)に対して権利行使する場合は、我が国が販売先として許諾されていないことを製品上に明確に表示していること。

ご相談の内容から、香港の協力会社に対して販売先の限定を行う契約は存在するものと思われますが、今回のように日本の第三者が製品の並行輸入を行っている場合は、②の場合に該当するかどうかが問われます。もし、製品にこの商品が日本での流通を許諾していないことの表記がなされていない場合には、判例に従い、意匠権の権利行使はできないことになります。

4.今後の対策

今後も、他の製品についても同様な問題が発生する可能性があるとすれば、次の対策を講じておくことが必要です。

  • (A)香港の協力会社との間で、製品の販売を許諾する地域は、中国国内のみであることを明確にした契約を取り交わすこと。
  • (B)同時に、香港の協力会社との間で、中国国内で製造販売する製品のパッケージ上に、「(ⅰ)本製品は(貴社名)の許諾の下に製造販売されていること。(ⅱ)本製品は中国国内でのみ販売を許諾されていること。」を中国語・英語・日本語で表記する旨の契約を行い、実行を確認すること。

自らの許諾の下に製造販売された製品については、それが許諾範囲を超えて流通し、かつそれが許諾範囲を超えたものであることを明確に取引業者が認識できない場合は、意匠権の権利行使ができないわけです。我が国における意匠権による製品コントロールを確実なものにするためにも、予め対応を行っておくことが必要です。

本QAは特許庁委託事業「外国産業財産権侵害対策等支援事業」において作成されたものです。
事業内容等は本事業サイト(http://www.jpo.go.jp/index/kokusai_doukou/iprsupport/index.html)をご確認下さい。