侵Q24

意匠権を侵害する製品が都内で販売されているのを発見しました。外国製品のようです。どのような対処方法を取ることができるのでしょうか。

質問

当社はパズルなどを作成する中規模の玩具メーカーです。当社は、製造を中国の協力メーカーに依頼して行っていますが、企画・設計は国内の開発部門で行っており、立体パズルなど日本での意匠権は当社が出願し、登録を得ています。先日、取引先であるある問屋さんから100円ショップで、当社が意匠登録している立体パズルと同じパズルが販売されているとの情報を得て、早速その商品を入手しましたが、組立て精度が落ちるものの、当社の製品をコピーしたものであることがわかりました。どうやら、中国で製造販売され、それを国内の会社が輸入し、100円ショップに卸しているようです。立体パズルの開発には人手と資金がかかっており、純正品の売り上げにも影響しかねないため、何か手を打ちたいと思います。どのような手段が考えられるのでしょうか。

回答

1.実施者の確認

意匠権は、登録意匠にかかる物品の製造のみならず、その輸入及び販売に対しても行使することができます(意匠法23条、意匠法2条3項)。従って、次の主体を確認してください。
 ①輸入業者
 ②販売業者

2.権利の確認

  • (1)意匠権
    自らの意匠権の確認を行います。現在は特許電子図書館(IPDL)で登録情報の検索もできますが、特許庁から意匠登録原簿を取得して次のことを確認しておきます。
    (ⅰ)権利者
    権利者の確認(例えば、権利者が子会社や協力会社になっていないか)をすると共に、共有権利者や専用実施権者の有無を確認します。
    (ⅱ)権利の存続期間
    年金の支払い記録から現在の有効権利期間と、登録日から存続期間を確認します。

    <意匠原簿の一例>
    意匠原簿の一例
  • (2)不正競争防止法2条1項3号(デッドコピー規制)
    パーツを複製された、ということで、このケースでは不正競争防止法2条1項3号のデッドコピー条項の行使も可能です。同条項は、次の条件の場合に適用することができます。
    • (ⅰ)中国製パズルが貴社パズルの形態を模倣していること。
    • (ⅱ)その形態が製品の機能確保に基づくものではないこと。
    • (ⅲ)日本国内において最初に販売された日から3年を経過していないこと(不正競争防止法19条1項5号イ)。
    • (ⅳ)譲り受け時にその模倣について知っていたこと(不正競争防止法19条1項5号ロ)。

(ⅲ)及び(ⅳ)の要件を確認することは必要で、これを満たしていれば警告を行うことができます。なお(ⅳ)の要件について、たとえ今回、要件を満たしていないとしても、警告を行うことで今後は知ったことになりますので、継続した違反を阻止するうえでも、警告を行うことは必要でしょう。

3.警告書の作成

上記輸入業者及び販売業者に対して警告書を送付します。

  • (1)警告書のタイトル
    「警告書」というタイトルのほか、「通知書」「お知らせ」「伺い書」といった柔らかな表現を使う場合もあります。
  • (2)警告者名
    必ず、前項で確認した権利者となっている会社名で行います。意匠権が共有になっている場合はなるべく権利者全員で行うことが望まれますが、共有者の協力を得られない場合は単独で警告を行うこともできます。
    会社名とともに、会社の代表権を有する貴社代表者の名前を記載します。しかしながら、警告相手方や流通業者と別に取引があるなど、問題を大きくしたくない場合などは、企画部長や営業部長名など商品の流通に代理権を有する方の名前を記載してもよいでしょう。
    相手方は、なるべく代表者名を調べて、その方宛てに送付するようにします。
  • (3)警告内容
    意匠権侵害を警告する場合には、貴社が有する登録意匠の登録番号、意匠に係る物品名を明記し、相手方製品の商品名や製品番号を特定、相手方製品が貴社の登録意匠と同一、類似であり、意匠権を侵害する旨を記載します。また、不正競争防止法2条1項3号に該当する旨を警告する場合には、相手方製品が貴社製品のデッドコピーであり、貴社製品が日本において販売されてから3年以内である旨を記載し、不正競争行為に該当する旨を記載します。
    そのうえで、次のことを要求することとなります。
    • (ⅰ)相手方製品の輸入・販売を直ちに中止すること(差止請求:意匠法37条、不正競争防止法3条)。
    • (ⅱ)意匠権侵害による損害額を算定するため、相手方製品の輸入・販売した数量の報告し、さらに在庫数の報告を行うこと(損害賠償請求:民法709条/意匠法39条、不正競争防止法4条。なお、損害賠償請求権の実際の行使には「相手方の故意又は過失」の立証が必要です)。
    なお、「伺い書」のように、まず相手方の見解を貰いたいという場合であれば
    (ⅰ)(ⅱ)を記載しない場合もありますし、損害論を持ち出して相手方が強硬姿勢となるのを嫌うのであれば、(ⅰ)のみを記載することでよいでしょう。
    以上、こちらからの主張を行ったうえで、相手方からの回答を、期限を区切って要求します。通常は、2週間程度の回答期間を設定します。
    一般的な意匠権にもとづく警告書のひな形を示すと次のとおりとなります。

    警 告 書

    前略

    さて、貴社は、貴社店舗において、下記商品(以下、貴社商品という)を販売しています。

    型番 ○○○○
    商品名「○○○○」

    当社は、次の登録意匠(以下、当社登録意匠という)を所有しています。

    意匠登録第○○○○○○○○号
    物品名「○○○○」

     貴社商品は、当社登録意匠の物品と同一であり、当社登録意匠の形態と極めて似ているため、貴社商品は当社登録意匠の類似範囲に属します。よって、貴社商品は当社登録意匠の意匠権を侵害するものであり、当社は、貴社に対して、直ちに貴社商品の販売を中止することを要求いたします。また、同時に貴社商品の販売による当社の損害を確定するため、貴社商品の売上金額(販売単価、販売数)ならびに在庫数を、当社に対して書面で報告していただくことを要求いたします。
     本警告書の到着後、二週間以内に回答して頂くようお願い申し上げます。当社は徒に争いを望むものではありませんが、万一貴社より誠実な回答を頂けない場合は、速やかに法的手続を取らせていただくことを申し添えます。

    草々

    (日付)

    (相手方住所)
    (相手方会社名)
    (相手方代表者名) 殿

    (当方住所)
    (当方会社名)
    (当方代表者名)

4.警告代理人の有無

警告書は通常、会社代表者名で、弁護士及び、または弁理士の警告代理人を付けて送付します。警告代理人を付けるのは、相手方の対応により、実施の定義などの法的議論、類否など技術的論争が生じたときに迅速に反論・主張を行うためです。また、警告代理人を付けることで、相手方に、訴訟が近いというプレッシャーを与えることができるというメリットもあります。

但し、損害賠償額や相手方会社の性格によっては、コストを考えて警告代理人をつけず、会社代表者名で送っても問題ありません。

5.警告書の送付

内容証明郵便により、警告書を発送します。もし、代理人を付けずに警告書を発送する場合は、内容証明郵便は1ページに記載できる行及び各行の文字数、捺印等について規定がありますので、日本郵便のホームページなどで確認を行ってください。

なお、利用者登録を行うことで、郵便局のホームページから電子内容証明サービスも申し込めます (http://enaiyo.post.japanpost.jp/mpt/)。このサービスを利用すると、上記文字数などの制限が緩和されます。

6.注意点

なお、警告書と同時に、例えば取引先を同じくする問屋などに、相手方による意匠権の侵害の可能性を伝える場合がありますが、意匠権侵害を決め付けた情報を伝えると「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」(不正競争防止法2条1項14号)に該当する行為(虚偽事実の告知・流布行為)となる場合があります。この場合は、提訴した際に相手方からの反訴として、または別訴で、損害賠償等の訴えを起こされる可能性がありますから、侵害が疑われる当事者以外に対して行動を取る場合は慎重に行ってください。

本QAは特許庁委託事業「外国産業財産権侵害対策等支援事業」において作成されたものです。
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