侵Q22

韓国でも意匠登録出願を行いたいのですが、日本の意匠登録出願と比較して、注意しなければならないことがあるでしょうか。

質問

当社は鋼板用のガス切断装置を韓国に輸出していますが、これまで旧タイプにおいては、消耗品である先端のノズルの模倣品が出回ったため、ノズルの販売量が落ちてしまいました。そこで、当社は新タイプのガス切断装置を開発し、その際、ノズルを意匠的な特徴を持つように設計しました。日本において意匠登録を行い、模倣品であるノズルの輸入をブロックしたいと思っていますが、同様に韓国においても意匠登録を行いたいと思います。注意点を教えて下さい。

回答

1.優先権を使った出願

特許と同様に、日本の意匠登録出願を基礎として優先権を主張して韓国に意匠登録出願を行うことができます。日本に意匠登録出願を行った後、製品を販売している場合があると思われますが、優先権主張を行わないと韓国の意匠登録出願は新規性を失っていることになりますから、この場合は必ず優先権主張を行う必要があります。優先権主張を行うことにより、韓国での意匠登録出願の出願日が、優先権の基礎となる 日本の意匠登録出願の出願日として取り扱われます。

優先期間は特許の12ヶ月に比べて、意匠は6ヶ月しか認められていませんので、その期間には十分に注意ください。

2.出願書類の注意点

基本的には日本で意匠登録を行っていれば、それを韓国代理人(弁理士または弁護士)に提供することで比較的簡単に出願準備をしてもらえるでしょう。但し、次の点で、我が国の出願書類と異なりますから、これら図面及び項目を付加的に準備する必要があります。

  • (1)かつて韓国の意匠登録出願の特徴点として「斜視図」が必須図面となっていたことが上げられました。しかしながら、2010年1月のデザイン法改正により、「デザイン全体形態と創作内容を明確に表現する図面」を提出すればよいこととなりましたので、斜視図の提出は必ずしも必要ではなくなりました。なお、図面の形式及び枚数の制限がなくなった反面、図面の選択によって意匠の特徴を特定するという役割を有することになりますので、意匠の特徴点を現地代理人に指摘して、図面の提出方法を相談する必要があるものと思われます。
  • (2)また、韓国の意匠登録出願においては、「創作内容の要点」が必須項目として記載を求められます。「このノズルの意匠は、基部周面に設けられた冷却水の水流制御用フランジの形状に特徴がある」「このノズル意匠は、正面図において、先端部で2段に屈折するテーパー形状に特徴がある」といった要領で記載します。
    優先権の関係で、いずれも出願時に準備できない場合は、まず日本の意匠登録出願と同一の内容で出願し、後日、速やかに補正書をもってこれらを追加することもできます。

3.出願において利用できる特殊な制度

  • (1)部分意匠
    韓国においても部分意匠出願を行うことができます。我が国で部分意匠出願している場合は、韓国においても部分意匠出願を行わないと優先権出願の基礎となりませんので、注意が必要です。日本において通常の意匠出願をしている場合に、韓国において部分意匠に直して出願すると優先権が認められませんので、逆の場合も注意する必要があります。
  • (2)類似意匠
    韓国は日本の旧類似意匠制度と同じ制度が残存しています。日本は平成10年の法改正により、類似意匠制度を廃止し、関連意匠制度を新設しましたが、いずれの制度も、同一出願人の互いに類似する複数の意匠をグループとして保護する制度です。韓国の類似意匠制度と我が国の関連意匠制度とは、権利の一体性/独立性、出願可能期間(韓国の類似意匠制度は本意匠が存続していればいつでも出願できる)において相違しますが、日本で関連意匠出願をしていたら、韓国ではそれぞれについて優先権主張を行いながら類似意匠出願をすればよいことになります。
  • (3)その他
    今回のご相談とはかかわりがありませんが、韓国の意匠制度(デザイン法)も秘密意匠制度や組物の意匠制度を有しますので、これら制度を利用することもできます。

4.その他の留意点

  • (1)韓国意匠法は、意匠権の存続期間を登録より15年としています。我が国は登録より20年ですから、5年ほど短いことになります。しかしながら、起算日を出願日とする特許と違い存続期間の起算日が登録日ですから、たとえ審査が長引いても保護期間がそれによって食いつぶされることはありません。従って、15年という保護期間は正味の保護期間であり、特許の保護期間と同等の、十分に長い保護期間が与えられているといえます。ご相談の製品のように装置本体が長年にわたって使い続けられる限り、モデルチェンジしない製品は、その消耗品市場が長く存在することになりますので、意匠登録による形状面からの保護を求めることは意味のあることでしょう。
  • (2)意匠の対象である物品が、衣服、寝具、事務紙、包装紙、織物である場合は、無審査登録を受けることができますので、我が国の実用新案制度と同様に簡易、かつ迅速に意匠権を発生させて保護を受けることができます。

なお、たとえ韓国語に堪能であっても、韓国に国籍や営業籍を有さない場合は我が国から直接韓国特許庁に出願を行うことはできません。韓国で意匠登録出願は、韓国弁理士や韓国弁護士に直接依頼するか、または我が国の弁理士や弁護士を仲介して行うことになります。

本QAは特許庁委託事業「外国産業財産権侵害対策等支援事業」において作成されたものです。
事業内容等は本事業サイト(http://www.jpo.go.jp/index/kokusai_doukou/iprsupport/index.html)をご確認下さい。