侵Q21

外観に特徴のある商品を韓国に輸出していますが、極めて類似する商品が現地で製作されて、売り上げが落ちてしまいました。なんらかの対処方法はあるでしょうか。

質問

当社はバルブなど機械部品を作成するメーカーです。数年前から、バルブを韓国に輸出していますが、このバルブに極めてよく類似した商品が市場で売られるようになりました。

商標はその会社のものに変えてありますが、このバルブは外観に特徴があり、外観は極めて似ています。韓国において、意匠登録はしていませんが、このバルブの販売を止めさせる何らかの手段があるでしょうか。

回答

1.不正競争防止法の適用可能性

模倣行為が行われている現地において、意匠権を有しておらず及び商標を使われていないので商標権を使えない状態ですが、不正競争防止法を使うことができる可能性が残されています。

韓国の不正競争防止法にも、「デッドコピー」を防止する規定と、「混同招来行為」(我が国の「商品等表示の混同惹起行為」に該当)とがあります。いずれも保護趣旨が違いますので、適用が可能かどうかの条件を以下、検討することとします。

2.適用条件の確認

貴社バルブが、新しい製品であり、韓国市場において知名度を獲得していない場合はデッドコピー規制を、また、すでに市場で知名度を獲得しているものの、すでに所定期間(3年間)が経過してしまっている場合は、混同招来行為規制を適用することになります。我が国の不正競争防止法でも同じですが、まだ市場に投入されて日が浅いという要件と、市場において知名度を獲得しているという要件とは相反する場合が多いので(すなわち、市場において知名度を獲得するためには一定期間の営業継続が必要である)、一般的に、両者の要件が同時に成立するという場合は稀で、これら規定は、選択的に使われる場合が多いといえます。

それぞれの規定が適用されるためには、次の要件が要求されます。

  • (1)デッドコピー(韓国・不正競争防止法2条1項リ)
    • a)貴社製造販売するバルブが制作されてから3年以内であること。
    • b)同バルブの形態が、同種の商品が通常有する形態ではないこと。
    • c)相手方バルブが貴社バルブの模倣(デッドコピー)であること。
  • (2)混同招来行為(同2条1項イ)
    • a)貴社が製造販売するバルブの形態が、韓国国内に広く認識されていること。
    • b)相手方が製造販売するバルブの形態が、あなたのバルブと同一・類似であること。
    • c)相手方バルブが貴社バルブと混同を生じさせること。

3.デッドコピー規制の検討

この規定を適用するためには、試作品製造など「その商品が形態を獲得した日」から3年以内の製品である必要があります。例えば、韓国において、バルブの模倣品が登場したのが1年前であったとしても、同バルブを我が国において作成したのが4年前であれば、3年以内の要件に合致しません。

また、ご相談のバルブは外観に特徴があるとのことですので問題はないと思いますが、バルブがありふれた形態しか有さないのであれば、「同種の商品が通常有する形態」であるとして、保護が否定されますので注意が必要です。なお、我が国の不正競争防止法が有するデッドコピー規制は、かつて韓国のデッドコピー規制と同様でしたが、2005年の改正により「当該商品の機能を確保するために不可欠な形態」と改正されており、両者は異なることに注意してください(我が国不正競争防止法19条1項5号)。

4.混同招来行為規制の検討

まず、この規定が適用されるためには、貴社バルブの形態が韓国市場において商品形態としてある程度認識されていなければなりません。単にその形状が他と区別されうる特異な形状を有するというだけではなく、販売や広告実績を経て、その形態が特定会社独自の形態として韓国市場において認識されている、ということを立証する必要があります。

また、需要者の混同についても、販売ルートが同じである等の論証が必要です。デッドコピー規制に比べると、適用されるためのハードルが高いといえます。

5.警告書の提出

上記3または4のいずれかに該当する場合は、韓国の特許事務所、もしくは法律事務所に依頼して、警告書を提出してもらうこととなります。このとき、3の場合は、そのバルブが完成した日付けを証明する書面(例えば、作成日が記載されているバルブの設計図など)を、また、4の場合は貴社のバルブが韓国市場でどれくらい知名度を有しているかを示す書面(例えば韓国市場における販売実績)を準備する必要があります。

6.日本に輸入される可能性

韓国市場での模倣品が、国内に輸入されて国内市場においても貴社バルブの販売が影響を受ける可能性もあります。

国内においても意匠権を有さない場合は、我が国の不正競争防止法(2条1項1号に規定する商品等表示混同惹起行為、同3号に規定するデッドコピー)を使って税関で差し止めを行うこともできますが(関税法69条の2)、意匠権のように審査を経ていない利益であるため、経済産業大臣の意見書を求めて、それを添付しなければ輸入差止めの申立てをできないなど、意匠権に比べるとそれを利用するための作業は複雑になっています。

模倣は、商業道徳上、戒められる行為ですが、不法行為としてそれを咎めようとすると、不正競争防止法だけでは限定的な効果しか期待できません。少なくとも、模倣品が我が国に入ってくることを防ぐためには、主力商品についてだけでも意匠登録を獲得して意匠権を保有することが大切であると思われます。

本QAは特許庁委託事業「外国産業財産権侵害対策等支援事業」において作成されたものです。
事業内容等は本事業サイト(http://www.jpo.go.jp/index/kokusai_doukou/iprsupport/index.html)をご確認下さい。