侵Q6

特許侵害であるとともに、営業秘密を漏らしたとする警告状が来ました。せっかく立ち上げた事業に支障をきたすので、速く解決したく思っています。

質問

私は以前勤務していたバルブ会社Xを退職し、新しく原子力発電所向けのバルブAの事業を立ち上げました。私のことを聞きつけたバルブ会社Xが、代理人経由で警告書を送りつけてきました。

バルブ会社Xは、第三者であるZ社から原子力発電所向けのバルブに関する特許権Bについての独占的通常実施権を取得していると聞いております。警告書の内容は、当社によるバルブAの製造販売はその特許権Bを侵害するとともに、私がバルブ会社Xの営業秘密を漏洩したというものであります。しかし、特許権Bは、権利が消滅しているとの話も耳にしております。

このような問題は、せっかく立ち上げた事業に支障をきたすので、速く解決したいと考えています。解決策を教えてください。

回答

1.特許権Bについて

  • (1)まず、警告書に記載の特許権Bが、現在においても、有効に存続している(存続期間は特許出願日から20年)のか、特許料を納付しなかった又は無効審判による無効となった等により、特許権Bが消滅しているのかを確認する必要があります。これは、「特許原簿」を取り寄せることによって確認できますが、簡易的には、特許電子図書館(IPDL:http://www.ipdl.inpit.go.jp/homepg.ipdl)においても検索できるので利用して下さい。
  • (2)その上で、特許権Bが有効に存続している場合には、貴社のバルブAの製造販売が、特許権Bを侵害することになるかについて、弁護士又は弁理士からの鑑定又は見解(できれば書面で)を取得するようにして下さい。
  • (3)バルブ会社Xは、特許権Bについて特許権者又は専用実施権者ではないので、貴社に対してバルブAの製造販売を中止させる差止請求権を有するわけではありません。
    しかし、バルブ会社Xは特許権Bについて独占的通常実施権を取得している場合には、貴社のバルブAの製造販売による損害賠償を請求できるものと判例上、解釈されております。
    したがって、貴社のバルブAの製造販売開始時期及びその期間と特許権Bの登録時点との関係を調査して、損害賠償請求権の有無及び予想される損害額について検討して下さい。
  • (4)仮に、貴方がバルブAについては、特許権Bの出願前から製造販売していたなどの場合には、特許出願前からバルブAの構造などが知られて本来特許されるべきものではなかったのですから、特許権Bは無効理由を有することになります。

2.営業秘密漏洩について

  • (1)仮に、貴方がバルブ会社Xからの退職に際し、秘密にしていた情報、たとえばバルブに関する設計図面や営業情報を持ち出して、これに基づいて営業活動をしているとすれば、バルブ会社Xにとって競争上不当な不利益を被ることになるために、不正競争防止法では、営業秘密を不正取得する行為を禁止しております(不正競争防止法2条1項4号等)。
  • (2)ここで、不正競争防止法での「営業秘密」とは、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。」(不正競争防止法2条6項)とされ、有用性、秘密管理性、及び公知性が要求されます。
    したがって、たとえばバルブ会社Xにおいて秘密状態で管理されていないものは、「営業秘密」とは言えません。
  • (3)仮に、貴方が営業秘密を不正取得する行為を行なった場合には、バルブ会社Xから、バルブAの設計情報の保有者としてその使用の禁止、バルブAの廃棄、損害賠償請求がなされる可能性があります。
    前者の場合は、貴方が不正競争防止法2条1項4号等で規定する、営業秘密を不正取得し、バルブAの事業を個人事業主として行なっている場合であるのに対し、もし、貴方が自己を代表取締役とする新会社Yを設立し、バルブAを新会社Yの名前で製造販売している場合には、新会社Yが営業秘密を不正取得する行為を行なったわけではありません。
    しかし、不正競争防止法2条1項5号では、「その営業秘密について不正取得行為が介在したことを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為」をも「不正競争」と規定しているために、新会社Yが「不正競争」行為を行なっていることとなり、同様の法的な不正競争行為の排除請求がなされることになります。

3.その他

貴方が、せっかく立ち上げた事業に支障をきたすので速く解決したいというのであれば、和解によって解決する方向を模索するのが最善であります。この和解交渉に関しては、よく専門家(弁護士・弁理士)に相談の上、納得のゆく解決を図って下さい。

本QAは特許庁委託事業「外国産業財産権侵害対策等支援事業」において作成されたものです。
事業内容等は本事業サイト(http://www.jpo.go.jp/index/kokusai_doukou/iprsupport/index.html)をご確認下さい。