侵Q3

当社が設計した計器の製造を下請け先に発注しところ、その下請け先は、当社に替わってクライアントと取引を開始し、更に当社に無断で特許出願していることも分かりました。当社の技術が無駄にならないよう、今後どのように対処したらよいでしょうか。

質問

当社は、大手メーカーZから大型装置用の特殊計器Pの製作の依頼を受けました。その当時、当社は時間的な余裕がなかったので、緊急避難的に大手メーカーの仕様に基づき設計のみを行ない、Y社に製造を下請け外注したために、期限内に特殊計器の納品を行なうことができました。

その後、大手メーカーZは、当社との取引を止めて、Y社と取引を開始しました。また、Y社が特殊計器Pに関する技術を、当社に無断で特許出願していることも知りました。当社の技術が無駄になってしまいました。今後、どのようにしたらよいのでしょうか。

回答

1.Y社に対する製造依頼過程の検証

  • (1)貴社からY社に対する製造依頼の取引関係書類が残っているはずですから、その書類にどのような契約条項、取決め条項があったのかを確認してください。
  • (2)Y社は、貴社へ全量を納入し、他社との間での取引を行なわないとの契約が存在していた場合、契約違反を理由として、Y社に対して損害賠償を求めることが可能であります。
  • (3)Y社は、特殊計器Pに関する当時の貴社の秘密情報を大手メーカーZに持ち込んで、取引を迫ったのかもしれません。この場合には、貴社との間での秘密保持義務違反を理由として、Y社に対して損害賠償を求めることが可能であります。

2.Y社の特許出願について

  • (1)Y社は、貴社に無断で特許出願を行なったものでありますから、その特許出願は拒絶されるべきものであります(註1)。
    また、貴社は、Y社に対し、特許出願人の名義を貴社名に変更することの手続(名義変更手続)を特許庁に行なうことができます。
    この請求について、Y社が応じない場合、裁判所に特許を受ける権利の出願人変更請求の訴えを提起し、その判決(たとえば、「被告は、原告に対し、別紙権利目録記載の特許出願について、出願人名義変更をせよ。」との判決)を受けて、Y社から貴社への出願人変更を行なう方法があります。
  • (2)仮にY社の特許出願について特許になった場合、無効理由となりますので、無効審判の対象になります(註1)。さらに、平成23年特許法改正により平成24年4月1日から特許権の移転請求が可能となりました(特許法第74条 註2)。Q42も参考にしてください。
  • (3)なお、貴社は、もっぱら大手メーカーZの仕様に基づき、単に常識的な設計をしたに過ぎない場合においては、貴社のサイドで発明がなされたものでないので、特許を受ける権利を有しないことに注意して下さい。

3.三社間での話し合い及びその他の対策

  • (1)貴社にとって、大手メーカーZは大切なクライアントでしょうから、大手メーカーZに対し経緯を詳細に説明し、三社間で円満な解決を図るのが重要であると考えられます。
  • (2)この事件を契機に貴社は下請けに対する外注体制の見直し、外注との契約事項の見直しを図ることが必要であります。
  • (3)Y社があえて特許出願する技術でありながら貴社がなんらの対応も行なわなかった事実を踏まえ、貴社は、発明の保護体制の見直しを図る必要があります。
参考情報
  • (註1)特許法 第49条7号に「その特許出願人が発明者でない場合において、その発明について特許を受ける権利を承継していないとき」は拒絶査定を行なうべきことを規定しております。また、無効理由ともなります(特許法第123条1項6号)。
  • (註2)特許法 第74条 特許が第百二十三条第一項第二号に規定する要件に該当するとき(その特許が第三十八条の規定に違反してされたときに限る。)又は同項第六号に規定する要件に該当するときは、当該特許に係る発明について特許を受ける権利を有する者は、経済産業省令で定めるところにより、その特許権者に対し、当該特許権の移転を請求することができる。
     前項の規定による請求に基づく特許権の移転の登録があつたときは、その特許権は、初めから当該登録を受けた者に帰属していたものとみなす。当該特許権に係る発明についての第六十五条第一項又は第百八十四条の十第一項の規定による請求権についても、同様とする。
     共有に係る特許権について第一項の規定による請求に基づきその持分を移転する場合においては、前条第一項の規定は、適用しない。

本QAは特許庁委託事業「外国産業財産権侵害対策等支援事業」において作成されたものです。
事業内容等は本事業サイト(http://www.jpo.go.jp/index/kokusai_doukou/iprsupport/index.html)をご確認下さい。