侵Q2

苦労のすえ開発した技術について特許権を保有しています。相手方が本技術を侵害しているようなので。販売を止めさせたいと考えています。どのようにしたらよいでしょうか。

質問

当社は、長年の苦労のすえ開発した燃焼炉における燃焼技術aに関する特許権Aを保有しています。最近、同業者が大手燃焼炉メーカーと共同して新しい燃焼炉Pを開発し、販売していることを知りました。みすみす放置しておくわけには行かないので、販売を止めさせたいと考えています。どのようにしたらよいか教えてください。

回答

1.情報の入手及び侵害事実の確認

まず、燃焼炉Pにおいて、燃焼技術aが使用されているかを確認できる具体的な情報を入手する必要があります。この場合、同業者(相手方)の実施の形態(特に燃焼技術aが燃焼炉Pにどのように組み込まれているか)、実施の規模、実施の期間、燃焼炉Pの流通ルート、価格など可能な限り具体的な情報を入手してください。

そのうえで、燃焼炉Pにおいて使用されている相手方の燃焼技術が、貴社の特許権Aを侵害するかについて、専門家の意見を聴取(できれば鑑定書又は見解書を入手)して、確認をとっておくことが重要です。 特許庁における判定制度(註1)を利用する方法もあります。

2.特許権Aの有効性

特許権Aに対し、相手方から特許の無効を主張される可能性があります。そこで、相手方に対し、具体的に警告などの行動を開始する前に、貴社の特許権Aの有効性の有無について、再調査を実施することが重要であり、その調査結果をもって、専門家に相談して意見を求めるのも有効でしょう。

特許庁における判定制度のほか、日本知的財産仲裁センターによる「無効判定」判定制度(註2)も利用することができます。

3.相手方への働きかけ

  • (1)まず、貴社が本件の問題解決の方向性の基本方針を確立することが重要です。たとえば、相手方が侵害を認め実施を中止した場合、適当な損害賠償金額で和解するのか、相手方が侵害を認めるもののなお実施を継続することを希望する場合に、貴社が相手方に対し特許権Aの実施許諾の用意があるのか、これらの余地もなく、ともかく相手方の燃焼炉Pの販売を止めてもらうことが最低条件であり、このためには最終的に販売中止(差止)の訴訟も辞さないのかなどの検討をする必要があります。
  • (2)特許権Aを相手方が侵害していることの確証を得た場合、相手方に対しては、貴社が燃焼技術aに関する特許権Aを保有していること、燃焼炉Pに使用されている燃焼技術は特許権Aの技術的範囲に属することを告知し、燃焼炉Pの販売を止めてもらいたい旨の警告書(又は通知書)を送付し、適当な期限(たとえば2週間又は20日)を定めて回答をもらうようにしてください。
    電話連絡のうえ直接担当者を通しての口頭での申し入れも可能ですが、将来的に訴訟も予想される場合には、証拠の確実性から内容証明又は配達証明郵便などによるのがよいでしょう。
  • (3)この警告後に、相手方から何らかの回答があるのが通例です。特許権の侵害でない、当該特許は無効であるなどの主張のほか、あるいは暗に侵害を認め交渉で解決しようとする提案が持ちかけられることもあります。
    実際は、この警告後における貴社の対応が前述の基本方針に則っていることが重要であります。燃焼炉Pの販売を止めてもらうこと(差止)、損害賠償を求める、相手方に適当な実施料で実施許諾する、当社の燃焼技術a(あるいは当社燃焼技術機器)に換えてもらうなど多くの解決策があることを踏まえながら、貴社の最大限の利益は何かを常に念頭におきながら、粘り強く交渉を進めることが重要です。
    とりわけ、大手燃焼炉メーカーが貴社のユーザーでもある場合には、争う姿勢だけですと、将来の商圏を自分で狭めることにもなりかねません。
  • (4)相手方との交渉が不調に終わり訴訟になる可能性がある場合、訴訟の勝敗の見極め、予想される訴訟期間、訴訟費用の確保、訴訟の遂行に当たっての開発部員、知財担当者の負担の程度を十分に考慮して、そのまま訴訟に突入することが得策なのかを再度考え直し、訴訟に拘泥することなく、他の解決策も柔軟に考える必要があるでしょう。
    とりわけ、近年は、侵害訴訟の中で特許の無効を主張される場合がきわめて多く、特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、相手方に対し特許権の行使をすることができなくなること(註3)に注意してください。
参考情報
  • (註1)特許庁HP参照 特許について>審判制度・運用>特許庁の判定制度について
    http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/sinpan/sinpan2/hantei2.htm
  • (註2)日本知的財産仲裁センターHP http://www.ip-adr.gr.jp/
    センター判定には、申立人の選択するところにより、申立人が提出した主張及び証拠資料に基づいて行う単独判定と、申立人及び申立人が指定した被申立人がそれぞれ提出した主張及び証拠資料に基づき行う双方判定があります。貴社だけの単独判定の場合には、相手方に秘密裏に結論を得ることができる利点があります。
  • (註3)特許法 第104条の3 特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当該特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、特許権者又は専用実施権者は、相手方に対しその権利を行使することができない。

本QAは特許庁委託事業「外国産業財産権侵害対策等支援事業」において作成されたものです。
事業内容等は本事業サイト(http://www.jpo.go.jp/index/kokusai_doukou/iprsupport/index.html)をご確認下さい。