■ 海外進出編
このQAは、海外進出に伴う知財リスクとして、どのようなものがあるかを示した上で、それらの知財リスクに対する回避策を提示したものです。進出国は、中国、ベトナム、インドネシアそしてタイの4ヶ国、進出形態は、輸出、製造委託、ライセンスの3種類を想定しています。既に海外進出している場合でも、知財リスクの再確認のためこのQAをご利用下さい。


質問

当社では海外進出を検討していますが、これに伴うリスク、特に知的財産に関連するリスクを知っておきたいと思います。日本での知財リスクについてはある程度理解しているつもりですが、海外での知財リスクについては十分な知識がありません。具体的にはどのようなリスクがあるのでしょうか。また、それらのリスクに対する回避策とはどのようなものでしょうか。進出を検討している国は、
中国、②ベトナム、③インドネシア、④タイ
また、進出形態は、「輸出」「製造委託」「ライセンス」のいずれかを考えていますので、各形態に毎に説明をして下さい。

※上記の国名をクリックすると、その国のページにアクセスできます。

進出国

①中国

同国への進出形態を、輸出、製造委託、ライセンスの3形態に分け、各形態における特・実(特許と実用新案)、意匠、商標及び営業秘密の各分野それぞれについて、どのようなリスクがあるかを回答します。各回答は、下表の斜体文字をクリックすることで、それぞれに対応する回答ページにアクセスすることができます。例えば、進出形態が「輸出」、知りたい分野が「特・実」であれば、A1をクリックして下さい。

進出形態 特・実 意匠 商標 営業秘密
輸出 A1 B1 C1 D1
製造委託 A2 B2 C2 D2
ライセンス A3 B3 C3 D3

②ベトナム

同国への進出形態を、輸出、製造委託、ライセンスの3形態に分け、各形態における特・実(特許と実用新案)、意匠、商標及び営業秘密の各分野それぞれについて、どのようなリスクがあるかを回答します。各回答は、下表の斜体文字をクリックすることで、それぞれに対応する回答ページにアクセスすることができます。例えば、進出形態が「輸出」、知りたい分野が「特・実」であれば、E1をクリックして下さい。

進出形態 特・実 意匠 商標 営業秘密
輸出 E1 F1 G1 H1
製造委託 E2 F2 G2 H2
ライセンス E3 F3 G3 H3

③インドネシア

同国への進出形態を、輸出、製造委託、ライセンスの3形態に分け、各形態における特・実(特許と実用新案)、意匠、商標及び営業秘密の各分野それぞれについて、どのようなリスクがあるかを回答します。各回答は、下表の斜体文字をクリックすることで、それぞれに対応する回答ページにアクセスすることができます。例えば、進出形態が「輸出」、知りたい分野が「特・実」であれば、i1をクリックして下さい。

進出形態 特・実 意匠 商標 営業秘密
輸出 i1 J1 K1 L1
製造委託 i2 J2 K2 L2
ライセンス i3 J3 K3 L3

④タイ

同国への進出形態を、輸出、製造委託、ライセンスの3形態に分け、各形態における特・実(特許と実用新案)、意匠、商標及び営業秘密の各分野それぞれについて、どのようなリスクがあるかを回答します。各回答は、下表の斜体文字をクリックすることで、それぞれに対応する回答ページにアクセスすることができます。例えば、進出形態が「輸出」、知りたい分野が「特・実」であれば、M1をクリックして下さい。

進出形態 特・実 意匠 商標 営業秘密
輸出 M1 N1 O1 P1
製造委託 M2 N2 O2 P2
ライセンス M3 N3 O3 P3

回答

【A1】中国/輸出/特・実

A1におけるリスクは次の2項目です。
■他社の権利(特許権・登録実用新案)を輸出国で侵害するリスク→リスク1
■他社によって自社製品が模倣されるリスク→リスク2

リスク1→
他社の権利(特許権・登録実用新案)を輸出国で侵害するリスク
(日本国内で製造した製品を中国へ輸出して、中国内で販売)

回避策

1.概要

第三者の特許を侵害してしまうと、自社製品の販売を停止したり、損害賠償の請求を受けたり、謝罪広告を出したり、又は輸入差止になったりします。
 そのため中国に自社製品を輸出するに際し、自社製品の実施(販売、使用など)についての第三者の専利権(特許発明と実用新案を含む概念です。以下、特許権と言います。)が障害となるか否か調査し、障害となるならばそれを回避する必要があります。
 つまり、自社製品が中国において第三者の特許権を侵害する可能性がないかを調査します。
 そして自社製品が第三者の特許権を侵害するか否かを判断します。
 仮に自社製品が第三者の特許権を侵害するならば、その回避策を講じることは重要です。
 第三者が有する特許の調査は、自社製品が侵害する可能性がある中国特許権があるかを調査するものです。
 調査の結果、自社製品が侵害する可能性がある中国特許権が存在しないと判断されれば、スムーズに事業を進めることができます。この第三者の特許権を侵害するか否かの判断について以下に説明しますが、最終的には専門家(中国弁理士・中国弁護士)に相談した方がよいです。
 もし調査の結果、自社製品が侵害する可能性がある中国特許権が存在することが判明した場合には、権利侵害となることを回避するための回避策を講じる必要があります。
 権利侵害の回避策がまったく見つからない場合には、訴訟などを提起されるリスクを考えて、自社製品の輸出を断念せざるをえないこともあります。

2.中国特許(実用新案も含む)の調査

2015年3月末頃までは、中国特許庁専利検索サイトhttp://www.sipo.gov.cn/zljs/にアクセスして、中国語又は英語でしか特許調査ができませんでしたが、現在は日本語で検索することができます。
2-1.検索の特徴
 特許情報プラットホーム(J-PlatPat)による中国特許の検索では、日本語を使い特定のキーワード等を用いた検索を行うことができます。なお、日本語と中国語とは互いに機械翻訳されます。
 検索可能範囲は、平成27年7月23日において、2003年以降の文献の検索が可能です。

2-2.特許情報プラットホーム(J-PlatPat)による検索方法

(1)特許情報プラットホーム(J-PlatPat)のホームページにアクセスする。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage

(2)中韓文献テキスト検索(特許庁関連サイトへ)を選択する

(3)条件の設定

発行国、発行種別、文献種別を選択し、検索項目を選択して検索キーワードを記載し、「検索」のアイコンをクリックします。

(4)検索結果

ホームページの下方に検索結果が表示されます。
 「検索結果一覧」のアイコンをクリックすることにより、ヒットした各文献を表示させます。
 但し、中韓合計のヒット件数が1000件を超過した場合には検索結果一覧を表示させることができません。

(5)検索結果の表示

検索結果の公報番号をクリックすることにより、文献の詳細を日本語で表示させることができます。

3.中国特許権(実用新案権も含む)を侵害するか否かの判断

公報番号をクリックすると、文献の詳細を見ることができます。その中に【特許請求の範囲】又は【実用新案登録請求の範囲】という項目があります。
 その請求の範囲の文言に自社製品が含まれるか否かを判断します。その判断する手順が侵Q8侵Q48に詳述してあります。侵Q8、侵Q48に記載されている手順に従って、第三者が有する特許に自社製品が含まれるか否かを判断してください。
 その請求の範囲の文言に自社製品が明らかに含まれない場合を除いて、判断に困るような特許権が見つかったら、専門家(中国弁理士・中国弁護士)に相談してください。
 特許情報プラットホーム(J-PlatPat)による中国特許の検索では、機械翻訳であるため、必ずしも請求の範囲の文言でないこともあります。また請求の範囲の文言をはっきりとさせるために、【発明の詳細な説明】の記載もしっかりと読まなくてはなりません。そのためにも、判断に困るような特許権があるならば、専門家とご相談してください。
 なお、特許発明には「物の発明」、「方法の発明」及び「製造方法の発明」の3種類の発明があります。「物の発明」とは、製品自体又はその部品の発明です。「方法の発明」とは、製品又は部品の使用方法の発明です。「製造方法の発明」とは、製品を製造するための方法発明です。実用新案は、製品の形状、構造又はその結合であり物の考案になります。
 自社製品は日本で製造されて中国へ輸出されています。このため、中国特許の 「製造方法の発明」は、検討する必要はありません。各国特許独立の原則により、中国の「製造方法の発明」の特許は、日本での製造方法に権利が及びません。

4.中国特許権(実用新案権も含む)の侵害回避策

(1)侵害の技術的な回避方法

自社製品の技術などに修正を加えることで、第三者の特許を侵害しないようにして権利侵害を回避するものです。請求の範囲の文言に抵触しないように、自社製品に変更・修正を加えます。専門家とともに進めます。
(2)特許権の譲渡・ライセンスの交渉
 第三者の権利侵害を技術的に回避することが難しい場合には、その者からその特許権の譲渡を受けたり、ライセンスを受けることによって、権利侵害の状態となることを回避する場合もあります。
 次に述べる、権利の無効請求を行って、相手方にプレッシャーをかけながら、並行してこのような契約交渉を行うことが多いです。
 往々にして議論となるのは、譲渡金額や特許ライセンスの金額です。これは、特許権の経済的価値、実施可能性、相手方の現実の使用の有無や使用実績の程度、当方がその権利の使用を必要とする程度に応じて、ケースバイケースで決まるものです。
 こちらが日本企業であることを知ると、高額の譲渡金額や特許ライセンスの金額を求めてくる可能性もあるため、相手方にプレッシャーを与える手段を探すことも必要です。
(3)特許の無効請求
 第三者の特許権侵害を技術的に回避することが難しく、その第三者から当該特許権の譲渡を受けたり、特許ライセンスを受けることもできなかった(価格等の条件で折り合いがつかなかったなど)場合には、特許を無効にできないかを検討します。
 侵Q55を参照してください。侵Q55は自社の中国特許が無効と言われた場合を取り上げていますが、逆の立場で考えていただければ結構です。

5.日本特許に対しても、調査、侵害するか否かの判断、回避策を講じる

自社製品を日本国内で自社製造していますから、日本特許に対しても、中国特許と同様な手続きしなければなりません。特許独立の原則により、日本と中国とで別々の権利として考えます。
 つまり、自社商品が第三者の日本特許権を侵害する可能性がないかを調査し、自社商品A①が第三者の特許権を侵害するか否かを判断し、仮に自社製品が第三者の特許権侵害をするならば、その回避策を講じます。
 自社商品A①は、貴社が製造していますから、日本特許の 「物の発明」及び「製造方法の発明」を検討する必要があります。日本特許の「方法の発明」は、自社商品A①が日本国内で「方法の発明」が使われることが基本的にないと考えますので、検討は不要と考えます。
5-1.日本特許の調査
 特許情報プラットホーム(J-PlatPat)にアクセスして日本特許を検索することができます。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage
5-2.特許情報プラットホーム(J-PlatPat)による検索方法
 特許情報プラットホームの検索方法は、下記URLのPDFファイル8ページから23ページに詳細に説明されています。この説明に従って検索してください。
http://www.inpit.go.jp/content/100583494.pdf
5-3.日本特許権を侵害するか否かの判断
 上述の「3.中国特許権を侵害するか否かの判断」を日本特許に読み替えて判断してください。
5-4.日本特許権の侵害回避策
 上述の「4.中国特許権の侵害回避策」を日本特許に読み替えて判断してください。

6.自社製品が、自社で設計し他社(日本国内)に製造してもらったOEM(Original Equipment Manufacturing)製品の提供を受けた場合、又は自社製品用の交換部品又は消耗品を自社で設計し他社から提供を受ける場合(以下、「OEM製品1」)

(1) 製造してもらう他社と貴社との間で、「OEM製品1」に関して特許に関して、どのような責任を負うかを契約書で取り決めておく必要があります。
(2) 一般に、他社は日本国内における製造に関して責任を負う契約になると思います。この場合、他社が日本国内の製造方法の発明に関して、「2.中国特許(実用新案も含む)の調査」(以下「特実調査」という)、「3.中国特許権(実用新案権も含む)を侵害するか否かの判断」(以下「特実侵害可否判断」という)、「4.中国特許権(実用新案権も含む)の侵害回避策」(以下「特実侵害回避策」という)を講じます。
(3) そして、日本国内の製造以外は貴社が責任を負う契約になると思います。つまり貴社「OEM製品1」のために、貴社が中国特許の「物の発明」及び「方法の発明」に対して、「特実調査」、「特実侵害可否判断」、「特実侵害回避策」を講じる必要があります。
(4) さらに貴社「OEM製品1」のために、貴社が日本特許の「物の発明」に対して、 「特実調査」、「特実侵害可否判断」、「特実侵害回避策」を講じる必要があります。

7.自社製品が、他社で設計し他社(日本国内)に製造してもらったODM(Original Design Manufacturing)製品の提供を受けた場合、又は自社製品用の交換部品又は消耗品を他社で設計し他社から提供を受ける場合(以下、「ODM製品1」)

(1) 設計及び製造してもらう他社と貴社との間で、「ODM製品1」に関して特許に関してどのような責任を負うかを契約書で取り決めておく必要があります。
(2) 一般に、他社が設計・製造しますので「ODM製品1」に関して責任を負う契約になると思います。そのため、他社が日本及び中国の特許発明に関して、「特実調査」、「特実侵害可否判断」、「特実侵害回避策」を講じることになります。
(3) 貴社は、基本的に「ODM製品1」に関して特許に関して責任を負うことはないと思います。

8.貴社が他社から依頼を受けて、日本国内で他社製品の製造を請け負う場合(以下、「OEM製品2」)

(1) 「OEM製品1」の逆の立場になります。
(2) 一般に、貴社が日本国内における製造に関して責任を負う契約になると思います。この場合、貴社が日本国内の製造方法の発明に関して、「特実調査」、「特実侵害可否判断」、「特実侵害回避策」を講じます。

9.貴社が他社から依頼を受けて、日本国内で他社製品の設計及び製造を請け負う場合(以下、「ODM製品2」)

(1) 「ODM製品1」の逆の立場になります。
(2) 一般に、貴社が設計・製造しますので「ODM製品2」に関して責任を負う契約になると思います。そのため、貴社が日本及び中国の特許発明に関して、「特実調査」、「特実侵害可否判断」、「特実侵害回避策」を講じることになります。

10.共同開発設計の場合

(1) 共同研究開発など、共同で製品を設計する場合には、共同研究開発契約を結ぶことが一般的です。その契約では、A社とB社との共同研究開発で生まれた発明の持ち分をA社B社で折半するとか、共同研究開発した製品の販売をA社が日本、B社が中国と決めたりします。
(2) 共同研究開発した開発製品を、A社及びB社それぞれが日本及び中国で販売できる契約ですと、A社及びB社は、それぞれが中国特許及び日本特許に対して、「特実調査」、「特実侵害可否判断」、「特実侵害回避策」を行うことになると思います。
(3) 共同研究開発した開発製品を、A社が日本で販売、B社が中国で販売する場合には、A社が日本特許に対して、「特実調査」、「特実侵害可否判断」、「特実侵害回避策」を行い、B社が中国特許に対して、「特実調査」、「特実侵害可否判断」、「特実回避策」を行う分担になると思います。
(4) 共同研究開発した製品であっても、A社が販売しB社が製造するような契約もあるかと思います。いろいろな契約があるため、その都度、他社特許の調査等もどのように分担するかを契約書に記載しても良いと思います。

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リスク2→
他社によって自社製品が模倣されるリスク
(日本で製造した自社製品を中国へ輸出して、中国内で販売)

回避策

1.概要

日本で製造する自社製品を中国に輸出し販売し、自社製品が中国市場で順調に売上を伸ばし、中国市場での知名度も上がってくるとします。すると、中国内で、自社製品の模倣品が出回るようになってきます。模倣品には自社と同様の技術が使用されていることがあります。
 その技術について中国で特許又は実用新案を申請・取得していないと、その技術を使った模倣品に対して法的対応策(例えば警告、損害賠償、謝罪広告、訴訟又は差止め)をとることができません。その結果、苦労して中国市場を切り開いてきたのに、売上を大きく減少させることになります。
 また、中国での販売だけを気にしていては対策としては不十分です。日本国内で他社が自社製品と同じような技術を使って製品を製造し輸出することもあります。
 つまり、日本及び中国において、他社による自社製品の模倣されるリスクを小さくする必要があります。

2.特許又は登録実用新案を取得する

(1)権利取得を考える時期

A.新しい技術を開発・考案した場合、製品化に先立って又は製品化と並行して、日本国内で権利取得のために特許出願又は実用新案登録出願することが一般的です。
 中国に対しても、日本特許出願又は実用新案登録出願の「優先権」の制度を利用して、日本出願から12ヶ月以内に中国特許又は中国登録実用新案の権利取得の手続をとることが考えられます。
 日本特許出願又は実用新案登録出願してから12ヶ月以内(好ましくは10か月以内。その理由は下記(6)Aを参照。)には、開発・考案した製品を中国に輸出する可能性が否かを考えてください。
 製品を中国に輸出する可能性があるのなら、日本特許出願又は実用新案登録出願してから1年以内に中国に出願できる手続を進めます。
B.日本国内の製品販売が好調であるから中国に輸出したいと考えてから、中国特許出願又は中国登録実用新案出願したいと考えても、権利取得できないことがあります。
 日本特許出願してから1年6ヶ月経過すると日本の特許公開公報が発行され、日本実用新案登録出願してから6ヶ月以内には登録実用新案公報が発行されます。するとこれらの公報が公知となり、中国特許出願が新規性なしとして拒絶になったり、中国登録実用新案が新規性なしとして無効となったりします。
 また、日本特許法及び中国特許法ともに、製品の発表後6ヶ月以内であれば新規性を失わないとする「新規性喪失の例外」が規定されています。しかし、中国特許法の「新規性喪失の例外」は、日本特許法の「新規性喪失の例外」よりも非常に狭いため、中国で権利が取れないことも生じます。
 また、日本特許出願又は実用新案登録出願をしないで、直接、中国特許出願又は実用新案登録出願しようと考えても、日本国内での製品販売が拒絶理由又は無効理由になります。
 法改正により2009年10月1日以降の出願の場合、日本での製品販売や公開実験、拒絶理由又は無効理由となっています。この詳細は侵Q55を参照してください。
(2) 特許
 特許とは、創作した「発明」を独占できる制度です。特許権の存続期間は、日本も中国も出願日から20年です。日本の特許出願は日本特許庁で、中国の特許出願は中国特許庁で審査されて特許されます。保護対象である「発明」には、物の発明、方法の発明及び製造方法の発明があります。
(3) 実用新案
 実用新案とは、創作した「考案」を独占できる制度です。登録実用新案権の存続期間は日本も中国も出願日から10年です。両国ともに、方式審査のみで登録されます。また考案は、製品の形状、構造又はそれらの組合せについて出された実用に適した物の考案のみしかありません。
 なお、日本では「技術評価書を提示して警告をした後でなければ、実用新案権を侵害する者に対し、その権利を行使することができない」という旨の規定(実用新案法第29条の2)があります。しかし、中国ではそのような条文は存在しません。そのため、中国の実用新案権は、日本の実用新案権に比べて、権利行使しやすい権利です。
(4) 開発・考案した新しい技術を特許出願又は実用新案登録出願すべきか、営業秘密として保護すべきか
 新しい製造方法の発明やノウハウは、他社が工場内に侵入しなければその内容はわからないことです。特許出願又は実用新案登録出願すると、出願から一定期間後にその発明の内容が公開されてしまいます。このため、製造方法の発明は営業秘密にして管理した方がよいことが多いと思います。
 また、製品が市場に出て、他社がその製品をリバースエンジ二アリングしても、その新しい技術やノウハウがわからないのであれば、特許出願又は実用新案登録出願しない方がよいかもしれません。
 しかし、リバースエンジ二アリング技術も日々進歩しており、製品が市場に出ていればいずれリバースエンジニアでその技術が分かってしまうことも多いです。製造方法以外の新しい技術やノウハウは、製品が市場に出てしまうと公知になることが多いことを勘案して、営業秘密として管理するか又は特許出願等をするかを検討しましょう。
(5)日本で、最初に特許出願又は登録実用新案出願
 日本で新しい技術を開発・考案したら、日本国内で権利取得のために特許出願又は実用新案登録出願しましょう。中国での特許出願等も考えているのであれば、最初から日本の専門家(弁理士、弁護士)に相談することが好ましいでしょう。
(6)中国へ、特許出願又は登録実用新案出願するルート
 日本特許出願又は実用新案登録出願したら、次の2つの出願ルートで中国特許出願又は実用新案登録出願します。
A.パリルート
 日本出願の優先権が享有するためには、日本特許又は実用新案登録出願の出願日(優先日)から12ヶ月以内に手続が必要です。
 しかし、中国特許又は実用新案登録出願は中国語で手続しなければなりません。日本語から中国語への翻訳時間も考えて有線日から10ヶ月以内には準備を開始する必要があります。日本では英語で出願できる外国語出願制度がありますが、中国には外国語出願制度はありません。
B.PCT(特許協力条約Patent Cooperation Treaty)ルート
 日本出願の優先権が享有するためには、日本特許特許又は実用新案登録出願の出願日(優先日)から12ヶ月以内に手続が必要です。PCT出願は、日本出願に基づいて多数国に出願したい場合、手続き面でパリルートに比べ有利です。
 日本特許特許又は実用新案登録出願の出願日(優先日)から12ヶ月以内に、WIPOが指定している受理官庁(例えば、日本特許庁等)にPCT出願を提出します。日本特許庁に日本語でPCT出願することができます。
 その後、PCT加盟である中国への移行期限は優先日から30ヶ月以内です。30ヶ月の移行期限に間に合わない場合、追加料金支払うことで2ヶ月の延長が可能です。これらの期間内に、中国語の翻訳を特許庁に提出しなくてはいけません。

パリルートとPCTルートとの違いの詳細は、以下を参照してください。
http://www.iprsupport-jpo.go.jp/kensaku/apic_html/seido/data/004.html

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【A2】中国/製造委託/特・実

A2におけるリスクは次の2項目です。
■中国企業に製造委託し、日本又は他の販売国へ製品を輸出する際のリスク→リスク3
■製品の部品を中国で購入する又は日本から中国に輸入するとともに、自社で製品を現地生産して、その製品を中国で販売又は他の販売国に輸出する際のリスク→ リスク4

リスク3→
中国企業に製造委託し、日本又は他の販売国へ製品を輸出する際のリスク

回避策

1.概要

(1) 中国企業に製造委託し、中国では販売を行わず、日本又は他の外国で販売するビジネスです。このようなビジネスは、例えば、中国での製造コストの安さなどがビジネスの推進力となっている場合が多くなっています。
 営業秘密やノウハウが製造委託先の中国企業に漏れることを想定して、製品のどこまで又はどの部品を製造委託するかなど、秘密にしておく領域と相手に開示する領域とを考える必要があります。
 製造委託先の中国企業に、技術及びノウハウを含めて技術移転しなければならないことも多いと思います。この場合には、営業秘密の契約及び秘密保持のための管理体制をチェックするため自社から人材を定期的に派遣するなどの漏洩防止の対策を行わなければなりません。営業秘密に関しては、D1D2D3を参照してください。
 漏洩対策をしても、技術が漏洩したりリバースエンジニアリングされたりすることもあります。これらの対抗手段として、中国で特許権又は実用新案権を取得しておくことが望まれます。そうすれば、技術漏洩などがあったとしても、特許権などの侵害行為として他者の製品製造を停止させることができます。
(2)製造委託には、自社で自社製品を設計し中国企業に製造委託するOEM(Original Equipment Manufacturing)と、中国企業で自社製品を設計及び製造とをしてもらうODM(Original Design Manufacturing)とがあります。
 一般に、ODMでは中国企業が中国特許及び日本特許に関して責任を負うと思われます。そこで以下の説明では、自社設計し中国企業にOEM製品を製造してもらう場面を想定して説明します。

2.中国で問題になる特許(又は実用新案)

(1) 特許発明には「物の発明」、「方法の発明」及び「製造方法の発明」の3種類の発明があります。「物の発明」とは、製品自体又はその部品の発明です。「方法の発明」とは、製品又は部品の使用方法の発明です。「製造方法の発明」とは、製品を製造するための方法発明です。実用新案には製品の形状、構造又はそれらの組合せによる「物の考案」の1種類があります。
(2) 自社製品は中国で製造されます。一般に、製造委託先である中国企業がOEM製品に関する、中国の「製造方法の発明」に関して責任を負う契約になると思います。
(3) 一方、自社で設計した自社製品を保護するため、第三者の中国特許と日本特許とを侵害しないことを確認する必要があります。
 中国で製造された自社製品は日本又は他の販売国へ輸出されます。中国の「中華人民共和国知的財産権税関保護条例(2009年公布)」では、権利者は中国の知的財産権を侵害する物品の輸出を差し止めることができます(条例3条)。つまり、第三者の中国特許発明を自社製品が侵害していた場合には、特許権者が自社製品を輸出差し止めする可能性があります。
 そのため、中国の「物の発明」の特許権を侵害しないか検討する必要があります。
 自社は、第三者が有する中国特許を調査し、特許を侵害するか否かの判断し、その特許を侵害する際には回避策を講じることになります。
 第三者が有する中国特許の調査に関しては、A1リスク1の「2.中国特許(実用新案も含む)の調査」を参照してください。
 特許を侵害するか否かの判断に関しては、A1リスク1の「3.中国特許権(実用新案権も含む)を侵害するか否かの判断」を参照してください。
 特許を侵害する際には回避策に関しては、A1リスク1の「4.中国特許権(実用新案権も含む)を侵害の回避策」を参照してください。

3.日本で問題になる特許(又は実用新案)

(1) 中国で製造された自社製品は、日本に輸入されます。日本特許法は、輸入も特許の実施行為の1つであり、権利者は日本の特許権を侵害する物品を税関で輸入差し止めることができます。また、税関を通過後に自社製品が日本国内で販売されますので、第三者の日本特許発明を自社製品が侵害していた場合には、特許権者は損害賠償又は販売差し止めを請求する可能性があります。
(2) そこで日本特許の「物の発明」及び「方法の発明」の特許権を侵害しないかを検討する必要があります。「物の発明」及び「方法の発明」に関して、第三者が有する特許を調査し、特許を侵害するか否かの判断し、その特許を侵害する際には回避策を講じることになります。
 第三者が有する日本特許の調査に関しては、A1リスク1の「5-1,5-2.日本特許の調査」を参照してください。
 特許を侵害するか否かの判断に関しては、A1リスク1の「5-3.日本特許権を侵害するか否かの判断」を参照してください。
 特許を侵害する際には回避策に関しては、A1リスク1の「5-4.日本特許権を侵害の回避策」を参照してください。

4.他の販売国で問題になる特許(又は実用新案)

(1) 中国で製造された自社製品は、中国から販売国に輸入されます。多くの外国の特許法は、輸入も特許の実施行為として、権利者はその販売国の特許権を侵害する物品を税関で輸入差し止めることができます。また、税関を通過後に自社製品がその販売国内で販売されますので、第三者の特許発明を自社製品が侵害していた場合には、特許権者は損害賠償又は販売差し止めを請求する可能性があります。
(2) そこでその販売国の特許の「物の発明」及び「方法の発明」の特許権侵害をしないかを検討する必要があります。「物の発明」及び「方法の発明」に関して、第三者が有する特許を調査し、特許を侵害するか否かの判断し、その特許を侵害する際には回避策を講じることになります。

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リスク4→
製品の部品を中国で購入する又は日本から中国に輸入するとともに、自社で製品を現地生産して、その製品を中国で販売又は他の販売国に輸出する際のリスク

回避策

1.概要

(1) 自ら中国国内で自社製品を製造することになるため、輸出取引や製造委託とは違った新たな問題が生じてきます。自ら製造する上でも、合弁企業を設立するケース、独立資本の子会社を設立するケース、又はM&Aで中国企業を買収して子会社化するケースがあります。
 いずれのケースであっても、営業秘密やノウハウが漏れることを想定して対策をしなければなりません。特に合弁企業の場合には、日本側のコントロールが効きにくいこともありますから、日本企業と現地法人とが、技術移転契約又は技術ライセンス契約を締結する際に、それらの契約の中で日本企業側が有する技術の漏洩対策について規定する必要があります。営業秘密に関しては、D1D2D3を参照してください。
 技術漏洩対策をしても、技術漏洩し、リバースエンジニアリングされた場合の対抗手段として、中国で特許権又は実用新案権を取得しておくことが望まれます。そうすれば、技術漏洩が不正競争行為としてみなされるかどうかに関わらず、権利侵害行為として他者の製品製造を停止させることができます。
(2) 中国国内で自社製品を製造する場合に、すべての部品を自社製造することは少ないと思います。日本企業から部品を輸入したり中国企業で製造された部品を購入したりして、自社製品を製造すると思います。
 この部品が中国で特許権又は実用新案権を侵害すると、その部品を組み入れた自社製品も侵害となります(法釈[2009]21号 第12条1項)。
 このため、貴社は輸入先の企業又は購入先の企業から部品を購入するに際して、その取引契約に第三者の中国特許権及び実用新案権を侵害しない旨の特許保証条項を入れることが好ましいでしょう。特許保証条項に関しては侵Q7を参照してください。
 製品を構成する部品の中には、貴社製品専用の部品があるかもしれません。そのような貴社製品専用の部品を貴社が設計しているのであれば、貴社がその部品に関する中国特許権及び実用新案権を調査する必要があるでしょう。

2.中国で問題になる特許(又は実用新案)

(1) 特許発明には「物の発明」、「方法の発明」及び「製造方法の発明」の3種類の発明があります。「物の発明」とは、製品自体又はその部品の発明です。「方法の発明」とは、製品又は部品の使用方法の発明です。「製造方法の発明」とは、製品又は部品を製造するための方法発明です。
 実用新案は、製品の形状、構造又はそれらの組合せについて出された実用に適した物の考案のみが保護対象です。
(2) 自社製品は中国の自社工場(子会社)又は合弁企業で製造されます。中国の「製造方法の発明」に関しても特許権侵害しないかを検討する必要があります。
(3) また、自社製品が第三者の中国特許を侵害しないことを確認する必要があります。中国専利法第11条では、「特許製品について製造、使用、販売の許諾、販売、輸入を行ってはならず」とあり、製品の「物の特許」や製品の「方法の発明」に関しても特許権侵害しないかを検討する必要があります。
(4) 中国で製造された自社製品が、中国で販売されず、他の販売国へ輸出されるのみの場合もあるでしょう。
 中国の「中華人民共和国知的財産権税関保護条例(2009年公布)」では、中国の知的財産権を侵害する物品は権利者が輸出を差し止めることができます(条例3条)。つまり、第三者の中国特許発明を自社製品が侵害していた場合には、特許権者が自社製品を輸出差し止めする可能性があります。
 そのため、中国の「物の発明」の特許権を侵害しないかを検討する必要があります。
(5) 自社は、第三者が有する中国特許を調査し、特許を侵害するか否かの判断し、その特許を侵害する際には回避策を講じることになります。
 第三者が有する中国特許の調査に関しては、A1リスク1の「2.中国特許(実用新案も含む)の調査」を参照してください。
 特許を侵害するか否かの判断に関してはA1リスク1の「3.中国特許権(実用新案権も含む)を侵害するか否かの判断」を参照してください。
 特許を侵害する際には回避策に関しては、A1リスク1の「4.中国特許権(実用新案権も含む)を侵害の回避策」を参照してください。

3.他の販売国で問題になる特許(又は実用新案)

(1) 中国で製造された自社製品は、中国から販売国に輸入されます。多くの外国の特許法は、輸入も特許の実施行為として、権利者はその販売国の特許権を侵害する物品を税関で輸入差し止めることができます。また、税関を通過後に自社製品がその販売国内で販売されますので、第三者の特許発明を自社製品が侵害していた場合には、特許権者は損害賠償又は販売差し止めを請求する可能性があります。
(2) そこでその販売国の特許の「物の発明」及び「方法の発明」の特許権侵害しないかを検討する必要があります。「物の発明」及び「方法の発明」に関して、第三者が有する特許を調査し、特許を侵害するか否かの判断し、その特許を侵害する際には回避策を講じることになります。

中国専利法
第11条 発明及び実用新案の特許権が付与された後、本法に別途規定がある場合を除き、いかなる部門又は個人も、特許権者の許諾を受けずにその特許を実施してはならない。即ち生産経営を目的として、その特許製品について製造、使用、販売の許諾、販売、輸入を行ってはならず、その特許方法を使用することできず、当該特許方法により直接獲得した製品について使用、販売の許諾、販売、輸入を行ってはならない。
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/regulation/20091001rev.pdf

最高人民法院による専利権侵害をめぐる紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈(法釈[2009]21号)
第12条 発明又は実用新案専利権を侵害した製品を部品として別の製品を製造する場合、人民法院はこれが専利法11条に定めた使用行為に該当すると認定しなければならない。当該別の製品を販売した場合、人民法院はこれが専利法11条に定めた販売行為に該当すると認定しなければならない。
http://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/interpret/20091228.pdf

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【A3】中国/ライセンス/特・実

A3におけるリスクは次の1項目です。
■日本企業が中国企業に特許ライセンスする際のリスク→リスク5

リスク5→
日本企業が中国企業に特許ライセンスする際のリスク

回避策

1.概要

日本企業が中国企業に技術を移転する場合、その技術が中国で実施されますので、中国法の法律には従わなければなりません。日本企業はライセンサーとして、その技術移転契約を慎重に作成し、強行規定に準拠しているかを確認すべきです。
 技術移転する際には、中国の契約法、特許法、独占禁止法等にも考慮すべきですが、特に、技術輸出入管理条例、中国最高人民法院が公布した技術契約紛争事件審理の法律適用における若干問題に関する解釈(以下「技術契約司法解釈」といいます。)に留意しなくてはなりません。
 技術輸出入管理条例の主な規定は強行法規と解されますので、当事者の合意によって排除することができません。
 中国契約法は、技術輸出入契約に関する行政法規に別段の定めがあるときはその規定に従う(契約法355条)と規定しており、技術輸出入管理条例が優先的に適用されます。
 技術輸出入管理条例第2条によれば、「技術輸出入」は、特許権の移転、特許出願権の移転、特許実施許諾、ノウハウの移転、技術サービス及びその他の方式の技術移転を含みます。このため、日本企業が中国企業に対する技術移転の多くは、中国の技術輸出入管理条例に従うことになります。

参考:
技術輸出入管理条例
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/admin/20011210.pdf
技術契約司法解釈
https://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/ip/law/pdf/interpret/20041216.pdf

2.特許(又は実用新案)ライセンス

中国契約法には、“第18章 技術契約(322条~364条)”という章があります。324条に技術契約の一般条項が記載されています。また技術契約に特許が含まれる場合には、特許発明の名称、特許出願人又は特許権者、出願日、出願番号又は特許番号、権利期間等を明記しなければならないとされています。
 特許ライセンスでは、以下の①から⑪を含むことが一般的と考えます。
① 名称
 通常は特許ライセンス(実施許諾)契約とすべきです。技術供与、技術援助などを含んた特許ライセンスであって、特許ライセンス契約という名称でも問題ありません。
② ライセンス技術の内容と実施態様
 ライセンスの対象となる特許等の特定が必要です。また、実施態様を明確にしておく必要があります。
 中国では、独占的実施許諾、排他的実施許諾及び普通実施許諾の3種類の実施態様があります。
 独占的実施許諾は、日本の専用実施権と同様で、ライセンシー(実施権者)のみが実施できる態様です。日本の専用実施権は登録を効力要件とするのに対し、中国の独占的実施許諾は効力要件ではありません。また、権利侵害者に対してはライセンシー単独で権利行使(差止・損害賠償の請求)ができます。
 排他的実施許諾は、ライセンサー(許諾者)及びライセンシーのみが実施できる態様です。権利侵害者に対してはライセンサーと共同で権利行使ができますが、単独では権利行使できません。
 普通実施許諾は、日本の通常実施権と同様で、複数のライセンシーに同一技術の実施を重ねて許諾できる態様です。
 また、ライセンシーによる普通実施許諾のサブライセンス(再実施許諾)の契約も可能です。
 さらに、当事者間で特許ライセンス契約を結んだ場合、契約発効日から3ヶ月以内に国家知識産権局に届出をしなければなりません(中華人民共和国専利法実施細則14条第2項)。
③ 技術供与の方法、供与する技術情報、ライセンスの期間、実施地域等の範囲
 技術供与側の日本企業としては、供与する技術情報・資料を明確にしておかないと債務の内容が不特定となって供与不履行の責任を問われかねません。できるだけ具体的に技術供与の方法、ライセンスの期間、地域、方法等を記載した方がよいです。
④ ライセンシー(実施権者)の秘密保持義務
 ライセンシーは供与を受けた技術及び関連情報について秘密保持義務があることを規定します。契約期間満了後も、公知技術になるまでは秘密保持義務を負うことを規定すべきです。
⑤ リスク負担
A. ライセンサーの義務
 技術契約司法解釈26条に、ライセンサーは供与する特許技術について、特許料(年金)を納付する等の特許権の有効性を維持する義務、第三者から特許無効審判の請求があれば積極的に対応する義務が明記されています。なお、これについては契約で別段の約定をすることもできます。
 また、技術輸出入管理条例の第24条には以下の規定があります。

「1項 技術輸入契約の譲渡人は、自分が提供した技術の適法な所有者であり、又は譲渡、使用許諾をする権利を有する者であることを保証しなければならない。
2項 技術輸入契約の譲受人が契約に従って譲渡人の技術を使用した結果、第三者に権利侵害で告訴された場合、直ちに譲渡人に通知しなければならない。譲渡人は通知を受けた後、譲受人と協力し、譲受人が受ける不利益を排除しなければならない。
3項 技術輸入契約の譲受人が契約に従って譲渡人が提供した技術を使用した結果、他人の合法的権益を侵害する場合、その責任は譲渡人が負う。」 

つまり第3項から、第三者の権利の侵害に関する保証責任を強制的にライセンサーに帰しています。この第三者の権利侵害に対する保証を担保するためには、中国での特許調査が必要です。調査の仕方は、中国A1リスク1を参照してください。
 さらに、技術輸出入管理条例の第25条には以下の規定があります。

「技術輸入契約の譲渡人は、提供した技術が完全で、誤りなく、且つ有効的であり、契約した技術的目標を達成することができることを保証しなければならない。」 つまり、ライセンサーは提供技術の目標達成を保証しなければなりません。

B.特許無効の場合
 ライセンスした特許が無効になった場合などの両者の負担などを決めます。
⑥ 改良技術成果の帰属等
 技術輸入契約の有効期間内に改良した技術は改良した側に帰属する(技術輸出入管理条例27条)と、規定されています。
⑦ 帳簿等の記帳義務、調査権
 ライセンシーがロイアルティ算定の基礎となる販売額等を記帳しておく義務と、ライセンサーがその帳簿等を調査できる権限があることを明記しておくべきです(契約法325条)。
⑧ ロイアルティ(実施料)及びその支払方法
 日本国内でも一般的なイニシアル・ロイアルティ、ランニング・ロイアルティ、ランプサム・ロイヤリティ等が認められます(契約法325条)。
 一方、ロイヤリティの支払方法には注意が必要です。中国から日本へロイアルティを送金するためには、技術輸出入管理条例に基づき技術契約の認定(この詳細は後述)を受けていなければなりません。また、中国から日本へのロイアルティの送金は(円又はドルによる送金となるため、ロイアルティを人民元で支払う条項にしていると、中国国内の外貨取扱銀行から送金できません。
 また、「② ライセンス技術の内容と実施態様」で記載した、特許権の実施許諾の届出証も、ロイアルティの送金に必要な書類となります。
⑨ 違約金又は損害賠償の計算方法
 債務不履行による違約金・損害賠償額の計算方法を定めることができます。履行遅滞の場合の解除のための猶予期限は、催告後30日以上を合理的期間と規定されています(技術契約司法解釈15条)。
⑩ 紛争解決の方法
 準拠法は、中国企業に中国特許ライセンスを与え中国で発明を実施するのであれば、準拠法は中国になります。
 外国の裁判の判決を自国の裁判所が承認して自国内で強制執行を許すか否かを決めますが、この外国の判決を承認するか否かについて、外国との間で相互に承認しあう二国間条約があります。現在、日本と中国には相互承認の条約がありません。中国の裁判所の判決は日本では効力がなく、中国の判決によって日本の財産に対して強制執行できません。同様に、日本の判決も中国では効力は認められていません。
 一方、国際仲裁については、加盟国の仲裁判断を互いに認め合う国際条約(ニューヨーク条約)があり、この国際条約に日本も中国も加盟しており、日本と中国では互いに相手国の国際仲裁の仲裁判断に基づく自国での強制執行が可能です。
 このため紛争解決のための取り決めとして、仲裁を選択するのが一般的です。仲裁条項は、仲裁合意と仲裁地・仲裁機関等を規定しておく必要があります。日本の仲裁機関として、日本知的財産仲裁センターがあります。
http://www.ip-adr.gr.jp/
⑪ 名詞及び技術用語の解釈
 日本語の漢字と中国語の漢字との意味が違う場合もあるので注意しましょう。

3.技術輸出入管理条例に基づき技術契約の認定

(1) 技術輸出入管理条例では、技術内容は、3種類(輸入の禁止・制限・自由)に分類して審査されます(8条、10条、17条)する制度が採用されています。
 中国輸入禁止・輸入制限技術は、その目録を参照してください。
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/section/20071105.pdf
(2) 輸入自由技術は、輸入禁止技術及び輸入制限技術以外の技術です。
輸入自由技術の輸入手続は、まず技術輸入契約を締結すると同時に効力を生じます。そして、契約書の副本・当事者の地位証明書等の必要書類を添えて商務部等に技術輸入契約登録を申請(オンライン申請)します。労働日3日内に登録され、技術輸入契約登録証が発行されます。

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【B1】中国/輸出/意匠

中国への進出形態が輸出の場合において、意匠の分野で考えられる主なリスクと、それらの回避策は次の3項目です。
中国・輸出/或いは自社が現地製造して一部または全部を現地で販売
■他社の意匠権を侵害するリスク→リスク1
■他社による自社意匠の模倣のリスク→リスク2
中国・現地で自社製造して全て日本へ輸出
■他社の意匠権を侵害するリスク→リスク3

リスク1→
他社の意匠権を侵害するリスク
(中国・輸出/或いは自社が現地製造して一部または全部を現地で販売)

製品を輸出し、他社の権利を侵害した場合、行政ルートによる現地への販売・輸入禁止、民事ルートによる差し止め、損害賠償、影響の消去、謝罪広告損害賠償などを請求されるリスクがあります。

回避策

①先行意匠の調査
 日本ですでに販売実績があり新規性が失われている場合、すなわち現地の第三者が有効な意匠権取得できない場合でも、輸出の前に、現地における先行意匠の調査を行っておく方が安心です。
 中国の意匠制度(特許制度によって「外観設計」として登録される)においては、実体的審査を行わないため、新規性などの登録要件を満たさない意匠も形式的に登録されている場合があります。
 中国の登録意匠の調査は中国特許庁(SIPO)のwebサイトで行うことができ、また日本特許庁の「新興国等知財情報データバンク」にその操作方法が説明されていますが(http://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/1597/)、意匠権の範囲は、意匠の形態のみならず、登録を受けた物品概念によっても影響されますから、現地法律事務所などの現地代理人に依頼する方が望ましいでしょう。
②形態が似ている登録意匠が見つかった場合の対応
 調査の結果、登録意匠が見つかった場合は、輸出の中止を含めて、対応策が必要になります。
 (ⅰ)権利範囲の判断 日本と同じように、中国でも意匠権は類似範囲まで及ぶ一方、日本では基準としない「需要者の混同」も考慮しますから、もし相手方の意匠が中国市場で広く認識されているとしたら権利範囲も広くなる可能性がありますので注意が必要です。いずれにしろ、相手方の権利範囲について現地代理人にコメントを求める必要があるでしょう。
 (ⅱ)無効宣言の請求 何人も、中国特許庁審判部(「復審委員会」)に対して、無効宣告請求書及び提出することにより無効宣告を請求することができます(中国専利法45条)。登録要件としての新規性は、中国においても世界公知主義を採用しています(中国専利法23条)。もし、同登録意匠の意匠出願日が、日本での意匠公報発行日や製品の新聞・雑誌掲載日より後であれば、そうした資料を準備しておきましょう。実際に無効審判を起こさないまでも、相手と係争になった場合にそれらを証拠として示すことができます。
 (ⅲ)先使用権 もし、同登録意匠の意匠出願日が、輸出の開始時より遅い場合は、先使用権を主張することもできます(中国専利法69条)。そのためには、輸出開始日が確認できるインボイスなどを準備しておくことが必要です。
③輸出先との調整
 相手国の取引先からの求めに応じて輸出する場合は、同取引先に登録意匠の調査責任を義務付け、また意匠権侵害の免責を契約に規定することも有効でしょう。

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リスク2→
他社による自社意匠の模倣のリスク
(中国・輸出/或いは自社が現地製造して一部または全部を現地で販売)

製品が相手国の市場において人気を博する場合は、当然にして現地の第三者によって模倣されるリスクが高まります。事前の相手国での意匠登録の手段を含めて検討を行う必要があるでしょう。

回避策

①現地での意匠登録
 もし、日本で意匠出願し、6か月経過前であれば、優先権を主張して意匠出願を行うことができます。日本の出願後、日本での販売等によって公知とっていた場合であっても、日本の出願後6か月間与えられる優先権は有効です。
 一方、優先権の主張が行えない状態で公知になっていると、中国における新規性喪失の例外規定は本人の実施による公知をその対象としておらず(中国専利法第24条)、日本と比べて限定されていますから、この制度を利用しての登録は難しいことになります。なお、中国の意匠登録に際しては実態審査がありませんからら、この状況でも見かけ上登録になりますが、無効理由を内包しているためお勧めできません。
②現地の意匠登録(外観設計の特許権)がある場合の対応
 現地において意匠権がある場合は、警告書送付、民事訴訟、行政ルートによる救済等の対応を取ることができます。
 中国のユニークな救済制度が、行政ルートによる救済制度です。意匠権に基づいて行う場合、その管轄機関は地方知的財産権局で、商標権の管轄を行う地方商務局事務所と異なります。
 なお、模倣品がデッドコピーであれば問題ありませんが、変形が行われている場合、類似の範囲に入るかどうかについて検討が必要な場合があります。中国においては市場における需要者の混同を基準にする場合があり、形態そのものの類否に加えて、現地での販売実績が影響することがあります。
③現地の意匠登録 (外観設計の特許登録)がない場合の対応
 中国の不正競争防止法である「反不正当競争法」には、「無断で周知商品特有の名称、包装、装飾又は周知商品と類似した名称,包装,装飾を使用し,他人の周知商品と混同させ、需要者に当該周知商品であると誤認させること」が不正競争行為として明記されており(反不正当競争法5条2項)、この「名称、包装又は装飾」に商品の形状自体が含まれる可能性があります。

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リスク3→
他社の意匠権を侵害するリスク
(中国・現地で自社製造して全て日本へ輸出) 

自社の海外工場で製造し、すべてを日本に輸出し、現地では一切販売しない場合であっても、製造行為自体が意匠の実施行為となりますから、その国に意匠権がある場合は権利侵害の問題が生じ、製造差し止め、損害賠償請求などを請求される可能性があります。また、中国では、税関において輸出禁止を請求される場合もあり、注意が必要です。

回避策

B1リスク1の回避策①、②と同様です。
 特に、日本における販売スケジュールが決まっている場合は、税関において輸出が禁止されるとその計画に支障をきたす可能性があるため、事前の意匠調査を行う方が安心でしょう。

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【B2】中国/製造委託/意匠

B2におけるリスクは次の5項目です。
中国・現地会社へ製造委託して自社子会社が一部または全部を現地で販売
■他社の意匠権を侵害するリスク→リスク4
■他社による自社意匠の模倣リスク→リスク5
■現地販売品が日本に輸入されてしまうリスク→リスク6
中国・現地会社へ製造委託してすべてを日本に輸出
■他社の意匠権を侵害するリスク→リスク7
■現地会社が製造委託品を現地販売してしまうリスク→リスク8

リスク4→
他社の意匠権を侵害するリスク
(中国・現地会社へ製造委託して自社子会社が一部または全部を現地で販売)

現地会社へ製造委託し、受領して自社の現地子会社が一部を販売した場合、製造行為者としての製造委託会社とともに、販売行為者としての自社子会社が当事者となります。

回避策

B1リスク1①、②と同様の対応が必要です。現地で意匠権の侵害問題が生じた場合、現地の製造委託会社の他に自社子会社が侵害当事者になる可能性があります。また、侵害問題が生じると、製造委託契約の履行ができない可能性もありますから、その場合の対処を盛り込んでおく必要もあるでしょう。

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リスク5→
他社による自社意匠の模倣リスク
(中国・現地会社へ製造委託して自社子会社が一部または全部を現地で販売)

自社が現地で製造する場合と異なる点は、現地会社へ製造委託した場合にした場合は、製品の外観情報を現地会社が共有することにあります。この情報管理が必要となってきます。

回避策

貴社から製品仕様を指示して製造委託する場合は、現地における意匠登録を行うことが必要です。現地会社を通して情報が流通したとしても、意匠権を確保していれば、その権利に基づいて、第三者の模倣を阻止することができます。
 なお、意匠権の取得は、その反面、公開されることを意味します。特許技術であれば登録を行わず、現地会社との契約での営業秘密として取り扱う選択肢も理論上あり得ますが、意匠は外観で、日本において流通すれば他人の目に触れるものですからこの選択肢は難しいと思われます。
 実際に、模倣品が発見された場合は、B1リスク2の①~③の対応を取ることになります。

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リスク6→
現地販売品が日本に輸入されてしまうリスク
(中国・現地会社へ製造委託して自社子会社が一部または全部を現地で販売)

特に、現地での販売価格が日本での販売価格より低額に設定されている場合、現地で販売された正規品が日本に輸入されてしまう場合があります。いったん現地市場に製品が流通してしまうと、これをコントロールする術はありませんので、日本へ輸入される際に、それを阻止する必要があります。

回避策

日本で有する意匠権に基づいて、自社が外国で製造した製品の輸入を阻止しようとするには一定の準備が必要です。
 原則として、外国の市場において自社が一旦流通させた製品は真正商品と呼ばれ、たとえ、その製品ついて特許権を有していたとしても、輸入差し止めなどの権利行使をすることはできないことが最高裁判決で判示されており、意匠権についても同様な結論が類推されます(「BBS事件」平成7(オ)1988))。
 しかし、「当該製品について販売先ないし使用地域から我が国を除外する旨を譲受人との間で合意した場合」は例外であると判示しています。現地製造会社との間で販売先を現地市場のみに限定する取り決めをしたうえで、予め現地製品やそのパッケージに「本製品の販売・譲渡は〇〇国においてのみ有効であり、日本を含む他国への輸出はそれぞれの国で取得された当社の特許権・意匠権を権利侵害する」旨を表記することが望ましいと思われます。同製品が日本に輸入された際に、税関等で権利行使できる可能性を確保することができます。(侵Q26参照)

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リスク7→
他社の意匠権を侵害するリスク
(中国・現地会社へ製造委託してすべてを日本に輸出)

現地で製造行為が行われる限り、製造委託した現地会社が意匠権侵害で警告される可能性はあります。

回避策

B1リスク1の回避策①、②と同様です。
 この場合、自社が侵害当事者となる可能性はありませんが、対応費用の分担などについて契約で定めておく必要がありますし、侵害問題が生じると、契約の履行ができない可能性もありますから、その場合の対処を盛り込む必要も生じるでしょう。

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リスク8→
現地会社が製造委託品を現地販売してしまうリスク
(中国・現地会社へ製造委託してすべてを日本に輸出)

現地会社が契約品以上の数を生産し、それを自ら現地で販売する、というような事例も起こり得ます。本来自社がコントロールすべき製品が、現地の市場において自社の手を離れて流通することになってしまいます。特に、そういった製品が日本に輸入されてしまうと、現地市場の問題だけでなく、日本市場の問題にも波及してしまいます。

回避策

製造委託契約によって、かかる事態が生じた場合にペナルティを課すことはもちろんですが、現地において意匠権を取得し、現地会社に対して意匠権侵害という牽制を行うことも必要です。
 また、製造委託契約で「契約等で現地製造会社から全製造品を自社が引き渡しを受ける」旨や、「現地市場での販売を許諾していない」旨を明確にしておくことも重要です。かかる製品が日本に入ってきた場合は、たとえ品質において同一のものであっても、これら契約により真正商品とは認められませんから、輸入差止において日本の意匠権を行使することができます。

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【B3】中国/ライセンス/意匠

中国への進出形態がライセンスの場合において、意匠の分野で考えられる主なリスクと、それらの回避策は次の通りです。
B3におけるリスクは次の4項目です。
中国・ライセンス
■現地ライセンス品が他社の意匠権を侵害するリスク→リスク9
■現地ライセンス品の模倣のリスク→リスク10
■現地ライセンス品が日本に輸入されてしまうリスク→リスク11
中国・共同開発
■成果物の権利帰属にともなうリスク→リスク12

リスク9→
現地ライセンス品が他社の意匠権を侵害するリスク

現地会社へのライセンスは意匠権の実施行為とならないため、自者が侵害当事者になることはありません。それでも、ライセンス対象品が現地において他者の権利を侵害してしまうと、現地会社は実際の製造販売ができないためライセンス内容の履行について支障が生じる可能性があります。

回避策

ライセンスを得ようとする現地会社が自主的に意匠調査を行うことが一般的と思われますが、第三者との侵害事件が生じたときは、契約法の適用(中国における自社現地法人を介して中国企業に間接的にライセンスを行う場合)または技術輸出入管理条例の適用(中国企業に直接的にライセンスを行う場合)を受けます。
 契約法においては、「受入者が契約の約定に従って専利を実施し,ノウハウを使用した結果,他人の合法的権益を侵害した場合,移転者がその責任を負う。但し当事者は別段の取決めがある場合はこの限りではない。」(契約法353条)と規定され、但し書きに示す免責条項の規定を設けていますが、実際の契約交渉ではこの免責条項を入れることは難しい可能性があります。また、技術輸出入管理条例ではかかる免責条項の規定を認めていないのに加えて「技術輸入契約の受入側が契約の約定に従って提供側の技術を使用した結果,第三者から権利侵害の主張がなされた場合,直ちに提供側に通知しなければならない。提供側は通知を受けた後,受入側と協力し,受入側が受ける不利益を排除しなければならない。」(技術輸出入管理条例24条2項)と規定されており、ライセンスを供与した自社が関与する義務を負わせています。したがって、外国の会社である自社が直接的に現地会社へライセンスする場合には、第三者の権利の侵害対策を真剣に考える必要があります。(先行意匠の調査について、B1リスク1参照)

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リスク10→
現地ライセンス品の模倣のリスク

第三者によるライセンス品の模倣が発生した場合、その対策を取らなければ現地ライセンス会社との信頼感を喪失することになりますし、模倣品が日本に輸入されて国内市場に影響を与えないとも限りません。一方、現地において、訴訟当事者としてかかわる場合には人的資源やコストも決して小さくありませんから、ライセンス収入とのバランスを考える必要があります。

回避策

現地における救済制度やコスト、さらに権利侵害判断は、いずれも日本と異なる場合が多く、現地ライセンス会社を通じて現地の専門家に見解を仰ぐ必要があります。その際の費用分担について予め契約で規定しておく必要があるでしょう。
 また、一方で当事者はあくまで現地ライセンス会社ですから、たとえ自社が現地の意匠権を有していたとしても紛争当事者となることは避けるべきだと思われます。そのため、その場合に、現地ライセンス会社が意匠権の行使者となるべき地位を与えるなどの対策などを考慮しておくことが必要でしょう。
 中国の場合は、「特許権者又は利害関係人」(外観設計(意匠)に関する特許権者含む)が訴訟を起こすことができると規定されていますので(中国専利法第60条)、裁判所に有効なライセンス契約を示すことで現地ライセンス会社に当事者として侵害対策を取ってもらうことができると思われます。なお、その際、自社が負担するコストに関しては、ライセンス収入の一定割合までといったキャップをはめるなど、現地ライセンス会社との取り決めが必要でしょう。

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リスク11→
現地ライセンス品が日本に輸入されてしまうリスク

現地会社への製造委託のB2リスク6と同じように、価格や品質の異なる現地ライセンス品が日本に輸入されてしまう可能性があります。現地ライセンス会社との契約で日本への輸出を行わない旨の規定を締結したとしても、いったん現地市場に製品が流通してしまうと、それをコントロールすることはできません。同様に日本へ輸入される際に、日本の意匠権に基づいてこれを規制するしかありません。

回避策

中国においては、現地の中国企業とライセンス契約を締結した場合、中国における自社現地法人を介して中国企業に間接的にライセンスを行う場合は、契約法(司法解釈第10条)が、及び中国企業に直接ライセンスを行う場合は技術輸出入管理条例第29条が適用されます。いずれの場合も、販売経路、輸出市場等を制限することは,無効である旨規定しています。ライセンスを許諾する場合は、当然、日本への輸出を制限したいことは当然ですが、現地の弁護士等にその約定の有効性を確認する必要があります。
 なお、ライセンス会社が直接、日本への輸出を行わなくても、市場における転得者が日本への輸出を行う場合もあります。これを防ぐために、現地ライセンス品のパッケージに「本製品の販売・譲渡は〇〇国においてのみ有効であり、日本を含む他国への輸出はそれぞれの国で取得された当社の特許権・意匠権を権利侵害する」旨の英語または日本語表記を行うことで、日本の意匠権により、その輸入や販売等の差し止めを請求できる可能性がありますので契約によりこの表記を義務付けることを検討するとよいでしょう。(B2リスク6参照)

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リスク12→
成果物の権利帰属にともなうリスク

共同開発の成果物について、その権利帰属を、契約において明確にしておく必要があります。意匠権を共有とした場合に、他の共有者の同意の有無について、各国法律で異なることがありますから、その点に注意が必要です。

回避策

成果物は営業秘密として互いに秘密状態で管理するという選択肢がありますが、外観である意匠については営業秘密化することはできません。したがって、意匠について、取り得る選択肢は次の2つです。
 (ⅰ)それぞれの国で意匠権を共有する。
 (ⅱ)それぞれの国で単独で意匠権を管理する。
 (ⅰ)を選択した場合、中国においては、当事者間で取り決めの無い場合は、それぞれが単独で実施することができるのみならず、それぞれが単独で他者に実施を許諾できる(但し、ライセンス料は共有者で分配する)と中国専利法に規定されています(同法第15条)。共有者の単独実施については日本の意匠法と同様ですが(意匠法第36条で準用する特許法第73条第3項)、他者へのライセンスは原則として単独で行えない日本の意匠法(同1項)と異なりますから、日本での取扱いとそろえるためにも、単独実施及び第三者への単独許諾についての取り扱いを共同開発契約によって明確にしておくべきだと思われます。
 なお、第三者による侵害があった場合、民事訴訟などの権利行使はそれぞれの共有者が単独で行うことができます。訴訟が提起された場合、裁判所は共有者に対して通知する義務があり、他の共有者は参加人として訴訟に関わることが可能です。
 (ⅱ)を選択した場合、意匠の創作者が共同開発会社にいる場合は、日本での意匠権出願の際に、名前を創作者として明記し、意匠登録を受ける権利を承継する書面を受領しておきましょう。日本の意匠法には権利の移転手続きが規定されており (日本意匠法26条の2)、将来的に意匠登録を受ける権利の承継が争いになったときに、同規定によって持分が相手方に移転する可能性があるためです。なお、逆に中国において同様な規定は存在しません。

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【C1】中国/輸出/商標

C1におけるリスクは次の2項目です。
■他社の権利(商標権)を侵害するリスク→リスク1
■他社による自社の権利(商標権あり、なし)の侵害のリスク→リスク2

リスク1→
他社の権利(商標権)を侵害するリスク

中国へ製品を輸出し、他社の権利を侵害した場合、自社商品の販売停止、損害賠償、謝罪広告を請求されるおそれがあります。訴訟になった場合には訴訟費用も非常に高額となりますし、損害賠償については懲罰的損害賠償が認められるため、高額となる可能性があります。また、中国から外国への輸出を差し止められることも考えられます。

回避策

中国へ製品の輸出を開始する前に、是非商標調査を行うべきです。
もし、他人の同一・類似商標が発見された場合には、自社の商標を変更するか、あるいは商標権を取り消す、交渉をして権利を譲り受ける等の方法を検討する必要があります。

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リスク2→
他社による自社の権利(商標権あり、なし)の侵害のリスク

他社に商標権を侵害されるということは、多くの場合、模倣品が出回るということです。模倣品が出回ると、自社商品が売れなくなるばかりか、イメージダウンにつながり、長期的に見て、ビジネス自体が危機に瀕することになりかねません。

回避策

まず前提として、商標権を獲得していることが絶対的に重要です。中国へ進出する場合には、必ず商標権を取得するようにしてください。
(商標権がある場合の対応)
自社商標権が侵害された場合、侵害の態様にもよりますが、警告書送付、民事訴訟、刑事訴訟、行政摘発等のアクションをとることができます。
(商標権がない場合の対応)
商標権がないとすると不正競争防止法による侵害阻止を検討せざるを得ませんが、周知性の立証等が必要となり、かなりハードルが高くなります。中国へ進出する際にはまず商標登録をすることをお勧めします。

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【C2】中国/製造委託/商標

C2におけるリスクは次の4項目です。
■現地での商標権を侵害するリスク→リスク3
■外国で製造した製品がその国の税関からの輸出時に差し止められるリスク→リスク4
■外国で自社のブランドが盗用されるリスク、コピー商品が出回るリスク→リスク5
■外国から輸入した製品が日本の権利を侵害するリスク、日本の税関で差し止められるリスク→リスク6

リスク3→
現地での商標権を侵害するリスク

製造委託であったとしても、他人の商標権を侵害した場合には商標権侵害を問われる可能性があります。また、販売する予定だった製品を入荷できず、ビジネス上多大な損害を被るおそれがあります。

回避策

現地での商標調査を行うことをお勧めします。あるいは、委託先に対して他人の商標権を侵害しない旨の誓約書を提出させることもできますが、自社の製品を製造するという責任がありますから、なるべく自社で商標調査を行うべきだと思われます。
また、商標登録を取得しておくべきです。

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リスク4→
外国で製造した製品がその国の税関からの輸出時に差し止められるリスク

中国で他人の商標権を侵害する製品は中国からの輸出時に差し止められる可能性があります。製品輸出が差し止められた場合、すべての製品が没収されるおそれがあります。

回避策

中国でOEM生産をする場合には事前に商標調査をし、商標権も取得することをお勧めします。
さらに、権利を取得しても中国で製造するだけの場合には、商標が不使用であるとして登録が取り消される可能性がありますので、一定の使用も合わせて行うことが望まれます。

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リスク5→
外国で自社のブランドが盗用されるリスク、コピー商品が出回るリスク

外国では特に、市場での模倣品の発見が遅れることがあります。国内のすべての市場を見回ることは難しいので、模倣品が出回っても発見までに時間がかかったり、発見されないこともあります。また、外国で委託製造を行う場合、よくあるのは委託先の工場が契約した量より多くの製品を製造して横流しすることです。このようにして、本物と同一の模倣品(横流し品)が出回ることになります。

回避策

模倣品を発見するためには、定期的に市場調査を行うことをお勧めします。現地に社員がいれば、自社で行い、現地に社員がいない場合には代理店、あるいは調査会社を通して行えると思います。
 展示会、見本市には業者が集まり、模倣品の取引が行われることもあるので、特に注意が必要です。
 委託製造を行う場合には、委託先の製造管理に留意する必要があります。生産量を管理する方法として、例えば証紙やホログラムシールを配布し、製品に貼る等があります。
コピー商品が出回った場合、見過ごすことができないならば、行政摘発、刑事摘発等をしなければなりません。
 製造委託契約において、契約した数量以上の商品を製造したとしても販売してはならないという取り決めをしておく必要もあるでしょう。

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リスク6→
外国から輸入した製品が日本の権利を侵害するリスク、日本の税関で差し止められるリスク

外国では何ら権利を侵害しない商品でも、日本国内では侵害となることがあります。そのような場合、日本の税関で輸入時に差し止められたり、日本国内で権利侵害の問題が生じたりすることになります。

回避策

中国で製造する製品を日本で販売する前に、日本での商標調査をすることをお勧めします。

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【C3】中国/ライセンス/商標

C3におけるリスクは次の6項目です。
■ブランドイメージが壊れるリスク→リスク7
■出所の混同のリスク→リスク8
■冒認の商標登録をされるリスク→リスク9
■侵害品に対する対応をどうするかというリスク→リスク10
■当該国における商標ライセンス登録に関するリスク→リスク11
■®表記に関するリスク(登録されていない商標に®を付けた場合のリスク→リスク12

リスク7→
ブランドイメージが壊れるリスク

もしもライセンシーの商品が粗悪だったり、貴社の商品のイメージと違うものだった場合には、貴社のブランドイメージが壊されてしまいます。

回避策

ライセンシーが、信頼できる企業か、また、ライセンス料を受け取る場合には、確実に支払が見込める企業であるかどうかを見極める必要があります。
 ライセンス契約において、商標の使用の方法について具体的に定め、定期的に品質検査をしたり、新商品は事前に点検することができるような条項も盛り込むことをお勧めします。これによって、貴社の製品基準を満たす製品についてのみライセンスすることができます。
 ハウスマーク(社標)は貴社の重要な財産であり、もしもライセンスするのであれば、細心の注意が必要です。ライセンスを行う際には、独占的使用権とするかどうかについても良く検討してください。独占的使用権とした場合には、同種の商品について他の者にはライセンスできなくなります。

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リスク8→
出所の混同のリスク

ライセンスをした場合、ライセンシーの商品との間で出所の混同が生じることがあります。このような事態が生じると、市場で需要者が混乱し、結局は貴社商品のブランド価値の失墜を招きますので、問題です。

回避策

ライセンス契約において、出所の混同が生じないよう定めておくことが必要です。
また、商品に「XXは○○株式会社の商標です」のような記載をするよう義務付ける方法もあります。

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リスク9→
冒認の商標登録をされるリスク

ライセンシーがライセンスを受けている商標を勝手に出願、登録するということがしばしば見受けられます。

回避策

契約書において、ライセンシーが商標出願をしてはならない旨を明記することをお勧めします。また、もしも出願した場合には、速やかに貴社へその出願、登録を譲渡するように規定することも考えられます。

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リスク10→
侵害品に対する対応をどうするかというリスク

ライセンスによって商品の幅が広がることにより侵害品が出回りやすくなることも考えられます。

回避策

ライセンシーが侵害品を発見した場合に、貴社へ通報するように契約書で記載しておいたほうがいいと思います。その上で、権利行使を誰が主体となって行うか、費用は誰が支払うかについて決めておきます。ライセンシーは権利行使できない場合も多いので、その場合には権利者である貴社が権利行使しなければなりません。

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リスク11→
当該国における商標ライセンス登録に関するリスク

中国では、現在、ライセンシーによる登録商標の使用も、真正な使用と認められています。ライセンスの登録の有無は通常問題となりません。
しかし、ライセンス料を日本企業に支払う場合等、ライセンスの登録が必要な場合もあります。

回避策

できる限りライセンスの登録をしておくことが望ましいと思われます。

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リスク12→
®表記に関するリスク(登録されていない商標に®を付けた場合のリスク

登録されていない商標に®を付けた場合、罰則を受けることがありますので、注意が必要です。

回避策

商品及びパッケージにおける®の使用には十分に注意する必要があります。また、登録商標を変更して使用することも、登録取消の理由となりますので、注意してください。

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【D1】中国/輸出/営業秘密

D1におけるリスクは次の1項目です。
■自社の現地社員が営業秘密を流出させるリスク→リスク1

リスク1→
自社の現地社員が営業秘密を流出させるリスク

自社の現地支店若しくは現地子会社が雇用した現地社員が、営業秘密を流出させるリスクがあります。

回避策

まず、WTOのTRIPS協定によって、加盟国には「開示されていない情報の保護」が求められています(同協定39条)。WTO加盟国である中国も、この条約に従い、営業秘密を反不正当競争法によって保護しています。
 反不正当競争法10条に、営業秘密とは「公衆に知られていない、権利者に利益をもたらすことができ、実用性がある、権利者が秘密保守措置を取った技術情報及び経営情報」であると定義されています。
 すなわち、「公知でないこと」「利益性・実用性があること」「秘密管理措置を取っていること」「技術情報・経営情報であること」という4つの要件が求められています。
 まず、保護対象は、上述の通り「技術情報・経営情報」ですから、日本で営業秘密として保護される、技術データ、設計図、生産ノウハウといった技術情報も、顧客情報、接客マニュアル、食品レシピといった経営情報も保護される可能性があります。
 但し、リバースエンジニアリングなどによって習得される「自習研究開発或いは、公開ルートで取得した商品に対して解体、測定、分析など技術手段を通じて取得した技術情報」は除かれる旨,規定されます(反不正当競争法10条2項)。
 「秘密管理措置」の具体例としては、最高人民法院による「不正競争の民事案件の審理における法律適用の若干問題についての解釈」(2007年1月12日公布)で、次のような措置が例示されています(同規定11条)。
 ①秘密情報の知る範囲を限定し、知るべき関連人にその内容を告知すること。
 ②秘密情報を保持する媒体に鍵をかけるなどの防犯措置を講じること。
 ③秘密情報を保持する媒体に機密保持の標識を表記すること。
 ④秘密情報を暗証化すること。
 ⑤秘密保持契約を締結すること。
 ⑥秘密に関連する機械、生産現場の来訪者制限を行い、または秘密保持を要求すること。
 ⑦その他の合理措置
 これを具体的に当て嵌めてみると次の通りです。まず、何が秘密情報なのかを明確にするために、従業者との間で秘密保持契約を結ぶ必要があります。雇用契約の中に漠然とした秘密保持義務を謳うだけでは不十分ですから、注意が必要です(上記①、⑤)。
 なお、従業員との秘密保持契約の文例は、「JETRO中国における営業秘密管理」
(2012年12月) P.51に掲載されています。
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07001298/management_of_trade_secret.pdf
 加えて、秘密保持契約で秘密情報を特定したとしても、普段の営業活動の中で実際に秘密管理措置を行っていなければ実効はありません。例えば、秘密保持契約の中で「秘密保持契約の対象となる情報は、公知ではなく、会社内において知り得た情報である」と謳っていたとしても、具体的な秘密管理措置がなされていなければ、たとえ雇用者がかかる情報を社外に持ち出したとしても、反不正当競争法に該当する行為とならない可能性があります。情報にアクセスする権限者を限定し、また、それが秘密情報であることを表記する等について、社内でルールを作成し、それを確実に実行する体制が必要です(上記②乃至④、⑥)。
 従業者が秘密保持契約に違反した場合は、契約書に記載された損害賠償の支払い義務を負うほか、反不正当競争法により損害賠償請求が認められ(同法20条)、、民法通則により差止請求も認められます(同134条1項1号)。また同様の規定が労働法102条、労働契約法90条にも規定されています。さらに、雇用した従業員と離職後一定期間の競業避止契約を結ぶこともできますが、労働法は使用者に経済的補償金の支払い義務を課しますから注意が必要です(労働法23条2項)。なお、中国の反不正当競争法による救済の可能性を確保するために、秘密保持契約において、準拠法を単純に日本のみに限定することについては注意が必要です。

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【D2】中国/製造委託/営業秘密

D2におけるリスクは次の1項目です。
■製造委託契約の下で現地会社へ供出した技術的なノウハウ・データが現地会社に利用され、または漏えいするリスク→リスク2

リスク2→
製造委託契約の下で現地会社へ供出した技術的なノウハウ・データが現地会社に利用され、または漏えいするリスク

国内で製造をしていたものを現地会社へ製造委託した場合に、同製品についての品質を維持するために技術データや生産ノウハウを提供する必要が生じます。同製品の製造委託契約が終了しても、それら技術データ等を利用して同等の製品を作り続けられてしまう可能性があります。

回避策

中国の反不正当競争法において営業秘密は「公衆に知られていない、権利者に利益をもたらすことができ、実用性がある、権利者が秘密保守措置を取った技術情報及び経営情報」と定義されますから(同法10条)、技術データ、設計図、生産ノウハウといった技術情報もこれに含まれます。営業秘密として保護されるために要求されるためのガイドラインとして、最高人民法院から「不正競争の民事案件の審理における法律適用の若干問題についての解釈」(2007年1月12日公布)が出されています(D1リスク1参照)。かかるガイドラインには、大きく分けて「秘密情報を特定すること」と「秘密管理措置を実行していること」が要求されています。
 まず、何が秘密情報なのかを特定するために、現地会社と製造委託契約を行う際に、秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement )を並行して結ぶことが必要です。日本企業と中国企業との秘密保持契約の文例は、次の「JETRO中国における営業秘密管理」(2012年12月)P.46に掲載されています。
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07001298/management_of_trade_secret.pdf
 この契約の中で、提供した秘密情報の目的外使用を禁止する旨を明示することで、秘密情報が相手方企業に自由に使用されてしまうことを、一応は防ぐことができます。
 なお、ここで注意が必要なのは、同法律で「自習研究開発或いは、公開ルートで取得した商品に対して解体、測定、分析など技術手段を通じて取得した技術情報」は秘密情報から除外されることです。リバースエンジニアリングで得ることが難しい、生産上の工程管理やソースコードプログラムなどを除き、回路図や内部構造など販売された製品から容易に分析されてしまうものは営業秘密に該当しない可能性があることです。したがって、かかる技術情報については、特許権等の権利取得を検討することも必要となるでしょう。
 次に、特定した秘密情報について秘密管理措置を実行する必要があります。具体的には自らも社内規定を設けて、秘密情報であることの表記、アクセス制限、そして暗証化といったような措置を取らなければなりません(D1リスク1参照)。また、製造委託契約において、現地会社に対して、同様な、より具体的な管理義務を規定することも有効だと思われます。
 現地会社が秘密保持契約に違反した場合は、契約書に記載された違約金の支払い義務を負うほか、また、反不正当競争法により損害賠償請求が認められ (同法20条)、民法通則により差止請求も認められます(同134条1項1号)。
 また、日本の不正競争防止法は、外国における秘密情報の漏えいも対象としますので、国内法に基づいて秘密情報により生産された製品が国内に輸入された場合の差止請求(同法3条)や秘密漏えいによって蒙った損害賠償請求(同法4条)を申し立てることもできます。さらに、平成27年の法律改正により、同法による刑事罰の適用範囲が国外における行為者まで拡大されています(同法21条3項)。なお、日本の不正競争防止法による実効は相手国内に及びませんから、中国の反不正当競争法による救済の可能性を確保するために、秘密保持契約において、準拠法を単純に日本のみに限定することについては注意が必要です。

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【D3】中国/ライセンス/営業秘密

D3におけるリスクは次の3項目です。
■ライセンス契約の下で現地会社へ提供した営業上のノウハウ・データが現地会社から漏えいするリスク→ リスク3
■共同開発契約の下で相手会社へ提供したノウハウ・データが開発製品や事業以外に相手会社に利用されるリスク→ リスク4
■共同開発契約の下で相手会社から提供を受けたノウハウ・データを利用したとして相手会社から訴えられるリスク→ リスク5

リスク3→
ライセンス契約の下で現地会社へ提供した営業上のノウハウ・データが現地会社から漏えいするリスク

国内で成功した営業に関するビジネスモデルをブランドとともに現地会社へ有償でライセンスする場合があります。この際、ブランドは商標登録を行うことによって管理することができますが、登録対象とならない顧客情報といったデータや接客マニュアルや食品レシピといったノウハウは権利を確立することによっての管理が難しく、その漏えいの可能性があります。

回避策

中国の反不正当競争法において営業秘密は「公衆に知られていない、権利者に利益をもたらすことができ、実用性がある、権利者が秘密保守措置を取った技術情報及び経営情報」と定義されますから(同法10条)、顧客情報、接客マニュアル、食品レシピといった経営情報もこれに含まれます。営業秘密として保護されるために要求されるためのガイドラインとして、最高人民法院から「不正競争の民事案件の審理における法律適用の若干問題についての解釈」(2007年1月12日公布)が出されています(D1リスク1参照)。かかるガイドラインには、大きく分けて「秘密情報を特定すること」と「秘密管理措置を実行していること」が要求されています(D1リスク1参照)。
 まず、何が秘密情報なのかを特定するために、現地会社とライセンス契約を行う際に、秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement )を並行して結ぶことが必要です。日本企業と中国企業との秘密保持契約の文例は、次の「JETRO中国における営業秘密管理」(2012年12月)P.46に掲載されています。
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07001298/management_of_trade_secret.pdf
 特に、相手会社の事業に関わりにくいライセンスという形態では、契約の中で、相手会社に具体的な秘密管理措置を課すこと、同時に、品質管理とともに秘密管理措置の履行を確認するために相手会社への立ち入り検査権を規定しておくことも有効であると思われます。
 一方で、自らも、特定した秘密情報について秘密管理措置を実行する必要があります。具体的には秘密情報であることの表記、アクセス制限、そして暗証化といったような措置を取らなければなりません(D1リスク1参照)。
 現地会社が秘密保持契約に違反した場合は、契約書に記載された違約金の支払い義務を負うほか、また、反不正当競争法に規定する行為に該当する場合は損害賠償請求が認められ(同法20条)、民法通則により差止請求も認められます(同134条1項1号)。
 また、日本の不正競争防止法は、外国における秘密情報の漏えいも対象としますので、秘密情報により生産された製品が国内に輸入された場合の差止請求(同法3条)や損害賠償請求(同法4条)を申し立てることもできます。さらに、平成27年の法律改正により、同法による刑事罰の適用範囲が国外における行為者まで拡大されています (同法21条3項)。なお、日本の不正競争防止法による実効は相手国内に及びませんから、中国の反不正当競争法による救済の可能性を確保するために、秘密保持契約において、準拠法を単純に日本のみに限定することについては注意が必要です。

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リスク4→
共同開発契約の下で相手会社へ提供したノウハウ・データが開発製品や事業以外に相手会社に利用されるリスク

異なる技術分野の現地会社と、新たな製品や事業を共同開発する場合は、お互いの技術情報を持ち寄る必要があります。この場合、提出した技術情報が営業秘密である場合、相手会社を通じて外部に漏えいしてしまう可能性があります。また、共同開発の成果物を秘密情報として管理する場合は、この取り扱いについて同意する必要があります。

回避策

中国の反不正当競争法において営業秘密は「公衆に知られていない、権利者に利益をもたらすことができ、実用性がある、権利者が秘密保守措置を取った技術情報及び経営情報」と定義されますから(同法10条)、共同開発の際に、相手方に提示する技術データ、設計図、生産ノウハウといった技術情報もこれに含まれます。また、共同開発の成果物についても同様です。
 営業秘密として保護されるために要求されるためのガイドラインとして、最高人民法院から「不正競争の民事案件の審理における法律適用の若干問題についての解釈」  (2007年1月12日公布)が出されています(D1リスク1参照)。かかるガイドラインには、大きく分けて「秘密情報を特定すること」と「秘密管理措置を実行していること」が要求されています。
  まず、何が秘密情報なのかを特定するために、現地会社と共同開発契約の中で、秘密保持条項(NDA:Non-Disclosure Agreement )を規定し、秘密情報が互いに提供する、「公知ではない、特定の技術情報であること」、また「共同開発事業によって新たに開発した(公知ではない)技術情報であること」を規定する必要があります。日本企業と中国企業との片務的な秘密保持契約の文例は、次の「JETRO中国における営業秘密管理」(2012年12月)P.46に掲載されていますが、これに加えて「共同開発事業によって新たに開発した)技術情報」についても、双方の開示合意が無ければ秘密保持義務を負う旨の規定とするとよいと思われます。
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07001298/management_of_trade_secret.pdf
 次に、特定した秘密情報について秘密管理措置を実行する必要があります。具体的には、互いに社内規定を設けて、秘密情報であることの表記、アクセス制限、そして暗証化といったような管理を行う必要があります(D1リスク1参照)。ここで、注意が必要なことは、共同開発においては、自らも相手会社から秘密情報を預かることになりますから、十分な注意が必要になります(D3リスク5参照)。
 なお、相手会社側に秘密保持義務違反が生じた場合は、反不正当競争法により損害賠償請求が認められ(同法20条) 、民法通則により差止請求も認められます(同134条1項1号)。
 また、日本の不正競争防止法は、外国における秘密情報の漏えいも対象としますので、同違反は国内法に基づいた、民事上の救済(同法4条)、刑事上の救済(同法21条3項)を受けることもできます。なお、日本の不正競争防止法による実効は相手国内に及びませんから、中国の反不正当競争法による救済の可能性を確保するために、秘密保持契約において、準拠法を単純に日本のみに限定することについては注意が必要です。

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リスク5→
共同開発契約の下で相手会社から提供を受けたノウハウ・データを利用したとして相手会社から訴えられるリスク

共同開発の相手会社から秘密情報の提供を得た場合、秘密保持契約に拘束されるために自らの開発が阻害されてしまうリスクがあります。

回避策

共同開発が終了し、さらにその延長線上で単独に開発を続ける場合は、相手方から取得した営業秘密について取扱いに疑義が生じることになります。営業秘密の除外規定として、「契約後に公知となった情報」または「自習研究開発した情報」(反不正当競争法12条)が挙げられますから、もし営業秘密から外れる情報であれば、その理由を記録するなどしてしっかり管理するようにしましょう。
 また、日本企業と中国企業との秘密保持契約の文例が「JETRO中国における営業秘密管理」(2012年12月)P.46に掲載されています。
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07001298/management_of_trade_secret.pdf
 かかる秘密保持契約の文例に示すように、相手会社から得た秘密情報を利用できるのは、事業の目的内に限られます。特に、相手方からの営業秘密を広く共有してしまうと自分の情報との混同(コンタミネーション)が生じてしまがちです。相手側から受け取った営業秘密は営業秘密として認識し、かつ扱う者も限られた人数にするとの姿勢が重要です。

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【E1】ベトナム/輸出/特・実

E1におけるリスクは次の2項目です。
■他社の特許権(実用新案権)を侵害するリスク→ リスク1
■他社によって自社製品が模倣されるリスク→ リスク2

リスク1→
他社の特許権(実用新案権)を侵害するリスク

回避策

1.概要

仮に、第三者の特許を侵害すると、自社製品の販売停止、損害賠償、謝罪広告、訴訟又は輸入差止めになります。
 そのためベトナムに自社製品を輸出するに際し、自社製品の実施(販売、使用など)についての第三者の特許権が障害となるか否か調査し、障害となるならばそれを回避する必要があります。
 つまり、自社製品がベトナムにおいて第三者の特許権(以下、実用新案権(小特許)も含め、特許権と呼びます。)を侵害する可能性がないかを調査します。
 そして自社製品が第三者の特許権を侵害するか否かを判断します。
 仮に自社製品が第三者の特許権を侵害するならば、その回避策を講じることは重要です。
 第三者が有する特許の調査は、自社製品が侵害する可能性があるベトナム特許権があるかを調査するものです。
 調査の結果、自社製品が侵害する可能性があるベトナム特許権が存在しないと判断されれば、スムーズに事業を進めることができます。この第三者の特許権を侵害するか否かを判断について以下に説明しますが、最終的には専門家(ベトナム弁理士・ベトナム弁護士)に相談した方がよいです。
 もし調査の結果、自社製品が侵害する可能性があるベトナム特許権が存在することが判明した場合には、権利侵害となることを回避するための回避策を講じる必要があります。
 権利侵害の回避策がまったく見つからない場合には、侵害訴訟を提起されるリスクを考えて、自社製品の輸出を断念せざるをえないこともあります。
 なお、WIPOの資料によりますと、2013年のベトナム特許出願及び実用新案登録出願は以下の通りです。
特許出願件数:3995件。そのうち3552件(約9割)が海外からの出願です。
実用新案登録出願件数:273件。そのうち47件(約2割)が海外からの出願です。

2.ベトナム特許の調査に関して

2-1.ベトナム国家知的財産庁による検索方法
(1) ベトナム国家知的財産庁の「IPLib」。
 ベトナム国家知的財産庁(National Office of Intellectual Property of Vietnam: NOIP)のウェブサイト上の「IPLib」「(データベース)を使って、調査します。ベトナム語又は英語で調査することになります。
http://www.noip.gov.vn/
この「IPLib」(データベース)を使っての検索の仕方は、下記URLに詳細な説明があります。
https://www.globalipdb.jpo.go.jp/etc/5172/
 例えば外国出願人、発明者データは比較的英語にてデータ入力されています。また国際分類IPCでも検索できます。検索された案件は、発明の名称(ベトナム語)が表示されます。その表示された発明の名称をクリックしますとBibliographic(書誌的事項:要約(ベトナム語)も含む。)が表示されます。
  Description (明細書)、Claims (特許請求の範囲:クレイム)、Drawings (図面)及びLegal status(審査状況)のタグがあります。これらをクリックすれば、請求の範囲等を見ることができます。しかしながら、Bibliographic(書誌的事項)以外のデータは未入力状態が多いです。
(2) 民間調査機関または弁理士
 「IPLib」(データベース)は、Bibliographic(書誌的事項)以外は未入力状態が多いので、紙の特許公報を取り寄せたりしなければ【特許請求の範囲】を確認することができません。
 出願人名や書誌的事項で取り寄せる特許公報を絞り込み、民間調査機関や弁理士等に依頼して特許公報を取り寄せます。

3.ベトナム特許権を侵害するか否かの判断

【特許請求の範囲】の文言に自社製品が含まれるか否かを判断します。その判断する手順が侵Q8、侵Q48に詳述してあります。侵Q8侵Q48に記載されている手順に従って、第三者が有する特許に自社製品が含まれるか否かを判断してください。
 その請求の範囲の文言に自社製品が明らかに含まれない場合を除いて、判断に困るような特許権が見つかったら、専門家(ベトナム弁理士・ベトナム弁護士)に相談してください。
 なお、特許発明には「物の発明」、「方法の発明」及び「製造方法の発明」の3種類の発明があります。「物の発明」とは、製品自体又はその部品の発明です。「方法の発明」とは、製品又は部品の使用方法の発明です。「製造方法の発明」とは、製品を製造するための方法発明です。
 自社製品は日本で製造されてベトナムへ輸出されています。このため、ベトナム特許の 「製造方法の発明」は、検討する必要はありません。各国特許独立の原則により、ベトナムの「製造方法の発明」の特許は、日本での製造方法に権利が及びません。

4.ベトナム特許権を侵害の回避策を講じる

(1)侵害の技術的な回避方法
 自社製品の技術などに修正を加えることで、第三者の特許を侵害しないようにして権利侵害を回避するものです。請求の範囲の文言に抵触しないように、自社製品に変更・修正を加えます。専門家とともに進めます。
(2)特許権の譲渡・ライセンスの交渉
 第三者の権利侵害を技術的に回避することが難しい場合には、その者からその特許権の譲渡を受けたり、ライセンスを受けることによって、権利侵害の状態となることを回避する場合もあります。
 「1.概要」で説明したように特に特許権は9割が海外からの出願です。このため、特許権の譲渡やライセンスの際には、ベトナム単独での特許権の譲渡又はライセンスを考えるか、他の国の特許権も含めて交渉するか等を考える必要があります。
 また、特許権の無効請求を行って、相手方にプレッシャーをかけながら、並行してこのような契約交渉を行うことが多いです。
 往々にして議論となるのは、譲渡金額や特許ライセンスの金額です。これは、特許権の経済的価値、実施可能性、相手方の現実の使用の有無や使用実績の程度、当方がその権利の使用を必要とする程度に応じて、ケースバイケースで決まるものです。
 こちらが日本企業であることを知ると、高額の譲渡金額や特許ライセンスの金額を求めてくる可能性もあるため、相手方にプレッシャーを与える手段を探すことも必要です。
(3)特許の無効請求
 第三者の特許権侵害を技術的に回避することが難しく、その第三者から当該特許権の譲渡を受けたり、特許ライセンスを受けることもできなかった(価格等の条件で折り合いがつかなかったなど)場合には、特許を無効にできないかを検討します。
 侵Q55を参照してください。侵Q55は自社の中国特許が無効と言われた場合を取り上げていますが、逆の立場で考えていただければ結構です。

5.日本特許に対しても、調査、侵害するか否かの判断、回避策を講じる

自社製品を日本国内で自社製造していますから、日本特許に対しても、ベトナム特許と同様な手続きしなければなりません。特許独立の原則により、日本とベトナムとで別々の権利として考えます。
 つまり、自社製品が第三者の日本特許権を侵害する可能性がないかを調査し、社製品が第三者の特許権を侵害するか否かを判断し、仮に自社製品が第三者の特許権侵害するならば、その回避策を講じます。
 自社商品は、貴社が製造していますから、日本特許の 「物の発明」及び「製造方法の発明」を検討する必要があります。日本特許の「方法の発明」は、自社商品が日本国内で「方法の発明」が使われることが基本的にないと考えますので、検討は不要と考えます。
5-1.日本特許の調査に関して
 特許情報プラットホーム(J-PlatPat)にアクセスして日本特許を検索することができます。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage
5-2.特許情報プラットホーム(J-PlatPat)による検索方法
特許情報プラットホームの検索方法は、下記URLのPDFファイル8ページから23ページに詳細に説明されています。この説明に従って検索してください。
http://www.inpit.go.jp/content/100583494.pdf
5-3.日本特許権を侵害するか否かの判断
 上述の「3.ベトナム特許権を侵害するか否かの判断」を日本特許に読み替えて判断してください。
5-4.日本特許権侵害の回避策
 上述の「4.ベトナム特許権侵害回避策」を日本特許に読み替えて判断してください。

6.自社製品が、自社で設計し他社(日本国内)に製造してもらったOEM(Original Equipment Manufacturing)製品の提供を受けた場合、又は自社製品用の交換部品又は消耗品を自社で設計し他社から提供を受ける場合(以下、「OEM製品1」)

(1) 製造してもらう他社と貴社との間で、「OEM製品1」に関する特許に関してどのような責任を負うかを契約書で取り決めておく必要があります。
(2) 一般に、他社は日本国内における製造に関して責任を負う契約になると思います。この場合、他社が日本国内の製造方法の発明に関して、「2.ベトナム特許の調査に関して」 (以下「特許調査」という)、「3.ベトナム特許権を侵害するか否かの判断」(以下「特許侵害可否判断」という)、「4.ベトナム特許権を侵害の回避策を講じる」(以下「特許侵害回避策」という)を講じます。
(3) そして、日本国内の製造以外は貴社が責任を負う契約になると思います。つまり貴社「OEM製品1」のために、貴社がベトナム特許の「物の発明」及び「方法の発明」に対して、「特許調査」、「特許侵害可否判断」、「特許侵害回避策」を講じる必要があります。
(4) そして、日本国内の製造以外は貴社が責任を負う契約になると思います。つまり貴社「OEM製品1」のために、貴社がベトナム特許の「物の発明」及び「方法の発明」に対して、「特許調査」、「特許侵害可否判断」、「特許侵害回避策」を講じる必要があります。

7.自社製品が、他社で設計し他社(日本国内)に製造してもらったODM(Original Design Manufacturing)製品の提供を受けた場合、又は自社製品用の交換部品又は消耗品を他社で設計し他社から提供を受ける場合(以下、「ODM製品1」)

(1) 設計及び製造してもらう他社と貴社との間で、「ODM製品1」に関する特許に関してどのような責任を負うかを契約書で取り決めておく必要があります。
(2) 一般に、他社が設計・製造しますので「ODM製品1」に関して責任を負う契約になると思います。そのため、他社が日本及びベトナムの特許発明に関して、「特許調査」、「特許侵害可否判断」、「特許侵害回避策」を講じることになります。
(3) 貴社は、基本的に「ODM製品1」に関する特許に関して責任を負うことはないと思います。

8.貴社が他社から依頼を受けて、日本国内で他社製品の製造を請け負う場合(以下、「OEM製品2」)

(1) 「OEM製品1」の逆の立場になります。
(2) 一般に、貴社が日本国内における製造に関して責任を負う契約になると思います。この場合、貴社が日本国内の製造方法の発明に関して、「特許調査」、「特許侵害可否判断」、「特許侵害回避策」を講じます。

9.貴社が他社から依頼を受けて、日本国内で他社製品の設計及び製造を請け負う場合(以下、「ODM製品2」)

(1) 「ODM製品の提供を受けた場合1」の逆の立場になります。
(2) 一般に、貴社が設計・製造しますので「ODM製品2」に関して責任を負う契約になると思います。そのため、貴社が日本及びベトナムの特許発明に関して、「特許調査」、「特許侵害可否判断」、「特許侵害回避策」を講じることになります。

10.共同開発設計の場合

(1) 共同研究開発などで製品を設計する場合には、共同研究開発契約を結ぶことが一般的です。その契約では、A社とB社との共同研究開発で生まれた発明の持ち分をA社B社で折半するとか、共同研究開発した製品の販売をA社が日本、B社がベトナムとを決めたりします。
(2) 共同研究開発した開発製品を、A社及びB社それぞれが日本及びベトナムで販売できる契約ですと、A社及びB社は、ベトナム特許及び日本特許に対して、「特許調査」、「特許侵害可否判断」、「特許侵害回避策」を分担して行うことになると思います。
(3) 共同研究開発した開発製品を、A社が日本で販売、B社がベトナムで販売する場合には、A社が日本特許に対して、「特許調査」、「特許侵害可否判断」、「特許侵害回避策」を行い、B社がベトナム特許に対して、「特許調査」、「特許侵害可否判断」、「特許侵害回避策」を行う分担になると思います。
(4) 共同研究開発した製品であっても、A社が販売しB社が製造するような契約もあるかと思います。いろいろな契約があるため、その都度、他社特許の調査等もどのように分担するかを契約書に記載しても良いと思います。

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リスク2→
他社によって自社製品が模倣されるリスク
(日本で製造した自社製品をベトナムへ輸出して、ベトナム内で販売)

回避策

1.概要

日本で製造する自社製品をベトナムに輸出し販売し、自社製品がベトナム市場で順調に売上を伸ばし、ベトナム市場での知名度も上がってくるとします。すると、ベトナム内で、自社製品の模倣品が出回るようになってきます。模倣品には自社と同様の技術が使用されていることがあります。
 その技術についてベトナムで特許又は実用新案を申請・取得していないと、その技術を使った模倣品に対して法的対応策(例えば警告、損害賠償、謝罪広告、訴訟又は差止め)をとることができません。その結果、苦労してベトナム市場を切り開いてきたのに、売上を大きく減少させることになります。
 また、ベトナムでの販売だけを気にしていては対策としては不十分です。日本国内で他社が自社製品と同じような技術を使って製品を製造し輸出することもあります。
 つまり、日本及びベトナムにおいて、他社による自社製品の模倣されるリスクを小さくする必要があります。

2.特許又は登録実用新案を取得する

(1)権利取得を考える時期
A.新しい技術を開発・考案した場合、製品化に先立って又は製品化と並行して、日本国内で権利取得のために特許出願又は実用新案登録出願することが一般的です。
 ベトナムに対しても、日本特許出願又は実用新案登録出願の「優先権」の制度を利用して、日本出願から12ヶ月以内にベトナム特許又はベトナム登録実用新案の権利取得の手続をとることが考えられます。
 日本特許出願又は実用新案登録出願してから12ヶ月以内(好ましくは10か月以内。その理由は下記(6)Aを参照。)には、開発・考案した製品をベトナムに輸出する可能性が否かを考えてください。
 製品をベトナムに輸出する可能性があるのなら、日本特許出願又は実用新案登録出願してから1年以内にベトナムに出願できる手続を進めます。
B.日本国内の製品販売が好調であるからベトナムに輸出したいと考えてから、ベトナム特許出願又はベトナム登録実用新案出願したいと考えても、権利取得できないことがあります。
 日本特許出願してから1年6ヶ月経過すると日本の特許公開公報が発行され、日本実用新案登録出願してから6ヶ月以内には登録実用新案公報が発行されます。するとこれらの公報が公知となり、ベトナム特許出願及び実用新案登録出願は新規性がないとして拒絶になったり無効となったりします。
 また、日本特許法及びベトナム特許法ともに、製品の発表後6ヶ月以内であれば新規性を失わないとする「新規性喪失の例外」が規定されています。しかし、ベトナム特許法の「新規性喪失の例外」、日本特許法の「新規性喪失の例外”よりも非常に狭いため、ベトナムで権利が取れないことも生じます。
 また、日本特許出願又は実用新案登録出願をしないで、直接、ベトナム特許出願又は実用新案登録出願しようと考えても、日本国内での製品販売が拒絶理由又は無効理由になります。
(2) 特許
 特許とは、創作した「発明」を独占できる制度です。特許権の存続期間は、日本もベトナムも出願日から20年です。日本の特許出願は日本特許庁で、ベトナムの特許出願はベトナム特許庁で審査されて特許されます。保護対象である「発明」には、物の発明、方法の発明及び製造方法の発明があります。
(3) 実用新案
 実用新案とは、創作した「考案」を独占できる制度です。登録実用新案権の存続期間は日本もベトナムも出願日から10年です。ベトナム実用新案登録出願は、審査請求が必要で審査官により審査されます。方式審査のみで実用新案登録される点が日本と異なります。また考案の保護対象は、特許の保護対象と同じで製造方法の考案も保護されます。
(4) 開発・考案した新しい技術を特許出願又は実用新案登録出願すべきか、営業秘密として保護すべきか
 新しい製造方法の発明やノウハウは、他社が工場内に侵入しなければその内容はわからないことです。特許出願すると、出願から一定期間後にその発明の内容が公開されてしまいます。このため、製造方法の発明は営業秘密にして管理した方がよいことが多いと思います。
 また、製品が市場に出て、他社がその製品をリバースエンジ二アリングしても、その新しい技術やノウハウがわからないのであれば、特許出願又は実用新案登録出願しない方がよいかもしれません。
 しかし、リバースエンジ二アリング技術も日々進歩しており、製品が市場に出ていればいずれリバースエンジニアでその技術が分かってしまうことも多いです。製造方法以外の新しい技術やノウハウは、製品が市場に出てしまうと公知になることが多いことを勘案して、営業秘密として管理するか又は特許出願等をするかを検討しましょう。
(5)日本で、最初に特許出願又は登録実用新案出願
 日本で新しい技術を開発・考案したら、日本国内で権利取得のために特許出願又は実用新案登録出願しましょう。ベトナムでの特許出願等も考えているのであれば、最初から日本の専門家(弁理士、弁護士)に相談することが好ましいでしょう。
(6)ベトナムへ、特許出願又は登録実用新案出願
 日本特許出願又は実用新案登録出願したら、次の2つの出願ルートでベトナム特許出願又は実用新案登録出願します。
A.パリルート
 日本出願の優先権が享有するためには、日本特許特許又は実用新案登録出願の出願日(優先日)から12ヶ月以内に手続が必要です。
 しかし、ベトナム特許特許又は実用新案登録出願はベトナム語で手続しなければなりません。日本語からベトナム語への翻訳時間も考えて有線日から10ヶ月以内には準備を開始する必要があります。日本では外国語出願制度がありますが、ベトナムには外国語出願制度はありません。
B.PCT(特許協力条約Patent Cooperation Treaty)ルート
 日本出願の優先権が享有するためには、日本特許特許又は実用新案登録出願の出願日(優先日)から12ヶ月以内に手続が必要です。PCT出願は、日本出願に基づいて多数国に出願したい場合、手続き面でパリルートに比べ有利です。
 日本特許特許又は実用新案登録出願の出願日(優先日)から12ヶ月以内に、WIPOが指定している受理官庁(例えば、日本特許庁等)にPCT出願を提出します。日本特許庁に日本語でPCT出願することができます。
 その後、PCT加盟であるベトナムへの移行期限は優先日から31ヶ月以内です。この期間内に、ベトナム語の翻訳を特許庁に提出しなくてはいけません。
 パリルートとPCTルートとの違いの詳細は、以下を参照してください。
http://www.iprsupport-jpo.go.jp/kensaku/apic_html/seido/data/004.html

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【E2】ベトナム/製造委託/特・実

E2におけるリスクは次の2項目です。
■ベトナム企業に製造委託し、日本又は他の販売国へ製品を輸出する際のリスク→ リスク3
■製品の部品をベトナムで購入する又は日本からベトナムに輸入するとともに、自社で製品を現地生産して、その製品をベトナムで販売又は販売国に輸出する際のリスク→ リスク4

リスク3→
ベトナム企業に製造委託し、日本又は他の販売国へ製品を輸出する際のリスク

回避策

1.概要

(1) ベトナム企業に製造委託し、ベトナムでは販売を行わず、日本又は他の外国で販売するビジネスです。このようなビジネスは、例えば、ベトナムでの製造コストの安さなどがビジネスの推進力となっている場合が多くなっています。
 営業秘密やノウハウが製造委託先のベトナム企業に漏れることを想定して、製品のどこまで又はどの部品を製造委託するかなど、秘密にしておく領域と相手に開示する領域とを考える必要があります。
 製造委託先のベトナム企業に、技術及びノウハウを含めて技術移転しなければならないことも多いと思います。この場合には、営業秘密の契約及び秘密保持のための管理体制をチェックするため自社から人材を定期的に派遣するなどの漏洩防止の対策を行わなければなりません。営業秘密に関しては、H1H2H3を参照してください。
 漏洩対策をしても、技術が漏洩したりリバースエンジニアリングされたりすることもあります。これらの対抗手段として、ベトナムで特許権又は実用新案権を取得しておくことが望まれます。そうすれば、技術漏洩などがあったとしても、特許権などの侵害行為として他者の製品製造を停止させることができます。
(2)製造委託には、自社で自社製品を設計しベトナム企業に製造委託するOEM(Original Equipment Manufacturing)と、ベトナム企業で自社製品を設計及び製造とをしてもらうODM(Original Design Manufacturing)とがあります。
 一般に、ODMではベトナム企業がベトナム特許及び日本特許に関して責任を負うと思われます。そこで以下の説明では、自社設計しベトナム企業にOEM製品を製造してもらう場面を想定して説明します。

2.ベトナムで問題になる特許(又は実用新案)

(1) 特許発明には「物の発明」、「方法の発明」及び「製造方法の発明」の3種類の発明があります。「物の発明」とは、製品自体又はその部品の発明です。「方法の発明」とは、製品又は部品の使用方法の発明です。「製造方法の発明」とは、製品を製造するための方法発明です。また実用新案も、特許の保護対象と同じで3種類の考案が保護対象です。
(2) 自社製品はベトナムで製造されます。一般に、製造委託先であるベトナム企業がOEM製品に関する、ベトナムの「製造方法の発明」に関して責任を負う契約になると思います。
(3) 一方、自社で設計した自社製品を保護するため、第三者のベトナム特許と日本特許とを侵害しないことを確認する必要があります。
 ベトナムで製造された自社製品は日本又は他の販売国へ輸出されます。ベトナム関税法(2015年1月施行)」では、ベトナムの知的財産権を侵害する物品は権利者が輸出を差し止めることができます。つまり、第三者のベトナム特許発明を自社製品が侵害していた場合には、特許権者が自社製品を輸出差し止めする可能性があります。
 そのため、ベトナムの「物の発明」の特許権侵害しないかを検討する必要があります。 自社は、第三者が有するベトナム特許を調査し、特許を侵害するか否かの判断し、その特許を侵害する際には回避策を講じることになります。
 第三者が有するベトナム特許の調査に関しては、E1リスク1の「2.ベトナム特許(実用新案も含む)の調査」を参照してください。
 特許を侵害するか否かの判断に関しては、E1リスク1の「3.ベトナム特許権(実用新案権も含む)を侵害するか否かの判断」を参照してください。
 特許を侵害する際には回避策に関しては、E1リスク1「4.ベトナム特許権(実用新案権も含む)を侵害の回避策」を参照してください。

3.日本で問題になる特許(又は実用新案)

(1) ベトナムで製造された自社製品は、ベトナムから日本に輸入されます。日本特許法は、輸入も特許の実施行為の1つであり、権利者は日本の特許権を侵害する物品を税関で輸入差し止めることができます。また、税関を通過後に自社製品が日本国内で販売されますので、第三者の日本特許発明を自社製品が侵害していた場合には、特許権者は損害賠償又は販売差し止めを請求する可能性があります。
(2) そこで日本特許の「物の発明」及び「方法の発明」の特許権侵害しないかを検討する必要があります。「物の発明」及び「方法の発明」に関して、第三者が有する特許を調査し、特許を侵害するか否かの判断し、その特許を侵害する際には回避策を講じることになります。
 第三者が有する日本特許の調査に関しては、E1リスク1の「5-1、5-2.日本特許の調査」を参照してください。
 特許を侵害するか否かの判断に関しては、E1リスク1の「5-3.日本特許権を侵害するか否かの判断」を参照してください。
 特許を侵害する際には回避策に関しては、E1リスク1の「5-4.日本特許権を侵害の回避策」を参照してください。

4.他の販売国で問題になる特許(又は実用新案)

(1) ベトナムで製造された自社製品は、ベトナムから販売国に輸入されます。多くの外国の特許法は、輸入も特許の実施行為として、権利者はその販売国の特許権を侵害する物品を税関で輸入差し止めることができます。また、税関を通過後に自社製品がその販売国内で販売されますので、第三者の特許発明を自社製品が侵害していた場合には、特許権者は損害賠償又は販売差し止めを請求する可能性があります。
(2) そこでその販売国の特許の「物の発明」及び「方法の発明」の特許権侵害しないかを検討する必要があります。「物の発明」及び「方法の発明」に関して、第三者が有する特許を調査し、特許を侵害するか否かの判断し、その特許を侵害する際には回避策を講じることになります。

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リスク4→
製品の部品をベトナムで購入する又は日本からベトナムに輸入するとともに、自社で製品を現地生産して、その製品をベトナムで販売又は販売国に輸出する際のリスク

回避策

1.概要

(1) 自らベトナム国内で自社製品を製造することになるため、輸出取引や製造委託とは違った新たな問題が生じてきます。自ら製造する上でも、合弁企業を設立するケース、独立資本の子会社を設立するケース、又はM&Aでベトナム企業を買収して子会社化するケースがあります。
 いずれのケースであっても、営業秘密やノウハウが漏れることを想定して対策をしなければなりません。特に合弁企業の場合には、日本側のコントロールが効きにくいこともありますから、日本企業と現地法人とが、技術移転契約又は技術ライセンス契約を締結する際に、それらの契約の中で日本企業側が有する技術の漏洩対策について規定する必要があります。営業秘密に関しては、H1H2H3を参照してください。
 技術漏洩対策をしても、技術漏洩し、リバースエンジニアリングされた場合の対抗手段として、ベトナムで特許権又は実用新案権を取得しておくことが望まれます。そうすれば、技術漏洩が不正競争行為としてみなされるかどうかに関わらず、権利侵害行為として他者の製品製造を停止させることができます。
(2) ベトナム国内で自社製品を製造する場合に、すべての部品を自社製造することは少ないと思います。日本企業から部品を輸入したりベトナム企業で製造された部品を購入したりして、自社製品を製造すると思います。
 この部品がベトナムで特許権又は実用新案権を侵害すると、その部品を組み入れた自社製品も侵害となります(細則ガイドラインの政令 105号)。
 このため、貴社は輸入先の企業又は購入先の企業から部品を購入するに際して、その取引契約に第三者のベトナム特許権及び実用新案権を侵害しない旨の特許保証条項を入れることが好ましいでしょう。特許保証条項に関しては侵Q7を参照してください。
 製品を構成する部品の中には、貴社製品専用の部品があるかもしれません。そのような貴社製品専用の部品を貴社が設計しているのであれば、貴社がその部品に関するベトナム特許権及び実用新案権を調査する必要があるでしょう。

2.ベトナムで問題になる特許(又は実用新案)

(1) 特許発明には「物の発明」、「方法の発明」及び「製造方法の発明」の3種類の発明があります。「物の発明」とは、製品自体又はその部品の発明です。「方法の発明」とは、製品又は部品の使用方法の発明です。「製造方法の発明」とは、製品又は部品を製造するための方法発明です。
 実用新案は、製品の形状、構造又はそれらの組合せについて出された実用に適した物の考案のみが保護対象です。
(2) 自社製品はベトナムの自社工場(子会社)又は合弁企業で製造されます。ベトナムの「製造方法の発明」に関しても特許権侵害しないかを検討する必要があります。
(3) また、自社製品が第三者のベトナム特許を侵害しないことを確認する必要があります。ベトナム知的財産法第124、125条では、「工業所有権所有者は,関係工業所有権の他人による行使について,これを防止する権利を有する。」とあり、製品の「物の特許」や製品の「方法の発明」に関しても特許権侵害しないかを検討する必要があります。
(4) ベトナムで製造された自社製品が、ベトナムで販売されず、他の販売国へ輸出されるのみの場合もあるでしょう。
 ベトナム関税法(2015年1月施行)では、ベトナムの知的財産権を侵害する物品は、権利者が輸出差し止めをすることができます。つまり、第三者のベトナム特許発明を自社製品が侵害していた場合には、特許権者が自社製品を輸出差し止めする可能性があります。
 そのため、ベトナムの「物の発明」の特許権侵害しないかを検討する必要があります。
(5) 自社は、第三者が有するベトナム特許を調査し、特許を侵害するか否かの判断し、その特許を侵害する際には回避策を講じることになります。
 第三者が有するベトナム特許の調査に関しては、E1リスク1の「2.ベトナム特許(実用新案も含む)の調査」を参照してください。
 特許を侵害するか否かの判断に関しては、E1リスク1の「3.ベトナム特許権(実用新案権も含む)を侵害するか否かの判断」を参照してください。
 特許を侵害する際には回避策に関しては、E1リスク1の「4.ベトナム特許権(実用新案権も含む)を侵害の回避策」を参照してください。

3.他の販売国で問題になる特許(又は実用新案)

(1) ベトナムで製造された自社製品は、ベトナムから販売国に輸入されます。多くの外国の特許法は、輸入も特許の実施行為として、権利者はその販売国の特許権を侵害する物品を税関で輸入差し止めることができます。また、税関を通過後に自社製品がその販売国内で販売されますので、第三者の特許発明を自社製品が侵害していた場合には、特許権者は損害賠償又は販売差し止めを請求する可能性があります。
(2) そこでその販売国の特許の「物の発明」及び「方法の発明」の特許権侵害しないかを検討する必要があります。「物の発明」及び「方法の発明」に関して、第三者が有する特許を調査し、特許を侵害するか否かの判断し、その特許を侵害する際には回避策を講じることになります。

ベトナム知的財産法
第124条 工業所有権の行使
(1) 発明の実施とは,次の行為の遂行を意味する。
(a) 保護された製品を製造すること
(b) 保護された方法を適用すること
(c) 保護された製品又は保護された方法により得た製品の使用を実施すること
(d) (c)に規定の製品を流通させること,又はそれを流通させるために広告,申出,保管すること
(dd) (c)に規定する製品を輸入すること
第125条 工業所有権の他人による行使を防止する権利
 (1) 工業所有権所有者,及び地理的表示を使用又は管理する権利を付与された組織又は個人は,関係工業所有権の他人による行使について,当該行使が(2)又は(3)に規定する場合に該当しない限り,これを防止する権利を有する。 
https://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/pdf/vietnam/tizaihou.pdf

知的財産権保護及び知的財産国家管理に関する知的財産法の条項の細則及び施行ガイドラインの政令 105号
第8条 発明所有権の侵害要素
1. 発明所有権の侵害要素は、下記の各形態に属することがある。
a) 製品又は製品の一部(部品)が、発明保護範囲に属する製品又は製品の一部(部品)と同一又は類似する。 b) 方法が、発明保護範囲に属する方法と同一又は類似する。
c) 製品又は製品の一部(部品)は、発明保護範囲に属する方法と同一又は類似する方法により製造される。
https://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/pdf/vietnam/tizai_seirei.pdf

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【E3】ベトナム/ライセンス/特・実

E3におけるリスクは次の1項目です。
■日本企業がベトナム企業に特許ライセンスする際のリスクのリスク→ リスク5

リスク5→
日本企業がベトナム企業に特許ライセンスする際のリスク

回避策

1.概要

日本企業がベトナム企業に技術を移転する場合、その技術がベトナムで実施されますので、ベトナム法の法律には従わなければなりません。日本企業はライセンサー(許諾者)として、その特許ライセンス契約を慎重に作成すべきです。
 特許ライセンス契約する際には、ベトナムの知的財産法、独占禁止法等にも考慮すべきです。

参考:
ベトナム知的財産法
https://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/pdf/vietnam/tizaihou.pdf
ベトナム独占禁止法の概略
http://www.jftc.go.jp/kokusai/worldcom/kakkoku/abc/allabc/v/vietnam.html

2.特許(以下、実用新案も含め、特許と呼びます。)ライセンス

2-1. ベトナムでの特許ライセンス契約は、基本的に当事者の取り決めに従いますが、知的財産法144条第1項は、工業所有権の行使に係るライセンス契約の内容は,次の実質的規定を有していなければならない、と規定しています。またライセンス契約は、契約書として書面としなければなりません(知的財産法第141条第2項)
(a) 実施許諾者及び実施権者の完全名称及び住所
(b) ライセンスの根拠
(c) 契約の種類
(d) ライセンスの範囲(実施の制限,領域的制限)
(dd) ライセンスの期間
(e) ライセンスの価格 
(g) ライセンサー(許諾者)及びライセンシー(実施権者)の権利義務
2-2. 以下、知的財産法第144条第1項に従って、特許ライセンスの項目を説明します。
(a)実施許諾者及び実施権者の完全名称及び住所
 実施許諾者が日本企業であれば、その正式名称及び住所を記載します。
(b)ライセンスの根拠
 実施権者が発明を実施するための特許ライセンスである、技術供与又は技術援助のために実施権者に特許ライセンスする等を記載します。
(c)契約の種類
 特許ライセンスの対象となる特許番号の特定が必要です。また、実施態様を明確にしておく必要があります。
 ベトナムでは、独占的実施許諾及び通常実施許諾の2種類の実施態様があります(知的財産法第143条)。
 独占的実施許諾は、日本の専用実施権と同様で、ライセンシー(被許諾者)のみが実施できる態様です。日本の専用実施権は登録を効力要件としますが、ベトナムの独占的実施許諾は当事者間の契約で有効です。
 通常実施許諾は、日本の通常実施権と同様で、複数のライセンシーに同一技術の実施を重ねて許諾できる態様です。
 また、ライセンシーによる通常実施許諾のサブライセンス(再実施許諾)の契約も可能です。
 ベトナムでは独占的実施許諾及び通常実施許諾はともに国家知的財産権庁に登録することが、第三者対抗要件になります(知的財産法第148条)。なお、登録に際しては、以下の5種類の書類を用意する必要があります。
① 特許ライセンシング契約の登録申請書
② 特許ライセンシング契約の原本もしくは認証コピー2通、及び必要な場合にはそのベトナム語翻訳版2通
③ 委任状-授権代理人が申請を処理する場合に、委任状を提出する必要がある。
④ 手数料および料金の支払い受領証
(d) ライセンスの範囲(実施の制限,領域的制限)
 技術供与側の日本企業としては、供与する技術情報・資料を明確にしておかないと債務の内容が不特定となって供与不履行の責任を問われかねません。できるだけ具体的にライセンスの範囲を記載した方がよいです。
 但し、知的財産法第144条第2項に記載されている要件をライセンシーに課すと、ライセンス契約が無効とされます(同条第3項)ので注意が必要です。
例えば、以下のような要件です。
(ア) 発明を改良することを実施権者に対して禁止すること、また当該改良に関して、無償ライセンスを付与し又は特許の登録若しくは特許を実施許諾者に対して譲渡することを実施権者に対して強制すること
(イ) 特許ライセンス契約に基づいて生産された商品等を,当該実施許諾者が特許を保有せず,また当該商品を輸入する排他的権利も有していない領域へ実施権者が輸出することに直接的又は間接的に制限を課すこと
(ウ) ライセンスに基づいて生産された商品等の品質の保証を目的とはせずに,実施許諾者から又は実施許諾者により指定された者から素材,部品又は設備の全部又は一定割合を買うことを実施権者に対して強制すること
(エ) 特許権に対する権利の効力を争うことを実施権者に対して禁止すること
(dd) ライセンスの期間
 特許ライセンシング契約の期間は、対応する特許の保護期間を超えることが許されません。
(e) ライセンスの価格
 日本国内でも一般的なイニシアル・ロイアルティ、ランニング・ロイアルティ、ランプサム・ロイヤリティ等が認められます。日本企業はライセンスの価格を非開示にしたいと想像できますが、特許ライセンス契約の登録の際には、ライセンスの価格は必須になります。
 ロイヤリティの送金に際しては、商業銀行は、送金の証拠資料として、適法に締結された契約書の正本、または登録済みの契約書を要求するのが通常です。
(g) ライセンサー及びライセンシーの権利義務
A. ライセンサー(許諾者)の義務
 ライセンサーは供与する特許について、特許料(年金)を納付する等の特許権の有効性を維持する義務、第三者から特許無効審判の請求があれば積極的に対応する義務があると思われますが、契約で種々規定することができます。
B ライセンシー(実施権者)の義務
 ライセンシーは供与を受けた技術及び関連情報について秘密保持義務があることを規定します。契約期間満了後も、公知技術になるまでは秘密保持義務を負うことを規定すべきです。
(h)その他
A. 紛争解決の方法
 準拠法は、ベトナム企業にベトナム特許ライセンスを与えベトナムで発明を実施するのであれば、準拠法はベトナムになります。
 外国の裁判の判決を自国の裁判所が承認して自国内で強制執行を許すか否かを決めますが、この外国の判決を承認するか否かについて、外国との間で相互に承認しあう二国間条約があります。現在、日本とベトナムには相互承認の条約がありません。
 一方、国際仲裁については、加盟国の仲裁判断を互いに認め合う国際条約(ニューヨーク条約)があり、この国際条約に日本もベトナムも加盟しており、日本とベトナムでは互いに相手国の国際仲裁の仲裁判断に基づく自国での強制執行が可能です。
 このため紛争解決のための取り決めとして、仲裁を選択するのが一般的です。仲裁条項は、仲裁合意と仲裁地・仲裁機関等を規定しておく必要があります。日本の仲裁機関として、日本知的財産仲裁センターがあります。
http://www.ip-adr.gr.jp/
B. 帳簿等の記帳義務、調査権
 ライセンシーがロイアルティ算定の基礎となる販売額等を記帳しておく義務と、ライセンサーがその帳簿等を調査できる権限があることを明記しておくべきです。
C. 違約金又は損害賠償の計算方法
 債務不履行による違約金・損害賠償額の計算方法を定めることができます。

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【F1】ベトナム/輸出/意匠

ベトナムへの進出形態が輸出の場合において、意匠の分野で考えられる主なリスクと、それらの回避策は次の3項目です。
ベトナム・輸出/或いは自社が現地製造して一部または全部を現地で販売
■他社の意匠権を侵害するリスク→ リスク1
■他社による自社意匠の模倣のリスク→ リスク2
ベトナム・現地で自社製造して全て日本へ輸出
■他社の意匠権を侵害するリスク→ リスク3

リスク1→
他社の意匠権を侵害するリスク
(ベトナム・輸出/或いは自社が現地製造して一部または全部を現地で販売)

製品を輸出し、他社の権利を侵害した場合、販売禁止、損害賠償などの民事訴訟の対象となり(ベトナム知的財産法202条)、また、行政罰(ベトナム知的財産法211条)並びに刑事罰(ベトナム知的財産法212条)の対象となります。

回避策

①先行意匠の調査
 日本ですでに販売実績があり新規性が失われている場合、すなわち現地の第三者が有効な意匠権取得できない場合でも、輸出の前に、現地における先行意匠の調査を行っておく方が安心です。
 ベトナムにおいて、意匠は知的財産法によって保護されます。登録に際して実態審査があります。現在、ベトナム国家知的財産庁(NOIP)のウェブサイトに検索ページがあり(http://www.noip.gov.vn/web/noip/homeの「IP Lib」ボタン)、現在のところ英語での物品名検索はできないため、ロカルノ分類などを用いて検索するしかありません。正確な意匠調査は意匠の形態のみならず、物品名の問題や類似判断を伴いますから、現地法律事務所などの現地代理人に依頼する方が望ましいでしょう。
②形態が似ている登録意匠が見つかった場合の対応
 調査の結果、登録意匠が見つかった場合は、輸出の中止を含めて、対応策が必要になります。
 (ⅰ)権利範囲の判断 ベトナムの意匠権の範囲は、意匠審査基準において同一意匠、些細な相違意匠、近似の類似意匠、類似意匠の4つの範囲に分類されるとしています(意匠審査基準39規則)。したがって、ベトナムの意匠権は、日本の意匠権と比べて、少なくとも同等の権利範囲を有していると考えられますから、注意が必要です。一方で、日本で公知となっている自社意匠が、冒認出願されて権利になっている可能性もあり得ますので、事前に調査を行った方が無難でしょう。
 (ⅱ)ベトナム国家知的財産庁への登録取消の申立て 利害関係人は出願後登録まで異議申し立てをベトナム国家知的財産庁(NOIP)に行うことが出来ますが、異議申し立て期間を過ぎた場合であっても、意匠権侵害の紛争となった場合は、対抗措置として意匠登録の取り消しをベトナム国家知的財産庁に対して行うことが出来ます。ベトナムの意匠登録要件も、日本と同じように新規性、創作性、工業上利用性が求められており(ベトナム知的財産法63条)、新規性は世界公知主義を取っています(ベトナム知的財産法65条)。同登録意匠の意匠出願日が、日本での意匠公報発行日や製品の新聞・雑誌掲載日より後であれば、そうした資料を準備しておきましょう。実際に同裁判を起こさないまでも、相手と係争になった場合にそれらを証拠として示すことができます。
 (ⅲ)先使用権の主張 ベトナムの知的財産法にも、先使用権が規定されています(ベトナム知的財産法134条)。すなわち、発明又は工業意匠に係る登録願書の出願日又は優先日の前に,工業意匠と同一の発明又は工業意匠を実施し,又はその実施のために必要な準備を行った者(以下「先使用権の所有者」という)は,保護された発明又は工業意匠の所有者の許可を取得することなく又は補償金を支払うことなく,公開日前の実施又は準備と同一の範囲及び量内で当該実施を継続する権利を有します。したがって、意匠出願の前に、製品の実施あるいは実施の準備を行っていたことを立証することができれば、先使用権を主張することもできます。工業意匠について、「実施」の定義に「輸入」が規定されていますので、日本から輸出する場合も先使用権の適用がある可能性があります(ベトナム知的財産法124条(2)(C))。
③輸出先との調整
 相手国の取引先からの求めに応じて輸出する場合は、同取引先に登録意匠の調査責任を義務付け、また意匠権侵害の免責を契約に規定することも有効でしょう。

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リスク2→
他社による自社意匠の模倣のリスク
(ベトナム・輸出/或いは自社が現地製造して一部または全部を現地で販売)

製品が相手国の市場において人気を博する場合は、当然にして現地の第三者によって模倣されるリスクが高まります。事前の相手国での意匠登録の手段を含めて検討を行う必要があるでしょう。

回避策

①現地での意匠登録
 もし、日本で意匠出願し、6か月経過前であれば、優先権を主張して意匠出願を行うことができます。日本の出願後、日本での販売等によって公知とっていた場合であっても、日本の出願後6か月間与えられる優先権は有効です。
 一方、新規性喪失の例外規定を適用して意匠出願を行うこともできます。ベトナムの新規性喪失の例外規定は、(ⅰ) 出願日6か月以内の他人による公開、(ⅱ)出願日前6か月以内の学術発表、(ⅲ)国内出願日前6 月以内の国内又は認定国際博覧会における展示、または(ⅱ)での使用に限られます(ベトナム知的財産法65条)。
②現地の意匠登録がある場合の対応
 現地において意匠権がある場合は、警告書送付、民事訴訟の対応を取ることになります。
 なお、模倣品がデッドコピーであれば問題ありませんが、変形が行われている場合、同一性の範囲に入るかどうかについて検討が必要な場合があります。
③現地の意匠登録がない場合の対応
 ベトナムでは、不正競争行為についてベトナム知的財産法に規定されており、もし、意匠がベトナムにおいて広く実施されており、周知であった場合は、その模倣に対して「不正競争防止の権利」を行使することができます(ベトナム知的財産法6条(3)(d)、130条(1)(b))。

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リスク3→
他社の意匠権を侵害するリスク
(ベトナム・現地で自社製造して全て日本へ輸出)

自社の海外工場で製造し、すべてを日本に輸入し、現地では一切販売しない場合であっても、製造自体が「実施」行為になりますから、その国に意匠権がある場合は権利侵害の問題が生じ、製造差し止め、損害賠償請求などを請求される可能性があります。
 なお、ベトナムでは輸出は実施行為として規定されていません(ベトナム知的財産法124条)。したがって、輸出禁止を心配する必要はありません。

回避策

F1リスク1の回避策①、②と同様です。

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【F2】ベトナム/製造委託/意匠

ベトナムへの進出形態が製造委託の場合において、意匠の分野で考えられる主なリスクと、それらの回避策は次の5項目です。
ベトナム・現地会社へ製造委託して自社子会社が一部または全部を現地で販売
■他社の意匠権を侵害するリスク→ リスク4
■他社による自社意匠の模倣リスク→ リスク5
■現地版売品が日本に輸入されてしまうリスク→ リスク6
ベトナム・現地会社へ製造委託してすべてを日本に輸出
■他社の意匠権を侵害するリスク→ リスク7
■現地会社が製造委託品を現地販売してしまうリスク回避策→ リスク8

リスク4→
他社の意匠権を侵害するリスク
(ベトナム・現地会社へ製造委託して自社子会社が一部または全部を現地で販売)

現地会社へ製造委託した場合、製造行為者は現地会社ですが、販売行為者が自社となります。

回避策

F1リスク1①、②と同様の対応が必要です。ライセンスと異なり、自社及び現地の製造委託会社それぞれが侵害当事者になる可能性がありますから、対応費用の分担などについて契約で定めておく必要があります。また、一方、侵害問題が生じると、契約の履行ができない可能性もありますから、その場合の対処を盛り込む必要も生じるでしょう。

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リスク5→
他社による自社意匠の模倣リスク
(ベトナム・現地会社へ製造委託して自社子会社が一部または全部を現地で販売)

自社が現地で製造する場合と異なる点は、現地会社へ製造委託した場合、製品の外観情報を現地会社も共有してしまうことにあります。この情報管理が必要となってきます。

回避策

貴社から製品仕様を指示して製造委託する場合は、現地における意匠登録を行うことが必要です。現地会社を通して情報が流通したとしても、意匠権を確保していれば、その権利に基づいて、第三者の模倣を阻止することができます。
 実際に、模倣品が発見された場合は、F1リスク2の①~③の対応を取ることになります。

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リスク6→
現地版売品が日本に輸入されてしまうリスク
(ベトナム・現地会社へ製造委託して自社子会社が一部または全部を現地で販売)

特に、現地での販売価格が日本での販売価格より低額に設定されている場合、現地で販売された正規品が日本に輸入されてしまう場合があります。現地会社に対して、現地製品の日本への輸出をしない旨を契約で規定したとしても、いったん現地市場に製品が流通してしまうと、これをコントロールする術はありませんので、日本へ輸入される際に、それを阻止することとなります。

回避策

日本で有する意匠権に基づいて、自社が外国で製造した製品の輸入を阻止しようとするには一定の準備が必要です。
 原則として、外国の市場において自社が一旦流通させた製品は真正商品と呼ばれ、たとえ、その製品ついて特許権を有していたとしても、輸入差し止めなどの権利行使をすることはできないことが最高裁判決で判示されており、意匠権についても同様な結論が類推されます(「BBS事件」平成7(オ)1988))。
 しかし、「当該製品について販売先ないし使用地域から我が国を除外する旨を譲受人との間で合意した場合」は例外であると判示しています。現地製造会社との間で販売先を現地市場のみに限定する取り決めをしたうえで、予め現地製品やそのパッケージに「本製品の販売・譲渡は〇〇国においてのみ有効であり、日本を含む他国への輸出はそれぞれの国で取得された当社の特許権・意匠権を権利侵害する」旨を表記することが望ましいと思われます。同製品が日本に輸入された際に、税関等で権利行使できる可能性を確保することができます。 (侵Q3)。

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リスク7→
他社の意匠権を侵害するリスク
(ベトナム・現地会社へ製造委託してすべてを日本に輸出)

現地でで製造行為が行われる限り、製造委託した現地会社が意匠権侵害で警告される可能性はあります。

回避策

F1リスク1の回避策①、②と同様です。
 この場合、自社が侵害当事者となる可能性はありませんが、対応費用の分担などについて契約で定めておく必要がありますし、侵害問題が生じると、契約の履行ができない可能性もありますから、その場合の対処を製造委託契約に盛り込む必要も生じるでしょう。

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リスク8→
現地会社が製造委託品を現地販売してしまうリスク回避策
(べトナム・現地会社へ製造委託してすべてを日本に輸出)

現地会社が契約品以上の数を生産し、それを自ら現地で販売する、というような事例も起こり得ます。本来自社がコントロールすべき製品が、現地の市場において自社の手を離れて流通することになってしまいます。特に、そういった製品が日本に輸入されてしまうと、現地市場の問題だけでなく、日本市場の問題にも波及してしまいます。

回避策

製造委託契約によって、かかる事態が生じた場合にペナルティを課すことはもちろんですが、現地において意匠権を取得し、現地会社に対して意匠権侵害という牽制を行うことも必要です。
 また、製造委託契約で「契約等で現地製造会社から全製造品を自社が引き渡しを受ける」旨や、「現地市場での販売を許諾していない」旨を明確にしておくことも重要です。かかる製品が日本に入ってきた場合は、たとえ品質において同一のものであっても、これら契約により真正商品とは認められませんから、輸入差止において日本の意匠権を行使することができます。

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【F3】ベトナム/ライセンス/意匠

ベトナムへの進出形態がライセンスの場合において、意匠の分野で考えられる主なリスクと、それらの回避策は次の通りです。
F3におけるリスクは次の項目です。
ベトナム・ライセンス
■現地ライセンス品が他社の意匠権を侵害するリスク→ リスク9
■現地会社が製造委託品を現地で販売してしまうリスク→ リスク10
■現地ライセンス品の品質が劣るリスク→ リスク11
ベトナム・共同開発
■成果物の権利帰属にともなうリスク→ リスク12

リスク9→
現地ライセンス品が他社の意匠権を侵害するリスク

現地会社へのライセンスは意匠権の実施行為とないため、自者が侵害当事者になることはありません。それでも、現地会社は実際の製造販売ができないためライセンス内容の履行について支障が生じる可能性があります。

回避策

契約において、ライセンス後に意匠権の侵害問題が生じた場合の、ライセンサーの免責を規定しておく必要があります。しかし、相手方との交渉において、この免責が難しいのであれば、第三者の権利の侵害対策を真剣に考える必要があります。(先行意匠の調査について、F1参照)
 ベトナムにおいては、任意ですが、ライセンス契約の登録制度があります。意匠に関する契約の登録はベトナム国家知的財産庁(NOIP)に対して行うことができます。

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リスク10→
現地会社が製造委託品を現地で販売してしまうリスク

現地ライセンス品に第三者の模倣が発生した場合、その対策を取らなければ現地ライセンス会社との信頼感を喪失することになりますし、模倣品が日本に輸入されて国内市場に影響を与えないとも限りません。一方、現地において、訴訟当事者としてかかわる場合には人的資源やコストも決して小さくありませんから、ライセンス収入とのバランスを考える必要があります。

回避策

現地における救済制度やコスト、さらに権利侵害判断は、いずれも日本と異なる場合が多く、現地ライセンス会社を通じて現地の専門家に見解を仰ぐ必要があります。その際の費用分担について予め契約で規定しておく必要があるでしょう。
 また、一方で当事者はあくまで現地ライセンス会社ですから、たとえ自社が現地の意匠権を有していたとしても紛争当事者となることは避けるべきだと思われます。そのため、その場合に、現地ライセンス会社が意匠権の行使者となるべき地位を与えるなどの対策などを考慮しておくことが必要でしょう。
 ベトナムにおいて、権利行使を行える者は権利所有者の他、「知的所有権の侵害行為により生じた損害を被ったか,又は消費者若しくは社会に損害を生じた知的所有権の侵害行為を発見した組織及び個人」です(ベトナム知的財産法198条(3))。契約をベトナム国家知的財産庁(NOIP)へ登録することにより、現地ライセンス会社が侵害行為により損害を被った組織であることを証明できると思われ、当事者として模倣品の対処に当たってもらうことができるでしょう。その際、自社がどこまでかかわるのか、かかわる場合は、自社が負担するコストに関し、ライセンス収入の一定割合までといったキャップをはめる、など、現地ライセンス会社との取り決めが必要でしょう。

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リスク11→
現地ライセンス品の品質が劣るリスク

現地会社への製造委託のF2リスク6と同じように、価格や品質の異なる現地ライセンス品が日本に輸入されてしまう可能性があります。現地ライセンス会社との契約で日本への輸出を行わない旨の規定を締結したとしても、いったん現地市場に製品が流通してしまうと、それをコントロールすることはできません。同様に日本へ輸入される際に、日本の意匠権に基づいてこれを規制するしかありません。

回避策

現地ライセンス品のパッケージに「本製品の販売・譲渡は〇〇国においてのみ有効であり、日本を含む他国への輸出はそれぞれの国で取得された当社の特許権・意匠権を権利侵害する」旨の英語または日本語表記を行うことで、日本の意匠権により、その輸入や販売等の差し止めを請求できる可能性があります。契約において、同表記を義務付けることを検討するとよいでしょう。(F2リスク6の回避策参照)

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リスク12→
成果物の権利帰属にともなうリスク

共同開発の成果物について、その権利帰属を、契約において明確にしておく必要があります。意匠権を共有とした場合に、他の共有者の同意の有無について、各国法律で異なることがありますから、その点に注意が必要です。

回避策

成果物は営業秘密として互いに秘密状態で管理するという選択肢がありますが、外観である意匠については営業秘密化することはできません。したがって、意匠について、取り得る選択肢は次の2つです。
 (ⅰ)それぞれの国で意匠権を共有する。
 (ⅱ)それぞれの国で単独で意匠権を管理する。
 (ⅰ)を選択した場合、ベトナムの知的財産法では意匠権の共同所有について、「権利はそれらの者の合意によってのみ行使されるものとする」(ベトナム知的財産法86条(3))、工業所有権のライセンス許諾契約には、当該工業所有権が共同所有に基づくときは,共同所有者の同意書を含まなければならない(ベトナム知的財産法149条(4))と規定されています。「行使」は日本の「実施」と同じ意味ですから(ベトナム知的財産法124条)、意匠にかかる製品の製造、販売、輸出なども、共同所有者の同意がなければできないことになり、この点、日本の意匠法と異なります。また、第三者への許諾実施についても単独で行うことはでないため、この点では日本と同一です。
 両者間で取扱いとそろえるためにも、単独実施及び第三者への単独許諾についてのルールを共同開発契約で明確にしておくべきだと思われます。
 なお、意匠権侵害者に対する単独訴訟が認められる点においては日本と同一です。
 (ⅱ)を選択した場合、意匠の創作者が共同開発会社にいる場合は、日本での意匠権出願の際に、名前を創作者として明記し、意匠登録を受ける権利を承継する書面を受領しておきましょう。日本の意匠法には権利の移転手続きが規定されており(日本意匠法26条の2)、将来的に意匠登録を受ける権利の承継が争いになったときに、同規定によって持分が相手方に移転する可能性があるためです。なお、逆にベトナムにおいて同様な規定は存在しません。

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【G1】ベトナム/輸出/商標

G1におけるリスクは次の2項目です。
■他社の権利(商標権)を侵害するリスク→ リスク1
■他社による自社の権利(商標権あり、なし)の侵害のリスク→ リスク2

リスク1→
他社の権利(商標権)を侵害するリスク

ベトナムへ製品を輸出し、他社の権利を侵害した場合、自社商品の販売停止、損害賠償、謝罪広告を請求されるおそれがあります。

回避策

輸出を開始する前に、商標調査を行うことをお勧めします。
 もし、他人の同一・類似商標が発見された場合には、自社の商標を変更するか、あるいは商標権を取り消す、交渉をして権利を譲り受ける等の方法を検討する必要があります。

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リスク2→
他社による自社の権利(商標権あり、なし)の侵害のリスク

他社に商標を真似されるということは、多くの場合、模倣品が出回るということです。模倣品が出回ると、自社商品が売れなくなるばかりか、イメージダウンにつながり、長期的に見て、ビジネス自体が危機に瀕することになりかねません。

回避策

まず前提として、商標権を獲得していることが絶対的に重要です。進出する場合には、必ず商標権を取得するようにしてください。
(商標権がある場合の対応)
自社商標権が侵害された場合、侵害の態様にもよりますが、警告書送付、民事訴訟、刑事訴訟、行政摘発等のアクションをとることができます。
(商標権がない場合の対応)
不正競争防止法による侵害阻止はかなりハードルが高くなります。ベトナムへ進出する際にはまず商標登録をすることをお勧めします。ちなみに商標登録には1年以上かかりますので早めに出願しておいたほうがいいでしょう。

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【G2】ベトナム/製造委託/商標

G2におけるリスクは次の4項目です。
■現地での商標権を侵害するリスク→ リスク3
■外国で製造した製品がその国の税関からの輸出時に差し止められるリスク→ リスク4
■外国で自社のブランドが盗用されるリスク、コピー商品が出回るリスク→ リスク5
■外国から輸入した製品が日本の権利を侵害するリスク、日本の税関で差し止められるリスク→ リスク6

リスク3→
現地での商標権を侵害するリスク

製造委託であったとしても、他人の商標権を侵害した場合には商標権侵害を問われる可能性があります。また、販売する予定だった製品を入荷できず、ビジネス上多大な損害を被るおそれがあります。

回避策

現地での商標調査を行うことをお勧めします。あるいは、委託先に対して他人の商標権を侵害しない旨の誓約書を提出させることもできますが、自社の製品を製造するという責任がありますから、なるべく自社で商標調査を行うべきだと思われます。
また、商標登録を取得しておくべきです。

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リスク4→
外国で製造した製品がその国の税関からの輸出時に差し止められるリスク

ベトナムで他人の商標権を侵害する製品は輸出時に差し止められる可能性があります。輸出時に製品が差し止められた例はまだ少ないですが、もしも製品輸出が差し止められた場合、すべての製品が没収されてしまいます。

回避策

ベトナムで他人の商標権を侵害する製品が輸出時に差し止められるリスクは低いです。しかし、今後、輸出についても差止めが行われる可能性は否定できませんので、注意が必要です。

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リスク5→
外国で自社のブランドが盗用されるリスク、コピー商品が出回るリスク

外国では特に、市場での模倣品の発見が遅れることがあります。国内のすべての市場を見回ることは難しいので、模倣品が出回っても発見までに時間がかかったり、発見されないこともあります。
また、外国で委託製造を行う場合、よくあるのは委託先の工場が契約した量より多くの製品を製造して横流しすることです。このようにして、本物と同一の模倣品(横流し品)が出回ることになります。

回避策

模倣品を発見するためには、定期的に市場調査を行うことをお勧めします。現地に社員がいれば、自社で行い、現地に社員がいない場合には代理店、あるいは調査会社を通して行えると思います。
展示会、見本市には業者が集まり、模倣品の取引が行われることもあるので、特に注意が必要です。
委託製造を行う場合には、委託先の製造管理に留意する必要があります。生産量を管理する方法として、例えば証紙やホログラムシールを配布し、製品に貼る等があります。
コピー商品が出回った場合、見過ごすことができないならば、行政摘発、刑事摘発等をしなければなりません。

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リスク6→
外国から輸入した製品が日本の権利を侵害するリスク、日本の税関で差し止められるリスク

外国では何ら権利を侵害しない商品でも、日本国内では侵害となることがあります。そのような場合、日本の税関で輸入時に差し止められたり、日本国内で権利侵害の問題が生じることになります。

回避策

ベトナムで製造する製品を日本で販売する前に、日本での商標調査をすることをお勧めします。

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【G3】ベトナム/ライセンス/商標

G3におけるリスクは次の6項目です。
■ブランドイメージが壊れるリスク→ リスク7
■出所の混同のリスク→ リスク8
■冒認の商標登録をされるリスク→ リスク9
■侵害品に対する対応をどうするかというリスク→ リスク10
■ベトナムにおける商標ライセンス登録に関するリスク→ リスク11
■®表記に関するリスク(登録されていない商標に®を付けた場合のリスク→ リスク12

リスク7→
ブランドイメージが壊れるリスク

もしもライセンシーの商品が粗悪だったり、貴社の商品のイメージと違うものだった場合には、貴社のブランドイメージが壊されてしまいます。

回避策

ライセンシーが、信頼できる企業か、また、ライセンス料を受け取る場合には、確実に支払が見込める企業であるかどうかを見極める必要があります。
ライセンス契約において、商標の使用の方法について具体的に定め、定期的に品質検査をしたり、新商品は事前に点検することができるような条項も盛り込むことをお勧めします。これによって、貴社の製品基準を満たす製品についてのみライセンスすることができます。
ハウスマーク(社標)は貴社の重要な財産であり、もしもライセンスするのであれば、細心の注意が必要です。
ライセンスを行う際には、独占的使用権とするかどうかについても良く検討してください。独占的使用権とした場合には、同種の商品について他の者にはライセンスできなくなります。

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リスク8→
出所の混同のリスク

ライセンスをした場合、ライセンシーの商品との間で出所の混同が生じることがあります。このような事態が生じると、市場で需要者が混乱し、結局は貴社商品のブランド価値の失墜を招きますので、問題です。

回避策

ライセンス契約において、出所の混同が生じないよう定めておくことが必要です。
また、商品に「XXは○○株式会社の商標です」のような記載をするよう義務付ける方法もあります。

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リスク9→
冒認の商標登録をされるリスク

ライセンシーがライセンスを受けている商標を勝手に出願、登録するということがしばしば見受けられます。

回避策

契約書において、ライセンシーが商標出願をしてはならない旨を明記することをお勧めします。また、もしも出願した場合には、速やかに貴社へその出願、登録を譲渡するように規定することも考えられます。

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リスク10→
侵害品に対する対応をどうするかというリスク

ライセンスによって商品の幅が広がることによって侵害品が出回りやすくなることも考えられます。

回避策

ライセンシーが侵害品を発見した場合に、貴社へ通報するように契約書で記載しておいたほうがいいと思います。その上で、権利行使を誰が主体となって行うか、費用は誰が支払うかについて決めておきます。ライセンシーは権利行使できない場合も多いので、その場合には権利者である貴社が権利行使しなければなりません。

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リスク11→
ベトナムにおける商標ライセンス登録に関するリスク

ベトナムでは、現在、ライセンシーによる登録商標の使用も、真正な使用と認められています。但しライセンスの登録が必要です。

回避策

ベトナムでライセンスをする場合にはライセンスの登録が必要です。

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リスク12→
®表記に関するリスク(登録されていない商標に®を付けた場合のリスク)

登録されていない商標に®を付けた場合、罰則を受けることがあります。

回避策

商品及びパッケージにおける®の使用には十分に注意する必要があります。
他国から製品を輸入する際に、他国での登録に基づいて®が使用されていることがありますが、そのような場合にはシール等を貼ることが望ましいとされています。

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【H1】ベトナム/輸出/営業秘密

H1におけるリスクは次の1項目です。
■自社の現地社員が営業秘密を流出するリスク→ リスク1

リスク1→
自社の現地社員が営業秘密を流出するリスク

自社の現地支店若しくは現地子会社が雇用した現地社員が、営業秘密を流出するリスクがあります。

回避策

まず、WTOのTRIPS協定によって、加盟国には「開示されていない情報の保護」が求められています(同協定39条)。WTO加盟国であるベトナムも、この条約に従い、営業秘密を知的財産法によって保護しています。
 知的財産法4条(23)に、営業秘密とは「財務または知的投資活動から得られる情報であって、開示されておらず、事業に適用可能なものをいう」と定義されています。そして、その保護要件として、知的財産法84条にさらに具体的に次の通り規定されています。
 (1)周知の事実でもないし、容易に取得できるものでもない。
 (2)営業に使用した場合に、その営業秘密を保有または使用しない者に対して、その保有者が競争優位性を得られる。
 (3)開示されたり、容易にアクセスされたりしないように、その保有者が必要な保護手段を用いて秘密に保持している。
 保護対象は、上述の通り「財務または知的投資活動から得られる情報」ですから、日本で営業秘密として保護される、技術データ、設計図、生産ノウハウといった技術情報も、顧客情報、接客マニュアル、食品レシピといった経営情報も保護される可能性があります。
 但し、「個人識別の秘密、国家運営の秘密、国防及び安全保障の秘密、事業とは無関係のその他の機密情報は、営業秘密から除外される」旨規定されています(同法85条)。
 以上について、より詳細には、次の資料に解説されています。
模倣対策マニュアル ベトナム編(2012年3月、日本貿易振興機構)
http://www.globalipdb.jpo.go.jp/jpowp/wp-content/uploads/2013/09/acc43d128ff95ba095782b4df9f9f212.pdf
 なお、現在のところ、ベトナムにおいては詳細なガイドラインや判決例が存在しないため、どの程度の保護要件が要求されるか不明です。しかしながら、最低限「何が秘密情報に該当するのかを従業者に知らせていること」、そして「秘密管理措置を履行していること」は行わなければならないと考えられます。
 まず、何が秘密情報なのかを明確にするために、従業者との間で秘密保持契約を結ぶ必要があります。雇用契約の中に漠然とした秘密保持義務を謳うだけでは不十分ですから、注意が必要です。
 加えて、秘密管理措置については、情報にアクセスする権限者を限り、また、それが秘密情報であることを表記する等について、社内でルールを作成し、それを確実に実行する体制が必要です。
 従業者が秘密保持契約に違反した場合は、契約書に記載された損害賠償の支払い義務のほか、知的財産法により損害賠償や差し止め請求といった民事的救済(同法202条)を請求できるほか、行政及び刑事措置による救済も一応規定されています(同法211条)。なお、ベトナムの知的財産法による救済の可能性を確保するために、秘密保持契約において、準拠法を単純に日本のみに限定することについては注意が必要です。

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【H2】ベトナム/製造委託/営業秘密

H2におけるリスクは次の1項目です。
■製造委託契約の下で現地会社へ供出した技術的なノウハウ・データが現地会社に利用され、または漏えいするリスク→ リスク2

リスク2→
製造委託契約の下で現地会社へ供出した技術的なノウハウ・データが現地会社に利用され、または漏えいするリスク

国内で製造をしていたものを現地会社へ製造委託した場合に、同製品についての品質を維持するために技術データや生産ノウハウを提供する必要が生じます。同製品の製造委託契約が終了しても、それら技術データ等を利用して同等の製品を作り続けられてしまう可能性があります。

回避策

ベトナムの知的財産法4条(23)に、営業秘密とは「財務または知的投資活動から得られる情報であって、開示されておらず、事業に適用可能なものをいう」と定義されていますから(より具体的な保護要件は同法85条)、技術データ、設計図、生産ノウハウといった技術情報もこれに含まれます。
 現在のところ、ベトナムにおいては詳細なガイドラインや判決例が存在しないため、どの程度の保護要件が要求されるか不明です。しかしながら、最低限「何が秘密情報に該当するのかを従業者に知らせていること」、そして「秘密管理措置を履行していること」は行わなければならないと考えられます。
 まず、秘密情報の特定のために、現地会社と製造委託契約を行う際に、秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement )を並行して結ぶことが必要です。
この契約の中で、提供した秘密情報の目的外使用を禁止する旨を明示することで、秘密情報が相手方企業に自由に使用されてしまうことを、防ぐことができます。
 次に、秘密管理措置については、特定した秘密情報について秘密管理措置を実行する必要があります。具体的には自らも社内規定を設けて、秘密情報であることの表記、アクセス制限、そして暗証化といったような措置を取らなければなりません(H1リスク1参照)。また、製造委託契約や秘密保持契約において、現地会社に対して、同様な、より具体的な管理義務を規定することも有効だと思われます。
 現地会社が秘密保持契約に違反した場合は、契約書に記載された違約金の支払い義務のほか、知的財産法により損害賠償や差し止め請求といった民事的救済(同法202条)を請求できるほか、行政及び刑事措置による救済も一応規定されています(同法211条)。また、日本の不正競争防止法は、外国における秘密情報の漏えいも対象としますので、国内法に基づいて秘密情報により生産された製品が国内に輸入された場合の差止請求(同法3条)や秘密漏えいによって蒙った損害賠償請求(同法4条)を申し立てることもできます。さらに、平成27年の法律改正により、同法による刑事罰の適用範囲が国外における行為者まで拡大されています(同法21条3項)。なお、日本の不正競争防止法による実効は相手国内に及びませんから、ベトナムの知的財産法による救済の可能性を確保するために、秘密保持契約において、準拠法を単純に日本のみに限定することについては注意が必要です。

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【H3】ベトナム/ライセンス/営業秘密

H3におけるリスクは次の3項目です。
■ライセンス契約の下で現地会社へ提供した営業上のノウハウ・データが現地会社から漏えいするリスク→ リスク3
■共同開発契約の下で相手会社へ提供したノウハウ・データが開発製品や事業以外に相手会社に利用されるリスク→ リスク4
■共同開発契約の下で相手会社から提供を受けたノウハウ・データを利用したとして相手会社から訴えられるリスク→ リスク5

リスク3→
ライセンス契約の下で現地会社へ提供した営業上のノウハウ・データが現地会社から漏えいするリスク

国内で成功した営業に関するビジネスモデルを、ブランドとともに現地会社へ有償でライセンスする場合があります。この際、ブランドは商標登録を行うことによって管理することができますが、登録対象とならない顧客情報といったデータや接客マニュアルや食品レシピといったノウハウは権利を確立することによっての管理が難しく、その漏えいの可能性があります。

回避策

ベトナムの知的財産法4条(23)に、営業秘密とは「財務または知的投資活動から得られる情報であって、開示されておらず、事業に適用可能なものをいう」と定義されていますから(より具体的な保護要件は同法85条)、顧客情報、接客マニュアル、食品レシピといった経営情報もこれに含まれます。
 現在のところ、ベトナムにおいては詳細なガイドラインや判決例が存在しないため、どの程度の保護要件が要求されるか不明ですが、少なくとも「何が秘密情報に該当するのかをライセンス相手に知らせること」、そして「秘密管理措置を履行すること」は行わなければならないと考えられます。
 まず、何が秘密情報なのかを特定するために、現地会社とライセンス契約を行う際に、秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement )を並行して結ぶことが必要です。特に、相手会社の事業に関わりにくいライセンスという形態では、契約の中で、相手会社に具体的な秘密管理措置を課すこと、同時に、品質管理とともに秘密管理措置の履行を確認するために相手会社への立ち入り検査権を規定しておくことも有効であると思われます。
 一方で、自らも、特定した秘密情報について秘密管理措置を実行する必要があります。具体的には秘密情報であることの表記、アクセス制限、そして暗証化といったような措置を取らなければなりません。また、ライセンス契約や秘密保持契約において、現地会社に対して、同様な、より具体的な管理義務を規定することも有効だと思われます。
 現地会社が秘密保持契約に違反した場合は、契約書に記載された違約金の支払い義務のほか、知的財産法により損害賠償や差し止め請求といった民事的救済(同法202条)を請求できるほか、行政及び刑事措置による救済も一応規定されています(同法211条)。また、日本の不正競争防止法は、外国における秘密情報の漏えいも対象としますので、国内法に基づいて秘密情報により生産された製品が国内に輸入された場合の差止請求(同法3条)や秘密漏えいによって蒙った損害賠償請求(同法4条)を申し立てることもできます。さらに、平成27年の法律改正により、同法による刑事罰の適用範囲が国外における行為者まで拡大されています(同法21条3項)。なお、日本の不正競争防止法による実効は相手国内に及びませんから、ベトナムの知的財産法による救済の可能性を確保するために、秘密保持契約において、準拠法を単純に日本のみに限定することについては注意が必要です。

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リスク4→
共同開発契約の下で相手会社へ提供したノウハウ・データが開発製品や事業以外に相手会社に利用されるリスク

異なる技術分野の現地会社と、新たな製品や事業を共同開発する場合は、お互いの技術情報を持ち寄る必要があります。この場合、提出した技術情報が営業秘密である場合、相手会社を通じて外部に漏えいしてしまう可能性があります。また、共同開発の成果物を秘密情報として管理する場合は、この取り扱いについて同意する必要があります。

回避策

ベトナムの知的財産法4条(23)に、営業秘密とは「財務または知的投資活動から得られる情報であって、開示されておらず、事業に適用可能なものをいう」と定義されていますから(より具体的な保護要件は同法85条)、共同開発の際に、相手方に提示する技術データ、設計図、生産ノウハウといった技術情報もこれに含まれます。また、共同開発の成果物についても同様です。
 現在のところ、ベトナムにおいては詳細なガイドラインや判決例が存在しないため、どの程度の保護要件が要求されるか不明ですが、少なくとも「何が秘密情報に該当するのかを相手会社に知らせること」、そして「秘密管理措置を履行すること」は行わなければならないと考えられます。
 まず、何が秘密情報なのかを特定するために、現地会社と共同開発契約の中で、秘密保持条項(NDA:Non-Disclosure Agreement )を規定し、秘密情報が互いに提供する「公知ではない、特定の技術情報であること」また「共同開発事業によって新たに開発した(公知ではない)技術情報であること」を規定する必要があります「共同開発事業によって新たに開発した技術情報についても、双方の開示合意が無ければ秘密保持義務を負う旨の規定とするとよいと思われます。
 次に、特定した秘密情報について秘密管理措置を実行する必要があります。具体的には、互いに社内規定を設けて、秘密情報であることの表記、アクセス制限、そして暗証化といったような管理を行う必要があります。ここで、注意が必要なことは、共同開発においては、自らも相手会社から秘密情報を預かることになりますから、十分な注意が必要になります(H3リスク5参照)。
 現地会社が秘密保持契約に違反した場合は、契約書に記載された違約金の支払い義務のほか、知的財産法により損害賠償や差し止め請求といった民事的救済(同法202条)を請求できるほか、行政及び刑事措置による救済も一応規定されています(同法211条)。また、日本の不正競争防止法は、外国における秘密情報の漏えいも対象としますので、国内法に基づいて秘密情報により生産された製品が国内に輸入された場合の差止請求(同法3条)や秘密漏えいによって蒙った損害賠償請求(同法4条)を申し立てることもできます。さらに、平成27年の法律改正により、同法による刑事罰の適用範囲が国外における行為者まで拡大されています(同法21条3項)。なお、日本の不正競争防止法による実効は相手国内に及びませんから、ベトナムの知的財産法による救済の可能性を確保するために、秘密保持契約において、準拠法を単純に日本のみに限定することについては注意が必要です。

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リスク5→
共同開発契約の下で相手会社から提供を受けたノウハウ・データを利用したとして相手会社から訴えられるリスク

共同開発の相手会社から秘密情報の提供を得た場合、秘密保持契約に拘束されるために自らの開発が阻害されてしまうリスクがあります。

回避策

共同開発が終了し、さらにその延長線上で単独に開発を続ける場合は、相手方から取得した営業秘密について取扱いに疑義が生じることになります。技術や事業の共同開発を行う場合は、両者の関係を長く継続できるか否かを考慮しないと、思いがけず事業継続の足かせになってしまう可能性があります。共同開発終了後も、秘密保持義務は負ったまま、秘密情報の継続利用は互いに許諾するなど、契約上工夫をする必要があると思われます。かかる秘密保持契約の文例に示すように、相手会社から得た秘密情報を利用できるのは、事業の目的内に限られます。このとき、意図する、せざるにかかわりなく、相手会社から目的外の秘密情報が提供された場合もありえます。特に、相手方からの営業秘密を広く共有してしまうと自分の情報との混同(コンタミネーション)が生じてしまがちです。相手側から受け取った営業秘密は営業秘密として認識し、かつ扱う者も限られた人数にするとの姿勢が重要です。

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【i1】インドネシア/輸出/特・実

i1におけるリスクは次の2項目です。
■他社の特許権(実用新案権)を侵害するリスク→ リスク1
■他社によって自社製品が模倣されるリスク→ リスク2

リスク1→
他社の特許権(実用新案権)を侵害するリスク

回避策

1.概要

仮に、第三者の特許を侵害すると、自社製品の販売停止、損害賠償、謝罪広告、訴訟又は輸入差止めになります。
 そのためインドネシアに自社製品を輸出するに際し、自社製品の実施(販売、使用など)についての第三者の特許権が障害となるか否か調査し、障害となるならばそれを回避する必要があります。
 つまり、自社製品がインドネシアにおいて第三者の特許権(実用新案権(小特許)も含めて、以下特許権と呼びます。)を侵害する可能性がないかを調査します。
 そして自社製品が第三者の特許権を侵害するか否かを判断します。
 仮に自社製品が第三者の特許権を侵害するならば、その回避策を講じることは重要です。
 第三者が有する特許の調査は、自社製品が侵害する可能性があるインドネシア特許権があるかを調査するものです。
 調査の結果、自社製品が侵害する可能性があるインドネシア特許権が存在しないと判断されれば、スムーズに事業を進めることができます。この第三者の特許権を侵害するか否かを判断について以下に説明しますが、最終的には専門家(インドネシア弁理士・インドネシア弁護士)に相談した方がよいです。
 もし調査の結果、自社製品が侵害する可能性があるインドネシア特許権が存在することが判明した場合には、権利侵害となることを回避するための回避策を講じる必要があります。
 権利侵害の回避策がまったく見つからない場合には、侵害訴訟を提起されるリスクを考えて、自社製品の輸出を断念せざるをえないこともあります。
 WIPOの資料によりますと、2013年の特許出願件数が7450件でそのうち6787件(約9割)が海外からの出願です。2013年の実用新案登録出願件数が349件でそのうち116件(約3割)が海外からの出願です。

2.インドネシア特許の調査に関して

2-1.インドネシア知的財産権総局による検索方法
(1) インドネシア知的財産権総局の「HKI」。
 インドネシア国家知的財産庁(Direktorat Jenderal Hak Kekayaan Intelektual Kementerian Hukum Dan Hak Asasi Manusia R.I=DJHKI)のウェブサイト上の「HKI」(データベース)を使って調査します。インドネシア語で調査することになります。2015年4月にデータベースは更新され、下記URLからアクセスします。
http://e-statushki.dgip.go.id/
 このデータベースを使った検索の仕方は、下記URL(インドネシア知財関連公報検索マニュアル)に詳細な説明があります。特許及び実用新案については、特に8ページから12ページをご覧ください。なお、インドネシア知財関連公報検索マニュアルは2014年9月に発行されています。上述したように、2015年4月にデータベースが更新されているため、インドネシア知財関連公報検索マニュアルに記載されているリンク先は古いURLがありますので、留意してください。
http://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/idn/ip/pdf/manual_search_ip_communique.pdf
 検索はインドネシア語で調査することになります。トップページでは単純検索しか出来ませんが、単純検索を行った結果を表示するページから更に詳しい次のアドバンス検索ページ(インドネシア知財関連公報検索マニュアルの12ページに掲載)も可能です。

単純検索では、出願人、発明者データを英語で入力して検索することができます。また国際分類(IPC)でも検索できます。
 検索された案件は、発明の名称(インドネシア語)、出願番号、出願日、登録番号、登録日、権利の満了日が表示されます。その表示された発明の名称をクリックしますとBibliographic(書誌的事項:要約(インドネシア語)も含む。)、出願人、発明者名が表示されます。
 PDFをクリックすれば、特許公報のPDF(インドネシア語)がダウンロード出来ます。
(2) 民間調査機関または弁理士
 「HKI」(データベース)は、Bibliographic(書誌的事項)を含めて全てインドネシア語で表示されるため、特許公報のPDFをダウンロードして日本語等に翻訳しなければ【特許請求の範囲】を確認することができません。
 出願人名や書誌的事項で特許公報のPDFをダウンロードし、【特許請求の範囲】の翻訳を民間調査機関や弁理士等に依頼します。

3.インドネシア特許権を侵害するか否かの判断

【特許請求の範囲】の文言に自社製品が含まれるか否かを判断します。その判断する手順が侵Q8侵Q48に詳述してあります。侵Q8、侵Q48に記載されている手順に従って、第三者が有する特許に自社製品が含まれるか否かを判断してください。
 その請求の範囲の文言に自社製品が明らかに含まれない場合を除いて、判断に困るような特許権が見つかったら、専門家(インドネシア弁理士・インドネシア弁護士)に相談してください。
 なお、特許発明には「物の発明」、「方法の発明」及び「製造方法の発明」の3種類の発明があります。「物の発明」とは、製品自体又はその部品の発明です。「方法の発明」とは、製品又は部品の使用方法の発明です。「製造方法の発明」とは、製品を製造するための方法発明です。
 自社製品は日本で製造されてインドネシアへ輸出されています。このため、インドネシア特許の「製造方法の発明」は、検討する必要はありません。各国特許独立の原則により、インドネシアの「製造方法の発明」の特許は、日本での製造方法に権利が及びません。

4.インドネシア特許権を侵害の回避策を講じる

(1)侵害の技術的な回避方法
 自社製品の技術などに修正を加えることで、第三者の特許を侵害しないようにして権利侵害を回避するものです。請求の範囲の文言に抵触しないように、自社製品に変更・修正を加えます。専門家とともに進めます。
(2)特許権の譲渡・ライセンスの交渉
 第三者の権利侵害を技術的に回避することが難しい場合には、その者からその特許権の譲渡を受けたり、ライセンスを受けることによって、権利侵害の状態となることを回避する場合もあります。
 「1.概要」で説明したように特に特許権は9割が海外からの出願です。このため、特許権の譲渡やライセンスの際には、インドネシア単独での特許権の譲渡又はライセンスを考えるか、他の国の特許権も含めて交渉するか等を考える必要があります。
 往々にして議論となるのは、譲渡金額や特許ライセンスの金額です。これは、特許権の経済的価値、実施可能性、相手方の現実の使用の有無や使用実績の程度、当方がその権利の使用を必要とする程度に応じて、ケースバイケースで決まるものです。
 こちらが日本企業であることを知ると、高額の譲渡金額や特許ライセンスの金額を求めてくる可能性もあるため、相手方にプレッシャーを与える手段を探すことも必要です。
 相手方にプレッシャーを与えるためには特許無効審判が有効ですが、インドネシア特許法には無効審判がありません。その代りに、商務裁判所に取消訴訟を提起することが必要です(特許法第91条第2項)

5.日本特許に対しても、調査、侵害するか否かの判断、回避策を講じる

自社製品を日本国内で自社製造していますから、日本特許に対しても、インドネシア特許と同様な手続きしなければなりません。特許独立の原則により、日本とインドネシアとで別々の権利として考えます。
 つまり、自社製品が第三者の日本特許権を侵害する可能性がないかを調査し、社製品が第三者の特許権を侵害するか否かを判断し、仮に自社製品が第三者の特許権侵害するのであれば、その回避策を講じます。
 自社商品は、貴社が製造していますから、日本特許の 「物の発明」及び「製造方法の発明」を検討する必要があります。日本特許の「方法の発明」は、自社商品が日本国内で「方法の発明」が使われることが基本的にないと考えますので、検討は不要と考えます。
5-1.日本特許の調査に関して
 特許情報プラットホーム(J-PlatPat)にアクセスして日本特許を検索することができます。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage
5-2.特許情報プラットホーム(J-PlatPat)による検索方法
特許情報プラットホームの検索方法は、下記URLのPDFファイル8ページから23ページに詳細に説明されています。この説明に従って検索してください。
http://www.inpit.go.jp/content/100583494.pdf
5-3.日本特許権を侵害するか否かの判断
 上述の「3.インドネシア特許権を侵害するか否かの判断」を日本特許に読み替えて判断してください。
5-4.日本特許権侵害の回避策
 上述の「4.インドネシア特許権侵害回避策」を日本特許に読み替えて判断してください。

6.自社製品が、自社で設計し他社(日本国内)に製造してもらったOEM(Original Equipment Manufacturing)製品の提供を受けた場合、又は自社製品用の交換部品又は消耗品を自社で設計し他社から提供を受ける場合(以下、「OEM製品1」)

(1) 製造してもらう他社と貴社との間で、「OEM製品1」に関する特許に関してどのような責任を負うかを契約書で取り決めておく必要があります。
(2) 一般に、他社は日本国内における製造に関して責任を負う契約になると思います。この場合、他社が日本国内の製造方法の発明に関して、「2.インドネシア特許(実用新案も含む)の調査」(以下「特許調査」という)、「3.インドネシア特許権(実用新案権も含む)を侵害するか否かの判断」(以下「特許侵害可否判断」という)、「4.インドネシア特許権(実用新案権も含む)の侵害回避策」(以下「特許侵害回避策」という)を講じます。
(3) そして、日本国内の製造以外は貴社が責任を負う契約になると思います。つまり貴社「OEM製品1」のために、貴社がインドネシア特許の「物の発明」及び「方法の発明」に対して、「2.インドネシア特許の調査」(以下「特許調査」という)、「3.インドネシア特許権を侵害するか否かの判断」(以下「特許侵害可否判断」という)、「4.インドネシア特許権の侵害回避策」(以下「特許侵害回避策」という)を講じます。
(4) さらに貴社「OEM製品1」ために、貴社が日本特許の「物の発明」に対して、「特許調査」、「特許侵害可否判断」、「特許侵害回避策」を講じる必要があります。

7.自社製品が、他社で設計し他社(日本国内)に製造してもらったODM(Original Design Manufacturing)製品の提供を受けた場合、又は自社製品用の交換部品又は消耗品を他社で設計し他社から提供を受ける場合(以下、「ODM製品1」)

(1) 設計及び製造してもらう他社と貴社との間で、「ODM製品1」に関する特許に関してどのような責任を負うかを契約書で取り決めておく必要があります。
(2) 一般に、他社が設計・製造しますので「ODM製品1」に関して責任を負う契約になると思います。そのため、他社が日本及びインドネシアの特許発明に関して、「特許調査」、「特許侵害可否判断」、「特許侵害回避策」を講じることになります。
(3) 貴社は、基本的に「ODM製品1」に関する特許に関して責任を負うことはないと思います。

8.貴社が他社から依頼を受けて、日本国内で他社製品の製造を請け負う場合(以下、「OEM製品2」)

(1) 「OEM製品1」の逆の立場になります。
(2) 一般に、貴社が日本国内における製造に関して責任を負う契約になると思います。この場合、貴社が日本国内の製造方法の発明に関して、「特許調査」、「特許侵害可否判断」、「特許侵害回避策」を講じます。

9.貴社が他社から依頼を受けて、日本国内で他社製品の設計及び製造を請け負う場合(以下、「ODM製品2」)

(1) 「ODM製品1」の逆の立場になります。
(2) 一般に、貴社が設計・製造しますので「ODM製品2」に関して責任を負う契約になると思います。そのため、貴社が日本及びインドネシアの特許発明に関して、「特許調査」、「特許侵害可否判断」、「特許侵害回避策」を講じることになります。

10.共同開発設計の場合

(1) 共同研究開発などで製品を設計する場合には、共同研究開発契約を結ぶことが一般的です。その契約では、A社とB社との共同研究開発で生まれた発明の持ち分をA社B社で折半するとか、共同研究開発した製品の販売をA社が日本、B社がインドネシアとを決めたりします。
(2) 共同研究開発した開発製品を、A社及びB社それぞれが日本及びインドネシアで販売できる契約ですと、A社及びB社は、インドネシア特許及び日本特許に対して、「特許調査」、「特許侵害可否判断」、「特許侵害回避策」を分担して行うことになると思います。
(3) 共同研究開発した開発製品を、A社が日本で販売、B社がインドネシアで販売する場合には、A社が日本特許に対して、「特許調査」、「特許侵害可否判断」、「特許侵害回避策」を行い、B社がインドネシア特許に対して、「特許調査」、「特許侵害可否判断」、「特許回避策」を行う分担になると思います。
(4) 共同研究開発した製品であっても、A社が販売しB社が製造するような契約もあるかと思います。いろいろな契約があるため、その都度、他社特許の調査等もどのように分担するかを契約書に記載しても良いと思います。

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リスク2→
他社によって自社製品が模倣されるリスク
(日本で製造した自社製品をインドネシアへ輸出して、インドネシア内で販売)

回避策

1.概要

日本で製造する自社製品をインドネシアに輸出し販売し、自社製品がインドネシア市場で順調に売上を伸ばし、インドネシア市場での知名度も上がってくるとします。すると、インドネシア内で、自社製品の模倣品が出回るようになってきます。模倣品には自社と同様の技術が使用されていることがあります。
 その技術についてインドネシアで特許を申請・取得していないと、その技術を使った模倣品に対して法的対応策(例えば警告、損害賠償、謝罪広告、訴訟又は差止め)をとることができません。その結果、苦労してインドネシア市場を切り開いてきたのに、売上を大きく減少させることになります。
 また、インドネシアでの販売だけを気にしていては対策としては不十分です。日本国内で他社が自社製品と同じような技術を使って製品を製造し輸出することもあります。
 つまり、日本及びインドネシアにおいて、他社による自社製品の模倣されるリスクを小さくする必要があります。

2.特許又は登録実用新案を取得する

(1)権利取得を考える時期
A.新しい技術を開発・考案した場合、製品化に先立って又は製品化と並行して、日本国内で権利取得のために特許出願又は実用新案登録出願することが一般的です。
 インドネシアに対しても、日本特許出願又は実用新案登録出願の「優先権」の制度を利用して、日本出願から12ヶ月以内にインドネシア特許又はインドネシア登録実用新案の権利取得の手続をとることが考えられます。
 日本特許出願又は実用新案登録出願してから12ヶ月以内(好ましくは10か月以内。その理由は下記(6)Aを参照。)には、開発・考案した製品をインドネシアに輸出する可能性が否かを考えてください。
 製品をインドネシアに輸出する可能性があるのなら、日本特許出願又は実用新案登録出願してから1年以内にインドネシアに出願できる手続を進めます。
B.日本国内の製品販売が好調であるからインドネシアに輸出したいと考えてから、インドネシア特許出願又はインドネシア登録実用新案出願したいと考えても、権利取得できないことがあります。
 日本特許出願してから1年6ヶ月経過すると日本の特許公開公報が発行され、日本実用新案登録出願してから6ヶ月以内には登録実用新案公報が発行されます。するとこれらの公報が公知となり、インドネシア特許出願が新規性がないとして拒絶になったりインドネシア登録実用新案が新規性がないとして拒絶となったりします。
 また、日本特許法及びインドネシア特許法ともに、製品の発表後6ヶ月以内であれば新規性を失わないとする「新規性喪失の例外」が規定されています。しかし、インドネシア特許法の「新規性喪失の例外」は、日本特許法の「新規性喪失の例外」よりも狭いです。例えばインドネシア国内での試験研究にしか新規性喪失の例外が認められません。
 また、日本特許出願又は実用新案登録出願をしないで、直接、インドネシア特許出願又は実用新案登録出願しようと考えても、日本国内での製品販売が拒絶理由又は無効理由になります。
(2) 特許
 特許とは、創作した「発明」を独占できる制度です。特許権の存続期間は、日本もインドネシアも出願日から20年です。日本の特許出願は日本特許庁で、インドネシアの特許出願はインドネシア特許庁で審査されて特許されます。保護対象である「発明」には、物の発明、方法の発明及び製造方法の発明があります。
(3) 実用新案
 実用新案とは、創作した「考案」を独占できる制度です。登録実用新案権の存続期間は日本もインドネシアも出願日から10年です。日本実用新案登録出願は、方式審査のみで登録されます。しかしインドネシア実用新案登録出願は、実体審査がなされます。その実体審査は、実用新案登録出願の新規性と産業上の利用可能性とに関して審査され、進歩性については審査されません。また考案は、製品の形状、形態、構造又はそれらの組合せについて出された実用に適した物の考案のみしかありません。
 なお、日本では「技術評価書を提示して警告をした後でなければ、実用新案権を侵害する者に対し、その権利を行使することができない」という旨の規定(実用新案法第29条の2)があります。しかし、インドネシアでは実用新案権は審査されていますから、そのような条文は存在しません。
(4) 開発・考案した新しい技術を特許出願又は実用新案登録出願すべきか、営業秘密として保護すべきか
 新しい製造方法の発明やノウハウは、他社が工場内に侵入しなければその内容はわからないことです。特許出願又は実用新案登録出願すると、出願から一定期間後にその発明の内容が公開されてしまいます。このため、製造方法の発明は営業秘密にして管理した方がよいことが多いと思います。
 また、製品が市場に出て、他社がその製品をリバースエンジ二アリングしても、その新しい技術やノウハウがわからないのであれば、特許出願又は実用新案登録出願しない方がよいかもしれません。
 しかし、リバースエンジ二アリング技術も日々進歩しており、製品が市場に出ていればいずれリバースエンジニアでその技術が分かってしまうことも多いです。製造方法以外の新しい技術やノウハウは、製品が市場に出てしまうと公知になることが多いことを勘案して、営業秘密として管理するか又は特許出願等をするかを検討しましょう。
(5)日本で、最初に特許出願又は登録実用新案出願のルート
 日本で新しい技術を開発・考案したら、日本国内で権利取得のために特許出願又は実用新案登録出願しましょう。インドネシアでの特許出願等も考えているのであれば、最初から日本の専門家(弁理士、弁護士)に相談することが好ましいでしょう。
(6)インドネシアへ、特許出願又は登録実用新案出願
 日本特許出願又は実用新案登録出願したら、次の2つの出願ルートでインドネシア特許出願又は実用新案登録出願します。
A.パリルート
 日本出願の優先権が享有するためには、日本特許特許又は実用新案登録出願の出願日(優先日)から12ヶ月以内に手続が必要です。
 しかし、インドネシア特許特許又は実用新案登録出願はインドネシア語で手続しなければなりません。日本語からインドネシア語への翻訳時間も考えて有線日から10ヶ月以内には準備を開始する必要があります。日本にもインドネシアにも英語で出願できる外国語出願制度があります。インドネシアでは英語で外国語出願するとその出願日から30日以内にインドネシア語の翻訳文を提出しなければなりません。
B.PCT(特許協力条約Patent Cooperation Treaty)ルート
 日本出願の優先権が享有するためには、日本特許特許又は実用新案登録出願の出願日(優先日)から12ヶ月以内に手続が必要です。PCT出願は、日本出願に基づいて多数国に出願したい場合、手続き面でパリルートに比べ有利です。
 日本特許特許又は実用新案登録出願の出願日(優先日)から12ヶ月以内に、WIPOが指定している受理官庁(例えば、日本特許庁等)にPCT出願を提出します。日本特許庁に日本語でPCT出願することができます。
 その後、PCT加盟であるインドネシアへの移行期限は優先日から31ヶ月以内です。31ヶ月の移行期限に間に合わない場合、追加料金支払うことで1ヶ月の延長が可能です。これらの期間内に、インドネシア語の翻訳を特許庁に提出しなくてはいけません。但し、英語でPCT出願している場合には、国内移行の出願日から30日以内にインドネシア語の翻訳文の提出も認められています。
パリルートとPCTルートとの違いの詳細は、以下を参照してください。
http://www.iprsupport-jpo.go.jp/kensaku/apic_html/seido/data/004.html

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【i2】インドネシア/製造委託/特・実

i2におけるリスクは次の2項目です。
■インドネシア企業に製造委託し、日本又は他の販売国へ製品を輸出する際のリスク→ リスク3
■製品の部品を製造国で購入する又は日本から製造国に輸入するとともに、自社で製品を現地生産して、その製品を製造国で販売又は他の販売国に輸出する際のリスク→ リスク4

リスク3→
インドネシア企業に製造委託し、日本又は他の販売国へ製品を輸出する際のリスク

回避策

1.概要

(1) インドネシア企業に製造委託し、インドネシアでは販売を行わず、日本又は他の外国で販売するビジネスです。このようなビジネスは、例えば、インドネシアでの製造コストの安さなどがビジネスの推進力となっている場合が多くなっています。
 営業秘密やノウハウが製造委託先のインドネシア企業に漏れることを想定して、製品のどこまで又はどの部品を製造委託するかなど、秘密にしておく領域と相手に開示する領域とを考える必要があります。
 製造委託先のインドネシア企業に、技術及びノウハウを含めて技術移転しなければならないことも多いと思います。この場合には、営業秘密の契約及び秘密保持のための管理体制をチェックするため自社から人材を定期的に派遣するなどの漏洩防止の対策を行わなければなりません。営業秘密に関しては、L1L2L3を参照してください。
 漏洩対策をしても、技術が漏洩したりリバースエンジニアリングされたりすることもあります。これらの対抗手段として、インドネシアで特許権又は実用新案権を取得しておくことが望まれます。そうすれば、技術漏洩などがあったとしても、特許権などの侵害行為として他者の製品製造を停止させることができます。
(2)製造委託には、自社で自社製品を設計しインドネシア企業に製造委託するOEM(Original Equipment Manufacturing)と、インドネシア企業で自社製品を設計及び製造とをしてもらうODM(Original Design Manufacturing)とがあります。
 一般に、ODMではインドネシア企業がインドネシア特許及び日本特許に関して責任を負うと思われます。そこで以下の説明では、自社設計しインドネシア企業にOEM製品を製造してもらう場面を想定して説明します。

2.インドネシアで問題になる特許(又は実用新案)

(1) 特許発明には「物の発明」、「方法の発明」及び「製造方法の発明」の3種類の発明があります。「物の発明」とは、製品自体又はその部品の発明です。「方法の発明」とは、製品又は部品の使用方法の発明です。「製造方法の発明」とは、製品を製造するための方法発明です。実用新案には形状、形態、構造又はそれらの組合せによる「物の考案」の1種類があります。
(2) 自社製品はインドネシアで製造されます。一般に、製造委託先であるインドネシア企業がOEM製品に関する、インドネシアの「製造方法の発明」に関して責任を負う契約になると思います。
(3) 一方、自社で設計した自社製品を保護するため、第三者のインドネシア特許と日本特許とを侵害しないことを確認する必要があります。
 自社は、第三者が有するインドネシア特許を調査し、特許を侵害するか否かの判断し、その特許を侵害する際には回避策を講じることになります。
 第三者が有するインドネシア特許の調査に関しては、i1リスク1の「2.インドネシア特許(実用新案も含む)の調査」を参照してください。
 特許を侵害するか否かの判断に関しては、i1リスク1の「3.インドネシア特許権(実用新案権も含む)を侵害するか否かの判断」を参照してください。
 特許を侵害する際には回避策に関しては、i1リスク1の「4.インドネシア特許権(実用新案権も含む)を侵害の回避策」を参照してください。
 なお、インドネシアで製造された自社製品は日本又は他の販売国へ輸出されます。インドネシア関税法(17条)では、インドネシアの商標権及び著作権を侵害する物品に対して権利者が輸出を差し止めることができます。しかし、特許権又は実用新案権の侵害品の輸出を差し止めるインドネシアの法律はありません。

3.日本で問題になる特許(又は実用新案)

(1) インドネシアで製造された自社製品は、インドネシアから日本に輸入されます。日本特許法は、輸入も特許の実施行為の1つであり、権利者は日本の特許権を侵害する物品を税関で輸入差し止めることができます。また、税関を通過後に自社製品が日本国内で販売されますので、第三者の日本特許発明を自社製品が侵害していた場合には、特許権者は損害賠償又は販売差し止めを請求する可能性があります。
(2) そこで日本特許の「物の発明」及び「方法の発明」の特許権侵害しないかを検討する必要があります。「物の発明」及び「方法の発明」に関して、第三者が有する特許を調査し、特許を侵害するか否かの判断し、その特許を侵害する際には回避策を講じることになります。
 第三者が有する日本特許の調査に関しては、i1リスク1の「5-1、5-2.日本特許の調査」を参照してください。
 特許を侵害するか否かの判断に関しては、i1リスク1の「5-3.日本特許権を侵害するか否かの判断」を参照してください。
 特許を侵害する際には回避策に関しては、i1リスク1の「5-4.日本特許権を侵害の回避策」を参照してください。

4.他の販売国で問題になる特許(又は実用新案)

(1) インドネシアで製造された自社製品は、インドネシアから販売国に輸入されます。多くの外国の特許法は、輸入も特許の実施行為として、権利者はその販売国の特許権を侵害する物品を税関で輸入差し止めることができます。また、税関を通過後に自社製品がその販売国内で販売されますので、第三者の特許発明を自社製品が侵害していた場合には、特許権者は損害賠償又は販売差し止めを請求する可能性があります。
(2) そこでその販売国の特許の「物の発明」及び「方法の発明」の特許権侵害しないかを検討する必要があります。「物の発明」及び「方法の発明」に関して、第三者が有する特許を調査し、特許を侵害するか否かの判断し、その特許を侵害する際には回避策を講じることになります。

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リスク4→
製品の部品を製造国で購入する又は日本から製造国に輸入するとともに、自社で製品を現地生産して、その製品を製造国で販売又は他の販売国に輸出する際のリスク

回避策

1.概要

(1) 自らインドネシア国内で自社製品を製造することになるため、輸出取引や製造委託とは違った新たな問題が生じてきます。自ら製造する上でも、合弁企業を設立するケース、独立資本の子会社を設立するケース、又はM&Aでインドネシア企業を買収して子会社化するケースがあります。
 いずれのケースであっても、営業秘密やノウハウが漏れることを想定して対策をしなければなりません。特に合弁企業の場合には、日本側のコントロールが効きにくいこともありますから、日本企業と現地法人とが、技術移転契約又は技術ライセンス契約を締結する際に、それらの契約の中で日本企業側が有する技術の漏洩対策について規定する必要があります。営業秘密に関しては、L1L2L3を参照してください。
 技術漏洩対策をしても、技術漏洩し、リバースエンジニアリングされた場合の対抗手段として、インドネシアで特許権又は実用新案権を取得しておくことが望まれます。そうすれば、技術漏洩が不正競争行為としてみなされるかどうかに関わらず、権利侵害行為として他者の製品製造を停止させることができます。
(2) インドネシア国内で自社製品を製造する場合に、すべての部品を自社製造することは少ないと思います。日本企業から部品を輸入したりインドネシア企業で製造された部品を購入したりして、自社製品を製造すると思います。
 この部品がインドネシアで特許権又は実用新案権を侵害すると、その部品を組み入れた自社製品も侵害となる可能性があります。
 このため、貴社は輸入先の企業又は購入先の企業から部品を購入するに際して、その取引契約に第三者のインドネシア特許権及び実用新案権を侵害しない旨の特許保証条項を入れることが好ましいでしょう。特許保証条項に関しては侵Q7を参照してください。
 製品を構成する部品の中には、貴社製品専用の部品があるかもしれません。そのような貴社製品専用の部品を貴社が設計しているのであれば、貴社がその部品に関するインドネシア特許権及び実用新案権を調査する必要があるでしょう。

2.インドネシアで問題になる特許(又は実用新案)

(1) 特許発明には「物の発明」、「方法の発明」及び「製造方法の発明」の3種類の発明があります。「物の発明」とは、製品自体又はその部品の発明です。「方法の発明」とは、製品又は部品の使用方法の発明です。「製造方法の発明」とは、製品又は部品を製造するための方法発明です。
 また実用新案は、製品の形状、形態、構造又はそれらの組合せについて出された実用に適した物の考案のみしかありません。
(2) 自社製品はインドネシアの自社工場(子会社)又は合弁企業で製造されます。インドネシアの「製造方法の発明」に関しても特許権侵害しないかを検討する必要があります。
(3) また、自社製品が第三者のインドネシア特許を侵害しないことを確認する必要があります。インドネシア特許法第16条では、特許権者は特許を付与された製品を製造し,使用し,販売し,輸入することを他の者に禁止する排他的権利を有するとあり、製品の「物の特許」や製品の「方法の発明」に関しても特許権侵害しないかを検討する必要があります。
(4) 自社は、第三者が有するインドネシア特許を調査し、特許を侵害するか否かの判断し、その特許を侵害する際には回避策を講じることになります。
 第三者が有するインドネシア特許の調査に関しては、i1リスク1の「2.インドネシア特許(実用新案も含む)の調査」を参照してください。
 特許を侵害するか否かの判断に関しては、i1リスク1の「3.インドネシア特許権(実用新案権も含む)を侵害するか否かの判断」を参照してください。
 特許を侵害する際には回避策に関しては、i1リスク1の「4.インドネシア特許権(実用新案権も含む)を侵害の回避策」を参照してください。

3.他の販売国で問題になる特許(又は実用新案)

(1) インドネシアで製造された自社製品は、インドネシアから販売国に輸入されます。多くの外国の特許法は、輸入も特許の実施行為として、権利者はその販売国の特許権を侵害する物品を税関で輸入差し止めることができます。また、税関を通過後に自社製品がその販売国内で販売されますので、第三者の特許発明を自社製品が侵害していた場合には、特許権者は損害賠償又は販売差し止めを請求する可能性があります。
(2) そこでその販売国の特許の「物の発明」及び「方法の発明」の特許権侵害しないかを検討する必要があります。「物の発明」及び「方法の発明」に関して、第三者が有する特許を調査し、特許を侵害するか否かの判断し、その特許を侵害する際には回避策を講じることになります。

インドネシア特許法第16条
1 特許権者は,自己の所有する特許を実施し,かつ,その許諾なしに次に掲げる行為をすることを他の者に禁止する排他的権利を有する。
(a) 製品特許の場合:特許を付与された製品を製造し,使用し,販売し,輸入し,賃貸し,配送し,又は販売,賃貸又は配送のために供給すること
(b) 方法特許の場合:製品を製造するために特許を付与された製造方法を使用すること,及び(a)にいうその他の行為をすること 
2 方法特許の場合には,他の者が特許権者の許諾なしに(1)にいう輸入を行うことに対する禁止は,当該特許方法の使用により製造される製品の輸入についてのみ適用される。

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【i3】インドネシア/ライセンス/特・実

i3におけるリスクは次の1項目です。
■日本企業がインドネシア企業に特許ライセンスする際のリスク→ リスク5

リスク5→
日本企業がインドネシア企業に特許ライセンスする際のリスク

回避策

1.概要

日本企業がインドネシア企業に技術を移転する場合、その技術がインドネシアで実施されますので、インドネシア法の法律に従わなければなりません。日本企業はライセンサー(許諾者)として、その特許ライセンスを慎重に作成すべきです。
 特許ライセンス(実施許諾)する際には、インドネシアの特許法、独占禁止法等に考慮すべきです。

参考:
インドネシア特許法
https://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/pdf/indonesia/tokkyo.pdf
インドネシア独占禁止法の概略
http://www.jftc.go.jp/kokusai/worldcom/kakkoku/abc/allabc/i/indonesia.html

2.特許(実用新案も含めて、以下特許と呼びます。)ライセンス

インドネシアでの特許ライセンス契約は、基本的に当事者の取り決めに従います。
 特許ライセンスでは、以下の%#9312;から%#9322;を含むことが一般的と考えます。
① 名称
 通常は特許ライセンス契約とすべきです。技術供与、技術援助などを含んた特許ライセンスであって、特許ライセンス契約という名称でも問題ありません。
② ライセンス技術の内容と実施態様
 ライセンスの対象となる特許番号の特定が必要です。また、実施態様を明確にしておく必要があります。
 インドネシアでは、専用実施権、通常実施権などの実施態様は、特許法に定義がありません。このため、契約書のみでいろいろな実施態様が可能です。例えば、権利侵害者に対してはライセンシー(実施権者)単独で権利行使(差止・損害賠償の請求)等の契約ができます。
③ 技術供与の方法、供与する技術情報、ライセンスの期間、実施地域等の範囲
 技術供与側の日本企業としては、供与する技術情報・資料を明確にしておくこと好ましいです。契約の内容が不明瞭であると、将来、契約問題が生じる可能性があります。
④ ライセンシーの秘密保持義務
 ライセンシーは供与を受けた技術及び関連情報について秘密保持義務があることを規定します。契約期間満了後も、公知技術になるまでは秘密保持義務を負うことを規定すべきです。
⑤ リスク負担
 特に規定はありませんが、特許ライセンス中は特許料(年金)を納付する等の特許権の有効性を維持する義務などを契約書に明記すべきではないでしょうか。
 ライセンスした特許が無効になった場合などの両者の負担に関しても、法律上の制限はありません。
⑥ 改良技術成果の帰属等
 技術輸入契約の有効期間内に改良した技術に関する扱いは、両者の契約に依存します。改良発明に関する取り決めを制限する法律はありません。
⑦ 帳簿等の記帳義務、調査権
 ライセンシーがロイアルティ算定の基礎となる販売額等を記帳しておく義務と、ライセンサーがその帳簿等を調査できる権限があることを明記しておくべきです。
⑧ ロイアルティ(実施料)及びその支払方法
 日本国内でも一般的なイニシアル・ロイアルティ、ランニング・ロイアルティ、ランプサム・ロイヤリティ等が認められます。
⑨ 違約金又は損害賠償の計算方法
 債務不履行による違約金・損害賠償額の計算方法を定めることができます。
⑩ 紛争解決の方法
 基本的に準拠法は、インドネシア企業にインドネシア特許ライセンスを与えインドネシアで発明を実施するのであれば、準拠法はインドネシアになります。
 外国の裁判の判決を自国の裁判所が承認して自国内で強制執行を許すか否かを決めますが、この外国の判決を承認するか否かについて、外国との間で相互に承認しあう二国間条約があります。現在、日本とインドネシアには相互承認の条約がありません。
 一方、国際仲裁については、加盟国の仲裁判断を互いに認め合う国際条約(ニューヨーク条約)があり、この国際条約に日本もインドネシアも加盟しており、日本とインドネシアでは互いに相手国の国際仲裁の仲裁判断に基づく自国での強制執行が可能です。
 このため紛争解決のための取り決めとして、仲裁を選択するのが一般的です。仲裁条項は、仲裁合意と仲裁地・仲裁機関等を規定しておく必要があります。日本の仲裁機関として、日本知的財産仲裁センターがあります。
http://www.ip-adr.gr.jp/
⑪ 名詞及び技術用語の解釈
 日本語とインドネシア語と技術用語の意味が違う場合もあるので注意しましょう。また、インドネシア語の契約書を作成することに注意しましょう。
 国旗、国語、国章および国歌に関する法律(2009年第24号)(以下、「言語法」という。)は、インドネシア法人等(日本の子会社がインドネシア法人も含む)が当事者に含まれる契約書に関しては、インドネシア語で締結することを義務付けています。また、外国人や外国法人との間の契約書に関しては、インドネシア語と外国語の併記という形式での締結を許容しています。2013年の地裁判決と2014年の控訴審では、インドネシアの株式会社(原告)と米国法人(被告)との間の貸付契約が英語でのみ締結されていることを理由に、言語法に違反し当該貸付契約自体を無効と判示しています。
詳細は、JETROのビジネス法規ガイドブックのP.55を参照してください。
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/reports/2015/pdf/bb00c40425eb253c/indonesia_business.pdf

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【J1】インドネシア/輸出/意匠

J1におけるリスクは次の3項目です。
インドネシア・輸出/或いは自社が現地製造・一部または全部を現地で販売
■他社の意匠権を侵害するリスク→ リスク1
■他社による自社意匠の模倣のリスク→ リスク2
インドネシア・現地で自社製造して全て日本へ輸出
■他社の意匠権を侵害するリスク→ リスク3

リスク1→
他社の意匠権を侵害するリスク
(インドネシア・輸出/或いは自社が現地製造・一部または全部を現地で販売)

製品を輸出し、他社の権利を侵害した場合、販売禁止、現地への輸入禁止、損害賠償などを請求されるリスクがあります。

回避策

①先行意匠の調査
 日本ですでに販売実績があり新規性が失われている場合、すなわち現地の第三者が有効な意匠権取得できない場合でも、輸出の前に、現地における先行意匠の調査を行っておく方が安心です。
 インドネシアの意匠(産業意匠)制度においては、3か月間の異議申立期間に申し立てがあった出願のみが実体審査に付され、それ以外は自動的に登録されます。現在、インドネシア知的財産権総局(DJHKI)のウェブサイトに検索ページがあり(http://www.dgip.go.id/ の「LADI KI(E-STATUS)」ボタン)、物品名を英語で入力して登録意匠の調査ができますが、正確な意匠調査は物品名の問題や類似判断を伴いますから、現地法律事務所などの現地代理人に依頼する方が望ましいでしょう。
②形態が似ている登録意匠が見つかった場合の対応
 調査の結果、登録意匠が見つかった場合は、輸出の中止を含めて、対応策が必要になります。
 (ⅰ)権利範囲の判断 日本と異なり、インドネシアの意匠権の範囲は同一性にしか及びません。この同一性の概念は、日本の同一よりは広いと考えられますが、それでもインドネシアの意匠権は、日本の意匠権と比べて権利範囲が狭いと思われます。したがって、現地の登録意匠を抵触する可能性も低いこととなります。一方で、日本で公知となっている自社意匠が、冒認出願されて権利になっている可能性もあり得ますので、事前に調査を行った方が無難でしょう。
 (ⅱ)商務裁判所への無効の申し立て 3か月の異議申し立て期間を過ぎた場合は、インドネシアの産業意匠法は審判制度を有さないため、直接、商務裁判所に無効を申し立てることとなります。インドネシアの産業意匠法における登録要件は国際公知主義を採用する新規性のみです(産業意匠法2条(1)及び(3))。同登録意匠の意匠出願日が、日本での意匠公報発行日や製品の新聞・雑誌掲載日より後であれば、そうした資料を準備しておきましょう。実際に同裁判を起こさないまでも、相手と係争になった場合にそれらを証拠として示すことができます。
 (ⅲ)先使用権の不存在 インドネシアにおける先使用権は特許法でのみ認められており、産業意匠法には先使用権に該当する制度がありません。したがって、意匠権侵害の紛争が生じた場合は、上述した権利範囲に属さない、または相手側の意匠登録が無効であるとのいずれかの主張で争うこととなります。
③輸出先との調整
 相手国の取引先からの求めに応じて輸出する場合は、同取引先に登録意匠の調査責任を義務付け、また意匠権侵害の免責を契約に規定することも有効でしょう。

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リスク2→
他社による自社意匠の模倣のリスク
(インドネシア・輸出/或いは自社が現地製造・一部または全部を現地で販売)

製品が相手国の市場において人気を博する場合は、当然にして現地の第三者によって模倣されるリスクが高まります。事前の相手国での意匠登録の手段を含めて検討を行う必要があるでしょう。

回避策

①現地での意匠登録
 もし、日本で意匠出願し、6か月経過前であれば、優先権を主張して意匠出願を行うことができます。日本の出願後、日本での販売等によって公知とっていた場合であっても、日本の出願後6か月間与えられる優先権は有効です。
 一方、新規性喪失の例外規定を適用して意匠出願を行うこともできます。インドネシアの新規性喪失の例外規定は、(ⅰ)出願日前6月以内の国内又は国際博覧会における展示、または(ⅱ)出願日前6か月以内の教育、研究、開発の目的の、創作者自身による試験的なインドネシア国内での使用に限られます(産業意匠法3条)。
②現地の意匠登録がある場合の対応
 現地において意匠権がある場合は、警告書送付、民事訴訟の対応を取ることになります。
 なお、模倣品がデッドコピーであれば問題ありませんが、変形が行われている場合、同一性の範囲に入るかどうかについて検討が必要な場合があります。
③現地の意匠登録がない場合の対応
 インドネシアには日本の商品形態模倣を禁止するような不正競争防止法が存在しません。商標登録を行っており、商標まで模倣されていれば商標権に基づいて救済されますが、形態のみの模倣であれば救済を受けることは難しいことになります。

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リスク3→
他社の意匠権を侵害するリスク
(インドネシア・現地で自社製造して全て日本へ輸出)

自社の海外工場で製造し、すべてを日本に輸入し、現地では一切販売しない場合であっても、製造自体が「実施」行為になりますから、その国に意匠権がある場合は権利侵害の問題が生じ、製造差し止め、損害賠償請求などを請求される可能性があります。
 なお、インドネシアでは、輸出も意匠権の権利が及ぶ行為とされています(工業意匠法9条)ので民事ルートや行政ルートによって権利行使される可能性はあります。しかし、税関において、輸出を差止めることができる権利は著作権と商標権に限られているため、意匠権に基づく輸出禁止を心配する必要はないようです。

回避策

J1リスク1の回避策①、②と同様です。
 特に、日本における販売スケジュールが決まっている場合は、税関において輸出が禁止されるとその計画に支障をきたす可能性があるため、事前の意匠調査を行う方が安心でしょう。

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【J2】インドネシア/製造委託/意匠

インドネシアへの進出形態が製造委託の場合において、意匠の分野で考えられる主なリスクと、それらの回避策は次の5項目です。
インドネシア・現地会社へ製造委託して自社子会社が一部または全部を現地で販売
■他社の意匠権を侵害するリスク→ リスク4
■他社による自社意匠の模倣リスク→ リスク5
■現地版売品が日本に輸入されてしまうリスク→ リスク6
インドネシア・現地会社へ製造委託してすべてを日本に輸出
■他社の意匠権を侵害するリスク→ リスク7
■(価格を安く設定した)現地販売品が日本に輸入されてしまうリスク→ リスク8

リスク4→
他社の意匠権を侵害するリスク
(インドネシア・現地会社へ製造委託して自社子会社が一部または全部を現地で販売)

現地会社へ製造委託し、受領して自社の現地子会社が一部を販売した場合、製造行為者としての製造委託会社とともに、販売行為者としての自社子会社が当事者となります。

回避策

J1リスク1の①、②と同様の対応が必要です。現地で意匠権の侵害問題が生じた場合、現地の製造委託会社の他に自社子会社が侵害当事者になる可能性があります。また、侵害問題が生じると、製造委託契約の履行ができない可能性もありますから、その場合の対処を盛り込んでおく必要もあるでしょう。

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リスク5→
他社による自社意匠の模倣リスク
(インドネシア・現地会社へ製造委託して自社子会社が一部または全部を現地で販売)

自社が現地で製造する場合と異なる点は、現地会社へ製造委託した場合にした場合は、製品の外観情報を現地会社が共有することにあります。この情報管理が必要となってきます。

回避策

貴社から製品仕様を指示して製造委託する場合は、現地における意匠登録を行うことが必要です。現地会社を通して情報が流通したとしても、意匠権を確保していれば、その権利に基づいて、第三者の模倣を阻止することができます。
 実際に、模倣品が発見された場合は、J1リスク2の①~③の対応を取ることになります。

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リスク6→
現地版売品が日本に輸入されてしまうリスク
(インドネシア・現地会社へ製造委託して自社子会社が一部または全部を現地で販売)

特に、現地での販売価格が日本での販売価格より低額に設定されている場合、現地で販売された正規品が日本に輸入されてしまう場合があります。現地会社に対して、現地製品の日本への輸出をしない旨を契約で規定したとしても、いったん現地市場に製品が流通してしまうと、これをコントロールする術はありませんので、日本へ輸入される際に、それを阻止することとなります。

回避策

日本で有する意匠権に基づいて、自社が外国で製造した製品の輸入を阻止しようとするには一定の準備が必要です。
 原則として、外国の市場において自社が一旦流通させた製品は真正商品と呼ばれ、たとえ、その製品ついて特許権を有していたとしても、輸入差し止めなどの権利行使をすることはできないことが最高裁判決で判示されており、意匠権についても同様な結論が類推されます  (「BBS事件」平成7(オ)1988))。
 しかし、「当該製品について販売先ないし使用地域から我が国を除外する旨を譲受人との間で合意した場合」は例外であると判示しています。現地製造会社との間で販売先を現地市場のみに限定する取り決めをしたうえで、予め現地製品やそのパッケージに「本製品の販売・譲渡は〇〇国においてのみ有効であり、日本を含む他国への輸出はそれぞれの国で取得された当社の特許権・意匠権を権利侵害する」旨を表記することが望ましいと思われます。同製品が日本に輸入された際に、税関等で権利行使できる可能性を確保することができます。

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リスク7→
他社の意匠権を侵害するリスク
(インドネシア・現地会社へ製造委託してすべてを日本に輸出)

現地で製造行為が行われる限り、製造委託した現地会社が意匠権侵害で警告される可能性はあります。

回避策

J1リスク1の回避策①、②と同様です。
 この場合、自社が侵害当事者となる可能性はありませんが、対応費用の分担などについて契約で定めておく必要がありますし、侵害問題が生じると、契約の履行ができない可能性もありますから、その場合の対処を盛り込む必要も生じるでしょう。

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リスク8→
(価格を安く設定した)現地販売品が日本に輸入されてしまうリスク
(インドネシア・現地会社へ製造委託してすべてを日本に輸出)

現地会社が契約品以上の数を生産し、それを自ら現地で販売する、というような事例も起こり得ます。本来自社がコントロールすべき製品が、現地の市場において自社の手を離れて流通することになってしまいます。特に、そういった製品が日本に輸入されてしまうと、現地市場の問題だけでなく、日本市場の問題にも波及してしまいます。

回避策

製造委託契約によって、かかる事態が生じた場合にペナルティを課すことはもちろんですが、現地において意匠権を取得し、現地会社に対して意匠権侵害という牽制を行うことも必要です。 また、製造委託契約で「契約等で現地製造会社から全製造品を自社が引き渡しを受ける」旨や、「現地市場での販売を許諾していない」旨を明確にしておくことも重要です。かかる製品が日本に入ってきた場合は、たとえ品質において同一のものであっても、これら契約により真正商品とは認められませんから、輸入差止において日本の意匠権を行使することができます。

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【J3】インドネシア/ライセンス/意匠

インドネシアへの進出形態がライセンスの場合において、意匠の分野で考えられる主なリスクと、それらの回避策は次の4項目です。
インドネシア・ライセンス
■現地ライセンス品が他社の意匠権を侵害するリスク→ リスク9
■現地ライセンス品の模倣のリスク→ リスク10
■現地ライセンス品が日本へ輸入されてしまうリスク→ リスク11
インドネシア・製造委託(F)共同開発
■成果物の権利帰属にともなうリスク→ リスク12

リスク9→
現地ライセンス品が他社の意匠権を侵害するリスク

現地会社へのライセンス自体は意匠権の実施行為となりませんが、ライセンサーとして意匠権者から訴えられる可能性があります。また、現地ライセンス会社との間で責任問題が生じる場合があります。また、現地ライセンス会社との間で責任問題が生じる場合があります。

回避策

契約において、ライセンス後に意匠権の侵害問題が生じた場合の、ライセンサーの免責を規定しておく必要があります。しかし、相手方との交渉において、この免責が難しいのであれば、第三者の権利の侵害対策を真剣に考える必要があります。(先行意匠の調査について、J1リスク1参照)
 なお、インドネシアでは意匠権のライセンスは、知的財産権総局への届け出を義務付けていますが(産業意匠法35条)、今のところ実際の受理体制が整っていないようです。

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リスク10→
現地ライセンス品の模倣のリスク

現地ライセンス品に第三者の模倣が発生した場合、その対策を取らなければ現地ライセンス会社との信頼感を喪失することになりますし、模倣品が日本に輸入されて国内市場に影響を与えないとも限りません。一方、現地において、訴訟当事者としてかかわる場合には人的資源やコストも決して小さくありませんから、ライセンス収入とのバランスを考える必要があります。

回避策

現地における救済制度やコスト、さらに権利侵害判断は、いずれも日本と異なる場合が多く、現地ライセンス会社を通じて現地の専門家に見解を仰ぐ必要があります。その際の費用分担について予め契約で規定しておく必要があるでしょう。
 また、一方で当事者はあくまで現地ライセンス会社ですから、たとえ自社が現地の意匠権を有していたとしても紛争当事者となることは避けるべきだと思われます。そのため、その場合に、現地ライセンス会社が意匠権の行使者となるべき地位を与えるなどの対策などを考慮しておくことが必要でしょう。
 インドネシアの場合は、「意匠権者又は実施権者」が意匠権侵害に対して訴訟を起こすことができると規定されていますので(産業意匠法46条)、現地会社に当事者として侵害対策を取ってもらうことができます。日本の専用実施権者に対応する地位は規定されていないので、通常の実施権者であっても、訴訟当事者になることができるようです。なお、その際、自社が負担するコストに関し、ライセンス収入の一定割合までといったキャップをはめる、など、現地ライセンス会社との取り決めが必要でしょう。

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リスク11→
現地ライセンス品が日本へ輸入されてしまうリスク

現地会社への製造委託のJ2リスク6と同じように、価格や品質の異なる現地ライセンス品が日本に輸入されてしまう可能性があります。現地ライセンス会社との契約で日本への輸出を行わない旨の規定を締結したとしても、いったん現地市場に製品が流通してしまうと、それをコントロールすることはできません。同様に日本へ輸入される際に、日本の意匠権に基づいてこれを規制するしかありません。

回避策

現地ライセンス品のパッケージに「本製品の販売・譲渡は〇〇国においてのみ有効であり、日本を含む他国への輸出はそれぞれの国で取得された当社の特許権・意匠権を侵害する」旨の英語または日本語表記を行うことで、日本の意匠権により、その輸入や販売等の差し止めを請求できる可能性があります。契約において、同表記を義務付けることを検討するとよいでしょう。(J2リスク6の回避策参照)

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リスク12→
成果物の権利帰属にともなうリスク
(インドネシア・製造委託(F)共同開発)

共同開発の成果物について、その権利帰属を、契約において明確にしておく必要があります。意匠権を共有とした場合に、他の共有者の同意の有無について、各国法律で異なることがありますから、その点に注意が必要です。

回避策

成果物は営業秘密として互いに秘密状態で管理するという選択肢がありますが、外観である意匠については営業秘密化することはできません。したがって、意匠について、取り得る選択肢は次の2つです。
 (ⅰ)それぞれの国で意匠権を共有する。
 (ⅱ)それぞれの国で単独で意匠権を管理する。
 (ⅰ)を選択した場合、インドネシアの意匠法には共有の規定はありますが(インドネシア意匠法6条(2))、実施について他の共有者の同意が必要か否かについては規定されていません。一方、日本の意匠法では、実施について異なる取り決めがない場合は他の共有者の同意は必要ありません(意匠法36条で準用する特許法73条2項)。第三者の実施に対する単独許諾について、インドネシアの意匠法は規定していません。一方、日本の意匠法では、第三者の実施の許諾は単独では行えません(同1項)。したがって、日本での取扱いとそろえるためにも、共有者の単独実施及び第三者への共有者の単独許諾について共同開発契約で明確にしておく必要があります。
 なお、第三者による侵害が生じたときに、インドネシアにおいては、共有者単独で訴訟をおこすことはできませんから、共同開発契約でその際の費用分担を明確にしておく必要があると思われます。
 (ⅱ)を選択した場合、意匠の創作者が共同開発会社にいる場合は、日本での意匠権出願の際に、名前を創作者として明記し、意匠登録を受ける権利を承継する書面を受領しておきましょう。日本の意匠法には権利の移転手続きが規定されており(日本意匠法26条の2)、将来的に意匠登録を受ける権利の承継が争いになったときに、同規定によって持分が相手方に移転する可能性があるためです。なお、逆にインドネシアにおいて同様な規定は存在しません。

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【K1】インドネシア/輸出/商標

K1におけるリスクは次の2項目です。
■他社の権利(商標権)を侵害するリスク→ リスク1
■他社による自社の権利(商標権あり、なし)の侵害のリスク→ リスク2

リスク1→
他社の権利(商標権)を侵害するリスク

インドネシアへ製品を輸出し、他社の権利を侵害した場合、自社商品の販売停止、損害賠償、謝罪広告を請求されるおそれがあります。訴訟になった場合には訴訟費用も非常に高額となります。

回避策

輸出を開始する前に、商標調査を行うことをお勧めします。
 もし、他人の同一・類似商標が発見された場合には、自社の商標を変更するか、あるいは商標権を取り消す、交渉をして権利を譲り受ける等の方法を検討する必要があります。

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リスク2→
他社による自社の権利(商標権あり、なし)の侵害のリスク

他社に商標を真似されるということは、多くの場合、模倣品が出回るということです。模倣品が出回ると、自社商品が売れなくなるばかりか、イメージダウンにつながり、長期的に見て、ビジネス自体が危機に瀕することになりかねません。

回避策

まず前提として、商標権を獲得していることが絶対的に重要です。インドネシアへ進出する場合には、必ず商標権を取得するようにしてください。
(商標権がある場合の対応)
自社商標権が侵害された場合、侵害の態様にもよりますが、警告書送付、民事訴訟、刑事訴訟、行政摘発等のアクションをとることができます。インドネシアでは行政摘発はまだあまり一般的ではありませんが、知的財産庁が摘発を行います。
(商標権がない場合の対応)
不正競争防止法による侵害阻止はかなりハードルが高くなります。インドネシアへ進出する際にはまず商標登録をすることをお勧めします。但し、インドネシアでの商標登録には2-3年かかりますので早めの対応が必要です。

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【K2】インドネシア/製造委託/商標

K2におけるリスクは次の4項目です。
■現地での商標権を侵害するリスク→ リスク3
■外国で製造した製品がその国の税関からの輸出時に差し止められるリスク→ リスク4
■外国で自社のブランドが盗用されるリスク、コピー商品が出回るリスク→ リスク5
■外国から輸入した製品が日本の権利を侵害するリスク、日本の税関で差し止められるリスク→ リスク6

リスク3→
現地での商標権を侵害するリスク

製造委託であったとしても、他人の商標権を侵害した場合には商標権侵害を問われる可能性があります。また、販売する予定だった製品を入荷できず、ビジネス上多大な損害を被るおそれがあります。

回避策

現地での商標調査を行うことをお勧めします。あるいは、委託先に対して他人の商標権を侵害しない旨の誓約書を提出させることもできますが、自社の製品を製造するという責任がありますから、なるべく自社で商標調査を行うべきだと思われます。
また、商標登録を取得しておくべきです。

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リスク4→
外国で製造した製品がその国の税関からの輸出時に差し止められるリスク

インドネシアでは税関での差止がまだあまり頻繁に行われていません。現状では輸出時に製品が差し止められることはほとんどないと思います。

回避策

いずれにしても、インドネシアでOEM生産をする場合には事前に商標調査をし、権利も取得することをお勧めします。

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リスク5→
外国で自社のブランドが盗用されるリスク、コピー商品が出回るリスク

外国では特に、市場での模倣品の発見が遅れることがあります。国内のすべての市場を見回ることは難しいので、模倣品が出回っても発見までに時間がかかったり、発見されないこともあります。また、外国で委託製造を行う場合、よくあるのは委託先の工場が契約した量より多くの製品を製造して横流しすることです。このようにして、本物と同一の模倣品(横流し品)が出回ることになります。

回避策

模倣品を発見するためには、定期的に市場調査を行うことをお勧めします。現地に社員がいれば、自社で行い、現地に社員がいない場合には代理店、あるいは調査会社を通して行えると思います。
展示会、見本市には業者が集まり、模倣品の取引が行われることもあるので、特に注意が必要です。
委託製造を行う場合には、委託先の製造管理に留意する必要があります。生産量を管理する方法として、例えば証紙やホログラムシールを配布し、製品に貼る等があります。
コピー商品が出回った場合、見過ごすことができないならば、刑事摘発、民事訴訟等をしなければなりません。

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リスク6→
外国から輸入した製品が日本の権利を侵害するリスク、日本の税関で差し止められるリスク

外国では何ら権利を侵害しない商品でも、日本国内では侵害となることがあります。そのような場合、日本の税関で輸入時に差し止められたり、日本国内で権利侵害の問題が生じることになります。

回避策

インドネシアで製造する製品を日本で販売する前に、日本での商標調査をすることをお勧めします。

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【K3】インドネシア/ライセンス/商標

K3におけるリスクは次の6項目です。
■ブランドイメージが壊れるリスク→ リスク7
■出所の混同のリスク→ リスク8
■冒認の商標登録をされるリスク→ リスク9
■侵害品に対する対応をどうするかというリスク→ リスク10
■当該国における商標ライセンス登録に関するリスク→ リスク11
■®表記に関するリスク(登録されていない商標に®を付けた場合のリスク→ リスク12

リスク7→
ブランドイメージが壊れるリスク

もしもライセンシーの商品が粗悪だったり、貴社の商品のイメージと違うものだった場合には、貴社のブランドイメージが壊されてしまいます。

回避策

ライセンシーが、信頼できる企業か、また、ライセンス料を受け取る場合には、確実に支払が見込める企業であるかどうかを見極める必要があります。
ライセンス契約において、商標の使用の方法について具体的に定め、定期的に品質検査をしたり、新商品は事前に点検することができるような条項も盛り込むことをお勧めします。これによって、貴社の製品基準を満たす製品についてのみライセンスすることができます。
ハウスマーク(社標)は貴社の重要な財産であり、もしもライセンスするのであれば、細心の注意が必要です。
ライセンスを行う際には、独占的使用権とするかどうかについても良く検討してください。独占的使用権とした場合には、同種の商品について他の者にはライセンスできなくなります。

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リスク8→
出所の混同のリスク

ライセンスをした場合、ライセンシーの商品との間で出所の混同が生じることがあります。このような事態が生じると、市場で需要者が混乱し、結局は貴社商品のブランド価値の失墜を招きますので、問題です。

回避策

ライセンス契約において、出所の混同が生じないよう定めておくことが必要です。
また、商品に「XXは○○株式会社の商標です」のような記載をするよう義務付ける方法もあります。

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リスク9→
冒認の商標登録をされるリスク

ライセンシーがライセンスを受けている商標を勝手に出願、登録するということがしばしば見受けられます。

回避策

契約書において、ライセンシーが商標出願をしてはならない旨を明記することをお勧めします。また、もしも出願した場合には、速やかに貴社へその出願、登録を譲渡するように規定することも考えられます。特に、インドネシアでは盗用登録された商標登録の取消が容易ではありませんので注意してください。

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リスク10→
侵害品に対する対応をどうするかというリスク

ライセンスによって商品の幅が広がることによって侵害品が出回りやすくなることも考えられます。

回避策

ライセンシーが侵害品を発見した場合に、貴社へ通報するように契約書で記載しておいたほうがいいと思います。その上で、権利行使を誰が主体となって行うか、費用は誰が支払うかについて決めておきます。ライセンシーは権利行使できない場合も多いので、その場合には権利者である貴社が権利行使しなければなりません。

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リスク11→
当該国における商標ライセンス登録に関するリスク

インドネシアでは、ライセンスをする場合には政府に届け出る必要があります。

回避策

ライセンスの届出は必ずすべきです。しかし、現地の規則が整っていないため、届出が受理はされますが、実際の登録は行われません。

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リスク12→
®表記に関するリスク(登録されていない商標に®を付けた場合のリスク

登録されていない商標に®を付けた場合、罰則を受けることがありますので、注意が必要です。

回避策

商品及びパッケージにおける®の使用には十分に注意する必要があります。また、登録商標を変更して使用することも、登録取消の理由となりますので、注意してください。

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【L1】インドネシア/輸出/営業秘密

L1におけるリスクは次の1項目です。
■自社の現地社員が営業秘密を流出させるリスク→ リスク1

リスク1→
自社の現地社員が営業秘密を流出させるリスク

自社の現地支店若しくは現地子会社が雇用した現地社員が、営業秘密を流出させるリスクがあります。

回避策

まず、WTOのTRIPS協定によって、加盟国には「開示されていない情報の保護」が求められています(同協定39条)。WTO加盟国であるインドネシアも、この条約に従い、営業秘密を営業秘密法によって保護しています。
 営業秘密法1条1項に、営業秘密とは「公衆に知られず、事業活動で有益な経済的価値があり、所有者により秘密保持がなされている技術及び若しくは事業分野の情報」であると定義されています。保護対象は、上述の通り「技術及び若しくは事業分野の情報」ですから、日本で営業秘密として保護される、技術データ、設計図、生産ノウハウといった技術情報も、顧客情報、接客マニュアル、食品レシピといった経営情報も保護される可能性があります。
 保護される具体的な状況として、「故意による営業秘密の開示或いは書面の有無を問わず契約や義務を違反する場合」(同法12条)、及び「法律や法規に違反する方法で他人の営業秘密を取得したり、保持したりする場合」(同法13条)と規定されています。
 一方、安全保障や防衛、公衆の健康や安全を目的として使用する行為や、営業秘密により製造された製品の関連製品を更に開発するためにリバースエンジニアリングする行為による場合は、営業秘密を侵害することにはならない旨、規定されています(同法14条)。
 以上について、より詳細には次の資料に記載されています。
インドネシア営業秘密法 英文テキスト(WIPOサイト)
http://www.wipo.int/wipolex/en/text.jsp?file_id=226914
模倣対策マニュアル インドネシア編(2008年3月、日本貿易振興機構)
https://www.jpo.go.jp/torikumi/mohouhin/mohouhin2/manual/pdf/indonesia1.pdf
 現在のところ、インドネシアにおいては詳細なガイドラインや判決例が存在しないため、どの程度の保護要件が要求されるか不明です。しかしながら、「何が秘密情報に該当するのか」を特定し、「所有者により秘密保持」の履行は必ずしなければならないと考えられます。
 まず、何が秘密情報なのかを明確にするために、従業者との間で秘密保持契約を結ぶ必要があります。雇用契約の中に漠然とした秘密保持義務を謳うだけでは不十分ですから、注意が必要です。
 加えて、秘密管理措置については、情報にアクセスする権限者を限り、また、それが秘密情報であることを表記する等について、社内でルールを作成し、それを確実に実行する体制が必要です。
 従業者が秘密保持契約に違反した場合は、契約書に記載された損害賠償の支払い義務のほか、営業秘密法によって刑事責任を追求されます。故意に許可無く他人の営業秘密を使用、開示、不当に入手した者は最高禁固2年、3億ルピアの罰金が科せられます(同法17条)。なお、インドネシアの営業秘密法による救済の可能性を確保するために、秘密保持契約において、準拠法を単純に日本のみに限定することについては注意が必要です。

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【L2】インドネシア/製造秘密/営業秘密

L2におけるリスクは次の1項目です。
■製造委託契約の下で現地会社へ供出した技術的なノウハウ・データが現地会社に利用され、または漏えいするリスク→ リスク2

リスク2→
製造委託契約の下で現地会社へ供出した技術的なノウハウ・データが現地会社に利用され、または漏えいするリスク

国内で製造をしていたものを現地会社へ製造委託した場合に、同製品についての品質を維持するために技術データや生産ノウハウを提供する必要が生じます。同製品の製造委託契約が終了しても、それら技術データ等を利用して同等の製品を作り続けられてしまう可能性があります。

回避策

インドネシアの営業秘密法1条1項に、営業秘密とは「所有者により秘密保持がなされている技術及び若しくは事業分野の情報」であると定義されていますから、技術データ、設計図、生産ノウハウといった技術情報もこれに含まれます。
 現在とのころ、インドネシアにおいては詳細なガイドラインや判決例が存在しないため、どの程度の保護要件が要求されるか不明です。しかしながら、「何が秘密情報に該当するかの特定」、そして「秘密管理措置」については確実に履行を行う必要があると考えられます。
 まず、秘密情報の特定のために、現地会社と製造委託契約を行う際に、秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement )を並行して結ぶことが必要です。
この契約の中で、提供した秘密情報の目的外使用を禁止する旨を明示することで、秘密情報が相手方企業に自由に使用されてしまうことを、防ぐことができます。
 次に、秘密管理措置については、特定した秘密情報について秘密管理措置を実行する必要があります。具体的には自らも社内規定を設けて、秘密情報であることの表記、アクセス制限、そして暗証化といったような措置を取らなければなりません(L1リスク1参照)。また、製造委託契約や秘密保持契約において、現地会社に対して、同様な、より具体的な管理義務を規定することも有効だと思われます。
 現地会社が秘密保持契約に違反した場合は、契約書に記載された違約金の支払いを要求することができます。また、営業秘密法によって、違反した場合は、営業秘密の保護違反は刑事責任を追求されます。故意に許可無く他人の営業秘密を使用、開示、不当に入手した者は最高禁固2年、3億ルピアの罰金が科せられます(同法17条)。
 なお、解説書によっては、営業秘密契約の当局への登録が効力発生要件であるとする説明もあるが、現地専門家に問い合わせた結果、その事実はないとのことである。
 また、日本の不正競争防止法は、外国における秘密情報の漏えいも対象としますので、国内法に基づいて秘密情報により生産された製品が国内に輸入された場合の差止請求(同法3条)や秘密漏えいによって蒙った損害賠償請求(同法4条)を申し立てることもできます。さらに、平成27年の法律改正により、同法による刑事罰の適用範囲が国外における行為者まで拡大されています(同法21条3項)。なお、日本の不正競争防止法による実効は相手国内に及びませんから、インドネシアの営業秘密法による救済の可能性を確保するために、秘密保持契約において、準拠法を単純に日本のみに限定することについては注意が必要です。

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【L3】インドネシア/ライセンス/営業秘密

L3におけるリスクは次の3項目です。
■ライセンス契約の下で現地会社へ提供した営業上のノウハウ・データが現地会社から漏えいするリスク→ リスク3
■共同開発開発契約の下で相手会社へ提供したノウハウ・データが開発製品や事業以外に相手会社に利用されるリスク→ リスク4
■共同開発契約の下で相手会社から提供を受けたノウハウ・データを利用したとして相手会社から訴えられるリスク→ リスク5

リスク3→
ライセンス契約の下で現地会社へ提供した営業上のノウハウ・データが現地会社から漏えいするリスク

国内で成功した営業に関するビジネスモデルをブランドとともに現地会社へ有償でライセンスする場合があります。この際、ブランドは商標登録を行うことによって管理することができますが、登録対象とならない顧客情報といったデータや接客マニュアルや食品レシピといったノウハウは権利を確立することによっての管理が難しく、その漏えいの可能性があります。

回避策

インドネシアの営業秘密法1条1項に、営業秘密とは「所有者により秘密保持がなされている技術及び若しくは事業分野の情報」と定義されていますから(より具体的な保護要件は同法85条)、顧客情報、接客マニュアル、食品レシピといった経営情報もこれに含まれます。
 現在のところ、インドネシアにおいては詳細なガイドラインや判決例が存在しないため、どの程度の保護要件が要求されるか不明です。しかしながら、「何が秘密情報に該当するかの特定」そして「秘密管理措置」については確実に履行を行う必要があると考えられます。
 まず、何が秘密情報なのかを特定するために、現地会社とライセンス契約を行う際に、秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement )を並行して結ぶことが必要です。
 特に、相手会社の事業に関わりにくいライセンスという形態では、契約の中で、相手会社に具体的な秘密管理措置を課すこと、同時に、品質管理とともに秘密管理措置の履行を確認するために相手会社への立ち入り検査権を規定しておくことも有効であると思われます。
 一方で、自らも、特定した秘密情報について秘密管理措置を実行する必要があります。具体的には秘密情報であることの表記、アクセス制限、そして暗証化といったような措置を取らなければなりません。また、ライセンス契約や秘密保持契約において、現地会社に対して、同様な、より具体的な管理義務を規定することも有効だと思われます。
 現地会社が秘密保持契約に違反した場合は、契約書に記載された違約金の支払いを要求することができます。また、営業秘密法によって、違反した場合は、営業秘密の保護違反は刑事責任を追求されます。故意に許可無く他人の営業秘密を使用、開示、不当に入手した者は最高禁固2年、3億ルピアの罰金が科せられます(同法17条)。
 また、日本の不正競争防止法は、外国における秘密情報の漏えいも対象としますので、国内法に基づいて秘密情報により生産された製品が国内に輸入された場合の差止請求(同法3条)や秘密漏えいによって蒙った損害賠償請求(同法4条)を申し立てることもできます。さらに、平成27年の法律改正により、同法による刑事罰の適用範囲が国外における行為者まで拡大されています(同法21条3項)。なお、日本の不正競争防止法による実効は相手国内に及びませんから、インドネシアの営業秘密法による救済の可能性を確保するために、秘密保持契約において、準拠法を単純に日本のみに限定することについては注意が必要です。

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リスク4→
共同開発開発契約の下で相手会社へ提供したノウハウ・データが開発製品や事業以外に相手会社に利用されるリスク

異なる技術分野の現地会社と、新たな製品や事業を共同開発する場合は、お互いの技術情報を持ち寄る必要があります。この場合、提出した技術情報が営業秘密である場合、相手会社を通じて外部に漏えいしてしまう可能性があります。また、共同開発の成果物を秘密情報として管理する場合は、この取り扱いについて同意する必要があります。

回避策

インドネシアの営業秘密法1条1項に、営業秘密とは「所有者により秘密保持がなされている技術及び若しくは事業分野の情報」と定義されていますから、共同開発の際に、相手方に提示する技術データ、設計図、生産ノウハウといった技術情報もこれに含まれます。また、共同開発の成果物についても同様です。
 現在とのころ、インドネシアにおいては詳細なガイドラインや判決例が存在しないため、どの程度の保護要件が要求されるか不明ですが、少なくとも「何が秘密情報に該当するのかの特定」そして「秘密管理措置の履行」について対策を取っておくことが必要です。
 まず、何が秘密情報なのかを特定するために、現地会社と共同開発契約の中で、秘密保持条項(NDA:Non-Disclosure Agreement )を規定し、秘密情報が互いに提供する「(公知ではない)特定の技術情報であること」、また「共同開発事業によって新たに開発した(公知ではない)技術情報であること」を規定する必要があります。「共同開発事業によって新たに開発した技術情報」についても、双方の開示合意が無ければ秘密保持義務を負う旨の規定とするとよいと思われます。
 次に、特定した秘密情報について秘密管理措置を実行する必要があります。具体的には、互いに社内規定を設けて、秘密情報であることの表記、アクセス制限、そして暗証化といったような管理を行う必要があります。ここで、注意が必要なことは、共同開発においては、自らも相手会社から秘密情報を預かることになりますから、十分な注意が必要になります(L3リスク5参照)。
 現地会社が秘密保持契約に違反した場合は、契約書に記載された違約金の支払いを要求することができます。また、営業秘密法によって、違反した場合は、営業秘密の保護違反は刑事責任を追求されます。故意に許可無く他人の営業秘密を使用、開示、不当に入手した者は最高禁固2年、3億ルピアの罰金が科せられます(同法17条)。
 また、日本の不正競争防止法は、外国における秘密情報の漏えいも対象としますので、国内法に基づいて秘密情報により生産された製品が国内に輸入された場合の差止請求(同法3条)や秘密漏えいによって蒙った損害賠償請求(同法4条)を申し立てることもできます。さらに、平成27年度の法律改正により、同法による刑事罰の適用範囲が国外における行為者まで拡大されています(同法21条3項)。なお、日本の不正競争防止法による実効は相手国内に及びませんから、インドネシアの営業秘密法による救済の可能性を確保するために、秘密保持契約において、準拠法を単純に日本のみに限定することについては注意が必要です。

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リスク5→
共同開発契約の下で相手会社から提供を受けたノウハウ・データを利用したとして相手会社から訴えられるリスク

共同開発の相手会社から秘密情報の提供を得た場合、秘密保持契約に拘束されるために自らの開発が阻害されてしまうリスクがあります。

回避策

共同開発が終了し、さらにその延長線上で単独に開発を続ける場合は、相手方から取得した営業秘密について取扱いに疑義が生じることになります。技術や事業の共同開発を行う場合は、両者の関係を長く継続できるか否かを考慮しないと、思いがけず事業継続の足かせになってしまう可能性があります。共同開発終了後も、秘密保持義務は負ったまま、秘密情報の継続利用は互いに許諾するなど、契約上工夫をする必要があると思われます。 また、相手会社から得た秘密情報を利用できるのは、事業の目的内に限られます。特に、相手方からの営業秘密を広く共有してしまうと自分の情報との混同(コンタミネーション)が生じてしまがちです。相手側から受け取った営業秘密は営業秘密として認識し、かつ扱う者も限られた人数にするとの姿勢が重要です。

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【M1】タイ/輸出/特・実

M1におけるリスクは次の2項目です。
■他社の特許権(実用新案権)を侵害するリスク→ リスク1
日本で製造した自社製品をタイへ輸出して、タイ内で販売
■他社によって自社製品が模倣されるリスク→ リスク2

リスク1→
他社の特許権(実用新案権)を侵害するリスク

回避策

1.概要

仮に、第三者の特許を侵害すると、自社製品の販売停止、損害賠償、謝罪広告、訴訟又は輸入差止めになります。
 そのためタイに自社製品を輸出するに際し、自社製品の実施(販売、使用など)についての第三者の特許権が障害となるか否か調査し、障害となるならばそれを回避する必要があります。
 つまり、自社製品がタイにおいて第三者の特許権(実用新案権(小特許)も含めて、以下特許権と呼びます。)を侵害する可能性がないかを調査します。
 そして自社製品が第三者の特許権を侵害するか否かを判断します。
 仮に自社製品が第三者の特許権を侵害するならば、その回避策を講じることは重要です。
 第三者が有する特許の調査は、自社製品が侵害する可能性があるタイ特許権があるかを調査するものです。
 調査の結果、自社製品が侵害する可能性があるタイ特許権が存在しないと判断されれば、スムーズに事業を進めることができます。この第三者の特許権を侵害するか否かを判断について以下に説明しますが、最終的には専門家(タイ弁理士・タイ弁護士)に相談した方がよいです。
 もし調査の結果、自社製品が侵害する可能性があるタイ特許権が存在することが判明した場合には、権利侵害となることを回避するための回避策を講じる必要があります。
 権利侵害の回避策がまったく見つからない場合には、侵害訴訟を提起されるリスクを考えて、自社製品の輸出を断念せざるをえないこともあります。
 WIPOの資料によりますと、2013年の特許出願件数が7404件でそのうち5832件(約8割)が海外からの出願です。2013年の実用新案登録出願件数が1609件でそのうち48件(約3%)が海外からの出願です。実用新案権は方式審査だけで実態審査無く登録されます。

2.タイ特許の調査に関して

2-1.タイ商務省知的財産局による検索方法
(1) タイ商務省知的財産局の「DIP」。
 タイ商務省知的財産局(Department of Intellectual Property = DIP)のウェブサイト上のデータベースを使って調査します。
https://patentsearch.ipthailand.go.th/DIP2013/simplesearch.php

このデータベースを使っての検索の仕方は、下記URLのタイ知財関連公報検索マニュアルに詳細な説明があります。特許及び実用新案(小特許)については、特に6ページから15ページをご覧ください。
http://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/th/ip/pdf/manual_search_ip_communique.pdf
検索は英語又はタイ語で調査することになりますが、英語で提供されている情報は、翻訳等の問題がある点に留意して下さい。簡易検索では単純キーワード検索が可能です。一方、複合検索は複数の単語の組み合わせ検索が可能となります。
また国際分類(IPC)でも検索できます。
 検索された案件は、出願番号、発明の名称(タイ語)が表示されます。表示された出願番号をクリックしますとBibliographic(書誌的事項:要約(タイ語)も含む。)が表示されます。
 PDFをクリックすれば、特許公報のPDF(タイ語)がダウンロード出来ます。尚、公報に記載されている出願日等の日付は、タイ太陽暦で記載されているため、注意が必要です。
(2) 民間調査機関または弁理士
 「DIP」(データベース)は、Bibliographic(書誌的事項)を含めて全てタイ語で表示されるため、特許公報のPDFをダウンロードして日本語又は英語等に翻訳しなければ【特許請求の範囲】を確認することができません。
 出願人名や書誌的事項で取り寄せる特許公報を絞り込み、民間調査機関や弁理士等に依頼して特許公報を取り寄せます。

3.タイ特許権を侵害するか否かの判断

【特許請求の範囲】の文言に自社製品が含まれるか否かを判断します。その判断する手順が侵Q8侵Q48に詳述してあります。侵Q8、侵Q48に記載されている手順に従って、第三者が有する特許に自社製品が含まれるか否かを判断してください。
 その請求の範囲の文言に自社製品が明らかに含まれない場合を除いて、判断に困るような特許権が見つかったら、専門家(タイ弁理士・タイ弁護士)に相談してください。
 なお、特許発明には「物の発明」、「方法の発明」及び「製造方法の発明」の3種類の発明があります。「物の発明」とは、製品自体又はその部品の発明です。「方法の発明」とは、製品又は部品の使用方法の発明です。「製造方法の発明」とは、製品を製造するための方法発明です。
 自社製品は日本で製造されてタイへ輸出されています。このため、タイ特許の「製造方法の発明」は、検討する必要はありません。各国特許独立の原則により、タイの「製造方法の発明」の特許は、日本での製造方法に権利が及びません。

4.タイ特許権を侵害の回避策を講じる

(1)侵害の技術的な回避方法
 自社製品の技術などに修正を加えることで、第三者の特許を侵害しないようにして権利侵害を回避するものです。請求の範囲の文言に抵触しないように、自社製品に変更・修正を加えます。専門家とともに進めます。
(2)特許権の譲渡・ライセンスの交渉
 第三者の権利侵害を技術的に回避することが難しい場合には、その者からその特許権の譲渡を受けたり、ライセンスを受けることによって、権利侵害の状態となることを回避する場合もあります。
 「1.概要」で説明したように特に特許権は9割が海外からの出願です。このため、特許権の譲渡やライセンスの際には、インドネシア単独での特許権の譲渡又はライセンスを考えるか、他の国の特許権も含めて交渉するか等を考える必要があります。
 往々にして議論となるのは、譲渡金額や特許ライセンスの金額です。これは、特許権の経済的価値、実施可能性、相手方の現実の使用の有無や使用実績の程度、当方がその権利の使用を必要とする程度に応じて、ケースバイケースで決まるものです。
 こちらが日本企業であることを知ると、高額の譲渡金額や特許ライセンスの金額を求めてくる可能性もあるため、相手方にプレッシャーを与える手段を探すことも必要です。
 相手方にプレッシャーを与えるためには特許を無効にすることが有効ですが、タイ特許法ではタイ商務省知的財産局ではなく、裁判所に無効を提起する必要があります(特許法第54条第2項)。

5.日本特許に対しても、調査、侵害するか否かの判断、回避策を講じる

自社製品を日本国内で自社製造していますから、日本特許に対しても、タイ特許と同様な手続きしなければなりません。特許独立の原則により、日本とタイとで別々の権利として考えます。
 つまり、自社製品が第三者の日本特許権を侵害する可能性がないかを調査し、社製品が第三者の特許権を侵害するか否かを判断し、仮に自社製品が第三者の特許権侵害するのであれば、その回避策を講じます。
 自社商品は、貴社が製造していますから、日本特許の「物の発明」及び「製造方法の発明」を検討する必要があります。日本特許の「方法の発明」は、自社商品が日本国内で「方法の発明」が使われることが基本的にないと考えますので、検討は不要と考えます。
5-1.日本特許の調査に関して
 特許情報プラットホーム(J-PlatPat)にアクセスして日本特許を検索することができます。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage
5-2.特許情報プラットホーム(J-PlatPat)による検索方法
 特許情報プラットホームの検索方法は、下記URLのPDFファイル8ページから23ページに詳細に説明されています。この説明に従って検索してください。
http://www.inpit.go.jp/content/100583494.pdf
5-3.日本特許権を侵害するか否かの判断
 上述の「3.タイ特許権を侵害するか否かの判断」を日本特許に読み替えて判断してください。
5-4.日本特許権侵害の回避策
 上述の「4.タイ特許権侵害回避策」を日本特許に読み替えて判断してください。

6.自社製品が、自社で設計し他社(日本国内)に製造してもらったOEM(Original Equipment Manufacturing)製品の提供を受けた場合、又は自社製品用の交換部品又は消耗品を自社で設計し他社から提供を受ける場合(以下、「OEM製品1」)

(1) 製造してもらう他社と貴社との間で、「OEM製品1」に関する特許に関してどのような責任を負うかを契約書で取り決めておく必要があります。
(2) 一般に、他社は日本国内における製造に関して責任を負う契約になると思います。この場合、他社が日本国内の製造方法の発明に関して、「2.タイ特許の調査」(以下「特許調査」という)、「3.タイ特許権を侵害するか否かの判断」(以下「特許侵害可否判断」という)、「4.タイ特許権の侵害回避策」(以下「特許侵害回避策」という)を講じます。
(3) そして、日本国内の製造以外は貴社が責任を負う契約になると思います。つまり貴社「OEM製品1」のために、貴社がタイ特許の「物の発明」及び「方法の発明」に対して、「特許調査」、「特許侵害可否判断」、「特許侵害回避策」を講じる必要があります。
(4) さらに貴社「OEM製品1」のために、貴社が日本特許の「物の発明」に対して、「特許調査」、「特許侵害可否判断」、「特許侵害回避策」を講じる必要があります。

7.自社製品が、他社で設計し他社(日本国内)に製造してもらったODM(Original Design Manufacturing)製品の提供を受けた場合、又は自社製品用の交換部品又は消耗品を他社で設計し他社から提供を受ける場合(以下、「ODM製品1」)

(1) 設計及び製造してもらう他社と貴社との間で、「ODM製品1」に関する特許に関してどのような責任を負うかを契約書で取り決めておく必要があります。
(2) 一般に、他社が設計・製造しますので「ODM製品1」に関して責任を負う契約になると思います。そのため、他社が日本及びタイの特許発明に関して、「特許調査」、「特許侵害可否判断」、「特許侵害回避策」を講じることになります。
(3) 貴社は、基本的に「ODM製品1」に関する特許に関して責任を負うことはないと思います。

8.貴社が他社から依頼を受けて、日本国内で他社製品の製造を請け負う場合(以下、「OEM製品2」)

(1) 「ODM製品1」の逆の立場になります。
(2) 一般に、貴社が日本国内における製造に関して責任を負う契約になると思います。この場合、貴社が日本国内の製造方法の発明に関して、「特許調査」、「特許侵害可否判断」、「特許侵害回避策」を講じます。

9.貴社が他社から依頼を受けて、日本国内で他社製品の設計及び製造を請け負う場合(以下、「ODM製品2」)

(1) 「ODM製品1」の逆の立場になります。
(2) 一般に、貴社が設計・製造しますのでODM製品に関して責任を負う契約になると思います。そのため、貴社が日本及びタイの特許発明に関して、「特許調査」、「特許侵害可否判断」、「特許侵害回避策」を講じることになります。

10.共同開発設計の場合

(1) 共同研究開発などで製品を設計する場合には、共同研究開発契約を結ぶことが一般的です。その契約では、A社とB社との共同研究開発で生まれた発明の持ち分をA社B社で折半するとか、共同研究開発した製品の販売をA社が日本、B社がタイとを決めたりします。
(2) 共同研究開発した開発製品を、A社及びB社それぞれが日本及びタイで販売できる契約ですと、A社及びB社は、タイ特許及び日本特許に対して、「特許調査」、「特許侵害可否判断」、「特許侵害回避策」を分担して行うことになると思います。
(3) 共同研究開発した開発製品を、A社が日本で販売、B社がタイで販売する場合には、A社が日本特許に対して、「特許調査」、「特許侵害可否判断」、「特許侵害回避策」を行い、B社がタイ特許に対して、「特許調査」、「特許侵害可否判断」、「特許侵害回避策」を行う分担になると思います。
(4) 共同研究開発した製品であっても、A社が販売しB社が製造するような契約もあるかと思います。いろいろな契約があるため、その都度、他社特許の調査等もどのように分担するかを契約書に記載しても良いと思います。

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リスク2→
他社によって自社製品が模倣されるリスク
(日本で製造した自社製品をタイへ輸出して、タイ内で販売)

回避策

1.概要

日本で製造する自社製品をタイに輸出し販売し、自社製品がタイ市場で順調に売上を伸ばし、タイ市場での知名度も上がってくるとします。すると、タイ内で、自社製品の模倣品が出回るようになってきます。模倣品には自社と同様の技術が使用されていることがあります。
 その技術についてタイで特許又は実用新案を申請・取得していないと、その技術を使った模倣品に対して法的対応策(例えば警告、損害賠償、謝罪広告、訴訟又は差止め)をとることができません。その結果、苦労してタイ市場を切り開いてきたのに、売上を大きく減少させることになります。
 また、タイでの販売だけを気にしていては対策としては不十分です。日本国内で他社が自社製品と同じような技術を使って製品を製造し輸出することもあります。
 つまり、日本及びタイにおいて、他社による自社製品の模倣されるリスクを小さくする必要があります。

2.特許又は登録実用新案を取得する

(1)権利取得を考える時期
A.新しい技術を開発・考案した場合、製品化に先立って又は製品化と並行して、日本国内で権利取得のために特許出願又は実用新案登録出願することが一般的です。
 タイに対しても、日本特許出願又は実用新案登録出願の「優先権」の制度を利用して、日本出願から12ヶ月以内にタイ特許又はタイ登録実用新案の権利取得の手続をとることが考えられます。
 日本特許出願又は実用新案登録出願してから12ヶ月以内には、開発・考案した製品をタイに輸出する可能性が否かを考えてください。
 製品をタイに輸出する可能性があるのなら、日本特許出願又は実用新案登録出願してから1年以内にタイに出願できる手続を進めます。
B.日本国内の製品販売が好調であるからタイに輸出したいと考えてから、タイ特許出願又はタイ登録実用新案出願したいと考えても、権利取得できないことがあります。
 日本特許出願してから1年6ヶ月経過すると日本の特許公開公報が発行され、日本実用新案登録出願してから6ヶ月以内には登録実用新案公報が発行されます。するとこれらの公報が公知となり、タイ特許出願が新規性がないとして拒絶になったりタイ登録実用新案が新規性がないとして無効となったりします。
 また、日本特許法及びタイ特許法ともに、製品の発表後12ヶ月以内であれば新規性を失わないとする「新規性喪失の例外」が規定されています。しかし、タイ特許法の「新規性喪失の例外」は、日本特許法の「新規性喪失の例外」よりも非常に狭いため、タイで権利が取れないことも生じます。
 また、日本特許出願又は実用新案登録出願をしないで、直接、タイ特許出願又は実用新案登録出願しようと考えても、日本国内での製品販売が拒絶理由又は無効理由になります。
(2) 開発・考案した新しい技術を特許出願又は実用新案登録出願すべきか、営業秘密として保護すべきか
 新しい製造方法の発明やノウハウは、他社が工場内に侵入しなければその内容はわからないことです。特許出願又は実用新案登録出願すると、出願から一定期間後にその発明の内容が公開されてしまいます。このため、製造方法の発明は営業秘密にして管理した方がよいことが多いと思います。
 また、製品が市場に出て、他社がその製品をリバースエンジ二アリングしても、その新しい技術やノウハウがわからないのであれば、特許出願又は実用新案登録出願しない方がよいかもしれません。
 しかし、リバースエンジ二アリング技術も日々進歩しており、製品が市場に出ていればいずれリバースエンジニアでその技術が分かってしまうことも多いです。製造方法以外の新しい技術やノウハウは、製品が市場に出てしまうと公知になることが多いことを勘案して、営業秘密として管理するか又は特許出願等をするかを検討しましょう。
(3) 特許
 特許とは、創作した「発明」を独占できる制度です。特許権の存続期間は、日本もタイも出願日から20年です。日本の特許出願は日本特許庁で、タイの特許出願はタイ特許庁で審査されて特許されます。保護対象である「発明」には、物の発明、方法の発明及び製造方法の発明があります。
(4) 実用新案
 実用新案とは、創作した「考案」を独占できる制度です。日本の登録実用新案権の存続期間は10年です。タイの登録実用新案権の存続期間は出願日から6年ですが一回2年の延長が2回可能であるため出願から最長10年になります。両国ともに、方式審査のみで登録されます。また考案の保護対象は、特許の保護対象と同じで製造方法の考案も保護されます。また実用新案権の登録要件に進歩性の要件が不要です。
 なお、日本では「技術評価書を提示して警告をした後でなければ、実用新案権を侵害する者に対し、その権利を行使することができない」という旨の規定(実用新案法第29条の2)があります。しかし、タイではそのような条文は存在しません。そのため、タイの実用新案権は、日本の実用新案権に比べて、権利行使しやすい権利です。
(5)日本で、最初に特許出願又は登録実用新案出願
 日本で新しい技術を開発・考案したら、日本国内で権利取得のために特許出願又は実用新案登録出願しましょう。タイでの特許出願等も考えているのであれば、最初から日本の専門家(弁理士、弁護士)に相談することが好ましいでしょう。
(6)タイへ、特許出願又は登録実用新案出願
 日本特許出願又は実用新案登録出願したら、次の2つの出願ルートでタイ特許出願又は実用新案登録出願します。
A.パリルート
 日本出願の優先権が享有するためには、日本特許特許又は実用新案登録出願の出願日(優先日)から12ヶ月以内に手続が必要です。
 しかし、タイ特許特許又は実用新案登録出願はタイ語で手続しなければなりません。日本では英語で出願できる外国語出願制度がありますが、タイにはどんな言語でも出願できる外国語出願制度があります。タイ出願日から90日以内にタイ語の翻訳を提出すればよいので、他国と比べて翻訳期間が十分にあります。
B.PCT(特許協力条約Patent Cooperation Treaty)ルート
 日本出願の優先権が享有するためには、日本特許特許又は実用新案登録出願の出願日(優先日)から12ヶ月以内に手続が必要です。PCT出願は、日本出願に基づいて多数国に出願したい場合、手続き面でパリルートに比べ有利です。
 日本特許特許又は実用新案登録出願の出願日(優先日)から12ヶ月以内に、WIPOが指定している受理官庁(例えば、日本特許庁等)にPCT出願を提出します。日本特許庁に日本語でPCT出願することができます。
 その後、PCT加盟であるタイへの移行期限は優先日から30ヶ月以内です。この期間内に、タイ語の翻訳を特許庁に提出しなくてはいけません。
 パリルートとPCTルートとの違いの詳細は、以下を参照してください。
http://www.iprsupport-jpo.go.jp/kensaku/apic_html/seido/data/004.html

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【M2】タイ/製造委託/特・実

M2におけるリスクは次の2項目です。
■タイ企業に製造委託し、日本又は他の販売国へ製品を輸出する際のリスク→ リスク3
■製品の部品をタイで購入する又は日本からタイに輸入するとともに、自社で製品を現地生産して、その製品をタイで販売又は販売国に輸出する際のリスク→ リスク4

リスク3→
タイ企業に製造委託し、日本又は他の販売国へ製品を輸出する際のリスク

回避策

1.概要

(1) タイ企業に製造委託し、タイでは販売を行わず、日本又は他の外国で販売するビジネスです。このようなビジネスは、例えば、タイでの製造コストの安さなどがビジネスの推進力となっている場合が多くなっています。
 営業秘密やノウハウが製造委託先のタイ企業に漏れることを想定して、製品のどこまで又はどの部品を製造委託するかなど、秘密にしておく領域と相手に開示する領域とを考える必要があります。
 製造委託先のタイ企業に、技術及びノウハウを含めて技術移転しなければならないことも多いと思います。この場合には、営業秘密の契約及び秘密保持のための管理体制をチェックするため自社から人材を定期的に派遣するなどの漏洩防止の対策を行わなければなりません。営業秘密に関しては、P1P2P3を参照してください。
 漏洩対策をしても、技術が漏洩したりリバースエンジニアリングされたりすることもあります。これらの対抗手段として、タイで特許権又は実用新案権を取得しておくことが望まれます。そうすれば、技術漏洩などがあったとしても、特許権などの侵害行為として他者の製品製造を停止させることができます。
(2)製造委託には、自社で自社製品を設計しタイ企業に製造委託するOEM(Original Equipment Manufacturing)と、タイ企業で自社製品を設計及び製造とをしてもらうODM(Original Design Manufacturing)とがあります。
 一般に、ODMではタイ企業がタイ特許及び日本特許に関して責任を負うと思われます。そこで以下の説明では、自社設計しタイ企業にOEM製品を製造してもらう場面を想定して説明します。

2.タイで問題になる特許(又は実用新案)

(1) 特許発明には「物の発明」、「方法の発明」及び「製造方法の発明」の3種類の発明があります。「物の発明」とは、製品自体又はその部品の発明です。「方法の発明」とは、製品又は部品の使用方法の発明です。「製造方法の発明」とは、製品を製造するための方法発明です。また実用新案も、特許の保護対象と同じで3種類の考案が保護対象です。
(2) 自社製品はタイで製造されます。一般に、製造委託先であるタイ企業がOEM製品に関する、タイの「製造方法の発明」に関して責任を負う契約になると思います。
(3) 一方、自社で設計した自社製品を保護するため、第三者のタイ特許と日本特許とを侵害しないことを確認する必要があります。
 タイで製造された自社製品は日本又は他の販売国へ輸出されます。タイ関税法(BE2469)及びタイ輸出入法(BE2522)では、タイの商標権及び著作権を侵害する物品に対して権利者が輸出を差し止めることができます。しかし、特許権又は実用新案権の侵害品の輸出入を差し止める法律はありません。
 自社は、第三者が有するタイ特許を調査し、特許を侵害するか否かの判断し、その特許を侵害する際には回避策を講じることになります。
 第三者が有するタイ特許の調査に関しては、M1リスク1の「2.タイ特許の調査」を参照してください。
 特許を侵害するか否かの判断に関しては、M1リスク1の「3.タイ特許権を侵害するか否かの判断」を参照してください。
 特許を侵害する際には回避策に関しては、M1リスク1の「4.タイ特許権を侵害の回避策」を参照してください。

3.日本で問題になる特許(又は実用新案)

(1) タイで製造された自社製品は、タイから日本に輸入されます。日本特許法は、輸入も特許の実施行為の1つであり、権利者は日本の特許権を侵害する物品を税関で輸入差し止めることができます。また、税関を通過後に自社製品が日本国内で販売されますので、第三者の日本特許発明を自社製品が侵害していた場合には、特許権者は損害賠償又は販売差し止めを請求する可能性があります。
(2) そこで日本特許の「物の発明」及び「方法の発明」の特許権侵害しないかを検討する必要があります。「物の発明」及び「方法の発明」に関して、第三者が有する特許を調査し、特許を侵害するか否かの判断し、その特許を侵害する際には回避策を講じることになります。
 第三者が有する日本特許の調査に関しては、M1リスク1の「5-1、5-2.日本特許の調査」を参照してください。
 特許を侵害するか否かの判断に関しては、M1リスク1の「5-3.日本特許権を侵害するか否かの判断」を参照してください。
 特許を侵害する際には回避策に関しては、M1リスク1の「5-4.日本特許権を侵害の回避策」を参照してください。

4.他の販売国で問題になる特許(又は実用新案)

(1) タイで製造された自社製品は、タイから販売国に輸入されます。多くの外国の特許法は、輸入も特許の実施行為として、権利者はその販売国の特許権を侵害する物品を税関で輸入差し止めることができます。また、税関を通過後に自社製品がその販売国内で販売されますので、第三者の特許発明を自社製品が侵害していた場合には、特許権者は損害賠償又は販売差し止めを請求する可能性があります。
(2) そこでその販売国の特許の「物の発明」及び「方法の発明」の特許権侵害しないかを検討する必要があります。「物の発明」及び「方法の発明」に関して、第三者が有する特許を調査し、特許を侵害するか否かの判断し、その特許を侵害する際には回避策を講じることになります。

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リスク4→
製品の部品をタイで購入する又は日本からタイに輸入するとともに、自社で製品を現地生産して、その製品をタイで販売又は販売国に輸出する際のリスク

回避策

1.概要

(1) 自らタイ国内で自社製品を製造することになるため、輸出取引や製造委託とは違った新たな問題が生じてきます。自ら製造する上でも、合弁企業を設立するケース、独立資本の子会社を設立するケース、又はM&Aでタイ企業を買収して子会社化するケースがあります。
 いずれのケースであっても、営業秘密やノウハウが漏れることを想定して対策をしなければなりません。特に合弁企業の場合には、日本側のコントロールが効きにくいこともありますから、日本企業と現地法人とが、技術移転契約又は技術ライセンス契約を締結する際に、それらの契約の中で日本企業側が有する技術の漏洩対策について規定する必要があります。営業秘密に関しては、P1P2P3を参照してください。
 技術漏洩対策をしても、技術漏洩し、リバースエンジニアリングされた場合の対抗手段として、タイで特許権又は実用新案権を取得しておくことが望まれます。そうすれば、技術漏洩が不正競争行為としてみなされるかどうかに関わらず、権利侵害行為として他者の製品製造を停止させることができます。
(2) タイ国内で自社製品を製造する場合に、すべての部品を自社製造することは少ないと思います。日本企業から部品を輸入したりタイ企業で製造された部品を購入したりして、自社製品を製造すると思います。
 この部品がタイで特許権又は実用新案権を侵害すると、その部品を組み入れた自社製品も侵害となる可能性があります。
 このため、貴社は輸入先の企業又は購入先の企業から部品を購入するに際して、その取引契約に第三者のタイ特許権及び実用新案権を侵害しない旨の特許保証条項を入れることが好ましいでしょう。特許保証条項に関しては侵Q7を参照してください。
 製品を構成する部品の中には、貴社製品専用の部品があるかもしれません。そのような貴社製品専用の部品を貴社が設計しているのであれば、貴社がその部品に関するタイ特許権及び実用新案権を調査する必要があるでしょう。

2.タイで問題になる特許(又は実用新案)

(1) 特許発明には「物の発明」、「方法の発明」及び「製造方法の発明」の3種類の発明があります。「物の発明」とは、製品自体又はその部品の発明です。「方法の発明」とは、製品又は部品の使用方法の発明です。「製造方法の発明」とは、製品又は部品を製造するための方法発明です。
 実用新案は、製品の形状、構造又はそれらの組合せについて出された実用に適した物の考案のみが保護対象です。
(2) 自社製品はタイの自社工場(子会社)又は合弁企業で製造されます。タイの“製造方法の発明”に関しても特許権侵害しないかを検討する必要があります。
(3) また、自社製品が第三者のタイ特許を侵害しないことを確認する必要があります。タイ特許法第36条では、特許権者以外は「特許の主題が製品である場合において,特許製品を製造し,使用し,販売し,販売のため所持し,販売のため供給し,かつ輸入する権利」を有さずとあり、製品の「物の特許」や製品の「方法の発明」に関しても特許権侵害しないかを検討する必要があります。
(4) 自社は、第三者が有するタイ特許を調査し、特許を侵害するか否かの判断し、その特許を侵害する際には回避策を講じることになります。
 第三者が有するタイ特許の調査に関しては、M1リスク1の「2.タイ特許(実用新案も含む)の調査」を参照してください。
 特許を侵害するか否かの判断に関しては、M1リスク1の「3.タイ特許権(実用新案権も含む)を侵害するか否かの判断」を参照してください。
 特許を侵害する際には回避策に関しては、M1リスク1の「4.タイ特許権(実用新案権も含む)を侵害の回避策」を参照してください。

3.他の販売国で問題になる特許(又は実用新案)

(1) タイで製造された自社製品は、タイから販売国に輸入されます。多くの外国の特許法は、輸入も特許の実施行為として、権利者はその販売国の特許権を侵害する物品を税関で輸入差し止めることができます。また、税関を通過後に自社製品がその販売国内で販売されますので、第三者の特許発明を自社製品が侵害していた場合には、特許権者は損害賠償又は販売差し止めを請求する可能性があります。
(2) そこでその販売国の特許の「物の発明」及び「方法の発明」の特許権侵害しないかを検討する必要があります。「物の発明」及び「方法の発明」に関して、第三者が有する特許を調査し、特許を侵害するか否かの判断し、その特許を侵害する際には回避策を講じることになります。

タイ特許法
第36条
特許権者以外の何人も次の権利を有さない。
(1) 特許の主題が製品である場合において,特許製品を製造し,使用し,販売し,販売のため所持し,販売のため供給し,かつ輸入する権利
(2) 特許の主題が製法である場合において,特許方法を使用し,また,特許方法で製造した製品を生産し,販売し,販売のため所持し,販売のため供給し,かつ輸入する権利
https://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/pdf/thailand/tokkyo.pdf

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【M3】タイ/ライセンス/特・実

M3におけるリスクは次の1項目です。
■ライセンスの注意点(リスク)→ リスク5

リスク5→
日本企業がタイ企業に特許ライセンスする際のリスク

回避策

1.概要

日本企業がタイ企業に技術を移転する場合、その技術がタイで実施されますので、タイ法の法律には従わなければなりません。日本企業はライセンサー(許諾者)として、その特許ライセンス(実施許諾)契約を慎重に作成すべきです。
 特許ライセンス契約する際には、タイの知的財産法、独占禁止法に考慮すべきです。特に、1979年特許法に基づく省令第25部(1999年)は、特許ライセンス契約について詳細に規定していますので、この省令に従う契約になるように留意しましょう。

参考:
タイ特許法
https://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/pdf/thailand/tokkyo.pdf
1979年特許法に基づく省令第25部(1999年)
https://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/pdf/thailand/tokkyo_kisoku.pdf
タイ独占禁止法の概略
http://www.jftc.go.jp/kokusai/worldcom/kakkoku/abc/allabc/t/tailand.html

2.特許((以下、実用新案も含め、特許と呼びます。))ライセンス

インドネシアでの特許ライセンス契約は、基本的に当事者の取り決めに従います。そして、書面によってタイ知的財産局などの政府機関に登録することが義務付けられています(特許法第41条)。ライセンス登録は特許ライセンス契約の発効要件です。また登録申請時に非公開希望の旨を伝えないと提出したライセンス契約書が公開されることに留意してください。
 さらに、タイ特許法第38条及び第39条は、過度な技術独占を規制していることから、規制されている使用条件に抵触しないようなライセンス契約にしないと審査が通りません。
 特許ライセンスでは、以下の①から⑪を含むことが一般的と考えます。
① 名称
 通常は特許ライセンス契約とすべきです。技術供与、技術援助などを含んた特許ライセンスであって、特許ライセンス契約という名称でも問題ありません。
② ライセンス技術の内容と実施態様
 ライセンスの対象となる特許番号の特定が必要です。また、実施態様を明確にしておく必要があります。
 タイ特許法では特に規定はありませんが、独占的実施許諾、通常実施許諾の2種類の実施態様が一般的です。
 独占的実施許諾は、日本の専用実施権と同様で、ライセンシー(被許諾者)のみが実施できる態様です。
 通常実施許諾は、日本の通常実施権と同様で、複数のライセンシーに同一技術の実施を重ねて許諾できる態様です。
 また、ライセンシーによる通常実施許諾のサブライセンス(再実施許諾)の契約も可能です。
 当事者間で特許ライセンス契約を結んだ場合、書面によってタイ知的財産局などの政府機関に申請します。そして政府機関によって審査され登録されることで、特許ライセンス契約が有効になります。ライセンスロイヤルティ送金時に、契約書を商業銀行に提出しなければならず、契約書が送金理由の証明書となります。
③ 技術供与の方法、供与する技術情報、ライセンスの期間、実施地域等の範囲
 技術供与側の日本企業としては、供与する技術情報・資料を明確にしておかないと債務の内容が不特定となって供与不履行の責任を問われかねません。できるだけ具体的に技術供与の方法、ライセンスの期間、地域、方法等を記載した方がよいです。
 特許の期限が切れた後に発明の使用に関する特許権の実施料をライセンシーが支払うよう規定すると、不当に競争を制限しているとみなされます(1979年特許法に基づく省令第25部(1999年)第4条)。
④ ライセンシー(被許諾者)の秘密保持義務
 ライセンシーは供与を受けた技術及び関連情報について秘密保持義務があることを規定します。契約期間満了後も、公知技術になるまでは秘密保持義務を負うことを規定すべきです。
⑤ リスク負担
 特に規定はありませんが、特許ライセンス中は特許料(年金)を納付する等の特許権の有効性を維持する義務などを契約書に明記すべきではないでしょうか。
 ライセンスした特許が無効になった場合などの両者の負担に関しても、法律上の制限はありません。
⑥ 改良技術成果の帰属等
 ライセンシーがライセンサーに対し,許諾された発明の改良を開示する義務、改良技術の特許権をライセンサーに譲渡する義務(アサインバック)又はライセンサーに改良技術の実施を許諾する義務(グラントバック)の規定は、不当な競争制限と解釈される可能性が高いです(1979年特許法に基づく省令第25部(1999年)第3条)。
⑦ 帳簿等の記帳義務、調査権
 ライセンシーがロイアルティ算定の基礎となる販売額等を記帳しておく義務と、ライセンサーがその帳簿等を調査できる権限があることを明記しておくべきです。
⑧ ロイアルティ(実施料)及びその支払方法
 日本国内でも一般的なイニシアル・ロイアルティ、ランニング・ロイアルティ、ランプサム・ロイヤリティ等が認められます。
 ライセンスロイヤリティの支払には注意が必要です。タイから日本へロイアルティを送金するためには、特許ライセンス契約の契約書を商業銀行に提出することになるため、タイ知的財産局などの政府機関にライセンス契約の登録が必要です。
⑨ 違約金又は損害賠償の計算方法
 債務不履行による違約金・損害賠償額の計算方法を定めることができます。
⑩ 紛争解決の方法
 準拠法は、タイ企業にタイ特許ライセンスを与えタイで発明を実施するのであれば、準拠法はタイになります。
 外国の裁判の判決を自国の裁判所が承認して自国内で強制執行を許すか否かを決めますが、この外国の判決を承認するか否かについて、外国との間で相互に承認しあう二国間条約があります。現在、日本とタイには相互承認の条約がありません。
 一方、国際仲裁については、加盟国の仲裁判断を互いに認め合う国際条約(ニューヨーク条約)があり、この国際条約に日本もタイも加盟しており、日本とタイでは互いに相手国の国際仲裁の仲裁判断に基づく自国での強制執行が可能です。
 このため紛争解決のための取り決めとして、仲裁を選択するのが一般的です。仲裁条項は、仲裁合意と仲裁地・仲裁機関等を規定しておく必要があります。日本の仲裁機関として、日本知的財産仲裁センターがあります。
http://www.ip-adr.gr.jp/
⑪ 名詞及び技術用語の解釈
 契約書の記載言語は、タイ語以外でも問題ありませんが、特許ライセンス契約の登録に際しては、タイ語の翻訳文が必要です。

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【N1】タイ/輸出/意匠

タイへの進出形態が輸出の場合において、意匠の分野で考えられる主なリスクと、それらの回避策は次の3項目です。
タイ・輸出/或いは自社が現地製造・一部または全部を現地で販売
■他社の意匠権を侵害するリスク→ リスク1
■他社による自社意匠の模倣のリスク→ リスク2
タイ・現地で自社製造して全て日本へ輸出
■他社の意匠権を侵害するリスク→ リスク3

リスク1→
他社の意匠権を侵害するリスク
(タイ・輸出/或いは自社が現地製造して一部または全部を現地で販売)

製品を輸出し、他社の権利を侵害した場合、販売禁止、損害賠償などの民事訴訟の対象となり(タイ特許法77条の3、 77条の4)となります。

回避策

①先行意匠の調査
 日本ですでに販売実績があり新規性が失われている場合、すなわち現地の第三者が有効な意匠権取得できない場合でも、輸出の前に、現地における先行意匠の調査を行っておく方が安心です。
 タイにおいて、意匠は特許法によって意匠特許として保護されます。登録に際しては、類似を考慮する新規性が要求され、実態審査があります(タイ特許法57条)。現在、タイ特許庁(DIP)のウェブサイトに検索ページがあり(http://www.ipthailand.go.th/en/の「Patent Search」ボタン)、現在のところ英語での物品名検索はできないため、ロカルノ分類や登録番号などを用いて検索するしかありません。また、検索したデータはタイ語で表記され、さらに画像についてはダウンロードが必要ですから視覚に頼った調査ができません。また、意匠調査は物品名の問題や類似判断を伴いますから、正確な調査を期すなら現地法律事務所などの現地代理人に依頼する方が望ましいでしょう。
②形態が似ている登録意匠が見つかった場合の対応
 調査の結果、登録意匠が見つかった場合は、輸出の中止を含めて、対応策が必要になります。
 (ⅰ)権利範囲の判断 タイの意匠特許の特許権の範囲は、明確に規定されていません。新規性の審査で類似を判断していますので、同一よりも広いと考えられます。日本で公知となっている自社意匠が、冒認出願されて権利になっている可能性もあり得ますので、事前に調査を行った方が無難でしょう。
 (ⅱ)無効の申立て 何人も、公告後90日以内に、登録要件違反の意匠特許を無効にするよう異議申立てを行うことができます(タイ特許法61条で準用する31条)。また、利害関係人又は公訴官は,無効特許の取消を裁判所に請求できます(タイ特許法54条)。タイの新規性の登録要件は、刊行物記載に限って世界公知主義を取っています(タイ特許法57条)。同登録意匠の意匠出願日が、日本での意匠公報発行日や製品の新聞・雑誌掲載日より後であれば、そうした資料を準備しておきましょう。実際に同裁判を起こさないまでも、相手と係争になった場合にそれらを証拠として示すことができます。
 (ⅲ)先使用権の主張 タイの特許法には、先使用に対して権利が及ばない旨が規定されています(タイ特許法36条(2))。すなわち、意匠出願の前に製造者又は使用者が特許出願の事実を知らず又はかかる事実を知るべき合理的な理由なくタイでの特許出願日より前に善意で製造を行っていたかそのための装置を取得したことを立証することができれば、意匠特許の特許権に対抗することができます。但し、輸入のみを行っている場合は製造ではないため、かかる規定の適用を受けることは難しいものと思われます。
③輸出先との調整
 相手国の取引先からの求めに応じて輸出する場合は、同取引先に登録意匠の調査責任を義務付け、また意匠権侵害の免責を契約に規定することも有効でしょう。

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リスク2→
他社による自社意匠の模倣のリスク
(タイ・輸出/或いは自社が現地製造して一部または全部を現地で販売)

製品が相手国の市場において人気を博する場合は、当然にして現地の第三者によって模倣されるリスクが高まります。事前の相手国での意匠登録の手段を含めて検討を行う必要があるでしょう。

回避策

①現地での意匠登録
 日本で意匠出願し、6か月経過前であれば、日本における出願日をタイの出願日として主張することがでます(タイ特許法60条の2)。したがって、日本の出願後、日本での販売等によって公知とっていた場合であっても新規性が喪失することはありません。
 しかし一方で、タイにおける、博覧会展示などの新規性喪失の例外規定は発明特許のみに認められており(タイ特許法19条)、意匠特許に適用はありませんからご注意ください。
②現地の意匠登録がある場合の対応
 現地において意匠権がある場合は、警告書送付、民事訴訟の対応を取ることになります。
 なお、模倣品がデッドコピーであれば問題ありませんが、変形が行われている場合、同一性の範囲に入るかどうかについて検討が必要な場合があります。
③現地の意匠登録がない場合の対応
 タイでは日本の商品形態模倣を禁止するような不正競争防止法が存在しません。商標まで模倣されていればパッシングオフにより救済されますが、形態のみの模倣であれば救済を受けることは難しいことになります。

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リスク3→
他社の意匠権を侵害するリスク
(タイ・現地で自社製造して全て日本へ輸出)

自社の海外工場で製造し、すべてを日本に輸入し、現地では一切販売しない場合であっても、製造自体が「実施」行為になりますから、その国に意匠権がある場合は権利侵害の問題が生じ、製造差し止め、損害賠償請求などを請求される可能性があります。
 なお、タイの税関におけて水際取締の対象としているのは、商標権と著作権に限られています(TRIPS協定51条)。一般的な犯罪摘発として意匠権に基づく輸出禁止が認められる可能性もありますが短期間に税関が意匠権侵害を判断することは難しく、輸出禁止を心配する必要はないと思われます。

回避策

N1リスク1の回避策①、②と同様です。

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【N2】タイ/製造委託/意匠

タイへの進出形態が製造委託の場合において、意匠の分野で考えられる主なリスクと、それらの回避策は次の5項目です。
タイ・現地会社へ製造委託して自社子会社が一部または全部を現地で販売
■他社の意匠権を侵害するリスク→ リスク4
■他社の意匠権を侵害するリスク→ リスク5
■他社による自社意匠の模倣リスク(意匠権あり)リスク→ リスク6
タイ・現地会社へ製造委託してすべてを日本に輸出
■他社による自社意匠の模倣リスク(意匠権なし)→ リスク7
■(価格を安く設定した)現地販売品が日本に輸入されてしまうリスク→ リスク8

リスク4→
他社の意匠権を侵害するリスク
(タイ・現地会社へ製造委託して自社子会社が一部または全部を現地で販売)

現地会社へ製造委託した場合、製造行為者は現地会社ですが、販売行為者が自社となります。

回避策

N1リスク1①、②と同様の対応が必要です。ライセンスと異なり、自社及び現地の製造委託会社それぞれが侵害当事者になる可能性がありますから、対応費用の分担などについて契約で定めておく必要があります。また、一方、侵害問題が生じると、契約の履行ができない可能性もありますから、その場合の対処を盛り込む必要も生じるでしょう。

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リスク5→
他社の意匠権を侵害するリスク
(タイ・現地会社へ製造委託して自社子会社が一部または全部を現地で販売)

自社が現地で製造する場合と異なる点は、現地会社へ製造委託した場合にした場合は、製品の外観情報を現地会社が共有することにあります。この情報管理が必要となってきます。

回避策

貴社から製品仕様を指示して製造委託する場合は、現地における意匠登録を行うことが必要です。現地会社を通して情報が流通したとしても、意匠権を確保していれば、その権利に基づいて、第三者の模倣を阻止することができます。
 実際に、模倣品が発見された場合は、N1リスク2の①~③の対応を取ることになります。

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リスク6→
他社による自社意匠の模倣リスク(意匠権あり)リスク
(タイ・現地会社へ製造委託して自社子会社が一部または全部を現地で販売)

特に、現地での販売価格が日本での販売価格より低額に設定されている場合、現地で販売された正規品が日本に輸入されてしまう場合があります。現地会社に対して、現地製品の日本への輸出をしない旨を契約で規定したとしても、いったん現地市場に製品が流通してしまうと、これをコントロールする術はありませんので、日本へ輸入される際に、それを阻止することとなります。

回避策

日本で有する意匠権に基づいて、自社が外国で製造した製品の輸入を阻止しようとするには一定の準備が必要です。
 原則として、外国の市場において自社が一旦流通させた製品は真正商品と呼ばれ、たとえ、その製品ついて特許権を有していたとしても、輸入差し止めなどの権利行使をすることはできないことが最高裁判決で判示されており、意匠権についても同様な結論が類推されます(「BBS事件」平成7(オ)1988))。
 しかし、「当該製品について販売先ないし使用地域から我が国を除外する旨を譲受人との間で合意した場合」は例外であると判示しています。現地製造会社との間で販売先を現地市場のみに限定する取り決めをしたうえで、予め現地製品やそのパッケージに「本製品の販売・譲渡は〇〇国においてのみ有効であり、日本を含む他国への輸出はそれぞれの国で取得された当社の特許権・意匠権を権利侵害する」旨を表記することが望ましいと思われます。同製品が日本に輸入された際に、税関等で権利行使できる可能性を確保することができます。

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リスク7→
他社による自社意匠の模倣リスク(意匠権なし)
(タイ・現地会社へ製造委託してすべてを日本に輸出)

現地で製造行為が行われる限り、製造委託した現地会社が意匠権侵害で警告される可能性はあります。

回避策

N1リスク1の回避策①、②と同様です。
 この場合、自社が侵害当事者となる可能性はありませんが、対応費用の分担などについて契約で定めておく必要がありますし、侵害問題が生じると、契約の履行ができない可能性もありますから、その場合の対処を製造委託契約に盛り込む必要も生じるでしょう。

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リスク8→
(価格を安く設定した)現地販売品が日本に輸入されてしまうリスク
(タイ・現地会社へ製造委託してすべてを日本に輸出)

現地会社が契約品以上の数を生産し、それを自ら現地で販売する、というような事例も起こり得ます。本来自社がコントロールすべき製品が、現地の市場において自社の手を離れて流通することになってしまいます。特に、そういった製品が日本に輸入されてしまうと、現地市場の問題だけでなく、日本市場の問題にも波及してしまいます。

回避策

製造委託契約によって、かかる事態が生じた場合にペナルティを課すことはもちろんですが、現地において意匠権を取得し、現地会社に対して意匠権侵害という牽制を行うことも必要です。また、製造委託契約で「契約等で現地製造会社から全製造品を自社が引き渡しを受ける」旨や、「現地市場での販売を許諾していない」旨を明確にしておくことも重要です。かかる製品が日本に入ってきた場合は、たとえ品質において同一のものであっても、これら契約により真正商品とは認められませんから、輸入差止において日本の意匠権を行使することができます。

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【N3】タイ/ライセンス/意匠

タイへの進出形態がライセンスの場合において、意匠の分野で考えられる主なリスクと、それらの回避策は次の4項目です。
タイ・ライセンス
■現地ライセンス品の品質が劣るリスク→ リスク9
■現地ライセンス品が日本に輸入されてしまうリスク→ リスク10
■現地ライセンス品が他社の意匠権を侵害するリスク→ リスク11
タイ・共同開発
■成果物の権利帰属にともなうリスク→ リスク12

リスク9→
現地ライセンス品の品質が劣るリスク

現地会社へのライセンス自体は意匠権の実施行為となりませんが、ライセンサーとして意匠権者から訴えられる可能性があります。また、現地ライセンス会社との間で責任問題が生じる場合があります。

回避策

契約において、ライセンス後に意匠権の侵害問題が生じた場合の、ライセンサーの免責を規定ししておく必要があります。しかし、相手方との交渉において、この免責が難しいのであれば、第三者の権利の侵害対策を真剣に考える必要があります。(先行意匠の調査について、N1リスク1参照)
 なお、タイにおいては、意匠を含む特許ライセンス契約は、商務省知的財産局または局長が指定する他の地方商務局事務所に登録することが求められます。省令によってライセンス契約の内容に制限が加えられており、特に「特許又は小特許のライセンス契約の時には、容易に立証することができなかった瑕疵が有った場合における、特許権者又は小特許権者の責任に関する例外あるいは制限を規定すること」は不当な競争制限になると規定していますので、他者の意匠権の侵害を免責として記載することはこの規定に抵触する可能性もあります。現地法律専門家と表現を検討する必要があると思われます。

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リスク10→
現地ライセンス品が日本に輸入されてしまうリスク

現地ライセンス品に第三者の模倣が発生した場合、その対策を取らなければ現地ライセンス会社との信頼感を喪失することになりますし、模倣品が日本に輸入されて国内市場に影響を与えないとも限りません。一方、現地において、訴訟当事者としてかかわる場合には人的資源やコストも決して小さくありませんから、ライセンス収入とのバランスを考える必要があります。

回避策

現地における救済制度やコスト、さらに権利侵害判断は、いずれも日本と異なる場合が多く、現地ライセンス会社を通じて現地の専門家に見解を仰ぐ必要があります。その際の費用分担について予め契約で規定しておく必要があるでしょう。
 また、一方で当事者はあくまで現地ライセンス会社ですから、たとえ自社が現地の意匠権を有していたとしても紛争当事者となることは避けるべきだと思われます。そのため、その場合に、現地ライセンス会社が意匠権の行使者となるべき地位を与えるなどの対策などを考慮しておくことが必要でしょう。
 タイにおいて、裁判所に対して権利行使を行える者は「特許又は小特許の所有者」と規定されていますが(タイ特許法77条の2、77条の3)、ライセンス契約書に「ライセンシーがライセンサーの代わりにあるいはライセンサーと共同原告として侵害者に権利行使する」旨が規定されていれば、民事訴訟において訴訟当事者となることができます。したがって、現地ライセンス会社に訴訟を任せる場合は、ライセンス契約書におけるその旨の記載が必要です。

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リスク11→
現地ライセンス品が他社の意匠権を侵害するリスク

現地会社への製造委託のN2リスク6と同じように、価格や品質の異なる現地ライセンス品が日本に輸入されてしまう可能性があります。現地ライセンス会社との契約で日本への輸出を行わない旨の規定を締結したとしても、いったん現地市場に製品が流通してしまうと、それをコントロールすることはできません。同様に日本へ輸入される際に、日本の意匠権に基づいてこれを規制するしかありません。

回避策

現地ライセンス品のパッケージに「本製品の販売・譲渡は〇〇国においてのみ有効であり、日本を含む他国への輸出はそれぞれの国で取得された当社の特許権・意匠権を権利侵害する」旨の英語または日本語表記を行うことで、日本の意匠権により、その輸入や販売等の差し止めを請求できる可能性があります。契約において、同表記を義務付けることを検討するとよいでしょう。(N2リスク6の回避策参照)

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リスク12→
成果物の権利帰属にともなうリスク

共同開発の成果物について、その権利帰属を、契約において明確にしておく必要があります。意匠権を共有とした場合に、他の共有者の同意の有無について、各国法律で異なることがありますから、その点に注意が必要です。

回避策

成果物は営業秘密として互いに秘密状態で管理するという選択肢がありますが、外観である意匠については営業秘密化することはできません。したがって、意匠について、取り得る選択肢は次の2つです。
 (ⅰ)それぞれの国で意匠権を共有する。
 (ⅱ)それぞれの国で単独で意匠権を管理する。
 (ⅰ)を選択した場合、タイの特許法では意匠権の共同所有について、「他の共同所有者の同意なく第36条及び第37条に基づき自己の権利を行使することができる」と規定され、また、「ライセンスの付与又は特許の譲渡については,共同所有者全員の同意を得なければならない」と規定されていますから(タイ特許法40条)、日本の意匠法の規定と同じです。しかし、確認の意味も含めて、単独実施及び第三者への単独許諾についてのルールを共同開発契約で明確にしておくべきだと思われます。
 なお、第三者の意匠権侵害に対する単独訴訟についても可能で、この点も日本の意匠法の規定と同じです。
 (ⅱ)を選択した場合、意匠の創作者が共同開発会社にいる場合は、日本での意匠権出願の際に、名前を創作者として明記し、意匠登録を受ける権利を承継する書面を受領しておきましょう。日本の意匠法には権利の移転手続きが規定されており(日本意匠法26条の2)、将来的に意匠登録を受ける権利の承継が争いになったときに、同規定によって持分が相手方に移転する可能性があるためです。なお、逆にタイにおいて同様な規定は存在しません。

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【O1】タイ/輸出/商標

O1におけるリスクは次の2項目です。
■他社の権利(商標権)を侵害するリスク→ リスク1
■他社による自社の権利(商標権あり、なし)の侵害のリスク→ リスク2

リスク1→
他社の権利(商標権)を侵害するリスク

タイへ製品を輸出し、他社の権利を侵害した場合、自社商品の販売停止、損害賠償、謝罪広告を請求されるおそれがあります。訴訟になった場合には訴訟費用も高額となります。

回避策

輸出を開始する前に、商標調査を行うことをお勧めします。
 もし、他人の同一・類似商標が発見された場合には、自社の商標を変更するか、あるいは商標権を取り消す、交渉をして権利を譲り受ける等の方法を検討する必要があります。

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リスク2→
他社による自社の権利(商標権あり、なし)の侵害のリスク

他社に商標を真似されるということは、多くの場合、模倣品が出回るということです。模倣品が出回ると、自社商品が売れなくなるばかりか、イメージダウンにつながり、長期的に見て、ビジネス自体が危機に瀕することになりかねません。

回避策

まず前提として、商標権を獲得していることが絶対的に重要です。タイへ進出する場合には、必ず商標権を取得するようにしてください。
(商標権がある場合の対応)
自社商標権が侵害された場合、侵害の態様にもよりますが、警告書送付、民事訴訟、刑事訴訟等のアクションをとることができます。
(商標権がない場合の対応)
パッシングオフ(詐称通用)による侵害阻止はかなりハードルが高くなります。タイへ進出する際にはまず商標登録をすることをお勧めします。

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【O2】タイ/製造委託/商標

O2におけるリスクは次の4項目です。
■現地での商標権を侵害するリスク→ リスク3
■外国で製造した製品がその国の税関からの輸出時に差し止められるリスク→ リスク4
■外国で自社のブランドが盗用されるリスク、コピー商品が出回るリスク→ リスク5
■外国から輸入した製品が日本の権利を侵害するリスク、日本の税関で差し止められるリスク→ リスク6

リスク3→
現地での商標権を侵害するリスク

製造委託であったとしても、他人の商標権を侵害した場合には商標権侵害を問われる可能性があります。また、販売する予定だった製品を入荷できず、ビジネス上多大な損害を被るおそれがあります。

回避策

現地での商標調査を行うことをお勧めします。あるいは、委託先に対して他人の商標権を侵害しない旨の誓約書を提出させることもできますが、自社の製品を製造するという責任がありますから、なるべく自社で商標調査を行うべきだと思われます。 また、商標登録を取得しておくべきです。

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リスク4→
外国で製造した製品がその国の税関からの輸出時に差し止められるリスク

タイで他人の商標権を侵害する製品は輸出時に差し止められる可能性がありますが、現在のところ、製品輸出が差し止められた事例はほとんどありません。

回避策

タイでOEM生産をする場合には事前に商標調査をし、権利も取得することをお勧めします。

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リスク5→
外国で自社のブランドが盗用されるリスク、コピー商品が出回るリスク

外国では特に、市場での模倣品の発見が遅れることがあります。国内のすべての市場を見回ることは難しいので、模倣品が出回っても発見までに時間がかかったり、発見されないこともあります。
また、外国で委託製造を行う場合、よくあるのは委託先の工場が契約した量より多くの製品を製造して横流しすることです。このようにして、本物と同一の模倣品(横流し品)が出回ることになります。

回避策

模倣品を発見するためには、定期的に市場調査を行うことをお勧めします。現地に社員がいれば、自社で行い、現地に社員がいない場合には代理店、あるいは調査会社を通して行えると思います。
展示会、見本市には業者が集まり、模倣品の取引が行われることもあるので、特に注意が必要です。
委託製造を行う場合には、委託先の製造管理に留意する必要があります。生産量を管理する方法として、例えば証紙やホログラムシールを配布し、製品に貼る等があります。
コピー商品が出回った場合、見過ごすことができないならば、行政摘発、刑事摘発等をしなければなりません。

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リスク6→
外国から輸入した製品が日本の権利を侵害するリスク、日本の税関で差し止められるリスク

外国では何ら権利を侵害しない商品でも、日本国内では侵害となることがあります。そのような場合、日本の税関で輸入時に差し止められたり、日本国内で権利侵害の問題が生じることになります。

回避策

タイで製造する製品を日本で販売する前に、日本での商標調査をすることをお勧めします。

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【O3】タイ/ライセンス/商標

O3におけるリスクは次の6項目です。
■ブランドイメージが壊れるリスク→ リスク7
■出所の混同のリスク→ リスク8
■冒認の商標登録をされるリスク→ リスク9
■侵害品に対する対応をどうするかというリスク→ リスク10
■当該国における商標ライセンス登録に関するリスク→ リスク11
■®表記に関するリスク(登録されていない商標に®を付けた場合のリスク→ リスク12

リスク7→
ブランドイメージが壊れるリスク

もしもライセンシーの商品が粗悪だったり、貴社の商品のイメージと違うものだった場合には、貴社のブランドイメージが壊されてしまいます。

回避策

ライセンシーが、信頼できる企業か、また、ライセンス料を受け取る場合には、確実に支払が見込める企業であるかどうかを見極める必要があります。
ライセンス契約において、商標の使用の方法について具体的に定め、定期的に品質検査をしたり、新商品は事前に点検することができるような条項も盛り込むことをお勧めします。これによって、貴社の製品基準を満たす製品についてのみライセンスすることができます。
ハウスマーク(社標)は貴社の重要な財産であり、もしもライセンスするのであれば、細心の注意が必要です。
ライセンスを行う際には、独占的使用権とするかどうかについても良く検討してください。独占的使用権とした場合には、同種の商品について他の者にはライセンスできなくなります。

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リスク8→
出所の混同のリスク

ライセンスをした場合、ライセンシーの商品との間で出所の混同が生じることがあります。このような事態が生じると、市場で需要者が混乱し、結局は貴社商品のブランド価値の失墜を招きますので、問題です。

回避策

ライセンス契約において、出所の混同が生じないよう定めておくことが必要です。
また、商品に「XXは○○株式会社の商標です」のような記載をするよう義務付ける方法もあります。

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リスク9→
冒認の商標登録をされるリスク

ライセンシーがライセンスを受けている商標を勝手に出願、登録するということがしばしば見受けられます。

回避策

契約書において、ライセンシーが商標出願をしてはならない旨を明記することをお勧めします。また、もしも出願した場合には、速やかに貴社へその出願、登録を譲渡するように規定することも考えられます。

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リスク10→
侵害品に対する対応をどうするかというリスク

ライセンスによって商品の幅が広がることによって侵害品が出回りやすくなることも考えられます。

回避策

ライセンシーが侵害品を発見した場合に、貴社へ通報するように契約書で記載しておいたほうがいいと思います。その上で、権利行使を誰が主体となって行うか、費用は誰が支払うかについて決めておきます。ライセンシーは権利行使できない場合も多いので、その場合には権利者である貴社が権利行使しなければなりません。

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リスク11→
当該国における商標ライセンス登録に関するリスク

タイでは、現在、ライセンシーによる登録商標の使用も、真正な使用と認められていますが、ライセンスの登録が必要です。

回避策

ライセンスをする場合には、是非ライセンスの登録をしておいてください。

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リスク12→
®表記に関するリスク(登録されていない商標に®を付けた場合のリスク

登録されていない商標に®を付けた場合、罰則を受けることがありますので、注意が必要です。

回避策

商品及びパッケージにおける®の使用には十分に注意する必要があります。

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【P1】タイ/輸出/営業秘密

P1におけるリスクは次の1項目です。
■自社の現地社員が営業秘密を流出させるリスク→ リスク1

リスク1→
自社の現地社員が営業秘密を流出させるリスク

自社の現地支店若しくは現地子会社が雇用した現地社員が、営業秘密を流出させるリスクがあります。

回避策

まず、WTOのTRIPS協定によって、加盟国には「開示されていない情報の保護」が求められています(同協定39条)。WTO加盟国であるタイも、この条約に従い、2002年に営業秘密法を立法し、営業秘密を保護しています。
 営業秘密法3条に、営業秘密とは「まだ一般に広く認識されていない、又はその情報に通常触れられる特定の人にまだ届いていない営業情報であって、かつ機密であることにより商業価値をもたらす情報、及び営業秘密管理者が機密を保持するために適当な手段を採用している情報であるもの」であると定義されています。保護対象は、上述の通り「営業情報」ですが、「営業情報」とは、「伝達方法及び形態に関わらず、主旨、内容、事実又はその他の意味を伝える媒体を意味し、調製法、様式、解釈若しくは結合したもの、プログラム、方法、技術、又は工程を含む」と規定されていますから(同条)、日本で営業秘密として保護される、技術データ、設計図、生産ノウハウといった技術情報も、顧客情報、接客マニュアル、食品レシピといった経営情報は含まれることになります。
 但し、営業秘密の保護の例外として、次のものが挙げられています(同法7条)。
(1)当該営業秘密を取得した者が、当該営業秘密が、契約者の一方が他人の営業秘密権を侵害して取得したものであると認識せず、又は認識していたと思われる根拠なしに、営業秘密を合法的に開示又は使用すること。
(2)次の場合において、管轄の政府機関が当該営業秘密を開示又は使用すること。(ⅰ)公衆の衛生若しくは公の秩序を保護するために必要な場合。又は (ⅱ)商業目的でない公共の利益のために必要な場合で、かつ前述の場合において当該営業秘密を監督する政府機関、又は当該営業秘密の取得に関係する政府機関若しくは関係者が不正な商業手法に使用されないよう、前述の営業秘密を保護するために合理的段階を講じて業務を遂行した場合。
(3)独自に発見した場合。即ち発見者が自己の知識、専門により発明又は創造をすることにより、他人の営業秘密を発見した場合。
(4)リバースエンジニアリングを行った場合。即ち発見者が当該製品を発明、製造又は開発するための方法を探す目的で、一般に知られている製品の評価及び解析をすることにより、他人の営業秘密を発見した場合。ただし、評価及び研究分析をした者はその製品を善意で取得しなければならない。
 以上について、より詳しくは次の資料に記載されています。
タイ営業秘密法 英文テキスト(WIPO)
http://www.wipo.int/edocs/lexdocs/laws/en/th/th018en.pdf
模倣対策マニュアル タイ編(2008年3月、日本貿易振興機構)
http://www.globalipdb.jpo.go.jp/jpowp/wp-content/uploads/2015/01/a0ee5cb07afab95827c9710323012ab7.pdf
 タイの営業秘密法は、上述のように営業秘密の定義と除外規定により、保護要件が明確になっています。
 まず、上述7条(1)項の除外規定に該当しないように、従業者に対して何が秘密情報なのかを明示する必要があります。雇用契約の中に漠然とした秘密保持義務を謳うだけでは不十分ですから、注意が必要です。
 加えて、「営業秘密管理者が機密を保持するために適当な手段を採用している情報である」(秘密管理措置)ことを確保するために、情報にアクセスする権限者を限り、また、それが秘密情報であることを表記する等について、社内でルールを作成し、それを確実に実行する体制が必要です。
 従業者が秘密保持契約に違反した場合は、契約書に記載された損害賠償の支払い義務のほか、営業秘密法にもとづき、差し止め請求及び損害賠償を請求することができます(同法8条)。なお、タイの営業秘密法は、製造方法が営業秘密であった場合の推定規定(同法12条)、及び故意・過失の賠償額の加重規定(同法13条(3))を有しています。また、「営業秘密管理者が事業を営む上で損失を被るよう悪意により、他人が保有する当該営業秘密を一般に認識されるよう開示した者」(同法33条)、「営業秘密を保護管理する地位権限を持つ者が、自己又は他人の利益のために正当な権利なく当該機密を開示又は使用した場合」(同法34条)、「通常非開示で保護されるべき性質を持った、営業秘密管理者の活動に係る事実を、この法律の執行において取得又は認識し、開示した者」(同法35条)のそれぞれについて、罰則規定が設けられています。
 なお、タイの営業秘密法による救済の可能性を確保するために、秘密保持契約において、準拠法を単純に日本のみに限定することについては注意が必要です。

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【P2】タイ/製造委託/営業秘密

P2におけるリスクは次の1項目です。
■製造委託契約の下で現地会社へ供出した技術的なノウハウ・データが現地会社に利用され、または漏えいするリスク→ リスク2

リスク2→
製造委託契約の下で現地会社へ供出した技術的なノウハウ・データが現地会社に利用され、または漏えいするリスク

国内で製造をしていたものを現地会社へ製造委託した場合に、同製品についての品質を維持するために技術データや生産ノウハウを提供する必要が生じます。同製品の製造委託契約が終了しても、それら技術データ等を利用して同等の製品を作り続けられてしまう可能性があります。

回避策

タイの営業秘密法3条は、営業秘密で保護される「営業情報」とは「伝達方法及び形態に関わらず、主旨、内容、事実又はその他の意味を伝える媒体を意味し、調製法、様式、解釈若しくは結合したもの、プログラム、方法、技術、又は工程を含む」と規定していますから、技術データ、設計図、生産ノウハウといった技術情報もこれに含まれます。
 タイの営業秘密法3条は、営業秘密を「まだ一般に広く認識されていない、又はその情報に通常触れられる特定の人にまだ届いていない営業情報であって、かつ機密であることにより商業価値をもたらす情報、及び営業秘密管理者が機密を保持するために適当な手段を採用している情報であるもの」と定義しており、一方で、営業秘密法7条は、営業秘密から除外されるものとして、「当該営業秘密を取得した者が、当該営業秘密が、契約者の一方が他人の営業秘密権を侵害して取得したものであると認識しなかったもの」(同条(1))や「リバースエンジニアリング」を挙げています(同条(4))(P1リスク1参照)。
 現地会社と製造委託契約を行う際に、「営業秘密を取得した者が営業秘密として認識していなかったもの」に該当することを防ぐために、秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement )を並行して結ぶことが必要です。契約の中で、提供した秘密情報の目的外使用を禁止する旨を明示することで、秘密情報が相手方企業に自由に使用されてしまうことを、防ぐことができます。
 次に、秘密管理措置については、特定した秘密情報について秘密管理措置を実行する必要があります。具体的には自らも社内規定を設けて、秘密情報であることの表記、アクセス制限、そして暗証化といったような措置を取らなければなりません(P1リスク1参照)。また、製造委託契約や秘密保持契約において、現地会社に対して、同様な、より具体的な管理義務を規定することも有効だと思われます。
 現地会社が秘密保持契約に違反した場合は、契約書に記載された損害賠償の支払い義務のほか、営業秘密法にもとづき、差し止め請求及び損害賠償を請求することができます(同法8条)。なお、タイの営業秘密法は、製造方法が営業秘密であった場合の推定規定(同法12条)、及び故意・過失の賠償額の加重規定(同法13条(3))を有しています。また、「営業秘密管理者が事業を営む上で損失を被るよう悪意により、他人が保有する当該営業秘密を一般に認識されるよう開示した者」(同法33条)、「営業秘密を保護管理する地位権限を持つ者が、自己又は他人の利益のために正当な権利なく当該機密を開示又は使用した場合」(同法34条)、「通常非開示で保護されるべき性質を持った、営業秘密管理者の活動に係る事実を、この法律の執行において取得又は認識し、開示した者」(同法35条)のそれぞれについて、罰則規定が設けられています。
 また、日本の不正競争防止法は、外国における秘密情報の漏えいも対象としますので、国内法に基づいて秘密情報により生産された製品が国内に輸入された場合の差止請求(同法3条)や秘密漏えいによって蒙った損害賠償請求(同法4条)を申し立てることもできます。さらに、平成27年度の法律改正により、同法による刑事罰の適用範囲が国外における行為者まで拡大されています(同法21条3項)。なお、日本の不正競争防止法による実効は相手国内に及びませんから、タイの営業秘密法による救済の可能性を確保するために、秘密保持契約において、準拠法を単純に日本のみに限定することについては注意が必要です。

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【P3】タイ/ライセンス/営業秘密

P3におけるリスクは次の3項目です。
■ライセンス契約の下で現地会社へ提供した営業上のノウハウ・データが現地会社から漏えいするリスク→ リスク3
■共同開発契約の下で相手会社へ提供したノウハウ・データが開発製品や事業以外に相手会社に利用されるリスク→ リスク4
■共同開発契約の下で相手会社から提供を受けたノウハウ・データを利用したとして相手会社から訴えられるリスク→ リスク5

リスク3→
ライセンス契約の下で現地会社へ提供した営業上のノウハウ・データが現地会社から漏えいするリスク

国内で成功した営業に関するビジネスモデルをブランドともに現地会社へ有償でライセンスする場合があります。この際、ブランドは商標登録を行うことによって管理することができますが、登録対象とならない顧客情報といったデータや接客マニュアルや食品レシピといったノウハウは権利を確立することによっての管理が難しく、その漏えいの可能性があります。

回避策

タイの営業秘密法3条は、営業秘密で保護される「営業情報」とは「伝達方法及び形態に関わらず、主旨、内容、事実又はその他の意味を伝える媒体を意味し、調製法、様式、解釈若しくは結合したもの、プログラム、方法、技術、又は工程を含む」と規定していますから、顧客情報、接客マニュアル、食品レシピといった経営情報もこれに含まれます。
 タイの営業秘密法3条は、営業秘密を「まだ一般に広く認識されていない、又はその情報に通常触れられる特定の人にまだ届いていない営業情報であって、かつ機密であることにより商業価値をもたらす情報、及び営業秘密管理者が機密を保持するために適当な手段を採用している情報であるもの」と定義しており、一方で、営業秘密法7条は、営業秘密から除外されるものとして、「当該営業秘密を取得した者が、当該営業秘密が、契約者の一方が他人の営業秘密権を侵害して取得したものであると認識しなかったもの」(同条(1))や「リバースエンジニアリング」を挙げています(同条(4))(P1リスク1参照)。
 このため、現地会社とライセンス契約を行う際に、「営業秘密を取得した者が営業秘密として認識していなかったもの」に該当することを防ぐために、秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement )を並行して結ぶことが必要です。
 特に、相手会社の事業に関わりにくいライセンスという形態では、契約の中で、相手会社に具体的な秘密管理措置を課すこと、同時に、品質管理とともに秘密管理措置の履行を確認するために相手会社への立ち入り検査権を規定しておくことも有効であると思われます。
 一方で、自らも、特定した秘密情報について秘密管理措置を実行する必要があります。具体的には秘密情報であることの表記、アクセス制限、そして暗証化といったような措置を取らなければなりません。また、ライセンス契約や秘密保持契約において、現地会社に対して、同様な、より具体的な管理義務を規定することも有効です。
 現地会社が秘密保持契約に違反した場合は、契約書に記載された損害賠償の支払い義務のほか、営業秘密法にもとづき、差し止め請求及び損害賠償を請求することができます(同法8条)。なお、タイの営業秘密法は、製造方法が営業秘密であった場合の推定規定(同法12条)、及び故意・過失の賠償額の加重規定(同法13条(3))を有しています。また、「営業秘密管理者が事業を営む上で損失を被るよう悪意により、他人が保有する当該営業秘密を一般に認識されるよう開示した者」(同法33条)、「営業秘密を保護管理する地位権限を持つ者が、自己又は他人の利益のために正当な権利なく当該機密を開示又は使用した場合」(同法34条)、「通常非開示で保護されるべき性質を持った、営業秘密管理者の活動に係る事実を、この法律の執行において取得又は認識し、開示した者」(同法35条)のそれぞれについて、罰則規定が設けられています。
 また、日本の不正競争防止法は、外国における秘密情報の漏えいも対象としますので、国内法に基づいて秘密情報により生産された製品が国内に輸入された場合の差止請求(同法3条)や秘密漏えいによって蒙った損害賠償請求(同法4条)を申し立てることもできます。さらに、平成27年度の法律改正により、同法による刑事罰の適用範囲が国外における行為者まで拡大されています(同法21条3項)。なお、日本の不正競争防止法による実効は相手国内に及びませんから、タイの営業秘密法による救済の可能性を確保するために、秘密保持契約において、準拠法を単純に日本のみに限定することについては注意が必要です。

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リスク4→
共同開発契約の下で相手会社へ提供したノウハウ・データが開発製品や事業以外に相手会社に利用されるリスク

異なる技術分野の現地会社と、新たな製品や事業を共同開発する場合は、お互いの技術情報を持ち寄る必要があります。この場合、提出した技術情報が営業秘密である場合、相手会社を通じて外部に漏えいしてしまう可能性があります。また、共同開発の成果物を秘密情報として管理する場合は、この取り扱いについて同意する必要があります。

回避策

タイの営業秘密法3条は、営業秘密で保護される「営業情報」とは「伝達方法及び形態に関わらず、主旨、内容、事実又はその他の意味を伝える媒体を意味し、調製法、様式、解釈若しくは結合したもの、プログラム、方法、技術、又は工程を含む」と規定していますから、共同開発の際に、相手方に提示する技術データ、設計図、生産ノウハウといった技術情報もこれに含まれます。また、共同開発の成果物についても同様です。
タイの営業秘密法3条は、営業秘密を「まだ一般に広く認識されていない、又はその情報に通常触れられる特定の人にまだ届いていない営業情報であって、かつ機密であることにより商業価値をもたらす情報、及び営業秘密管理者が機密を保持するために適当な手段を採用している情報であるもの」と定義しており、一方で、営業秘密法7条は、営業秘密から除外されるものとして、「当該営業秘密を取得した者が、当該営業秘密が、契約者の一方が他人の営業秘密権を侵害して取得したものであると認識しなかったもの」(同条(1))や「リバースエンジニアリング」を挙げています(同条(4))(P1リスク1参照)。
 このため、現地会社とライセンス契約を行う際に、「営業秘密を取得した者が営業秘密として認識していなかったもの」に該当することを防ぐために、現地会社との共同開発契約の中で、秘密保持条項(NDA:Non-Disclosure Agreement )を規定し、秘密情報が互いに提供する、「公知ではない、特定の技術情報であること」、また「共同開発事業によって新たに開発した(公知ではない)技術情報であること」を規定する必要があります。「共同開発事業によって新たに開発した技術情報」についても、双方の開示合意が無ければ秘密保持義務を負う旨の規定とするとよいと思われます。
 次に、特定した秘密情報について秘密管理措置を実行する必要があります。具体的には、互いに社内規定を設けて、秘密情報であることの表記、アクセス制限、そして暗証化といったような管理を行う必要があります。ここで、注意が必要なことは、共同開発においては、自らも相手会社から秘密情報を預かることになりますから、十分な注意が必要になります(P3リスク5参照)。
 現地会社が秘密保持契約に違反した場合は、契約書に記載された損害賠償の支払い義務のほか、営業秘密法にもとづき、差し止め請求及び損害賠償を請求することができます(同法8条)。なお、タイの営業秘密法は、製造方法が営業秘密であった場合の推定規定(同法12条)、及び故意・過失の賠償額の加重規定(同法13条(3))を有しています。また、「営業秘密管理者が事業を営む上で損失を被るよう悪意により、他人が保有する当該営業秘密を一般に認識されるよう開示した者」(同法33条)、「営業秘密を保護管理する地位権限を持つ者が、自己又は他人の利益のために正当な権利なく当該機密を開示又は使用した場合」(同法34条)、「通常非開示で保護されるべき性質を持った、営業秘密管理者の活動に係る事実を、この法律の執行において取得又は認識し、開示した者」(同法35条)のそれぞれについて、罰則規定が設けられています。
 また、日本の不正競争防止法は、外国における秘密情報の漏えいも対象としますので、国内法に基づいて秘密情報により生産された製品が国内に輸入された場合の差止請求(同法3条)や秘密漏えいによって蒙った損害賠償請求(同法4条)を申し立てることもできます。さらに、平成27年度の法律改正により、同法による刑事罰の適用範囲が国外における行為者まで拡大されています(同法21条3項)。なお、日本の不正競争防止法による実効は相手国内に及びませんから、タイの営業秘密法による救済の可能性を確保するために、秘密保持契約において、準拠法を単純に日本のみに限定することについては注意が必要です。

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リスク5→
共同開発契約の下で相手会社から提供を受けたノウハウ・データを利用したとして相手会社から訴えられるリスク

共同開発の相手会社から秘密情報の提供を得た場合、秘密保持契約に拘束されるために自らの開発が阻害されてしまうリスクがあります。

回避策

共同開発が終了し、さらにその延長線上で単独に開発を続ける場合は、相手方から取得した営業秘密について取扱いに疑義が生じることになります。営業秘密の除外規定として、「独自に発見した場合。即ち発見者が自己の知識」や「リバースエンジニアリングを行った場合」(営業秘密法7条(3)(4))が挙げられますから、もしそれらに該当した場合は逐次理由を記録して管理するとよいでしょう。が、相手から取得した秘密情報の延長線上に事業を行う場合は共同開発終了後も、秘密保持義務は負ったまま、秘密情報の継続利用は互いに許諾するなど、契約上工夫をする必要があると思われます。
 一般的な秘密保持契約の文例に示すように、相手会社から得た秘密情報を利用できるのは、事業の目的内に限られます。
 このとき、意図する、せざるにかかわりなく、相手会社から目的外の秘密情報が提供された場合もありえます。特に、相手方からの営業秘密を広く共有してしまうと自分の情報との混同(コンタミネーション)が生じてしまがちです。相手側から受け取った営業秘密は営業秘密として認識し、かつ扱う者も限られた人数にするとの姿勢が重要です。

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本QAは特許庁委託事業「外国産業財産権侵害対策等支援事業」において作成されたものです。
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